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召喚された異世界で『(知らない奴が)魔神』を退治したら日本に送り返されたんだけど!? ~『帰還勇者(しょうにん)』はダンジョン大国日本で成り上がれるか?~  作者: あかむらさき
異世界勇者(しょうにん)日本に送り返される。

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第12話 高価格の『下級状態異常回復薬(メロンソーダ)』!

 売り物にならないくせに、ローションよりドロップ率の良い気がする『スライム・ウォーター』。


 出どころを詮索されると面倒なことになりかねないので、ひとまずそっとインベントリにしまい込んだところで、アタッシュケースから大きな茶封筒を取り出しながら中務さんが話をきりだす。


「お疲れのところ申し訳ございません。

 もう少しだけお話にお付き合い――報告と商談についでのご相談があるのですが大丈夫でしょうか?」


「もちろん! というか、商談っていうのははポーションの話ですよね?」


「はい。報告の方も、ポーションに関してになります」


 テーブル越しに差し出された書類――報告書には、三種類のポーションの検証結果と、現時点で流通させた場合の予想価格などがまとめられていた。


「ではまず、コードネーム『下級HP回復薬トマトジュース』についてですが」


 なんでポーションにコードネーム? ていうか、ネーミングセンスェ……。


「患者は腹部を大きく切り裂かれた重傷者。

 これまでのポーションと同じ使用方法でいいのか判断に迷ったらしく、半分は傷口にそのまま振りかけ、半分は服用したそうです。

 投与から数秒後、傷口から強い発光現象を確認」


「ああ、怪我の状態にもよりますけど、基本的にはぶっかければ大丈夫ですよ?

 光るのは『治癒魔法ヒール』とかもそうですので慣れてもらうしか無い――」


 何故か俺のことをジト目で見ながら、高速で報告書に書き込みをする中務さん。


「もう! 今回は報告だけのはずなのに!

 あなたはまたそんなとんでもない情報を混ぜ込むんですからっ!!」


 情報? ……ああ! そういえばこっちの世界は『スキル』が一般的じゃない、つまり魔法も使える人間がいない、いても限りなく少ない――のかな?


「……コホン。

 その結果ですが、光が消えたあとはうっすらとした傷跡が残っただけ。

 まるで最初から怪我などなかったかのように完治していたそうです。

 そのあと、精密検査――レントゲンやCTにもかけられたようですが、一切の異常は確認されませんでした」


「まぁポーションってそもそもそんなモノですし」


「ダンジョンが現れてから200年間『そんなモノ』は無かったのですがそれは……。

 ダンジョン中層以降でも使えるものであると判断され、しばらくは既存の一型ポーションの5倍である『1本あたり50万円』での購入を希望みたいです」


 仕入れ額『魔石100容量(1万円)』、向こうですら銀貨二枚(2~3万円くらい?)の下級HPポーションが、50万……だと!?

 

「続きまして、『下級状態異常回復薬メロンソーダ』ですね」


 いや、だからネーミングセンスっ!!


「傷薬(HPポーション)と違い、こちらは前例のないポーションということもあり、その効果がまったく予想もつかず。

 痛み止めに耐性ができてしまった末期の悪性腫瘍患者に、せめて気休めにでもなればと飲ませてみたところ……痛みがピタリと止まったようです」


「えっ? あれってガンをどうこうできるほどの効果はないと思うんですけど?」


「はい。飲用から24時間後には、また痛みが再発したみたいですね。

 その患者というのが、うちの本家筋の女性なのですが。

 そちらから早急に追加購入したいと急かされ……連絡を受けています。

 また、どの程度の疾患まで対応できるのかも調べたいとのことで、そちらの検証用もご用意いただければと。

 現時点では、その結果次第で変動するものの、こちらも一応『50万円』の値がついております」


「一日しか効果がない痛み止めが50万ですか……」


「これまで意識が朦朧としていた人間が話せる状態まで持ち直したようですからね。

 家族としてはお金でどうにかなるなら……という気持ちにもなりますよ」


「それは確かに……そうですね。

 はぁ、上級まではいかなくとも、中級であれば少しは治療効果も出ると思うんですけど……」


「確かに、下級があるなら中級や上級も存在するのでしょうね……今の『も』聞かなかったことにしておきますので、他所では絶対に口を滑らせないでくださいね?

 ということで、最後は『聖水』についてです」


 疲れ切った表情の中務さんが書類をめくり、さらに報告を続ける。


「こちらも使用方がわからなかったので、噴射器みずでっぽうを使って直接ゾンビに掛けたらしいのですが……結果、煙を上げながらのたうち回り、最終的には溶けて消滅したみたいです」


「何それ怖い」


「もっとも、聖水がどの程度のアンデッドまで有効なのか要検証状態でして。

 使い勝手の悪さもあり、『どうしても必要な時、1万円くらいなら買うことがあるかも……』という評価でした」


 確かに、ゾンビなんて臭いさえ我慢すれば強い魔物でもないからなぁ……。


 てことで、


「ちょっとだけ一人にしてもらえます?

 ……俺が呼ぶまで絶対に部屋の中を覗いちゃ駄目ですよ?」


「なんですかその鶴の恩返しみたいなお願いは……」


 と、中務さんに釘を差して、異世界商店を呼び出す。

さっそく残っていた今月分の買い物枠『17/20』を使いきって『メロンソーダ』を購入。


 さすがに世話になってる人の身内からぼったくるのは気が引けるので、


「とりあえず家族割引で仕入れ値の1本10万円で良いですよ?」


 それでも暴利なディスカウントしたんだけど。


「家族!? ……もう! 柏木さん……そんな急にお前は俺の嫁だなんて……」


「言ってない言ってない」


「ふふっ、鷹司はお金持ちですから。そのお気持ちだけ頂いておきます」


 やんわりと断られてしまった。

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