第01話 「成人年齢がいくつかはご存知ですよね?」
さて、そんな明石さんの話の続き。
というか明石さんの姉の話の続きだな。
「彼女にはどうやら婚約者がいらたしく、すでに結納まで済ませていたようでして」
「明石さんのお姉さんなら見目も良かったでしょうし、別におかしなことじゃ……いや、そんな状況で蠱毒の症状が出たら――」
「そうですね。当然のように相手方から
『そんな穢らわしい娘を家に入れることなど出来るか!!』
と婚約を破棄されました」
「……でしょうね。
といいますか最悪の方法で妹の邪魔をしたわけですし。
本人が同じ目にあったとしても『へぇ』としか思わないんですけど……それってこちらに何か関わってきたりします?」
「今のところ問題はないのですが、知っていたはずの妹――静さんのことまで今さらのように持ち出しているみたいでして」
『本当は姉の方も最初から病気だって分かってたんだろう!
そんな女を押し付けようとは一体どういう了見か!!』
などとゴネだして。
結納金の返還だけでなく、かなりの額の慰謝料のまで請求してるようだ。
「弱った相手からとことんまでむしり取ろうとするその行為が貴族らしいっちゃ貴族らしいですね。
ていうか明石さん家ってそれを問題なく払えるくらいの資産があるの?」
「それでなくとも父の代に変わってからは家業の方もうまく回っていなかったのに、とてもそんなお金が払えるとは思えないわね。
というより、結納金も使い込んで返せないと思うわよ?」
「何その自転車操業。
ていうか、そんな状態の実家にもし今の明石さんの話が入ったら……」
「間違いなく、どこぞの金持ちのヒヒジジイの後妻として売られるでしょうね。
ああ……なんて可哀想な私……。
その前に、どこかの王子様が純潔を奪ってくれないかしら?」
首にぶら下がりながら上目遣いで見られても……。
「……まぁ小娘の戯言はどうでもいいとして。
そのような状況ですので、もしも柏木さんが彼女を側においておきたいと、妻の一人として迎えたいとお考えなら早急に手を打っておく必要があると思います」
「いや、妻の一人って……。
俺、お貴族様じゃなくてただの平民なんですけど」
「そのへんは『鷹司』でどうにかするから大丈夫だよ?」
「まったく安心できる要素のない大丈夫ありがとうございます」
ていうか俺的に明石さんは嫁っていうより妹枠なんだけどなぁ。
もちろん、すでに一緒に暮らしてるみたいなもんだし?
黙ってどっかに行っちゃったりしたら、寂しくて十年くらい立ち直れないと思うけどさ。
「それにしても嫁……結婚かぁ。
年齢的にまだまだ先のことだと思ってたんで、まったく実感が無いんですよねぇ」
「えっ? お兄ちゃんってもう元服してるんだよね?」
「戦国武将じゃあるまいし元服って」
「といいますか柏木さん。
知り合った当時から『なんとなく会話が食い違っているような?』と思うことが多々あったのですが……成人年齢がいくつかはご存知ですよね?」
「えっ? 二十歳ですよね?」
「あー……やはり……」
『えっ? こいつ本気で言ってるの?』みたいな顔をするカズラさんと、さもありなんな表情の中務さん。
「柏木くん、あなたはどうして15歳になればダンジョンに入れるのか知ってるかしら?」
「んー、なんとなくキリの良い年齢だから!」
「違うわよ……15歳が成人だからよ」
……えっ? マジで?
「てことは俺ってもう成人してたの!?
まだ旗指し物を背中にたなびかせて、盗んだバイクに跨って夜の学校の窓ガラスを壊して回ったあと紐無しバンジーとかしてないんだけど!?」
「それはいったいどこの国の儀式なのよ……」
もちろん修羅の国である。
「それにしても成人かー。
てことはお金が介在するお店でお姉さんといちゃいちゃしたりとかも出来「そのようなことをする必要はありませんが?」……ですね」
いいじゃん!
ちょっとはっちゃけるくらいいいじゃん!!
「ていうかそれならそれでもっと早く教えて下さいよ!」
これまで俺が、中務さんが未成年者との淫行で捕まらないようにどれだけ気をまわしてたか!
「えぇ……それは私のせいなのでしょうか?
それに、あれはいろいろと先送りにするためのあなたの言い訳だと思ってましたので。
といいますかこれまで、柏木さんは口ではグイグイとくるのに、いざとなったら一歩を踏み出せない意気地なしだと思っておりました」
「その判断は正しいけど今日は口が悪いですね!?」
「ふふっ、これまであなたに散々弄ばれてますので。
ということで、これから二人でお出かけ――」
「柏木くん、今は私と契を交わすお話の途中なのだけれど?
さぁ、何の問題も無くなったのだからお布団に入ってまぐわいましょう」
「してたのは明石さんの『実家の』話だけどね?」
……そこから数時間掛けて明石さんの自由を勝ち取るための悪巧みをした。




