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第03話 「ふっ、数は力だぜ兄貴」

 そうして順調に階層を重ね、たどり着いた十四層。


「……夕霧くん、森の奥に獣や木の皮で作った『○人のテント』みたいなものがあるのだけれど」


「明石さん、このご時世に『○人』はいかがなものかと……」


「そもそも○人じゃなくて、ゴブリンの住処なんだけどね?」


「さすがに各方面からお叱りを受けそうだから、みんなで○人○人連呼するの止めて?」


 11層からここまで続いた野生動物(野生魔物?)との遭遇戦とは明らかに様子が違う風景。

 荒い木の柵で囲まれたその敷地の中には、数軒どころか数十軒のテントが並び

 焚き火の跡まで見て取れる。


「もうこれ住処っていうか村じゃん」


 これまでに遭遇した、こちらに気づいた瞬間に襲ってくる魔物とは違い。

 多少なりとも文明を感じる、生活臭のある空間に思わず面食らってしまう俺。


「夕霧さん。確かに見た目は集団で生活しているように見えるかも知れませんが、あのテントなどは『風景オブジェ』のようなものですので」


「そうね、地図に書いてある説明だと、壊そうと思えば壊せるモノらしいわね」


「この先もああいう『魔物の集落』っぽいのは何回か見かけることになるけど、中にいる集団を殲滅してしばらくすると何事もなかったみたいに壊れた建物も復活するんだよ?」


 いや、確かに魔物だってリポップするんだし、建物が直るのも不思議じゃない……のか?


「……とはいえ、あれだけのテントがあるってことはそれだけの『魔物がいますよ』って警告ですよね?」


「そうですね。

 村の近くで騒ぎを起こせば中から二百から三百程度の魔物が集まってきますね」


「さすがにその数を俺たち四人で、正面から相手をするのはキツイと思うんだけど」


「夕霧くん。ここは本来『五~十組のパーティ』で集まって挑む、集団戦訓練用の狩り場なのよ」


 なるほど、レイド戦の練習場みたいなところなのか。


「でもでも! ここには『カズ・MarkⅡ』と『サイコ・ショウコ』、それに『お兄ちゃんZ』と『シズカカスタム』もいるんだし?」


「サイコなのはどちらかと言えばあなたの方でしょうが」


「カスタムとかいう整形疑惑の出そうな呼び方は止めてもらえないかしら?」


 カズラさん曰く、『やり方次第で』どうにかなるとのこと。

 ……やり方次第。

 それは、村の中から小集団を釣り出して少しずつ削るとかそういうことかな?


「ほら、俺ってソロ活動が長かった男の子じゃないですか?

 だからパーティ単位での戦術とかあんまり知らなくてですね。

 ……できれば見本を見せてもらえると助かるんですけど」


「ふふっ、もちろん! カズにお任せっ!!」


 そう言ったかと思うと、驚くほど無警戒に歩き出すカズラさん。

 遮る木陰も少なくなり、外周を見張るゴブリンに見つかる――そう思った、瞬間とき


「ふふっ、ふふっ……ふははははははは!!」


 場違いな高笑いが、静寂を切り裂く。

 サイコ・カズラ爆誕の瞬間である。


「……じゃなくて! なに大声出して注目集めてるんですか!」


「集めてんのよ!」


 いや、そんな『当ててんのよ』みたいに言われても!


「総員火魔法用意! 準備でき次第各個で攻撃! 跡形もなく薙ぎ払えっ!!」


 まさかの放火指示。


「……ってそれだけ? 作戦とか段取りとか何にも無いんですか!?」


「大丈夫大丈夫! これで一割くらいは倒せると思うから!」


「残り九割をどうするんですか!?

 ていうかカズラさん、森林地帯では使うタイミングがなかった覚えたての魔法を使いたかっただけですよね!?」


 任せたからには従わないとしょうがないので、俺も一緒になって火魔法――バレーボール大の火球を集落に向かって撃ち込む作戦に参加する。


 まるで可燃物のように盛大に燃え上がるテント。

 あっという間にそこかしこと燃え広がり、炎と絶叫に包まれる集落。

 全身火達磨になり、転がりまわるゴブリンたち。


「絵面がひどすぎる!

 正義の探索者がやる行為じゃねぇなこれ!?」


「お兄ちゃん上等兵! しょせん戦争など勝てば官軍なのだ!」


 『第一回ゴブリン集落の戦い』は、こうして最初からクライマックスで幕を開けることとなる――



「いや、思った以上に減らせたとは言え、結局全員で刃物を振り回しての乱戦!

 最終的にただの力技で千切っては投げ千切っては投げしただけじゃないですか!!」


「ふっ、数は力だぜ兄貴」


 こいつ……一度お尻ペンペン、むしろお尻パンパンしてやろうか!?

 まぁ狩りの効率としてはかなり良かったから文句は無いんだけどな!!


* * *


 さて。そんなこんなで、誰も居ない『裏・第14層のゴブリン集落』でレベル上げと、スライム素材集めを兼ねたジョブ経験値稼ぎに勤しんでいた俺たち。

 五月の後半に入った日曜日のある朝、いつものようにダンジョンゲートをくぐろうと思ったところで――


「あれ? 仁王院と久堂じゃん。

 朝っぱらからそんなとこで寝転がって何してんだ?」


 真っ青な顔をした二人が地面で虫の息になっているのを発見する。


「……ん……おお……か、柏木……か……」


「なに……って、逆に、ここで転がってる……理由に、魔力酔い……以外の何があるっていうのさ……」


 そう言えばこの前の表彰式の時、一歩出遅れてるとか言ってたような……。


「いや、出遅れてるどころかまだスタートラインにすら立ってねぇじゃん!」


 えっ? もう入学して二ヶ月近く経つよね?


「ショウコさん、魔力酔いの克服ってそんなに掛かるものなんです?」


「そうですね、どの程度の時間ダンジョンの中にいたのかわかりませんが、さすがにここまで重度の魔力酔いを発症してるとなると半年、一年と掛かってしまうかも……」


「ていうか迷宮科って、一年の一学期中に一層で戦える程度に動けないと退学になるんだよ?」


「うぐっ……」


「それは……」


 それでなくとも体調不良の二人に追い打ちをかけるカズラさんだった。

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― 新着の感想 ―
カーズ様「勝てばよかろうなのだァァァァ!!!!」
ペンペンもパンパンもご褒美でしかない面子なんですが
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