第03話 『シュトゥルム・イーゲルっ!!!』
いきなり婚約者が三人も増え「四人だから! お兄ちゃんの婚約者は四人いるから!!」……三人+α増え。
それで俺の私生活に何か変わったのかと言えば――
「殿方と添い寝するというのが、これほど心を満たす行為だとは知りませんでした」
たとえば寝る時に、明石さんだけではなく中務さんも「夕霧くん?」「夕霧さん?」……シズカさんだけではなくショウコさんも俺の部屋にくるようになったり、全員を苗字ではなく名前で呼ぶようになったり……うん、結構な変化があったな。
一方、お仕事というか毎日のダンジョンアタック。
こちらは管理局職員の立場はそのままに、ショウコさんがパーティに加わって四人体勢になり、
「こうしてまたショウコと一緒にダンジョンに入れるようになっただけでも、ギルドを抜けてきた甲斐があったわね!」
見えない尻尾をブンブン振っているかのような、ご機嫌なカズラさんが先頭で暴れ回る。
「いや、前にも言いましたよね?
階層攻略中は、カズラさんはあくまで付き添い引率おばさんですからね?」
「おばさんじゃなくてお姉さんだからね!?」
もちろん、ショウコさんの加入に合わせて彼女の装備品――ついでにカズラさんにも俺とシズカさんが使っているモノと同じ鎧を用意。
さらに、ショウコさんには新しく『ドワーフ鋼の薙刀』を一本。
狭い場所でも使えると武器として、彼女からリクエストがあった『サイ(両側に鉤爪が付いた短剣)』も二本プレゼントしてある。
「いいなぁー、カズもカッコいいサブウエポンとか欲しいなー。
チラッ☆ チラッ☆」
……いつもよりテンションが高く、とてもウザいカズラさんである。
「といいますか葛。
あなたが夕霧さんから追加で受け取ったスクロール代の支払いはいつになるのかしら?」
「どうしてショウコまでカズを他所の子扱いするのかな!?
カズもちゃんとお兄ちゃんのお嫁さんなるから!
これからは無料! 無料だから!」
「寝言は寝て言え?」
「うがーーーーっ!!」
まぁカズラさんが今以上に強くなってくれれば、一緒にいるみんなの安全マージンだって上がることだし。
さすがにこれ以上搾り取るつもりはないんだけどね?
資金面に関しては、鷹司家との『ポーションや入浴剤』、六条家との『各種魔物素材(鞣し革や食材)』なんかの取引だけで十分潤ってるし。
ていうか、今さらだけど錬金工房で作れるようになった合成アイテムなんだけどさ。
美容入浴剤は素材が『こちらのダンジョンで入手したスライム・ローションのみ』なので、異世界商店の購入枠を消費しないんだよ。
逆に、美容整形入浴剤は『向こうで購入する必要のある中級HPポーション』を使うため、こちらは通常の購入扱いとなっている。
つまり、管理局では二束三文にしかならないスライム・ローションっみたいな素材でも、錬金工房で加工すれば大儲けできる可能性だってあるのだ!
もっとも今のところ鷹司家で取り扱ってるポーション類と美容整形入浴剤の稼ぎが大きすぎて、六条家との取り引きは誤差みたいな金額だけど……。
* * *
さて、話は変わって……いや、別に変わってもいないけどダンジョンの話。
10層の階層主である、
【皇帝土竜 レベル15 戦闘力:180】
を撃破して到着した11層。
それまでの『いかにもダンジョン!』という感じの地下洞窟とはうってかわって森林地帯。
ちなみにボスモンスターを名乗ってた皇帝土竜。
字面だともの物凄い強敵っぽいけど、その実体は『牛サイズのモグラ』だった。
モグラ、小さいのはつぶらなお目々と大きなお手々で可愛い……いや、小さいのもそこそこ気持ち悪いし触ろうとも思わないけどさ。
「とまぁそんなことはどうでもいいとして」
「何がそんなことなのかまったくわからないのだけれど……」
森林地帯に変わり、出てくる魔物も『サイズのデカい昆虫』とかいう気持ちの悪さ全振りの生き物から、見慣れた動物――もちろんこちらも大きかったり、素早かったり、力が強かったりするのだが――ということもあり一安心。
・11層
【爪兎 レベル13 戦闘力:120】
【牙栗鼠 レベル13 戦闘力:120】
【森林大蛇 レベル14 戦闘力:140】
「兎と栗鼠に関しては体が小さくて素早いから戦闘力以上にめんどくさいな」
「確かにスライムとかと比べれば随分と早くはなってるよね!」
もちろん、戦闘力の差が三倍ほどもあるからそれでどうにかなることは無いんだけど……喉に食い付かれたりしたらワンチャンクリティカルヒットも有り得るのかな?
「何よりも、小動物なのに顔にも姿にも可愛らしさの欠片すらないのが納得いかないわね……」
「大蛇に関しましては巻き付かれさえしなければただのザコでしたね」
カズラさんがわざと体に絡みつかせ、締め付けてくる蛇を引きちぎったのにはちょっとだけ興奮した。
・12層
【角猪 レベル14 戦闘力:150】
【赤狐 レベル14 戦闘力:140】
【緑狸 レベル14 戦闘力:140】
「角のある猪……体の大きさ的に、猪って言うより毛の生えたサイでしょあれ」
「あの巨体と突進力、どう考えても森の中ではなく草原で暮らすべきよね」
「確かに、ちょっと走るだけで木にぶつかりまくってたもんね?」
「それを言うなら、赤い狐は砂漠で暮らすべきでは?」
緑の狸の方は普通にカモフラっぽかったけど。
てか赤いき○ねと緑のた○きって……帰りにど○兵衛買うか。
あと、大蛇と猪がややこしい。
・13層
【灰色狼 レベル15 戦闘力:170】
【雷箆鹿 レベル15 戦闘力:180】
【突撃針鼠 レベル15 戦闘力:160】
「狼が思っていた通りの狼でカッコよかった!!」
「箆鹿は名前に雷って付いてるから魔法でも使うのかと思えば、角の形が落雷みたいな形だからなのね」
「その角が大きすぎて木にひっかかりまくってましたが……。
いまさらですがこの森林で暮らす動物、進化の途中で淘汰されそうな存在が多すぎではないでしょうか?」
「お兄ちゃん、いつもみたいにポーズを決めながら『シュトゥルム・イーゲルっ!!!』て叫んでも良いよ?」
確かにちょっと声に出したい名前ではあるけれども!
ていうか、魔物の名前のルビが英語だったりラテン語だったりドイツ語だったりするのは何なん『私の趣味ですが何か?』……メルちゃん!?
生きとったんかワレ!!




