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サクラサク 第17話 一人ぼっち、嫌がらせ、新しい決意

 結局その日はパーティメンバーを引き連れてのスライムマラソン。

 ……まぁ三時間後には全員脱落したんだけどな。

 美少女(風味)の隣の人とヤンキーが息も荒く倒れ込んで身動きも取れない姿……ちょっとだけ新たな性癖の扉を開いちゃったじゃねぇか。


 てことで昼飯も兼ねて全員でミーティング中の俺達。


「……別に私があなたより体力が劣っていたとかではなく、ただただ装備品が重くて動きにくかったというだけなのだけれど?」


「そりゃ訓練もなくそんなデカいシールド持って走るのはキツイだろ……

 レザーアーマーだって軽そうに見えて10キロ以上あるだろうし」


 機動隊の訓練みたいな格好で素人が走り回るとか無理ゲーすぎるからな?


「そもそもほぼ立ち止まることもなく走り続けて延々とスライムを狩り続けるとかおかしすぎるからね?

 スライムって『定点狩り(ポップする場所で待機して湧いた魔物を狩ること)』するものだからね?

 君、午前中だけで一体何体倒したの?」


「んー、150弱ってところかな? いつもよりちょい少なめ?」


 最近は魔力慣れした学生があちらこちらでスライム叩きを始めたから邪魔しないように結構奥まで行かなきゃならなくなったし。

 一日で狩れる数が足踏み状態なんだよなぁ。


「普通の学生はグループで一日掛かって100も狩らないのよ!

 ていうかあんた、何なのよあの投げられた林檎をサーベルで受ける曲芸師みたいなスライムの倒し方は!?」


「(たまに走りながら拳で殴り飛ばしてた)」


「よそはよそ、うちはうちだから。

 むしろどうして盾で受けて落ちたのを叩くなんて面倒なことをしてるのかこっちが聞きたいわ」


 そしてヤンキーの声が相変わらず小さい。


「とりあえず……スライムを狩っている間はあなた一人で活動することを認めてあげるわ。

 でも! 絶対に第二層には一人で行っちゃ駄目よ?」


「今のところ僕達じゃ君の真似は出来なさそうだしね?

 それに……たぶんだけど何やら隠してることもあるよね?」


 どこから目線だと言いそうになるが、明石さんのそれは親切心の照れ隠し……果たしてそうだろうか?

 もっとも、最初からこれ以上下層に潜る予定なんて一切ないからいいんだけどさ。

 スライム以外の魔物だと間違いなく狩りの効率が落ちるだろうから。



 そんな、暫定的にではあるがパーティメンバーからもソロ活動を認められた俺。担任に聞かれても安心である。

 四月四週目は連休ゴールデンウイークに入るという事も有り、ダンジョンで活動できた日数の合計は全部で10日間なり。

 月末ついでにこれまでの収入と成長をまとめておくと


・金銭収入(スライムローションの小瓶の売却益)


 初日10本(8000円)+2日目以降は毎日20本(16000円×9日)=152,000円


 学生の収入としては何の文句もない金額ではあるのだが……予想通りクズどもから家賃の支払いとか食費の振込みとか一切無く。

 俺としても最初から連中に世話になる(正確には盗られた物を返して貰うだけなのだが)予定は無かったから何の問題も無いんだけどね? それはそれ、これはこれ。……時が来れば徹底的に仕返ししてやるから今に見てろよ(負け惜しみ)。


・魔石収入


 毎日450個~550個。

 累計 5228スライムより+2644個(ローション売却分)=7872個


 先にも言ったけど四月三週くらいから他の人も狩りを始めたから思ったほど伸びてない。

 まぁそのうちみんな二階層に向かうだろうしそれほどの問題は無いだろう。


・ドロップアイテム


 今のところスライムローションの小瓶のみ。

 毎日130~170個 累計 1512個


 現金にしているもの以外は全部異世界商店(冒険者ギルド)で魔石と交換してるんだけど……もう少し組合に卸したいところである。



 魔石の消費


・倉庫の拡張に1300個


 マス目の拡張 50マス→100マス(100個)→200マス(200個)→500マス(500個) で計800個

 重量の拡張  1キロ→5キロ(500個) で計500個


・取引先の開拓に1000個


 ペンティアの街の東地区の散策 1000個

 追加施設……冒険者ギルド


・職業の追加クラスチェンジに2500個


 冒険者見習い 500個

 【魔物特効 小】【HP上昇 小】【ST上昇 小】

 僧兵 1000個

 【格闘術マスタリー 小】【物理攻撃力上昇 小】【素早さ上昇 小】

 剣士 1000個

 【武器マスタリー(剣) 小】【物理攻撃力上昇 小】【器用さ上昇 小】


 現在剣士の熟練度を上げている途中。



 魔石の残り……3072個


 余裕があるようにも見えるけど、新規開拓でアッという間に消えてしまう量である。



 そんな、思っていたよりも順調な四月も終わり……連休明け。

 ゴールデンウイークの予定? 逆に聞くけどあったと思うか?

 てかさ、この風呂無しのボロアパート……家賃いくらだと思う?

 二万? 三万? チッチッチッ!

 ヒント:近所の小綺麗な、ほぼ新築のワンルームの家賃が四万五千円。


 ちなみに正解は……『七万五千円』でした!

 ヒントが何のヒントにもなってないという……。

 もうね、ポストに入ってた請求書見たときビックリしたわ。

 プラス、共益費で一万五千円取られて実質なんと九万円というね。

 これもう完全に詐欺だろ!?


 どうしてそんなに家賃が高いのか、理由を問い合わせてみたら保証人がいらない日払いアパートだからとのこと。

 それならそれ(日払いアパート)で、共益費が発生するとかまったく意味がわからんのだが……。

 渋々ではあるが大家に家賃を支払ったら舌打ちされたんだけど……もしかしてこれ、異世界に行く前の稼ぐ手段のないままの俺だったら(某コスプレイヤーと同名の)闇金漫画みたいに型に嵌められてたんじゃね?

 てかあいつら、人の金を巻き上げるだけでは飽き足らずここまでするのか……。


「クッ……ククッ……クククッ……」


 自分の口から漏れる低い低い笑い声。

 俺、ただただ普通に暮らしたいだけなんだけどなぁ……。


「もしもここが異世界なら連中全員アレでコレして違う国……

 いかん、思考が完全にならず者のソレになっちゃってる」


 これでも一応は元異世界勇者だからな! 闇落ち、ヨクナイ。

 んー……それにしても身動き取れねぇなぁ。とりあえず欲しいのは……それなりに強い後ろ盾。

 もちろん学生の俺にそんな当てがあるはずもなく。


「もしも俺のレアリティが『★5(スーパーレア)』だったら学校でも迷宮事務所でも引く手あまただっただろうに……」


 ……いや、確かにレアリティは低かったけど……考えとしては間違ってないんじゃないか?

 異世界だと冒険者ギルドのギルマスって間違いなくその地域の権力者だしさ。

 さすがに迷宮事務所が同じモノだとは思わないけど、『探索者』なんて暴力装置を纏めている組織が普通の公務員ってことは絶対に無いはず。

 つまり事務所の……何だろう? 所長? と繋がりを持てれば……。


「まぁそれはそれで何かしらの手土産、相手に提示出来るメリットが無いと相手にされないし……」


 今の俺に出来ることは『スライムローションの大量納入』くらい……ヌルヌルを大量に持ち込んでも喜ばれるどころか嫌な顔されそうだな。

 よし、とりあえず受付のお姉さんから情報収集!

 様子を見てから異世界商人で新しい取引先の開拓でもするか!

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保証人は金さえあればね!
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