第03話 洞窟の中って虫系の魔物が多いよね……。
何事もなく武器とロッカーの登録を完了。
管理局で公開されている階層マップ――
「カズラさんなら地図くらい覚えてると思ってましたけど」
「カズの拠点は関東だからね?
センニチダンジョンなんて数えるくらいしか入ったこと無いよ?
……お兄ちゃんはどうして『あれ? もしかして雇う人間間違えた?』みたいな顔になってるのかな?」
「今、カズラさんが言った通りのことを思ったからですが?」
もちろんレベルカンストしてる彼女以上の探索者が、初心者御用達のここにいるとも思えないけど……まさか地理感が皆無だとは予想してなかった。
5層以降有料の、第20層までのマップを中務さんから受け取り、じっくりと目を通すカズラさん。
「地形は違うけど、私が学生時代実習で入っていた『アキバハラ・ダンジョン』と出てくる魔物はほとんど変わらないから問題はなさそうね。
本当にお兄ちゃんたちがショウコと同程度の強さがあるのなら、第10層のボスまでで苦戦するようなことはないはずだけど。
カズは昨日一人ぼっちでミミズ空間に放置されていたので?
あなたたちの戦っているところをまったく見ていないので?」
ジトッとした目でこっちを見ながら
「全部の区画に到着するたびに最低1人10匹は魔物を倒してから次に進んでいくからね?」
という彼女の言葉に元気良く
「了解!」
とだけ返してからダンジョンに入る。
いつもの通り一層A区画でパーティ編成。
とりあえず第一層はすべての魔物と相対した事があるので、人が多いことを除けば何の問題もなく条件をクリア。
センニチダンジョンに通うようになってから初めて、次の階層へと続くゲートをくぐ。
「2層と言ってもあいかわらず洞窟の中なんだ?」
「2層どころか、センニチダンジョンは10層までずっと洞窟よ?」
「洞窟タイプっていう構造上、魔物から奇襲されにくいから探索はラクでいいんだけどね」
2層で最初に出会った魔物は
『歩き回る茸・椎茸 レベル:2 戦闘力:30』
体から頭までが一本の茸(シイタケ?)で出来ており、そこから枝分かれするように手足が生えているというわけのわからない魔物である。
「わざわざクリーピングファンガスの後ろに『シイタケ』ってついてるってことはマイタケとかシメジとかナメコとかもいるのかな?」
もしもカエンタケとかいたら大惨事になりそうだけど……。
「なんというか、見た目がとても気持ち悪いわね」
「ていうかお兄ちゃんの『鑑定』って見れるのは魔物の正式名称なのよね?」
んー、メルちゃんの言う事を信じるならそうじゃないかな?
攻撃時に吹きかけられる『胞子』にさえ気をつければ攻撃力などほとんど無い魔物なので苦戦などするはずもない相手なのでサックっと討伐。
その後も『年老いた洞窟狼 レベル:3 戦闘力:40』と『洞窟ゴブリン レベル:4 戦闘力:45』が出てきたが、何の問題もなく2層目もクリア。
「茸人間はザコだけど狼とゴブリンは2~4匹の集団で出てくるから、初見ならそれなりに苦戦する相手のはずなんだけど……」
「数が増えても連携も何も無い相手でしたし」
そもそも戦闘力の差が四倍以上あるうえに、俺も明石さんも倒した魔物の数だけならそこらの探索者とは雲泥の違いだからねぇ。
イマイチ納得がいかない顔のカズラさんに道案内してもらいながら第3層。
最初に出てきた『大蝙蝠 レベル;3 戦闘力:35』こそ戦闘力は低いものの、飛んでいる上に5匹以上で襲いかかってくるという非常にめんどくさい魔物から始まり。
丸まられてしまうと硬さが半端ない『大王ダンゴムシ(キングオニスクス) レベル:4 戦闘力:60』。
逆に長い身体でトリッキーな動きと凄まじく斬れる牙で噛みついてくる『牙百足 レベル:5 戦闘力:65』。
「百足とか天井から落ちてきたり岩の隙間から飛びかかってきたり半分罠みたいなもんだろあれ」
「先の階層と比べるといきなり殺意が上がったわね……」
「全部のダンジョンってわけでもないけど、1層2層は探索者になったばかりの人でもよほどでないと大怪我まではしないからね?
まぁお兄ちゃんたちは軽々とそれをクリアしてるんだけどさ」
そんな攻撃力マシマシの第3層から打って変わって第4層は――
「いや、しょっぱなからゴーレムって」
「大きいけど動きは遅いし攻撃も大ぶりだから倒しやすい相手ではあるのよね」
「何なのよその非常識な剣は!?
岩巨人って普通はハンマーとかメイスでチマチマと叩き壊すモノなんだけど!?」
さすがに大根とまではいかないけど、パイナップル程度の硬さだった『岩巨人 レベル5 戦闘力:70』。
「でも、そのカズラさんの戦斧だったら同じくらいの事は出来ますよね?」
「あー……これって強度極振りの武器で、切れ味に関してはそこまで良くないのよね」
カズラさんに「一度私にもその剣でゴーレムを斬らせてもらえないかな? かな?」とお願いされたのでお互いの武器を交換してみたんだけど。
「……なにこれ、普通の直剣なのに刀みたいな斬れ味なんだけど。
ていうか、『素材:岩』に対して斬れ味って表現が出てくる意味がわからないんだけど」
「こっちは確かに『切る』ではなくて『叩き切る』、むしろ『叩き潰す』って感じですね。
強力な武器ではあるんだろうけど、優雅さのかけらも無いところがさすがカズラさん愛用って感じ?」
「それはいったいどういう意味なのかな!? かな!?」
いや、別に悪い意味じゃなくて、『小さいことは気にしない(気にしないとは言っていない)』って感じがね?
うん、全然悪口じゃないんだよ?
「ていうか、この階層って魔物はこれ(ゴーレム)だけなんですね?」
「そうなのよ。他の魔物がいないからあれ(ゴーレム)を狩るしかなくて物凄く厄介……そうには見えなかったわね。
えっと、その剣ってダンジョン産のアイテムじゃなくて鍛冶屋さんに打ってもらったモノなのよね?」
「そうですね、俺と明石さんのだと握り部分の形状とか刀身のバランスが微妙に違ったりとかしますので。店売りの品ではないでしょうね」
「ミスリル? というのが高価なのはわかったけど……そのドワーフ鋼の剣――いえ、ドワーフ鋼で両手用の武器を作ってもらうとしたらいくらくらい掛かるのかな?」
「さすがに聞いてみないと値段まではわからないですね。
両手武器でドワーフ鋼限定なら――それでも数億円程度はすると思いますけど。
さすがにそれだけの現金の持ち合わせがありませんので、先払いの返品不可って条件になりますけど……それでいいなら見積もりを貰ってきますよ?
鍛冶屋の紹介は無理ですね。カズラさんに限らず、俺以外では会うことも出来ませんから」
「お兄ちゃんとはこれからも長ーーーーーーーーーーーーーーーい、お付き合いになるんだから、受け取ったモノを突き返すような非常識な真似はしないわよ?
そうね、予算は……50億までで!」
ちょっと出てきた金額の意味がわからなすぎて怖いんだけど……?




