第07話 誰も居ぬ間に錬金術!
カズラさんと、桜花爛漫の連中の護送をお願いしていた探索者が地上に戻ってきた次の日の中務さんの部屋。
朝ごはんをご馳走になっていたところ、
「お兄ちゃん、約束を反故にしちゃうみたいでもうしわけないんだけど……明日から少しの間バタバタしちゃうと思うから、カズは一緒にダンジョンに入れなくなっちゃいます」
「柏木さん、私の方も暫くの間は管理局職員の粛せ……コホン、オイタをした職員を『コツン☆』とする必要がございますので窓口業務には出られないと思います」
申し訳なさそうにそう告げるカズラさんと中務さん。
二人が何が言いたいかと――
「お兄ちゃんの初めて(の階層主クリア)はカズとじゃないとダメっ!!」
「もちろん柏木さんと明石さんの力は存じておりますが……何かのイレギュラーがあった時「肉壁」となる人間が居ないのは心配でなりません。
あっ、分かっているとは思いますけど、無理をなさってあなたが死ぬようなことがあれば私も後を追いますので」
……まとめると『ちょっとのあいだ待っててね』とのこと。
まぁこっちはこっちで新しく購入した、
【調合助手】
【魔術師学校の劣等生】
【調整師】
の、3つのアンコモン・クラススクロール。
その他諸々の経験値をマックスまで上げたいから良いんだけどさ。
てか魔術師学校の劣等生のルビ、いろんな意味でそれは大丈夫なのか?
……ちなみに某所で入手した【指先の魔術師】の上位ジョブは【性技の味方】だったよ!
……まぁそんないつ使えるのかわからない技術の話はさておき。
先にでた3つの魔法系ジョブ。
その中でも【調合助手】をマスターしたときに使えるようになった【錬金釜】っていうスキルなんだけどさ。
「師匠、これってどういう風に使えばいいんですかね?」
『んー、そうだね。
釜だから煮たり炊いたり茹でたり?』
「でしょうね。 ……じゃなくてですね!
もう少しこう、具体的にお願いします!」
『んー、そうだね。
たとえば今キミが持ってる素材で【スライム・ローション】ってあるでしょ?』
「ほぼ使い道が無くて、そのままお湯に溶かして入浴剤になってますけど持ってますね」
『まぁ美容効果もあるし、それはそれでアリな使い方だけど……ためしにそれを錬金釜に入れてごらん』
それは一体どうやって……あっ、デフォルメされた大きな釜の絵とアイテムリストが出た。
さっそく釜の中にドラッグ&ドロップ!
「……とくに何も起こりませんが?」
『キミねぇ。そこにあるのは錬金釜だよ?
かき混ぜもしないで一体何が出来るって言うのさ?』
いや、そんなシステム知らねぇよ……。
言われた通り、指先で釜の中をグルグルグルグル――
「おおっ! 【美容入浴剤】が出来ました!」
『おめでとう。……って感じに使うんだよ。
もっとも、【錬金工房】が無ければ混ぜられる素材は二種類までに限られるから、それほど大したものは作れないんだけどね?』
「なるほど」
……というかその、『二種類まで』という制限がなかなかのクセモノで。
たとえばスライムローションから作れる美容入浴剤。
これをさらに改良するためには、溶剤となる【スライムウォーター】を混ぜないといけないんだけど……。
「えっと、何かにスライムウォーターを入れると他のモノが入りませんよね?」
『そうだね』
「えっと、錬金釜って単品ではほとんど無意味な気がするんですけど」
『その通りだね』
それもう最初から錬金工房だけでいいじゃん!!
「……ちなみにですけど、【調合助手】の上の資格を取ろうと思ったらどうすれば?」
『もちろん錬金に励んでもらうしかないよ?』
「それは……この錬金釜で?」
『頑張ってアイテムを1000個制作してね!』
何その賽の河原……。
* * *
スライムローションから作れる【美容入浴剤】。
洞窟狼・蟻・大蜥蜴などの皮・甲殻にスライムウォーターを混ぜて作る各種【鞣し革】。
延々と、ただただ延々と。
指先で錬金釜を混ぜ続けること数時間。
「柏木くん。もしかしたら私の勘違いかもしれないのだけれど。
あなたがさっきからヤッている行為って、突起物をこねくり回すイメージトレーニングということで合っているわよね?
それならそれで、ここに実物があるのだけれど……どうかしら?」
「何が『どう』なのかまったくわからないけど。
もしも仮に女の子が一緒にいる部屋でそんなイメトレを始める奴がいたら、気付かれないようにそっとその場から離れるべきじゃないかな?」
そもそもそんな楽しそうな行為だったらこんな死んだ目になってないんだよなぁ……。
ていうかアイテムの移動もだけど、この混ぜるという地味な行為がすげぇ面倒くさ――
『ああ、2回目からは錬金釜に複数投入&オートぐるぐるが出来るよ』
……そういうことは俺の腕が筋肉疲労でプルプルと震えだす前に教えてくれないかな!?




