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サクラサク 第04話 ダンジョンの歴史~続き

 そんな迷宮内での危険生物の大量発生(日本の創作物に似た現象が多々あったため自然と『スタンピード』と呼ばれる様になる)。

 地上に出た魔物は近代兵器で対応することが可能であったため、すべての魔物を駆逐することは出来たのだが……最初に迷宮が現れた場所は各国の首都圏であり人口の密集地域。

 何の用意もなく、警戒もしていなかった大都市での死を恐れもせず人間に襲いかかってくる魔物との市街戦の結果大量の死者をだしてしまい、副次的被害であるインフラの破壊とも相まって『それらの国(ダンジョンに手を出してしまった国)』では経済に数年、数十年にも及ぶ大ダメージを負ってしまう。

 ちなみに我が国では、国内の安全を確保するため調査に自衛隊を派遣したい与党と、たとえ国が滅んでも自衛隊を派遣したくない野党による大騒ぎ中であった。


「こうやって見ると、独裁者による上意下達トップダウンって効率いいんだな……結果は最悪のものになっちゃってるけど……。

 日本は相変わらずいつも通り……いや、それでなくとも人数の少ない自衛隊に無駄な犠牲が出なかったんだから今回に限っては野党がいい仕事をしたと言えなくもないのか? あくまでも結果論だけど」


 そのような大騒ぎの後、まともな装備も持たせず支配地域の住民を強制徴用して迷宮に送り込んだ某国より銃器ではなく剣や弓などの旧世代の武器でなら迷宮内でも効果的に魔物を倒すことが出来ることが伝わってくる。

 もちろん国家として他国に情報を開示したというわけではなく、スタンピードにより情報管理が杜撰になっていた某国より情報が漏れ伝わっただけなのだが……その事を自国の手柄として国連の場で復興支援を強請りたかろうとし始めた……のだが逆にその非人道的な行為を晒し上げられることに。

 日本の某野党は両手を挙げてその功績を褒め称え、大々的に募金を募り支援をしようと画策したらしい。


「いや、そんな意味の分からない募金なんてする奴いるのか……ほとんど集まらなかったみたいだな。

 なおかつ集まった数十万円は党の活動費になったみたいだし」


 方法如何はともかくとしてそれが世界にとって有用な情報であったことは間違いはなく。

 迷宮内で魔物を倒すことにより現れる『迷宮証』、通称『D・Cダンジョン・カード』の発見、魔物を倒すことで迷宮内でのみその力が強化されるレベルアップ現象、国家間で数年秘匿されていたがレベルアップ時や専用アイテムを使用することにより発現する『スキル』と言う特殊能力の発見。

 その中でも魔物の消滅時や迷宮内で極稀に発見されるトレジャーボックスから得られる『獲得物ドロップアイテム』。


 例えば怪我の治療を促進し、大怪我でも短期間で回復させることが出来る『ポーション』。

 例えば地球上には存在しない鉱物や宝石。そしてその加工物である武器防具やアクセサリー。

 例えば先にも述べた迷宮内で効果を発揮するスキル――身体強化や特殊な攻撃方法、魔法など。

 そして停滞していた現代社会に革命をもたらしたと言われる『魔石』と言われるエネルギー物質。

 数年、十数年掛けてさらなる迷宮の研究そして獲得物の研究は進み、迷宮の資源としての価値はどんどんとあがっていった。


「なるほど。つまり、迷宮科っていうのは異世界で言う冒険者を育てる学校ってことだな!

 ……いや、その程度の情報は迷宮科って名前だけで想像できたんだけどさ」


 最初は『各国の首都圏』に現れたダンジョンであるが、その後十年ほど掛けて人口の多い地域を中心に、その数をゆっくりと増やしながら各地に広がっている……らしい。


「てか日本だけでも50個近いダンジョンがあるのかよ。

 異世界でも狭い地域でそんなに密集してなかったぞ……じゃなくてだな!

 この地球、絶対に『俺の暮らしてた世界』じゃないよな?」


 だって俺が生まれてから異世界に攫われるまで、ダンジョンがいきなり現れたなんていう世界的な大ニュース聞いたこともなかったし。

 もしかしてなくとも何処の誰かは知らない声の主……返送先を間違えやがった?

 いやマジかお前……本気じゃなくて本当と書いてマジでお前……うん、それほど文句はないんだけどさ。

 だって、それでなくとも十年も異世界に居たんだよ? 浦島太郎状態の俺だよ?


 地球に帰って来ても特に出迎えてくれる人間が居るわけでなし、言うなれば帰る場所なんてどこでも同じって言えば同じなんだよな。

 むしろ、両親が亡くなってない世界線に送り返してくれと……それはそれで何か違うか。

 俺を育ててくれた両親は事故で亡くなったあの二人だけだし。


 でも前向きに考えるとさ。逆に? 俺の暮らしてた地球より『ダンジョン』なんてものがあるこの世界の方が無職ノージョブの俺には暮らしやすいとも言えなくもないんじゃないかな?

 だって、死にかけたとは言え魔物と戦った経験だってあるし? そのへんの一般人とは顔つきも違うはず!

 たとえ地上で雑魚と死闘を繰り広げてた俺だったとしても、ダンジョンの浅い階層でならどうにかこうにか……なるんじゃないかな?

 コンビニバイトで人間関係に気を使いながら長時間働くより死ぬ危険性はあるけど一人でのんびり魔物狩り……有りだな。

 何より『魔物は倒すと消えてドロップアイテムを残す』、つまり解体の必要がないってところが実に良いと思うんだ!


「てか俺、最低限の戦闘力も知識も気構えも既にあるし……別に学校とか通う必要ないんじゃね?

 これでも一応我、異世界帰りの勇者ぞ? 同期のメンバーと比べると戦闘力は圧倒的に低かったがな!」


 いきなり送り返されたことによりテンションダダ下がりだった俺。

 ちょっとだけ前向きな気持になったので、さらなる情報を仕入れるためにタブレットを使って引き続きネットの海にダイブするのだった。

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― 新着の感想 ―
やはりレベルアップ(身体強化)やスキルの恩恵を受けられるのは 恐らく魔力濃度の関係でダンジョン内のみか まあじゃないと完全に現代社会崩壊するし、然もありなん
ふと思ったけど、何のリターンもなく異世界で戦わせたのか。 ろくでもねぇな、世界も間違えるし
異世界の経験とスキルを全て失いますって戻されたのにそこで得た知識とか記憶とかは経験に含まれてないのかという 元の世界に戻されたわけじゃないっぽいからイレギュラーとかなんかな?先を読み進めてみます
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