第18話 「その程度の成長力がなければ、迷宮の1000階層とか一生もぐれませんよ?」
メルちゃんのダジャレでいきなり話がズレ『抱腹絶倒ですよね!』。
……ズレてしまったが、アクティベートされたコモン・クラス【牧師】ジョブの性能。
『まず1つ目は【光魔法・初級】が使用可能になりました。
これによって【スペル・光魔法】が使用可能となります。
これであなたも「聖☆魔法使い」ですね』
「余計な☆入れるの止めろや」
最初からクライマックス来た!
てか聞くまでもないけどスペル自体は別売りなのな。
『ゲームメーカーから学んだ追加コンテンツ課金方式です。
ちなみにK○EIからは年度版フルプライス販売、無印版有料βテスター方式というのも』
「伏せ字だから怒られないと思ったら大きな間違いだからな!?」
放って置くと余計なことを喋りそうなので次の説明に進む。
『2つ目は【暗魔法耐性・弱】です。
読んで字の如く、光と闇が重なって』
「そんなことどこにも書いてないよね?
ていうか、その闇魔法には『呪い』は含まれるのかな?」
『はい、呪術系の攻撃に対しても耐性を発揮します』
……だとしたら、明石さんにも牧師をマスターして貰ったほうが――
『違います「MA・☆」です』
「どうでもええわ!」
『最後は他のコモン・クラスをマスターした時との共通項目なのですが、戦闘力が【+30】されます』
「自分もマスターって言ってるじゃん……。
って、さらっと流しそうになったけど戦闘力+30ってデカいな!
俺の初期戦闘力の半分、5~6レベルアップ分数値なんだけど!?」
『逆に、その程度の成長力がなければ、迷宮の1000階層とか一生もぐれませんよ?』
「えっ? ダンジョンってそんなに深くまであるの!?」
『知らんけど』
本当にこいつは毎度毎度……。
どんな魔法が使えるようになったのかの確認、そして明石さんに渡すためのスクロール――いや、ここで中務さんだけ仲間外れにするのも良くないから2人分のクラス・スクロールを買うために異世界商店を呼び出す。
『私的には今日の朝のように人のいるところでやって欲しいのですが』
「あんなこと追い詰められた時以外にはやらねぇよっ!」
訪れた教会で神父さんから、
『おお! どうやらあなたも神気を感じることが出来るようになったのですね!』
などと、褒められたり。
……こっちの世界だと完全に新興宗教、電波を受信してる人の発言である。
さっそく商品リストを確認。増えていたのは――
【光魔法・破魔 価格:5000容量】
【アンコモンクラス・スクロール・助祭 価格:20000容量】
の2つだけ。
「破魔というのは悪魔祓い以外――呪い返しや症状の緩和にも使えるのでしょうか?」
『もちろんでございます。もっとも、その効果は使う者の「信心の力」で大きく変わってまいります。
もしも思うように効果が発揮されない場合は「神の僕としての位を上げる」か、スペル【祈り(ウイッシュ)】を併用するなどするのが良いでしょう』
「詳しいご説明ありがとうございます。
不躾ではありますが、今回は怪我の回復、状態異常の回復などの魔法はまだ?」
『そうですね、残念ですが牧師ではまだ使いこなせません。
そのままご精進くださいませ』
「ご指導ありがとうございます、これからも努力いたします。
では、中級のポーションも?」
『そちらはあなたのご喜捨しだいでございます』
教会の沙汰も魔石しだい。
世知辛い……実に世知辛い……。
手持ちの魔石は4万とちょっと。
もしかしたら【破魔】一発で蠱毒が消せる可能性も……その程度の呪いなら聖水がもっと効くか。
まぁ使ってみないと始まらないのでカートに1つ入れてと。
続いては【助祭】。2つ買うような余裕は無いのでこれも1つ購入。
最後に二人分の牧師を加えれば、しめて31,000容量也。
「魔石残り11000……一気に無くなったな……」
ま、まぁジョブを育てれば戦闘力が大幅強化されることも分かったし!
けっして無駄遣いにはならない!! ……といいな?
* * *
~一方そのころ~
「……明石さんといいましたね。
あなたはどのような目的で彼に近づいたのですか?」
「あら、いきなりご挨拶ね。
柏木くんも言っていたでしょう?
たまたま私の住んでいた部屋と彼が越してきた部屋が隣同士だっただけ。
……もっとも、それも『運命』なのだと今は思っているのだけれど」
探索者証の試験も終え、二人仲良く――ギスギスしながら茶話会中の二人。
「私よりも、あなたの方はどうなのかしら?
その金色の髪……鷹司家の関係者なのでしょう?
大貴族の関係者が一体彼の何を知って、彼をどう利用しようとしているのか。
想像するだけで怖いわね」
「口を慎みなさい小娘。
もしも彼との出会いが運命と言うのならそれは私も同じ。
この髪の色、そしてこの目の色。
彼は何の忌避感もなく受け入れてくれたわ。
……もっとも、それはあなたもなのでしょうけど」
「……そうね。そもそも彼は女の外見を見て好き嫌いの判断をしない。
でなければ付き合いもない、こんな女の手料理を口に入れるなんてありえないもの。
ふふっ、それに柏木くんったら。こんな私の身体を見てあんなに大きく……」
「クッ、私だって隣同士、いえ、同棲さえ出来れば毎日料理くらい……。
あら? あなたのその貧相な身体のどこに見るべき場所があるというの?
見栄を張るのも大概になさいな。
少なくとも私は後ろから臀部を舐めるように見つめられたわよ?
あの時の彼の両手の動き、間違いなく揉みしだく妄想を……」
「チッ、もしも同棲することになるとすれば、それは歳の近い私のほうが彼も気楽ではないかしら?
ふふっ、三十路に片足を突っ込んだ女性のお尻に何の魅力があると言うのかしら?
……確かに、彼が大きなお尻が好きなのは認めるところではあるけれど。
でも、大切なのはあくまでも全体のバランス。そして肌の張り――あなた、年齢のわりには肌艶が良いわね?」
「あら、あなたの目でもそのくらいは分かるのね?
でもこれも全部、彼が用意してくれた『あるもの』を毎日使っているおかげだけど」
「それってもしかして小瓶に入ったローションのことかしら?
ふっ、ふふふっ! もう、そんな、彼にそれを貰ったっくらいで嬉しそうな顔をして。中務さんって歳の割に可愛らしい方なのね?」
「……それは一体どういう意味?
あのようなアパートで暮らしているあなたは使ったことがない――」
「あなたは気付かなかった?
今日の彼……とっても綺麗な髪をしていたと思うのだけれど?」
「……小娘。事と場合によってはその生命、無いものと思いなさい」
「……それはこっちのセリフよお・ば・さ・ん?」
――夕霧が戻ってくるまであと30分――。




