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サクラサク 第06話 たそかれ(君の名は)

 入学式と教科書教材の受取りで一日。

 クラスメイトの自己紹介と身体検査や体力測定で一日。


 二日目の自己紹介で目についたのは数名の女子と一人の男子。

 もちろん彼、彼女らが目についたのは『強者のオーラを感じた』などというバトル漫画的な理由ではなく、その飛び抜けたルックスに見入ってしまったからなのだが。


「桜凛西中学校から来ました明石あかししずかです。

 こちらの学校に来た理由は……そうね、家から近かったからかしら?

 その中でも迷宮科を選択したのは自分の力を試したかったから……が一番しっくりとくるわね。

 これから三年間、もし一緒にダンジョンに入る時はよろしくお願いします」


 自分の席でペコリと小さく会釈するその立ち姿はまさに理想的な黒髪美少女。

 形の良い口から紡ぎ出される耳触りの良い鈴の音のようなその声。

 学年どころかこの学校一、むしろ地域で一番のスーパー美少女……しかし騙されてはいけない!

 クラスメイトに向かい優しく微笑む彼女のその美しい姿はただの擬態。

 何故ならばその視線が俺に向けられた瞬間ゴミムシを見るような目になったのだから。


 何なの? 初対面でちょっと匂いをかいだだけでその対応、ちょっと心が狭すぎではなかろうか?

 確かに逆の立場なら俺だってそんな顔になってしまうと思うけれども。

 いや、しかしである。むしろ彼女のその態度を逆に? 考えるのはどうだろう? あれだけの美少女が俺だけを特別視していると。

 俺だけに冷たい彼女、つまりツンデレ彼女。

 明石さんにとって俺はスペシャルな存在なのだ。


 そんな明石さんの次に(ある意味)強烈なインパクトを与えた女子が身長140センチくらいの小柄なヤンキー少女。


稗子ヒエスティアラ」


 えっ? それだけなの?

 無表情、ビックリするほどの無表情。

 そして腹話術なのかと思うほど表情筋も口も動かさずボソッと名前だけを告げると席に座る稗子さん。

 ちっさ! 声ちっさ!

 席に掛けた途端にカバンから取り出した雑誌――『レムリア』と言う一部界隈では有名なオカルト雑誌――を読み始める彼女。

 えー……その目付きの悪い狼のようなヤンキールックスでまさかの不思議ちゃんなの?


 ちなみにもう一人、ルックスだけなら間違いなく美少女枠の女の子が俺の隣の席に居るのだが……他の面々に比べるとインパクトが弱かったのでスルー。

 俺は一体他人の自己紹介に何を求めているのか……。

 女子に比べ全員そつなくこなしてゆく男子の面々。

 そんな面白みのない男どものなかで強烈な光を放ったのが、


「僕は久堂くどうとおる

 この学校を選んだ理由は……そうだね、明石さんがこの学校を選んだからってことにしておくのが一番おもしろそうかな? セールスポイントはもちろん僕の存在すべて。これでも頑張って自分磨きをしてるからね。

 どうしてだか中学の時から男友達が居な……少ないんだけど、男女問わず気軽に声を掛けてもらえたら嬉しいよ」


 『よろしく』としめて腰を下ろす久堂。

 明石さんが俺を見るときよりも険しい顔で久堂の事を睨みつけてるんだけど……。

 てか名前を名乗っただけなのに、奴の背後にキラキラ光る白い薔薇の花が見えたのは一体なんだったんだろうか?

 そんなキラキラ男に集団で黄色い悲鳴を上げる女子生徒と、キラキラ男に集団で舌打ちするイライラ男子。

 俺? 俺はもちろん無表情で存在感を消してるよ? だって舌打ちした男子を嬌声をあげた女子が睨みつけてるもの。


 間違いなく奴も明石さんと同じくすげぇいい匂いがするはず。当然ながら嗅ぎたくはない。

 その他にも男で数名キャラの立った生徒がいたけど……特に関わり合うことも無いと思うのでスルー。

 俺? 目立たないように、超無難にこなしておいた。

 たぶん……ダンジョンに入れるようになりさえすればこの学校には通わなくなると思うしさ。

 変に他人と関わりをもっちゃうとその時に寂しくなるからね?


 身体検査と体力測定ではまぁ……一人だけやたらと目立ったゴリラみたいな奴がいたくらいか。

 小柄な稗子さんの反復横跳び(無表情)が素早すぎてちょっと笑いそうになった。

 あと、久堂の奴が妙な色気を放ってたのが非常に不愉快である。

 予想通りいい匂いがしたし……。



 そんなこんなで三日目の水曜日にはほぼほぼ通常のカリキュラムへと移行した俺の学園生活。

 新居ボロアパートでの生活はどうなってるのか?

 どうもこうも、金銭的な余裕が無いからガスコンロ……じゃなくて魔石コンロも買えないしさ。

 なんとか動く変なシールが貼りまくられた電子レンジでスーパーの半額惣菜生活真っ最中だよ。


 基本人見知りな俺、異世界でもほとんど一人で飯食ってたしその時は何の感情もわかなかったのに……日本に帰ってきてからは、家でひとりきりレンチンした弁当食ってたら何故だか鼻の奥がツンとしてしまう。

 これはもう犬とか猫とか文鳥とか飼うべきだろうか?

 でも日中は家に居ないから寂しい思いをさせちゃいそうだしなぁ……とりあえずAmazingでヌイグルミ型の抱き枕でもポチッとくか。

 そんな俺の寂しん坊エピソードはどうでもいいとして。


 ここは私立桜凛学園。その中でも俺が通うことになったのは『迷宮科』と言う聞き慣れない学科なのだが。

 例えば普通科。進学を目的としたカリキュラムが組まれている。

 例えば商業科。簿記や算盤、商業経済などの授業がある。男子より女子の人数が多いことはどうでもいいな。

 そんな中で俺の在籍する迷宮科。


 もちろん特殊体育(普通の学校で言う所の武道系の選択教科みたいなものか?)や迷宮学(ネットで調べれば出てくるような情報を長々と説明される)などという聞いたこともない授業がある。

 そして座学があれば実技も存在するわけで。


「昨日のLHRでも説明したけどこの学校では木曜、金曜、土曜の後半三日間は関西で修練迷宮指定されているダンジョンの一つ、『サクラギダンジョン』での探索者実習となっています」


 迷宮科を迷宮科足らしめている校外での特殊実技。

 迷宮科生徒全員参加のダンジョン活動があるのだ。

 異世界帰り(帰らせられ)で迷宮なんて存在しない日本から来た俺からすると、


『ダンジョンって言うなれば戦場みたいなものだろ?

 そんな場所に未成年の学生が入っても大丈夫なのか?

 間違いなくマスコミと野党が『軍靴の音が聞こえてくる!!』とか『学徒動員フジコミネコ!!』と騒ぎまくるだろ?』


 と考えてしまうのだが……現在では迷宮からもたらされる魔石その他の迷宮資源が入手できなければ国家としての死活問題なわけで。

 自分たちにも利権のおこぼれが回ってくるとなれば、左に向いていようが右に向いていようがファッションと自分の利益のために活動しているだけの人間が綺麗に前にならえするのは不思議なことでは無いのである。

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― 新着の感想 ―
ん〜、、、 毎回、毎回、主人公のつまらんボケと言うか 自虐と言うかそんなのが、いちいち煩い、、、
赤石嬢に対する反応が一々キモいぞ、真紅璃さんよ (まあ赤石嬢も器小さい疑惑あるけど) てか真紅璃も割と自己中寄りだな、異世界暮らしが長すぎたのかモラルが低下してる 親戚連中が屑を通り越して犯罪者なせ…
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