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メタバースマルチバース 〜ユニバースディ〜  作者: 硝酸塩硫化水素
はじまりのおわりとおわりのはじまり

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ep294 龍人族(Nimru Hornen)

 ――もう一刻の猶予もなかった。既にノーブス・アリディフォリアの両鎌(マントデアシックル)は、マイアの両腕を捉えていた――


「テーバメ、合わせよッ!見様見真似!秘剣(フルスペック)鳥獣伎楽(オーバースペック)能ある鷹は爪を隠す(カエセルモノナシ)……知っておろう?(ツバメガエシ)


鳥獣伎楽(オーバースペック)燕雀安んぞ鴻鵠の志を(カエセルモノナシ)……知らんや(ツバメガエシ)ッ!! ――チッカ様が(それがし)の技を!お()事でございます、チッカ様!」


 (チッカ)(テーバメ)が全身全霊の最高速度を以ってしても「間に合わない」と判断する程の、()()()()()()がそこにはあった。


 故に二人の最高速度の飛翔に最速の剣技を上乗せして、狙いを定めるに至る。だが、チッカではテーバメの「ツバメガエシ」を使ったところで威力も速度も半減してしまう。拠って、秘剣(フルスペック)まで使い半減した速度を上昇させたコトになる。

 その一方でチッカの意図を瞬時に察知し、自分が秘剣(フルスペック)を使わない事で、チッカの斬撃と同着を狙ったテーバメの咄嗟の判断もお()事と言えるだろう。

 まぁ、チッカに心酔しているテーバメとしては、それ以上の歓びを感じていたに違いない――



「――ッ?!」

 ――シャッシャシャッ

   シャシュショッ――

「アアア、アトイッポデ、サササ、ササゲモノガ……」


「テーバメ、余の援護に回れ。もしも、指揮官代理殿が墜ちる時は、そちらを優先せよ」


「……御意ッ!」


 既にマイアの目は虚ろになっており、機能が完全停止する意識喪失(スリープモード)までは秒読み段階に入っている。

 鳥人(とりびと)族である二人は、マイアが墜落すれば無事では済まないコトを理解している。だからこそ、そうならないようにチッカはテーバメに指示を出したワケだが、そうなれば一対一となり当初のチッカの予想通り今度はチッカの四肢が(もぎ)取られる事になるだろう――



 無機生命体とは違い、そうなった時にチッカの生命活動は潰える事になる。だからといって、この場をテーバメに任せられるか?……と問われれば、チッカが出す答えは自ずと決まりきっている。

 ()()()()()()()とも言えるテーバメだが、国は潰えども今尚、自らが主君と仰ぐチッカの瞳が「断固拒否」している策を出せる程、自儘ではない。

 そして更に付け足すならば、テーバメの覚悟では、死地に臨む主を止める事が出来ようハズもなかったのである。



「ここはニホンではない。ニホンから迷い込んだ「蟲族」の亡霊よ、余が引導を渡してやろう ——“元”四刀聖序列第一位チッカ・ノーアル……いざ参らん!」


「タタタ、タツビトゾクノキボウ、リュリュリュ、リュウコウジョサマハ、アアア、アンガマモル」


「そうか……龍公女を守る……か……お前の魂は未だ龍人(たつびと)族なのだな。ならば、その龍人族の魂だけは()()()に戻れるように祈っておいてやる」



 ――かつてチッカ達の国があった()()()。そしてその4つあった()()()の内、北の大地は「()ムル・()ルネ()」と呼ばれる()()()であった――



 雪深い北の大地、「()ムル・()ルネ()」に存在していた「ユの国」を治めていたのが「龍公女」であり、このノーブス・アリディフォリアはその龍公女の従者、「アン」より産まれ出た最初の「シン・蟲族」である。


 言うなれば、アダムとイブの子供(カイン)とも言える。だがそこには、アダムとイブのラブストーリーなどは存在せず、甘い甘い新婚生活の末に授かった生命などでもない。


 それはアンが死を前提とする望まぬ出産(異種交配)を強制されたからであり、当然と言えば当然である。だからこそ、こんな冗談のような軽口を叩かなければ()()()()()()()くらいに、()()()()()()()()程に、アンという少女は残酷な“死”を背負わされた。


 アンは異種交配の苗床にされる為に手足を切断され、自身の腹の中で育つ「異物」の母親になる絶望の中で藻掻き苦しみ、絶叫と共に「シン・蟲族」を出産し、誰かに看取られる事なく悶えながら息絶えたのである。


 しかし、「シン・蟲族」の出産に因ってアンの肉体が滅んでも尚、その魂は子供に引き継がれ、自らを殺した忌むべき「シン・蟲族」の姿になっても尚、拘束されるとは完全なる呪縛であり、悪魔の所業と言わざるを得ない。

 そして死しても尚、仕えていた「龍公女」に対する想いをチッカは汲んだのである――



 ……などと、回想シーンに励んでいる中、意識喪失(スリープモード)に至るマイアは墜落したので、テーバメはもう戦線離脱している。



「邪魔者はいなくなった。誇り高き龍人族よ、存分に余が相手をしてやる」

 ――ちゃきッ


 ――じゃらん、ぎゅるるるる

   しゅごおぉぉぉぉッ――



「あ……折角気合いを入れたのだがな……まぁ、祈りだけは変わらずに捧げておくとしよう」


 解説しよう。気迫(みなぎ)り、己の武器より先に剣気やら鬼気やらが入り混じり「()()()()鎮魂を伴う死闘へと誘わん」()()()激しいバトルを期待していたチッカの魔眼に映ったのは、高速で拘束され絡め取られ、上空から大地へと引きずり戻されていくノーブス・アリディフォリアの姿だった。

 これこそが「専用装備」を掻き集めた結果、チート武器と化し、出し入れも伸縮も自由自在の豚骨(トンコッツ)自慢の武器、モーニングスターの真髄である――

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