第03話 カカカズ、わからされてしまう。
5層のポータルに到着したところでその日は終了。
さすがに入り口にいきなり現れると目立ちすぎるので、1層A区画まで転移で戻る。
「やっぱり他の階層からでも一瞬で戻ってこれちゃうんだ……。
このポータルを誰でも使えるようになったら歴史が変わっちゃいそうなんだけど」
「残念ながら今のところは俺しか使えないんです」
「お兄ちゃん、20層と言わず、そのまま50層目指さない?」
「むしろ10層までしか行くつもりはないんですけどね?」
「なんでよ!? 一緒にダンジョン攻略目指そうよ!!」
『レベル上げして職業欄を一つ増やしたいからだよっ!』とも言えず……いや、別にここまで来て隠すほどのことでも無い気もするが。
少なくともそんな、最前線でギリギリの戦いをするような狂った真似は一度経験すれば十分だからな。
2倍と言わず、3倍、4倍くらいの安全マージンを取りながらじゃないとダンジョン探索なんてやってられないのだ。
ていうか今日は3月末。増えた商品購入枠をそれなりに使い切っておきたいところだな。
「中務さん。今日中に200個までポーションの注文を受けたいんですけど」
「わかりました、早急に鷹司と六条に連絡をとってみます」
「ここにカズがいるんだから六条に連絡を取る必要ないんじゃないかな!? かな!?」
ということで、200本の中級状態異常回復薬をカズラさんがお買い上げ。
まぁ受け取ったお金は相変わらず右から左、俺の手元にはほとんどのこらず魔石になっちゃうんだけどさ。
異世界商店を開いたついでに鉱山都市でやっておきたいことをこなしておく。
とっとと『魔術都市・シャイン』に移動したいところだけど、仕入れられるスクロールとかは根こそぎ集めておきたいしな。
まずはじめはカズラさんに頼まれている両手武器のお値段確認から。
「親方! 届けてもらった剣と鎧、むっちゃ使いやすかったです!
ていうかあの剣、ロックゴーレムが斬れるとか本当に中堅冒険者用なんですか?」
『おう、さっそく使ってもらってるみてぇでなによりだ!
ははっ、予算がそれなりにあったからな!
ドワーフ鋼とは言っても特殊な加工をちょちょっとしてあんだよ!』
やはり金……金はすべてを可能にする……っ!!
(※金額の問題ではなく、仕事に余計な茶々を入れなかったうえに値切りもしなかったので『職人の矜持を分かってる奴』だと思われて気に入られたからです)
「えっと、それでですね。俺のあの剣を見てやたらと気に入った人がいまして。
是非とも両手用の武器を拵えてもらえないか聞いて欲しいと頼まれたんですけど、何かオススメってありますかね?
相手は身長は165cmくらいの女性で、普段は彼女の身長と同じくらいある長柄の戦斧を使ってて、間違いなく力も技術も今の俺よりは上なんですけど」
『ふむ、両手武器か。まぁ使い慣れてるならバトルアックスで問題ないだろうが……斧もメイスも大物相手以外に使うにゃ取り回しの良いモノとも言えねぇしなぁ。
そうだな、少し値は張るが両手剣。
アダマントをちっとだけ使った合金で打った【フランベルジュ】なんてどうだ?
ドワーフ鋼とは剣身の硬さも粘りも比べ物にならねぇし、うちでも【切れ味増強】や【軽量化】みたいな簡単な【付与】くらいなら掛けることも出来るしな』
「いきなり情報量が多いよ親方……てかフランベルジュってなんかこうビラビラした感じの剣だよね?」
『間違っちゃいねぇが言い方がいかがわしいな!?
そこは「まるで燃え盛る炎のように剣身が揺らめいたような」とかにしとけよ!』
「とりあえず見た目がカッコ良さそうだからそれで!!
……でもお高いんでしょう?」
『そうだな、両手剣となると素材も片手剣より使うからな。
そこにエンチャントを二つ……いや、ギリギリ三ついけるか?
50万……頑張って45万ってとこだな』
「そこは頑張らないで50万って言い切ろうよ!
了解! それでお願いします!」
『ははっ、人のこたぁ言えねぇが相変わらずどんぶり勘定な野郎だな!』
「むしろ命を預ける相棒をケチるほうがおかしいからね」
ということで両手剣のお値段は魔石50万容量。
馬車とか馬と同じ値段で『魔剣』が買えると考えれば高くは無いな。
でも、これって『ポーション算(魔石100容量:50万円』だと25億になっちゃうんだけど……まぁカズラさんがいらないなら俺が使えば問題ないしな!
支払いを済ませ、凄まじく軽くなった財布にさすがに使い方が荒すぎたかと少しだけ反省。いや、さっきも言ったけど装備品の性能は命を左右する物だから無駄遣いだとは思ってないんだけどさ。
ていうか、昨日(朝?)は気付かなかったけど商品一覧に【コモン・見習い鍛冶師】のスクロールが並んでいたのでそれも購入。
『おっ、鍛冶屋に興味があるのか?
なら鉱石とその加工も勉強しておいて損はないぞ?』
そう言う親方から鉱山組合と冶金工房の紹介状をもらえたのでさっそくそちらにも向かうことに。
『へぇ、ドヴォ親方が誰かを紹介してくるなんて珍しいことがあったもんだな!』などと歓迎されながら鉱山組合で【コモン・素人坑夫】の、冶金工房で【アンコモン・タタラ師】のスクロールをついでにゲット!
……紹介状はあっても取引先の新規登録料は普通に取られた。
* * *
話は少しだけ飛んで翌日。
「えっと、カズラさんに頼まれた両手用武器の話なんですけど」
「もう聞いておいてくれたんだ?」
「いや、聞いてきたと言いますか、もう現物を預かってきてるんですけど」
「ホントに!? 出して! 今すぐ出して!」
「柏木さん! 私が少し離れてる間に何やらいやらしい気配がするのですが!?」
「武器の話しかしてねぇよ……」
使うのが女性だと伝えてあったからか、鞘にまで意匠を施した両手剣――白い鞘に包まれたフランベルジュをカズラさんに差し出す。
「鍛冶屋の親父さんの受け売りになりますけど、剣身の素材はアダマント合金。
そこに【切れ味増強】・【軽量化】・【雷撃】のエンチャントが施されているそうです」
「何なのよアダマント合金とかエンチャントって……。
いえ、言ってる内容はもちろん分かるんだけど、意味がまったくわからないんだけど……と、とりあえず抜いてみても良い?」
「駄目です」
「駄目なの!?」
「冗談です」
ということで4層で試し斬り。
さすがに性能もわからないモノに金を出せとは言いにくいからね?
さっそくロックゴーレムを見つけたカズラさん。
居合抜きの達人の速さでその胴体を一閃。
「……見事に真っ二つだったな」
「……胴体を斬ったことより、爆発したことに驚いたのだけれど」
「鞘に入れて持っている時は少し重いかな? と思ってたのに、鞘から抜き放ったとたん重さが半分ほどに……というか何なのこの切れ味……あと、ゴーレムがいきなり爆発したんだけど!?」
「軽くなったのも良く斬れるのも爆発したのも全部エンチャントの効果でしょうね」
「本当に何なのよエンチャントって……こんなの、一度使っちゃったらもう元の体には戻れないじゃない……」
人の良さそうな親方が打ってくれた剣をヤベェ薬みたいに言うの止めて?
「お兄ちゃん、これはカズのよね!? カズのだよね!? 違うって言っても返さないからね!?」
「いや、そこは返せよ……」
真顔でグイッと迫ってくるカズラさん。
中務さんといい、美人に真顔で迫られるのは嬉しいよりも怖いんだよなぁ……。
「もちろんお譲り――したいところではあるんですけど、お値段のほうがですね」
「……1,000億? 5,000億?」
この人はテーマパークでも建設するつもりなのかな?
「25億になるんですけ」
「買ったっ!!」
どうやら50億までなら出すというのはマジだったらしい。




