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召喚された異世界で『(知らない奴が)魔神』を退治したら日本に送り返されたんだけど!? ~『帰還勇者(しょうにん)』はダンジョン大国日本で成り上がれるか?~  作者: あかむらさき
異世界勇者(しょうにん)日本に送り返される。

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第09話 と、とりあえず二人だけの秘密ということで……。 その2

 生活費のための小遣い稼ぎ。

 そんな軽い理由で探索者登録をしたのだが……。

 どうやらこの日本、こと『ダンジョン』や『探索者の能力』に関しては、異世界よりもずいぶん理解が遅れているみたいで。


 そのせいで……ということもないのだが、すでにいろいろとやらかしてしまっている俺。


「まぁやっちゃったことは仕方ありませんよね!

 幸いにも、その相手は中務さん一人だったわけですし!」


「その前向きな姿勢と、私を信用していただけていることは嬉しく思いますが。

 さすがに柏木さんは警戒心が無さすぎです」


「……おねえちゃんは、ぼくがわるいひとたちにりようされないように、まもってくれるよね?」


 澄んだウルウルお目々で彼女を見つめ、コテリと首を傾げる。

 ……自分でやっといてなんだけど、気持ち悪ぃなこれ。


「そんなの当たり前じゃないですか!

 どんなことがあっても、夕霧ちゃんは義姉であるこの私が守り抜いてみせます!」


 そして、心配になるほどチョロい中務さん。

 警戒心を持つべきなのはこの人なのでは?


「ということで!

 これからあなたには、俺の『共犯者パートナー』になっていただきます!」


「そ、そんな……!

 二人はまだ出会ったばかりなのに、いきなり『婚約者パートナー』だなんて!?」


「駄目……ですか?」


「どんとこいです!!」


 いや、そこはさすがに、もう少し熟考した方がいいのでは。


「ふふっ、そうと決まれば話は早いですね!

 では、私からのご提案――これからも柏木さんと二人で新婚生活……コホン、おそばでダンジョン探索を見守るための秘策なのですが」


「いや、中務さんってここの職員さんですよね?

 登録したばかりの新人探索者に付きっきりになるなんて、さすがにおかしいんじゃ」


「ふふっ、さすがに今日みたいに、一日中ついて回るということはできませんが……あなたの『専属』になることは、不可能ではないんですよ?」


 そう言って彼女が説明してくれたのが『優良探索者・専属職員制度』というもの。


「簡単に言えば、優れた探索者さんを他所のダンジョンに逃さないよに縛り付ける……コホン、所属ダンジョンに愛着を持っていただくために、職員が全力でサポートする制度なのですが」


 たとえば、煩雑になりがちな、各種の事務手続き代行。

 たとえば、新しい階層に挑む際の、事前の下調べ。

 たとえば、持ち帰った魔石やアイテムの一括管理。


「……それって職員さんの仕事が増えるだけで何のメリットも無いのでは?」


「ナイショですが、管理局に支払われる手数料のうち5%が還元されます」


 なるほど、お賃金が増えるのならまぁ……いや、それにしても俺が支払う手数料なんて雀の涙みたいなもんだよな。

 ていうか事務手続き関しては、すでに中務さんに丸投げしちゃってるし。


「でも俺、何度も言いますけどただの新人ですよ?

 それが『優良探索者』とか、さすがに無理がありませんかね?

 もちろん、鑑定能力とか異界言語の翻訳能力を報告するなら話は別ですけど……そういうことじゃないんですよね?」


「もちろんです。

 それらの能力を隠すための『専属契約』ですのに、それをバラしてしまっては本末転倒ですから。

 そもそも、そのようなご心配をなさらずとも柏木さんには『魔力適性』がありますからね?」


 ……異世界あっちでも生活魔法すら使えなかった俺に『魔力適性』とな?


「それは何かの皮肉でしょうか?」


「どうしていきなりやさぐれた顔に……やっぱり自覚がまったく無かったんですね。

 柏木さんって、スキルとかジョブとか聞いたこともない能力についてはすでに受け入れているのに、探索者としての一般常識にはずいぶん無頓着ですよね?」


 いや、そもそも『パラレル日本こっち』の常識なんて最初から知らないし……。


 ということで、魔力適性とは。

 ダンジョン内部に満ちている魔力に拒絶反応を示さない、つまり体調不良にならない体質のことらしい――のだが。


「でも、それって慣れてしまえば誰でもどうにかなるやつじゃないんですか?

 中務さんだって、ダンジョン入って十分くらいで普通に動けてましたよね?」


「あれはあくまで、私が数年間ダンジョンに潜っていたという『経験』があってのことなんですよ?」


 一般的な魔力酔いの症状というのは、どうやら『船に乗ったことがない人間が、いきなり冬の日本海でズワイガニ漁をさせられる』レベルでキツいモノらしく。


「それも、ダンジョンから出たところで、体に魔力が順応するまでどうやっても収まりまらない症状ですからね?」


「何ですかその地獄は……」


 俺みたいに、車に乗るときは助手席でリクライニングしないと酔うようなタイプの人間には絶対ムリだな。


「もちろん、魔力適性持ちの方は魔力酔いをしないというだけでなく、私の従姉妹のように探索者として大成することが多いんですよ」


 つまり高校野球の有望選手をスカウトする青田買いみたいなものってことか。


「間違いなくこれからも色々とビックリさせるような未来が待ち受けていますがそれでもいいなら」


「今日一日だけで十年分くらいは驚かされているのですがまだ何かあるんですか!?」


 だってほら、今日見せたのなんて『異世界商人』本来の能力じゃなくて異世界転移基本セットに含まれてるオマケみたいな力だけだし。


「てことで、さっそくですけど今日拾ったアイテム――ヌルヌルの買い取りのお話なんですけど」


「たしかにヌルヌルしてますけど言い方っ!

 といいますか、スライム・ローションの買い取りとか私がこちらに所属して一度も報告が無いんですけど――って待ってください! ちょっと待ってください! なんですかこれは!?」


「何ってもちろんヌルヌル……ああ、2、3本なら持って帰って使っていただいても」


「つ、つ、つ、使いませんけど!?」


「そうなんですか? お風呂に混ぜると美肌、美髪効果があるみたいなんですけど」


「ああ、使うって『あっち』方面じゃなくて『そっち』方面の……じゃなくてですね!

 サラッとこれまで知られていない新情報を出してくるのはやめてください!

 といいますか、ツッコミが交通渋滞を起こしそうですので! 本当に一度待ってください!」


 たかだかドロップアイテムを並べただけで大騒ぎな中務さんだった。

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