ep291 紛糾(Artectra attack)
――それはかつて、ソドムとゴモラを焼いた鉄槌である「神の火」にも似た一撃だった――
――「アルテクトラ」の凝縮した魔力は変換され、荒ぶるエネルギー塊となり遥か上空より地上へ向けて照射された。爆心地には膨大なエネルギーが注ぎ込まれ、そのエネルギーが齎す圧力は果てしない熱を生み出し、大地を融解させていった。一方で着弾地点から溢れた熱量は爆風と共に駆け抜け、辺り一面を灼けた荒野へと変貌させた。
無論、前線基地である「砦」もその半径内にあるが、予めアネサの氷魔術に拠って対策が取られた為、ほぼほぼ無傷となっている。
※「ラッピング秩序」は権能による「現象」の為、被害は皆無
そしてその「爆心地」とは紛れもない濃緑色の事であり、この一撃に因り「ラッピング秩序」内の九割方のマントデアもまた一掃されたと言っても過言ではない。
更に付け足せば、竜巻本体を構成していたオリゴチャエタですら、融解後にガラス化しキラキラと煌く大地から一匹たりとも頭を出していない。
斯くして「死の大地」と揶揄されても可怪しくない程に、生物の痕跡が跡形もなく掻き消されたのである――
「「後は……頼んだ……ぞ」」
その一言を残し、全ての魔力を消耗した「アルテクトラ」は墜落した。
これもまた事前に計画されていた事から、大地にぶつかる事なく回収されるが、アルテとエレクトラは上空で分離しながら墜落したので、「アルテクトラ」の姿を見た者は誰もいない。
特にアルキュオネは興味津々だったようだが、それは叶わなかった――
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「ヘスティ本気で言っているのか?」
「えぇ、本気なのでち」
「実力の程度が分からないのだぞ?それに……」
「アルテ殿、それについては余が保証しよう。余の魔眼に懸けて……な」
話しはブリーフィングへと戻る。ヘスティが作戦立案し提言した内容を端的に伝えるとすると、「高火力の一点集中攻撃で竜巻本体を攻撃。その後、炙り出された「シン・蟲族」ノーブス・アリディフォリアを討伐」……となる。
もちろんアルテは反対だった。その作戦が意味するのは、指揮官である自分が真っ先に戦線離脱する事になるからだ。
「指揮官たる者、最後の最後まで戦場にて戦局を見極めねばならない」と家訓でもあるのかもしれない。まぁ、シランケド。
そして更にアルテを悩ませたのが、ソレを迎撃させる者としてヘスティが挙げた名前だ。
チッカやテーバメ、アネサについては戦闘を直接見たウラノからアルテに、三人の戦闘力の高さは伝えられている。なんなら数値化されたデータすらアルテは貰っている。
ディアに至っては前回の「テラ・アルバフォーミング」時に無事生還を果たした事で、その実力を疑う事はない。ディアに関しては数値化されていないが、本当に疑っていない。ディアはただ運転していただけなのだが、それが過大評価になっているとは考えていない。
そしてディアはそんな事を知る由もない。
しかし……だ。ヘスティが挙げた二人の名前。豚骨と白湯にそこまでの実力があると、アルテは思えなかった。それも、戦局を左右する大事な戦闘を任せて足りる人物かどうかの心配すらあった。
そして、それと同時に“プレイア姉妹”は大反対だった。特に上の三人が猛反対を示した。これは偏に魅せ場から離れたくないという意志の現れなのだろうが、それ以外にも大事な局面を「有機生命体に任せたくない。しかも「獣」如きに」……という強い拒絶感から来るのだろう。
更に付け加えるとすると、この場にいる残りの“プレイア姉妹”も概ねその辺りが反対した意見のようだった。
アルテはこのエルメキアに於ける最大戦力との自負がある。それは高位高次元生命体としての矜持なのか誇りなのかは分からない。しかし自分が最大戦力と思えばこそ、自分でなければ倒せない敵がいるのであれば、自分が先頭に立ってこそ……とも考えている。
部下に任せられるなら任せても構わない……が、チームハラヘリは部下ではない。更に言えばウラノがその実力を把握しているワケでもない。
……とは言うものの、「会議は踊るされど進まず」とはよく言ったモノであり、更にナイナイ尽くしで紛糾するも、結果としてこれ以上の作戦が出る事もなく、最終的にチッカの魔眼の太鼓判によってアルテは納得せざるを得なくなった。
※“プレイア姉妹”は納得していないが、指揮官はアルテであり、アルテが決めたのなら従わなければならないのが道理である
斯くして先陣をアルテと、「家宝兵装」の中から「対軍」最大火力を誇るエレクトラが一撃離脱で決め、本命が戦場に出て来次第、チームハラヘリが対応。
神の杖での討ち漏らし掃討戦の指揮をマイア。もしもオリゴチャエタが生き残っていた場合、鳥人族が緊急発進……という流れとなったのである。
ヘスティは非戦闘員であり何も出来ないが留守になる砦が攻められた場合、命に関わる為、ディア、アネサと共に各部隊の援護担当となっている――




