表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
39/60

第14話 十年越しの『無職(ノージョブ)』からの脱却! その1

 まったくのんびりした気はしなかったが、久しぶりの全休日。

 ……と言っても、今は学校にも行ってない自由業の俺は毎日がエブリデイみたいなもんなんだけどさ。


 1月も終わり2月に入っても、やることは変わらずのスライム退治。

 そのスライムも青、緑、黄色と順調にランクアップしてるから俺のレベルもいつの間にか6まで上がってるから問題は無い……と思いたい。


「でも中務さんはレベル20オーバーだったしな」


 一階層で狩りをしている他の探索者を鑑定すれば『レベル6』ってのがどんな立ち位置か分かるんだろうけど……。

 さすがに無許可で他人の個人情報を覗くのは少しだけ気が引ける。



「てことで中務さん。

 月をまたぎましたので、『ドリンク(ポーション)』をまた50本ほど仕入れられるようになりましたけど、何か注文は入ってますかね?」


 今日も今日とて狩りのあと、いつもの部屋でのんびりだべっている俺と中務さん。


「それはどこから仕入れるのかとか、どうして月が変わったタイミングなのかとか、いろいろとツッコミどころ満載なのですがそれは……。

 そうですね、あちら様からは『メロンソーダ』を千本単位で購入できないかと相談されておりますが」


「いやいや、さすがにその数は……当分は無理だと思います」


「逆に、しばらく経てば可能になるのですか!?」


 この先、購入制限がどう伸びるかまでは分からないから『可能性がないとは言えない』ってだけなんだけどね?


 ていうか、その仕入先――異世界商店メルクリウスの呼び出し。

 いまだに手加減してくれるふうもなく。むしろ最近では、


『ダメです。

 腕はもっとまっすぐ伸ばす!

 指先もピッタリと揃えて!

 そもそも顔がカッコよくないです!

 そのようにやる気のない、キレの悪いポージングではこれ以上力を貸す事はできませんよ!?』


「いや、顔はどうしようもないだろ……」


 などと、シュバる時のフォームにまでケチをつけてくる始末。

 頭の中で考えただけで反応してくれとか無茶振りはしないからさ、せめて口頭で呼ぶだけにしてくれるとかダメ? ……ダメなんだ。



 メルちゃんのその時の気分100%、ようやく開いてもらえたディールのマップ画面。

 教会に向かって少し雑談したあと、いつものように下級状態異常回復薬を50本購入、普段ならそこで「またお願いします~」みたいな反応になるはずなんだけど。


『いつも教会に『ご喜捨おかいあげ』をいただきありがとうございます。

 あなたの篤志の御心に心よりの感謝を。

 そして、その貢献に報いるため、これからはあなたをエタンのしもべとして迎え入れましょう』


 ……などと意味不明な供述を始める神父さん。

 なんかいきなり胡散臭い事を言い始めたんだけど?

 まさかまさかの押し売り宗教勧誘!?

 かと思ったら、単純に。


『消費した魔石が規定量(たぶん一万?)を超えたから、新しい商品が解禁されましたよー』


 という業務連絡だった。

 ……なるほど。並んでる商品が少ないと思ったら、何かのノルマを達成する度に増えていくのか。


 まぁ増えた商品は一つだけ。

 コモンクラスの【牧師バスター】っていうジョブ・スクロールだけなんだけどさ。


「……てかジョブ・スクロールって……それはつまりジョブ・スクロールってことなのか!?」


『あなたは某政治家の二世議員ですか……』


 いや、それって職業クラスに就けるスクロールってことだよね!?

 えっ? イスカリアで万年無職だった俺……むっちゃ色んな種類の武器の扱いの練習とか頑張ってたんだけど?

 職業ってこういう感じで買うものだったの!?


『猫とは違い、フレーメン反応を起こす人間とはまったく可愛く無いのですね』


 それを買うかどうかなど、もちろん考える必要もなく。

 というより、それを見つけた瞬間すでに指は動いていて、もう俺の目の前にはスクロールが浮かんでるんだけどさ。


「『巻物スクロール』っていうか、手紙サイズの紙を巻いて封蝋で閉じただけって感じだな」


 それをさっそく手に取り。


「……いやこれ、どうやって使えば――まぁ封がされてるんだから剥がせば良いとは思うけど」


 蜜蝋をペリペリとめくり丸められていたソレを開けば、部屋いっぱいに広がる温かな光。

 ……部屋の中が光っただけで、『体に何かしらの力が満ちてくる』とか、そういった変化はこれと行って感じられず。


 あれ?

 もしかしてハズレスクロールだったとかそういう……?


 ちゃんとジョブが手に入ったかの確認するため、慌ててステイタスを開くも。


「まさかの変化無し!?

 いや、【クラス:無し】の『無し』部分が点滅してるか」


 変化があるならとりあえずタップ!

 リストと呼ぶには選べるモノが一つしか無いが【牧師】の項目を発見した。


『現在のあなたのレベルは6ですので、職業を二つまで選択可能ですね。』


「それってレベルが上がれば一度に就ける職業の数が増えるって認識でOK?」


『そのとおりです。5、10、15と、5レベル上がるごとに一枠ずつ増えていきます』


 まぁ今のところ牧師しか選べるものは無いんだけどさ。

 画面からさっそく牧師をタップ、いよいよこれで無職ともさよならだ!!


「……なんて意気込んでみたところで、これといった変化が起こることもなく」


『今のあなたは「自分は牧師です!」と自称してるだけの詐欺師みたいなものですので』


「言い方っ!!」


 どうやら、牧師の隣にある【0/1000】というのをいっぱいにする必要があるらしい。


「えっと、これってここに魔石を入れろってこと?」


『何でもかんでも「魔石おかね」で解決しようとするその性根があなたらしいですね』


「メルちゃんはどうしていきなりディスってきたのかな?

 魔石じゃないならどうすればいいっていうのさ?」


『常識で考えてください。

 経験値を稼ぐ方法なんて「戦闘を経験する」以外に無いでしょう?』


「せやろか? もっとこう魔法を使うとか剣を振るとか」


『あなた、魔法なんて使えませんよね?

 あと、戦闘するのと剣を振るのはほぼ同意語では?』


 ……確かに。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ