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第07話 「……そこは三人で『Φ(ファイ)の字』、になるべきではないでしょうか?」

 どこからどう見ても劇薬でしか無いようなものをいきなり女の子に使わせるわけにもいかないので、まずは『俺の体を使った治験じんたいじっけん』から。

 ちゃんと錬金術でその性質が変化してるのは分かってるんだけどね?

 酸性泉どころか酸を混ぜた風呂に入るのはさすがに抵抗が……ねぇ。


 バスタブに洗面器を浮かべ、溶け出す、煙が出る、おかしな臭いがするなどの変化が起こらないか目を皿のようにして観察。

 ……半時間待ってもこれといった異常はナシ。

 意を決していよいよ入水開始っ!!


「まぁ浸かってしまえば肌がピリピリするわけでもない普通のお風呂なんだけどさ」


 肌の傷よ消えろー。

 美白効果でくすみ除去ー。

 このさいホクロも消えてしまえー。

 まつ毛クリン、眉毛は柔らかい猫っ毛ー。

 ムダ毛は……一回全身ツルツルにするのも面白そうかなー?

 てか育毛効果があるなら、一度くらいはロン毛にしてみるのもいいかもー? 


 などと、つまらないことを考えながら顔、そして頭に洗面器でジャブジャブとお湯を掛ける。


 ……まぁあれだ

 目に見えて髪の毛がぐんぐん伸びてるし、肌もツルツルになった。


「いや、育毛ってこんな目に見えて伸びるものなんだ!?

 てか○ン○ンの見た目が完全に赤ちゃんでむっちゃ恥ずかしいんだけど……」


 もちろん誰かに見せる予定は無いんだけどさ。

 体に変化が起こるごとに、目に見えてお湯が汚れていってるのはタンパク質が溶けているからだろうか?

 風呂から出て、洗面台上の鏡で自分の顔を確認すれば――


「……髪の毛が伸びたってのもあるんだろうけど、眉毛とかまつ毛をいじっただけで顔ってこんなに変わるものなのか」


 かなり中性的な雰囲気を漂わせる自分の顔があった。

 地味系の俺でもこれだけ変化するんだから、これは確かに【美容整形入浴剤】だわ……。



 風呂上がりは明石さん家で晩ご飯。

 最近は中務さんが忙しいので、代わりに彼女が料理をしてくれているのだ。


「おお! 今日はしゃぶしゃぶ!

 カズラさん、俺のインベントリにソルトゴーレムの塩とマーマンの切り身から合成した『魚醤ガルム仕立ての海鮮しょっつる鍋』があるんですけど出しましょうか?」


「カズはそれは食べないって言ってあるよね!?

 ていうか調理したじゃなくて合成したってなんなのかな!?

 そもそも、地底湖産の魚人と海老人の身は海鮮じゃない――」


 そう言いながらこちらを振り向いたカズラさん。

 お茶碗にご飯をよそおうとしていた明石さん。

 白菜を鍋に投入中の中務さんの動きがピタリと止まる。


「えっ? お兄ちゃん……だよね?

 えっ? 何その髪の毛!?」


「髪が長くなったことも驚きましたが。

 柏木さんの全身から抗いがたい色気のようなものを感じるのですがいったい何事なのでしょうか?」


「柏木くん、とりあえずベッドルームに行きましょう」


 どうやら知り合いが見ても驚く程度には変化があったらしい。

 こちらをガン見する三人をスルーして席につき。

 「いただきますと」手を合わせてお肉をしゃぶしゃぶする。


「うん、牛肉も悪くないけど、しゃぶしゃぶは豚バラが最強!

 ていうか豚の脂とポン酢が染み込んだ米が最強!」


「お兄ちゃんはどうして何も無かったかのようにご飯をかきこんでるのかな!?

 ほら、みんなの視線をちゃんと感じて?」


「もちろん見られてるのは分かってますけどね?」


「……柏木さんのそれはこれまでも使っているスライムローションの効果――だけでは無いのですよね?」


「もちろん! といいますか、スライムローションから新たに【美容入浴剤】というのが出来まして」


「言い値で買い取りましょう」


 食い気味に返事をする中務さん。


「待って、いろいろと待って。

 えっと、スライムローションの効果って何?

 っていうか美容入浴剤? とかいうので髪の毛が伸びる意味がわからないんだけど」


「ああ、これは美容入浴剤じゃなくてその上位アイテム。

 【美容整形入浴剤】の効果ですよ?」


「そちらも言い値で、むしろイイネ! で買い取りましょう」


「ショウコ、話がすすまないからちょっとだけ黙っててもらえるかな?

 詳しく! スライムローションのくだりからもっと詳しく!」


「あっ、カズラさんには何の関係もない話ですので」


「だからどうしてお兄ちゃんはすきあらばカズだけ仲間ハズレにしようとするのかな!? かな!?」


 桜花爛漫の連中とのことがあってから、カズラさんもちょっとだけ性的な目で見れるようになったし別にいいんだけどさ。

 そう、俺のストライクゾーンは下はマイナス一歳! ……ないし二歳。

 もしかしたら五歳くらいまでは行けるかも……いや、今の齢でそれはさすがに無いな。

 でも、年上に関しては上限知らずだからね!


 ということでスライムローションの効能。

 短期間(数日)、少しの美容、美髪効果。


 続いて美容入浴剤の効果。

 中期間(数週間)、それなりの美容、美髪、美白効果。


 そして最後に美容整形入浴剤の説明をする。


「お風呂に混ぜて浸かるだけで傷跡が消えるとか意味がわからないんだけど……。

 古傷の治療とかダンジョンから見つかってるポーションでも不可能だよ?」


「それよりも発毛・育毛効果と脂肪燃焼効果の方が……。

 お風呂に浸かるだけでダイエットとか全女性の夢なのですが」


「ムダ毛の処理、これまで蓄積されたお肌の紫外線ダメージすら回復……。

 あれ? それって皮膚病どころか皮膚がんの治療効果もあるんじゃない?」


「シミやホクロ残したい体毛の場所まで自由自在……。

 国内の美容外科が全滅してしまいますね」


「不老どころかほとんど若返りと言えるほどの性能……」


 顔を引き攣らせながらもその目を爛々と輝かせる二人と、


「柏木くん、そろそろお腹もいっぱいになったわよね?

 後片付けは彼女たちに任せてそろそろお布団に行きましょう?」


 ハァハァ言いながら俺の膝に摺りつく明石さん。


「いや、どうして一番興味を持たないといけない明石さんがまったくの無反応なんだよ……」


「だって今の私の頭の中はどうやってあなたとエッチなことをするかしか考えてないもの」


「それでいいのか女子高生!!」


 ……まぁ彼女の表情を見ればそれも全部冗談――半分冗談というか、不安の裏返しだってことはわかるんだけどさ。


「一応先に俺が試してあるし、おかしなことにはならないと思うよ?」


「……別に、そんなことの心配はしていないわ」


 そのまま俺の腹に顔を埋める明石さん。


「……もしも私が元に戻ってしまえば。

 あなたの態度が変わってしまいそうで怖いのよ」


 ああ……なるほど。

 綺麗になった彼女にこれまでの恩を押し付けるようにしてその体を自由にさせろとか言い出さないか心配してるのか。


「……あなたのその顔は絶対に何か勘違いしているわよね?」


「心配しなくても、これからはちゃんとした距離感で」


「だからそれが嫌なのよっ!

 私は……私は今のままが良いの!

 こうやって気軽にあなたに甘えられて、あなたに抱きしめられて、毎晩可愛がられる……今のままが良いのよ!!」


「言い方っ!!

 確かに毎日同じお布団で抱っこして寝てるけれども!

 やましいことは何もしてないよね!?」


「あら、私はあなたが寝たのを見計らって毎晩握っているのだけれど」


 何を!?


「お兄ちゃん、世間一般では未婚の男女が同衾している時点で言い逃れが出来ないレベルでやましいことなんだけど」


「柏木さん、それってつまり私がそこに参加しても大丈夫ということですよね!?」


「……私のことを真ん中に挟んで川の字……PIの字で寝るというのなら許すわ」


 いや、PIってどういう状況……ああ、明石さんが俺のことを足で挟み込んでるんだ?


「……そこは三人で『Φ(ファイ)の字』、になるべきではないでしょうか?」


「あなたが後ろならそれでもいいわよ?」


「そこは日替わりでしょう!」


「いや、一緒に寝るとは一言も言ってないんだけどね?」


 そもそも『ファイの字』っていったい何なんだよ!!

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ユア ネクスト ファイズ‼️
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