サクラサク 第16話 「地獄の狩りの始まりだ!」
ギフト、異世界商人に新たな取引先として『冒険者ギルド』が追加!
こちらで売却しきれないアイテムを魔石と交換することが可能になったうえ、新しく『職業』というシステムも開放され、職業に就くことにより副次効果としてパッシブスキル的なモノも入手出来た。
もっともその内容が【HP上昇】……つまり怪我をしないと体感できないモノと、【ST上昇】……たぶんだけどスタミナ(持久力?)が上がるという効果のうえ、その上昇率が【小】と言う微増なものなので何の体感も出来ないという。
【魔物特効】? そっちもほら、俺が相手にしてるのってスライムだけだし……勝手に飛びかかってきて自重で刺突剣に刺さって死んじゃうからね? あいつ。
一応自身の細かい能力値がわからないかとダンジョンカードの確認もしたけど『レアリティ(★の数)』と『レベル(5のまま)』以外にこれと言った情報は載ってないしさ。
予習として俺の選択できた『冒険者見習い』以外にどんな職業があるのか検索もしてみたんだけど……こちらでも一切の情報は出てこない。
これは情報が規制されてるのか、それとも他の人には無い異世界商店独自のシステムなのか……。
担任に質問すれば解りそうだけどやぶ蛇になりかねないのでこれ以上気にするのは止めておこう。
そしてその職業というか冒険者見習い。
熟練度を最大に! とかどれだけ時間がかかるんだよ……と思ってたら二日(翌日土曜と翌週木曜の二日だから一週間?)で条件クリアの画面が目の前に現れた。
「想像してたのと違ってえらく早いな!?」
倉庫を開いて確認。
入手した魔石の数から考えるとおそらくスライム1000体で習熟完了したようだ。
なにそれ簡単すぎだろ……と思わなくもないが、これ、条件が『魔物1000体の討伐』だとすると結構な手間だよな?
もしも俺もみんなみたいに数名のグループで魔物を退治してたら1000体倒すのにどれくらい時間がかかるか……。
ソロプレイバンザイ! そしてすぐ湧きするスライムバンザイ! よーし、とうさん次の職業に転職しちゃうぞー!
『おっ! この短期間で冒険者見習いを卒業とかなかなか見どころのある新人だな?
そうだな、お前の今の能力だとオススメは……【剣士】【山賊】【僧兵】あたりだな!』
「近接物理オンリーかよ……
てかギルドで山賊を勧めるってどうなんだよ……」
『ははっ! この俺の鍛え上げられた筋肉を見ろよ!
逆にこれで魔法を教えれられる方がおかしいだろうが?
もしも魔法を習いたいなら『魔法使いの知り合い』を見つけろ!
あと、【山賊】はあくまでもそう呼ばれる職業であって本当に山で旅人を襲えって意味じゃないからな?』
「そりゃそうか……じゃなくて!?」
えっ? 俺は口に出していて返答は画面に表示される文字だけど、どうして会話が成立してるんだ!?
などと驚きはしたものの……神様に貰った能力だしそんなこともあるかと自己解決。
てかもしかしてさ
「えっと……剣士で獲得できるバフ? スキル? ってどんな感じなんでしょう?」
『そうだな、剣士だと【武器マスタリー(剣) 小】【物理攻撃力上昇 小】【器用さ上昇 小】だな』
ああこれ、今まで得られる情報量が圧倒的に少なかったのは俺が質問してなかったからか!
ちなみに他の二つで得られるパッシブスキルは山賊が【武器マスタリー(鈍器)】【物理攻撃力】【物理防御力】、僧兵が【格闘術マスタリー】【物理攻撃力】【素早さ】で効果はもちろん【小上昇】。
「これって今剣士を選んだとして……次はその上級職しか選べなくなります?
それとも後日に僧兵を選んだりとかも可能なんですかね?」
『もちろん次も好きに選ぶことが可能だぞ?
むしろ能力値が上がったり知り合いが増えればどんどん新しい職業が追加されるから色々と試すのがオススメだ!』
「なるほど……では今回は僧兵でお願いします!」
『わかった! 料金は【魔石容量1000】! 構わないな?』
「えっと、前回みたいにまけて頂いたりは……」
『ははっ! もちろんビタ魔石一つまからないぞー!』
何だよそのビタ魔石一つって……。
そんな感じで新たな能力に目覚めた四月二週。
もっとも、収入面では『魔石1000個で職業入手→魔物1000体で熟練度最大→(入手した)魔石1000個で新しい職業入手』という新規の取引先開拓はローションの売却魔石だよりの完全な自転車操業となってしまうのだが。
そして四月三週、四月四週となると体にも魔力が馴染み、魔物を狩り始める生徒が増えだす。
もちろん魔物を倒せばみんなダンジョンカード入手するわけで。
俺が一応所属しているという体のグループメンバーはといえば
「何なの? レアリティって顔の良さで決まるの?」
「そんな話は聞いたことがないのだけれど?
それに、もしもそうだったとしたら私が鷹司某の★五つ(スーパーレア)よりも少ないのはおかしくないかしら?」
「何その圧倒的な自信……」
まぁそれを否定できる要素は皆無なんだけどさ。
自慢げな顔の久堂と明石さんが★三つのレア、隣の人とヤンキーも★二つでアンコモンという……。
そんな中★一つで完全に浮いている俺。
『君にはこのグループから出ていって貰おうと思う』
などと言い出されるのも時間の問題……などという事は無く。
むしろ
「真紅璃くん、あなた集団行動って知っているかしら?」
「確かに、今までは僕達が動けなかったから仕方がないけどいつまでもソロ活動はどうかと思うよ?」
などと言い出す始末。
何なの? 顔が良い上に集団行動が出来ないタイプのボッチにも気を使えるとかちょっと自重して欲しいんだけど?
もちろん俺だって仲良しパーティでみんなとキャッキャウフフ……
「とりあえず……殺るか?」
「君はどうしていきなり僕の方を見て物騒なことを言い出したのかな!?」
「だってほら、久堂が居る限り俺には何のチャンスも回ってこ無さそうじゃん? ハーレム的な意味で」
「真紅璃くん、仮に久堂君が死んでもあなたにチャンスなんて無いわよ?」
「明石さん、僕は死なないからね?」
武田○矢かお前は。
確かに明石さんは唯我独尊だし、隣の人は狼ヤンキーLOVEだし、狼ヤンキーは声ちっちゃいしで男に興味のありそうな女の子が居ないから久堂どうこうは関係無さそうだけれども!
「まぁ……あれだ、お誘いはとても嬉しいんだけど……ほら、みんなと一緒に狩りをしてると生活がさ」
「……それはつまりこの私では足をひっぱると、あなたの狩りについて行けないとでも言いたいのかしら?
ふっ……ふふっ……いいでしょう、その安い挑戦、言い値で買ってあげるわ」
「明石さんは相変わらずだなぁ……
まぁ僕も一人だけ装備の違う君の戦い方に興味があるし、試しに今日一日だけでも一緒に行動するってことでどうかな?」
「それはもちろん構わないけどさ。
とりあえず……いつもの狩りの感じでいいか?
ああ後、そこそこ走り回ることになると思うから休憩したい時は早めに自己申告よろしく」
「あのねぇ……私達はこれでも迷宮科の学生よ?
例えフルマラソンをしようが疲れたなんて言うはずがないでしょう?」
「それは明石さんだけだから! 真紅璃、私は言うからね!?」
「(コクコク)」