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召喚された異世界で『(知らない奴が)魔神』を退治したら日本に送り返されたんだけど!? ~『帰還勇者(しょうにん)』はダンジョン大国日本で成り上がれるか?~  作者: あかむらさき
異世界勇者(しょうにん)日本に送り返される。

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第05話 やっかいなお姉さんと探索者登録。 その2

「はぁ。ダンジョンモールに咲く可憐な一輪の花だと思って近づいてみたら。

 まさか『いい匂いがするだけの食虫植物』だったとは……」


「いきなり失礼ですね!?

 あっ、それはもしかして──私のウツボカズラにあなたの――」


「頭に虫でも湧いてんのか」


 金髪美人の口から、そんなオッサンみたいな下ネタ聞きとうなかった……。


 いや、もちろんね? 俺だって金髪大スキーメンだし?

 多少性格に難があろうと! この人のルックス、この先どう頑張っても知り合うことすらできないような美女だもん。


 このまま流れに流されて、美味しくいただかれるのも、男としては本望ではある。

 でもほら、俺だって一応“男の子”だし。

 無職・無一文(借金付き)でヒモになるのは、さすがにちょっと……ねぇ?


「……中務さん。

 もし俺が探索者として、多少なりとも成功したら――その時はお食事に誘ってもいいですか?」


「……もちろんです。

 でも、私がオバサンになるまでにお願いしますね?」


 テーブル越しに交わされる視線。

 気を抜くと、綺麗なアイスブルーの瞳に吸い込まれてしまいそうに……。


「……てことでですね。

 俺、探索者になりたいんですよ。

 十五歳から登録できるってことしか知らないんですけど……いろいろと教えてもらってもいいですか?」


「ふふっ、もちろんです。

 それでは詳しい資料と、登録申請用の書類をお持ちいたしますね?」


 柔らかく、それでいてキリッとしたクールな表情で、部屋を出ていく中務さん。

 クッ、姫騎士属性に加えて秘書属性まで持っているとは!

 あの人は俺の性癖をどれだけ網羅すれば気が済むのか!

 金髪美女、恐るべし。



「熊の子と~熊ん子は~似て非なるもの〜♪」


「なんですかそのいかがわしい歌は……」


 曲に合わせて横揺れしながら、椅子に座って待つこと十分。

 『日本の昔の話』の替え歌に差し掛かったところで、両手いっぱいに書類を抱えた中務さんが戻ってきた。


「では少々長くなりますが。

 ダンジョンの歴史と、迷宮管理局の成り立ちのご説明から」


「本格的に長くなりそうなのでさわり部分だけで勘弁してください」


 俺が受けるのは公務員試験じゃなくて、探索者登録だからね?


「一応筆記試験がありますので必要な情報ではあるんですが……」


 ということで探索者登録。

 正確には、『特定危険区域入域許可証』の発行申請だな。


「柏木さんがおっしゃっていた通り、申請できる年齢は十五歳から。

 殿方にしてはとても可愛らしく……コホン、お若く見えますけど、年齢は大丈夫なんですよね?」


「俺の顔に可愛い要素なんて皆無だと思いますけど、間違いなく十五歳です」


「了解いたしました。

 ……あれ? 十五歳ということは、柏木さんってまだ中学生ですよね?

 ええと、今日は学校はどうされたんです?」


「へっ? 学校?」


 ……学校!?

 完全に頭から抜けてたけど、そういえば俺、卒業間近だけど義務教育真っ最中じゃん! 高校の入試まで三週間ほどじゃん!

 まぁ現状で高校なんて通えそうも無いんだけどさ。


 ていうか俺、住所が変わったから学区も変わってるはずだし。

 かといって、あのクソ爺が転校転入の手続きなんてしてるとも思えないだよなぁ。


「えっと、それがですね。

 ちょっとややこしいというか、物凄く長くなりそうな話でして」


「大丈夫です。一晩でも一週間でもお付き合いいたしましょう」


 さすがにそこまでは長くならねぇわ……。


 そこから始まるのは交通事故から始まる病院でのゴタゴタ。

 クソ爺と親戚連中に身ぐるみ剥がされたことを経由して、今のボロアパートに放り込まれた話へといたる。

 もちろん異世界関連のことは割愛したけどな。


「……なるほど、つまりそちらの主治医の先生――斎藤さんでしたか?

 あろうことか、あなたの義母になろうと企んだと?」


「今の話で引っかかったのそこなんだ?」


「納得は出来ませんが、遺産相続のゴタゴタはどこにでもあるお話ですので。

 あっ! では私のことは義姉おねえちゃんと」


「呼びませんけどね?」


「どうしてですか!?

 あれですよ? 義姉ちゃんが無理ならねぇね、あねさま、ねぇちゃん」


 呼び方の問題じゃ無いんだよなぁ。


「まぁそんなわけでして。

 身分証になりそうなものだって、ギリギリキャッシュカードがあるくらいで。

 住所ですら番地しか知らないんですよねぇ。

 たぶん今住んでるアパートだって家賃はひと月分しか払ってないでしょうし?

 生活費だって今月いっぱい持つかどうかで」


「想像以上に波乱万丈な生活を送られているのですね!?。

 それならなおさら、私の庇護下で甘々の生活――は望まれないのですよね?」


「はい、たいへんありがたいといいますか、あらがいがたいお誘いですが」


「柏木さんの、そのお考え自体は立派だと思いますし、尊重したいとも思うのですが……」


 顔に指を当てたかと思うと、静かに考え事を始める中務さん。


「……わかりました。

 少しだけお時間……おそらくお昼くらいまで掛かってしまうと思いますが。

 本家の伝手で裏から手を回して――コホン、真摯に役所とお話して身分証の発行や学校に関して早急に手続きいたしましょう」


「えっ? ありがたいお話ではありますけど、そんなことが可能なんですか?」


「ふふっ、大丈夫ですよ?

 迷宮管理局も役所も同じ政府機関ですので」


 いや、間違いなく管轄が違うだろうし絶対に無理だと思うけど……。


「他にあてもありませんので、ご迷惑、ご足労をおかけしますがお願いします」


「はい、任されました」

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