ep31 ソフィア(The fugitive)
――この赤子は接収する――
突如として家の中に押し入って来た武装した集団は、アメリアの喉元に剣を突き付けると、アメリアの腕の中でスヤスヤと眠るユーベンブロイを取り上げ奪って馬車に乗せ、どこかへと走り去っていった――
何が起きたのか分からないまま、自分の赤子を奪われたアメリアはその夜、寝る事もせずにどうすればいいかを考えるだけ考えた結果、村と村に残された愛する家族を捨ててどこかに消えた――
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エドワードは必死に逃げていた――
それはまぁ、当然と言えば当然の事と思われるかもしれないが、この世界の棄民貧民平民が声を大にして訴えても国が救いの手を出す事は無い。
従って、エドワードはアメリアを襲った貧村から逃げていた訳ではない。
エドワードはアメリアを暗闇に乗じて襲って犯したあの日、泣き喚き嫌がるアメリアを見て、それまでの従順な奉仕しかしなかった性奴達から感じていたモノよりも、深く深くあまりにも底が知れない愉悦に魅入られてしまった。これはエドワードが今まで味わったことの無い衝撃であり、それにより性的嗜好が大きく変質させられてしまったと言える。
だからこそ、今までの純粋で清楚感溢れる生娘をターゲットにして時間を掛けてまで誘惑し、穢し屈服させ「自分の為だけに悦んで足を開く性奴」を作り上げていた時よりも、時間を掛ける事をせずに、泣き叫び恐怖に怯える女であれば誰でも良くなっていた。
これにより、被害者の数は一気に増加したのである――
数カ月に及ぶエドワードの凶行に於ける被害にあった女は200人近く。そして襲った女をエドワードはほぼ全員殺害したのである。中には叫び声を聞き付けた冒険者に助けられた者や、連続女性強姦殺害事件の警戒をしていた冒険者達が見回って来た事で、エドワードが行為の途中でその場から逃げ出し、助かった女もいた。
……が、結局の所は運が極端に良かった女だけが助かったと言えるだろう。だが、運良く助かった女達も、少なからず心と身体に傷を負った事に変わりはなく、そのまま命を投げ出す事を選んだ者もいたのである。
「エドワード様、やっと見付けましたわ。とてもとてもお会いしとうござりました。私のこの身は穢されてしまいましたが、もう一度、私に貴方様を感じさせて下さりませ」
「だ……れだ?お前は……誰……だ?」
「私です!ソフィアですわ。エドワード様との赤ちゃんは死んでしまい、この身はあの塔の看守に穢されてしまいましたが、私のエドワード様をお慕いする気持ちに偽りはござりませんの。さぁ、抱いて下さりませ。あの時のお約束を、果たして下さりませ!」
エドワードとソフィアは、ブルムングの町の人気の無いとある裏路地で再会した――
エドワードは昨夜の狩りが失敗に終わり、冒険者に追われ命からがら逃げ延びたのだった……。
最近は被害者の数があまりにも増大した為、一部の貴族や商人、有志の者達が金を出し合い、名前も分からない加害者に懸賞金が掛けられ、どこの町にも村にも手配書が出回っている。そこには図らずとも必ず“DEAD or ALIVE”の記載があった。
こうなっては昼間に顔を出して歩く事などままならない。故に昼間は顔を隠し、人気の無い裏路地で負傷兵の真似事をし、夜になってから獲物を探し徘徊する毎日に変わっていた。そして狩りの成功率が悪くなり、色欲が満たされなくなったら町を変える……。
それの繰り返しで町を村を転々と渡り歩いていたのである――
そんな時、ソフィアを名乗る女性が目の前に現れた。「関係のあった女が近寄って来る筈がない」混乱しているエドワードはそれ故に困惑していった――
――ふぁさッ
エドワードの前に立つソフィアは、服を脱ぎ捨て一糸纏わぬ、あられもない姿になると、魅惑的な肢体を魅せつけるようにくねらせ、エドワードの元へと妖艶な姿で這うように擦り寄っていったのである。
そしてソフィアの手が、エドワードの服へと掛かり、甘い声で「エドワード様ぁ、早く挿れて下さりませぇ」と囁いた時……。
――どんッ
「きゃッ!な……何をなさいますの、エドワード様ぁ?私を抱いては下さりませんの?」
「や……ヤメろ!私はもう、媚びる女じゃ勃つことは無い。オマエに何の魅力も感じない。どこの誰か知らないが、オマエを抱く可能性は絶対にない」
エドワードからの拒絶。ソフィアはエドワードの性的嗜好が変わったのを知る由もない。更に付け加えれば名前は疎か、顔すらも覚えていないその態度に本来ならば絶句していただろう。
「あんなに耳元で愛を囁いてくれて、夜通し睦み合い、快楽の虜になってまで貴方の全てを受け入れたのに……」と。
しかし、このソフィアは違った――




