第05話 友達というのも悪くない。
本来なら、そのままスルーしていただろう久堂の話。
大勢いる、顔を知ってるだけのクラスメイトが魔力酔いを起こしたってだけのことに、わざわざ首を突っ込む必要もない……んだけどさ。
残念なことに、詳しい話を聞いてしまうと多少なりとも思い入れも出来てしまうわけで。
このまま何も出来ないまま、こいつが学校を辞めさせられるってことになるってのも……なんとなく後味が悪いじゃん?
だから、適正な対価が払えるなら少しくらいは手を貸す――というか、ジョブスクロールを融通するくらいはいいかと持ちかけてみたんだけどさ。
「そうだね。
でも、もし仮に僕がダンジョンに入れるようになったとしても……君の言う【吸着器】が見つからなければ、僕は女に戻れないんでしょう?」
腕を組み、真剣な表情でそう話す久堂。
……半裸乳首絆創膏姿で。
「それだとさ。
君に払うはずの対価が……いつまで経っても用意できないことになるよね?
さすがにそれを分かっていて、口約束で『お願いします』とは言えないよ」
さっきまでの軽口はどこへやら。
何を考えていたのかと思えば妙に律儀なことを言い出す。
……半裸乳首絆創膏姿で。
ていうかさ、話の流れ的に『魔力酔いの解決』がメインになってるけど。
こいつの胸にくっついてる青い宝石。
わざわざダンジョンに潜らなくても『異世界商店』……というか、魔術都市の施設で相談すれば解決できそうなんだよな。
ほら、魔法学園の先生とか、錬金工房の師匠とか、今のところ後回しになってるけど、そのものズバリって感じの『魔道具研究所』なんてものまであるしさ。
「えっと……ちなみにだけど。
その『対価』って、お金で払うとしたら……お高いのかな?」
「んー、一番安い方法でも、1500万円?」
「想像してた金額より、二桁くらい高かった!?」
……最初にカズラさんに売った値段がそれだから仕方ない。
でも、スクロールの性能を考えれば、1億でも10億でも欲しがる人はいると思うし? 魔力適性――っぽいモノが付くだけじゃなく、コモンクラスですらマスター出来れば戦闘力が無条件で30もアップするんだから。
むしろ今だけ! 破格のサービス! なのである。
「……ごめん。
せっかくこうやって声を掛けてくれたのに申し訳ないけど、今の僕にはどうやっても対価を用意できそうにないや」
そう言って、小さく頭を下げる久堂。
……半裸乳首絆創膏姿で。
何なのこいつ? 元メスガキのくせに、変なところで義理堅いんだけど。
「なんていうか……お前って、ちょっと面倒くさいっていうか損な性格してるよな?
あれだぞ? もっとこう、カズラさんみたいに図々しく生きないとそのうちハゲるぞ?」
「どこからどうみてもカズはおしとやかなお姫様でしょうが!」
「葛、そういうところですよ?」
でもそういう奴、俺は嫌いじゃないんだよなぁ。
……もちろんカズラさんじゃなくて久堂の話な?
(半裸乳首絆創膏姿で)妙に儚げに笑う久堂に、
「はぁ……今回は商売人じゃなくて、友人として。『貸し一つ』ってことでどうだ?」
「……えっ?
君って僕のことをちゃんと認識してくれてたんだ!?」
少しだけポカンとした顔、そしてビックリしたような顔。
やがて、照れたように視線を逸らしながらぽつりと。
「……本当に、君って変な人だよね」
(半裸乳首絆創膏姿で)クスリと笑うその評定は恥ずかしそうで、でも嬉しそうで。
『友達というのも悪くない』
そう思わせる、好ましい反応を返して――
「いや、お前のその『半裸乳首絆創膏姿』がインパクトありすぎて他のことが頭に入ってこねぇわ!
とりあえずとっとと服を着ろ服を!!」
* * *
「てことで今からオマジナイを掛けたいと思います」
そう告げた俺の前で座るのは久堂と仁王院。
いやね? 二人で組んで魔力酔い克服を頑張ってたのに、片方だけどうにかするってのも……ほら、ねぇ?
だから久堂に電話で仁王院も呼び出してもらったんだよ。
ていうかこいつ、ここを飛び出していったあと。
どこで何をしてたのかと思ったら、ダンジョンモール西館の四階にあるアミューズメント施設で大泣きしながら一人スポッ○ャしてたみたいなんだけど……。
この部屋に戻ってきた時には何かをさとりきったような、『からみ○かりの最後のページの高成』みたいな顔になってたからね?
まぁそんなこんなで、二人にアイマスクをさせてスクロールを開けさせて。
ステイタスの職業欄をいじって無事、駆け出し冒険者となった二人。
「……えっと、これといって何の変化も無い気がするんだけど?」
「……」
「大丈夫だ、問題ない」
ていうか仁王院。
それでなくともお前は無駄に存在感があるんだから!
怖いから、沈黙したままで虚ろな顔をするのは止めろ!




