第03話 夜中のうめき声と異世界商店。 その2
『異世界商店』のウィンドウは立ち上がったもののなんとも言えない徒労感にうなだれそうになる俺。
もちろん、変化があったのはその呼び出し方だけではなく。
「向こうじゃ普通にAmaz○nとか楽○みたいなネットスーパーだったのに。
なにこのデフォルメされた都市マップとSDキャラ……?」
いきなり現れた『エロゲのアドベンチャーパート』みたいな画面にただただ困惑する。
「ちょっと誰か詳しく説明して?
最低限のチュートリアルくらいは欲しいんだけど!」
:では、僭越ながら。
……えっと、これって俺の問いかけに答えが返ってきたってことでいいんだよな?
「てか、まさかの音声入力対応!?」
:逆に聞きますが、この状態でキーボード入力が可能だとでも?
もちろん思ってないけどさ!!
「ええと、早速だけどこの画面は一体どういうことなんだ?
イスカリアで使ってた『商店』とはまったく違うんだけど」
:【異空間倉庫】や【鑑定】と同じです。
あなたの二度目の異世界転移により、機能がアップデートされました。
商店要素皆無じゃん! ただの地図じゃん!
もしこれがアップデートなら、ベクトルの方向性が間違いすぎてるだろ!!
「さっきステイタスで見た説明だと、取引先は【イスカリア】に設定されてるって書いてたんだけど、この地図は」
:あなたが最後に滞在していた【城塞都市ディール】ですね。
「ならこの裸の大将みたいな、ランニングシャツに短パン、丸坊主のチビキャラは?」
:あなたの分身です。
お、おう。そうなんだ。
……いや、俺ハゲてねぇわ!
「ここがディールなら、俺が買った店があると思うんだけど?」
:あちらからの転移時、【管理者】によりすべて初期状態にリセットされました。
あいつ、マジあいつ……。
「今の『あっちの俺』の情報は見れる?」
:もちろん可能です。
画面左上に表示しますね。
【カシワギ・ユウギリ】
商人ランク:露天商
魔石容量:0
一月の購入可能品数:20/20
現在地:パルティア王国・城塞都市ディーレ・南門前
思った以上に情報が少なかった。
「えっと、『商人ランク』から詳しい説明をしてもらってもいいかな?」
:わかりました。
商人ランクとは……まあ、そのままですね。
あなたの商人としての【格】を表しています。
最初は【露天商】から始まり、【行商人】、【商人】、【商隊】、【商会】とランクアップしてください。
『出来ます(お願い)』じゃなくて『してください(命令)』なんだ……。
:次の【魔石容量】も……読んで字の如くですね。
あなたが保有する【魔石】をインベントリ経由で異世界商店と共有することができます。
この世界では何をするにも魔石が必要ですので、ご留意ください。
俺が向こうにいたときは、普通に金銀銅貨で買い物してたんだけどなぁ。
:その下の【一月の購入可能数】は……言わなくとも分かりますよね?
あなたが異世界商店で、その月に取引できる商品の上限です。
背負子や荷車、倉庫、店舗などを購入することで上限を増やすことも出来ます。
……イスカリアで何が買えるのかは分からないけど、最優先で拡張しなきゃ駄目な項目だな。
:最後の【現在地】については……説明いります?
ちなみに、他の街に移動するには商人ランクが【行商人】以上である必要があります。
なんにせよ当分はディールで地道にやるしかないってことか。
「説明ありがとう。
次はこの街で取引できる商品の一覧を出してもらえるかな?」
:現在取引先が開拓されておりませんので取引できる商品はありません。
「あっ、そうなんだ? じゃあ取引先の一覧を」
:チュートリアル中はオート進行不可です。
頑張って街の探索をして見つけてください。
何そのめんどくせぇソシャゲみたいなシステム……。
さっそく頑張って街の中を駆けずり回り――とも思ったけど、
『それ、別に今する必要なくね?』
と、思いいたり。
結構な時間がかかりそうだし、夜でも出来ることを明るいうちにするとかもったいないじゃん?
「いろいろとありがとう。
えっと、今さらだけど……あなたには名前とかあるのかな?」
:私の名前はメルクリウスです。
お気軽にメルちゃんと呼んでください。
「ああ、祝福と同じ名前――いや、メルクリウスって神様だよね!?
そんな、愛称で呼ぶような存在じゃないよね!?」
:私は神ではないです。
……深く質問するのも怖いので気にしないでおこう。
今の俺に一番必要なのは何か? それはもちろんお金!
てことで、お金を稼ぐための方法――ダンジョンのことを調べるために図書館を探しに……いや、別に図書館じゃなくても普通に本屋で十分か?
ここから一番近い繁華街……皇子はあまりよくしらないし南波かな?
大通り――未道筋をキタに進めばそのうち着くだろう。
もし何もなければ埋田まで出ればいいし。
……もちろん電車代なんて使う余裕はないから徒歩でな!
今日は昨日より遠出になるので、アパートの前でセーブポイントの設定……一番近い電信柱に記載されている住所をメモしておく。
これで迷子になっても交番に駆け込めば道案内くらいはしてくれるだろう。
途中、黄色い看板のスーパーで惣菜パンを二つとお茶を購入。
仕方がないとはいえ、こういう細かい出費が結構痛いんだよなぁ。
「まぁナンバまで出るまでもなく、道沿いにそれなりの大きさの本屋があったわけだが」
部屋を出てから徒歩十五分ほど、目的地である本屋を発見!
……いやここ『ヒデヨシ書店(肌色過多な本屋さん)』じゃねぇか!!




