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第03話 「大丈夫、この階層、この階層だけだからっ!」

 新しい両手剣おもちゃを持ってご満悦の……いや、薄笑いを浮かべながら出会う魔物出会う魔物すべてに突貫していくその姿は○○○○に刃物なんだけどさ。


「カズラさん、最初に腕組みしながら付いてきてくれるだけでいいって言いましたよね?」


「大丈夫、この階層、この階層だけだからっ!」


 ……まぁそのまま


・5層

 【小さな巨人リトルトロル レベル7 戦闘力:70】

 【邪妖精エビルフェアリー レベル8 戦闘力:70】

 【土蜘蛛ツチグモ レベル9 戦闘力85】


・6層

 【洞窟蟷螂ケイブマンティス レベル8 戦闘力:90】

 【コボルト古種エンシェントコボルト レベル9 戦闘力:95】

 【洞窟蝗ケイブロウカスト レベル10 戦闘力:80】


・7層

 【偵察蟻スカウトアント レベル9 戦闘力:100】

 【働きワーカーアント レベル10 戦闘力:105】

 【兵隊蟻ソルジャーアント レベル11 戦闘力:115】


 と、まるで記憶メモリアルのように駆け抜けたわけだが。

 なんかこう、洞窟にいるから頭に洞窟って付けとけばいいだろうというやっつけ感。


 ていうか虫っ! 胴体がふにふにしてそうな虫とかマジ勘弁!

 デカい蝗が10匹以上で顎をギチギチ言わせながら飛びかかって来るのとか、どんなホラー映画より恐怖映像だから!


 それを考えるとダンゴムシとかアリは……いや、ダンゴムシもひっくり返った姿はたいがいなんだけどさ。

 かと思えば気持ち悪いの代表のはずの百足。

 デカくなった途端、一周回ってなんかカッコよく見える不思議。



「フッ、まさか2日で7層を突破してしまうとは……さすがねお兄ちゃん」


「いや、今日一日、機嫌良さそうに暴れ回ってたのはカズラさんだけでしたけどね?」


「あなたはいったい何をしているんですか……」


 呆れ顔の中務さんからソッと目を逸らすカズラさん。

 まぁあのまま俺が魔物の相手をしてれば、6層で探索者生命が絶たれてたと思うからありがたかったんだけどさ。


 繰り返す、マジでカマキリとかバッタとか無理!!

 ショウリョウバッタとかあの顔、絶対に宇宙生物だろ!?


* * *


 その日も誰も怪我をすることなくダンジョンから無事帰還。


「ちょっと食欲があまりありませんので今日は串カツで……」


「お兄ちゃん、食欲のない人は揚げ物は食べないんだよ?」


 おかしな彼との夕食後、従姉妹ショウコの部屋で液状化した猫のような姿勢でソファに寝そべるカズ。

 さすがに三日も続けて12時間近く――12時間以上ダンジョンを走り回ってたら疲れもするわよね。


 ……まるで初めてダンジョンに入った時みたいに毎日が驚きの連続で、楽しいしかないこんな気持はいったいどれくらいぶりだろう?


「あなたの仕事は柏木さんをキャリーすることではなく見守ることだったはずよね?」


「それはそうなんだけどね?

 でもほら、あの二人って最初にショウコが言ってたように銅級くらいの力はあるみたいだし?

 いまさら下層階で様子見させたってしかたないかなーなんて?」


「……本当のところは?」


「新しくもらった両手剣を振り回すのが楽しすぎて我を忘れてました☆」


「……まったくあなたは。昔から何も変わらないんだから」


 呆れ顔で、でも何かを懐かしむように。優しい笑みを浮かべるショウコ。


「それにしても、柏木さんの使っているドワーフ鋼の長剣もたいがいな代物だったんでしょう? 今日受け取った――そういえば代金はまだ貰っていなかったわね」


「い、いますぐネットバンクで支払いするよっ!!

 ……ていうかお兄ちゃ――夕霧くん。

 なんだかんだでカズに惚れてると思わない?」


「何をどうまかり間違えればそのような結論になるのですか……」


 だって……ねぇ?

 カズがこれまで使ってた戦斧。

 世間では『大惨事カタストロフィ』なんて呼ばれてたんだけど、アレと比べても――いえ、最初から比べ物にはならないんだけどさ。


「ショウコはカズの戦斧の値段がいくらするか知ってる?」


「知るわけ無いでしょうが」


「あれ、もしオークションにかければ国内なら200億、英国や独逸ならその倍くらいの値段がつくんだよ?

 それなのに、彼が用意してくれた両手剣――アダマント合金とかいう聞いたことのない金属製で、付与っていうのが3つも掛かってる、それこそ値段の付けられないようなモノなのに……たったの25億だって言うのよ?

 そんなのもう……結納品みたいなものじゃない!?」


「なんですかその女子中学生きむすめのような考え方の飛躍は……。

 といいますか、それは大きな勘違いです。

 もしも私を通しての商売なら、最低でも5000億程度の値付けをしたはずだから」


「どうして他人である彼の言い値より身内のはずのショウコの売値のほうが高いのかな!? かな!?」


「……はぁ、魔法――小回復の時もそうでしたが、彼はその希少性を無視して仕入れ値だけで値付けをしてしまいますからね。

 といいますか、あなたのことも私の身内という意識があって査定が甘くなっているみたいですし。

 以降はどのような小物であろうと、私が間に入るようにしないと。」


 なんなのよその「でなければ、第二、第三のあなたのような勘違い女が出かねません」っていうのは!!

 ていうか、カズとショウコが身内なのは事実だよね!?


「それにしても、あなたがそこまで言うほどの武器とはいったいどれほどのものなのか気になるわね」


「……貸してあげないからね?」


「ふふっ、そのようなものを借りなくとも私が少し甘えれば、柏木さんならもっと凄い物を用意してくれると思うわよ?」


「何それズルい!! いいわよ!

 それならカズだって本気で彼を落としにかかってやるんだから!!」


「フッ」


「ショウコはどうして鼻で笑ったのかな!? かな!?」


 ふっ……ふふふっ……あなたのその態度、カズへの挑戦と受け止めましょう。


「……3年連続お嫁さんにしたい探索者ナンバーワンは伊達じゃないんだよ?」


「あら、他の十把一絡げの連中と同じように伊達くろかみ酔狂くろめで彼が落とせると思ったら大間違いよ?」

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