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サクラサク 第18話 教会と新商品と受付嬢との『オハナシ』

 情報収集をしてから取引先の開拓をすると言ったな? アレは嘘だ。

 と言うよりも今の俺には異世界商店の冒険者ギルドでアイテムを魔石に変換できる(交換比率は非常に悪い……)事以外、交渉するための手札が全然無いじゃないですか?

 どうせなら相手にプレゼン出来る何かが欲しいじゃないですか?

 そう思い、さっそく取引先の新規開拓画面を出したんだけど……手持ちの魔石はおおよそ3000容量。


「1000の地区を二つ選ぶか、2000の地区+1000の地区のどちらかを選ぶか」


 これは迷うまでもなく1000の地区を二つ……いや、まずは一つ開いてみてからだな。

 新しい『取引先』ってくらいだから、先に開いた冒険者ギルドと同じように魔石を消費して某かの品物や能力を手に入れられると思うし。

 後は西と南のどちらを選ぶかだが……これもまぁスラム以外思いつかない南より教会があった西だよなぁ。


「いや、その前に質問して情報を得てからか?

 ええと、西地区と南地区には何があるのかな?」


 ……

 ……

 ……


「……何の返事も無いのかよ!?」


 確かに冒険者ギルドで買い取りしてくれるおばちゃんとか訓練してくれる冒険者の兄ちゃんみたいな人はマップ画面にはいないけれども!


「はぁ……まぁ予定通り西からでいいか」


『よく来ましたね神の子よ。

 (冒険者ギルドの訓練に神職系列の職業が追加されました)』


 そして発見したのはやはり『光神教エタン教会ペンティア支部』。

 てか職業の追加有り難い。


『汝の教会貢献度は『あまり熱心ではない信者』。

 さぁ、神に祈りを捧げなさい。

 ・寄進する(アイテムの購入)。

 ・下級神聖魔法を学ぶ。』


 異世界に居た時はまったくの無縁だった魔法、それも神聖魔法とか言う選ばれし者っぽいの出た!

 寄進……買えるアイテムは【聖水 100容量】【下級回復ポーション 300容量】【下級万能ポーション 300容量】の三つ。

 覚えられる魔法は【軽症の治療 5000容量】【光り輝け! 3000容量】の二つ。


「魔法高ぇな!?」


 ちなみに【光り輝け!】とかいうハゲに助走を付けて殴られそうな魔法は『聖なる光で不死者にダメージを与える』魔法らしい。……それスキル名『ターンアンデッド』で良くね?

 魔法を覚えるには魔石がまったく足りないので三種類のポーションを一瓶ずつ購入しておいた。



~・~・~・~・~



「てことで綺麗なお姉さん!

 迷宮事務所が持っている権力とか利権、このサクラギダンジョンの支配者? 支配人? について色々と教えて下さい!

 あ、もしかして実はお姉さんが身分を隠したギルドマスターだったとか無いですよね? ハゲてないですし」


 いつもより早めにダンジョンを上がり、買い取り窓口でいつも対応してもらっている受付嬢(二十代前半、美人ではあるが俺の好みではない)に質問を投げかける俺。


「わぁ、雑なお褒めの言葉ありがとうございます。

 というかいきなり情報収集とかどうしたんですか? 隣国の工作員に接触でもされました?

 迷宮事務所はクリーンな職場ですので県知事と県警本部を合わせた程度の権力しかもっておりませんしオブラートに包まれたダンジョン産アイテムの売却利権とゴニョゴニョな感じの探索者との癒着……いえ、何でもございません。

 サクラギダンジョン事務所を纏めているのは支配者ではなく支部長、お名前は伏せさせていただきますが普通に写真付きでホームページに乗ってますよ?

 後、私は一般の、ええ、極々一般の受付嬢です」


「説明の全てが胡散臭ぇ……」


「まぁ半分くらいは冗談ですが。

 それで……いきなり妙なことを言い出されたのはどうかされたのでしょうか?

 もしも特別なご相談でしたら奥でおうかがい致しますが?」


 逆に半分は本当なのかよ……。


「というか、それほど面識があるわけでもない学生の戯言にわざわざ時間を割いてくれるんですか?」


「もちろん。学生さんは私と契約した専属探索者、太客候補ですから。

 奥に通せばセット料金以外にも個室チャージ料やお茶のボトルキープ料から30%のキックバックが」


「迷宮事務所ってそんなシステムなんだ!?」


「もちろん半分は冗談ですが」


 思ったより掴みどころのない人だな……。

 近くにいる別の受付嬢に「相談窓口に移動しますので席を外しますね?」と声を掛け先に立ち、俺を奥に案内してくれるお姉さん。

 通された部屋は六畳ほどの無機質な、真ん中に机があり向かい合わせに椅子が二脚ずつ備えられているだけの明るい取調室のような場所だった。


「この部屋には防音が効いておりますので私がどれほど大声を出そうとも……」


「俺が何らかの犯行に及ぶ前提で話すのを止めてもらってもいいですかね?

 えっと、学生のつまらない質問のためにこのような場をご用意頂きありがとうございます」


「クスッ、いえいえ、見どころのある探索者の方をサポートするのも私達職員の仕事ですので。

 そもそも机の上に『あまり他人に聞かれたくない個人的な話があるのですが。もちろん探索者としての話です』と言うメモを出されたのは真紅璃さんですしね?

 それで……ダンジョン内で何か不都合でもございましたか?」


 とても魅力的な笑顔をこちらに向け、そう質問してくる受付嬢。

 ……俺、この人に名乗ったこととか無いはずなんだけど、どうして名前を知ってるんだ?


「ふふっ、初日から魔力酔いもせずダンジョンで活動されている魔力適合者……もっとも、レアリティはコモンだったみたいですが。

 その上毎回二十本ものスライムローションを納品される学生さんですからね? お名前くらいはこちらでも共有しております」


「なるほど、自分でも知らないうちに悪目立ちしていたみたいですね。

 今回は……まぁ不都合というものでは無いんですけどね?

 そうですね、物凄くプライベートな話になってしまうのですが、今現在自分は十五歳の学生としては特殊な環境に置かれていましてですね。

 その環境を改善するために自分の探索者としての有用性をもっとアピールしたい、一目置いて頂けるようにもっと事務所に貢献したいんですよ。もちろんもっとお金を稼ぎたいというのもあるんですけどね?」


「特殊な環境ですか? 是非ともおうかがいしたいのですが……まだそこまで仲良くは無いですもんね?

 有用性のアピールですか……それにお稼ぎたいと。

 失礼ですが、毎回あの量のローションを納入されているのならその何倍もの魔石を入手されているはず。それを売却されるだけでも同じくらいの収入にはなるのでは?

 あと、先程も言いましたように真紅璃さんが有用……有能であろうこと、少なくとも私は理解しておりますよ?」


 目元を細め、そう告げる受付嬢。

 おおう、やぶ蛇……まぁ普通に考えたら魔石の方がドロップ率がいいんだからそれを売らないのはおかしな話だわな。


「あー……魔石の方は色々と使い道がありましてですね」


「いろいろ……ですか?」


「はい、いろいろです」


 視線を合わせ、ジッと見つめ合う二人。


「……そんなに見つめられると子供が出来てしまいそうです」


「高校生相手にちょくちょくセクハラを挟んでくるの止めてもらえますかね?」


「ふふっ、こうして話させていただいているととても高校生を相手にしているとは思えませんが?

 では、どうやって今以上に稼ごうとお思いなのでしょうか?

 取引額を優遇するなどはさすがに私では対応致しかねますが」


「もちろんそんな特別扱いを望むような図々しい事は言いませんよ。

 一つはローションの納入数を今以上に増やすこと。

 もう一つはローション以外の物を納入させていただくこと……ですかね?」

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