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召喚された異世界で『(知らない奴が)魔神』を退治したら日本に送り返されたんだけど!? ~『帰還勇者(しょうにん)』はダンジョン大国日本で成り上がれるか?~  作者: あかむらさき
異世界勇者(しょうにん)日本に送り返される。

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第05話 やっかいなお姉さんと探索者登録。 その1

 ここは相談室――と言う名の六畳ほどの小部屋。

 机を挟んで座るのは、二十代前半の金髪美女。

 そんな女性と二人きり、何も起こらないはずもなく……。


「中務さんのその髪は、まるでおとぎ話に出てくるシンデレラのような」


「……そうですよね。

 私なんて姉二人と継母にいじめられる召使のような存在ですものね」


「……シンデレラはキャンセルで。

 えっと、美しい髪はまるで、太陽の光を受けてキラキラと輝く小麦畑のようで」


「……日本人の主食はお米。

 やはり私など食べるにも値しないと、そうおっしゃりたいんですね?

 ああ、それとも主食ではなく間食、日陰の女とかそういう意味で」


「どないせぇっちゅうねん!!」


 褒めろって言われたから褒めてるのに、ことごとく俺の発言を潰しにくる彼女。

 このお姉さん、見た目だけは絶世の美女だけど、かなりめんどくせぇ女だぞ?


「ていうか中務さんはどうしてそんなにネガティブなんです?

 それだけ美しければ、それこそ小さい頃からモテモテだったでしょうに。

 ああ逆に、モテすぎて褒め言葉が嫌味に聞こえるとかそういう?」


「……はぁ、あなたねぇ……。

 見てわかる通り、この髪色と、この目の色ですよ?

 小さい頃から『鬼子』『異人』などと呼ばれ蔑まれ、虐められてたに決まってるじゃないですか」


 俺の頭の中で、昨日コンビニで立ち読みしてたお姉さんのツッコミ、


『江戸時代か!』


 がリフレインする。


 もしかしてこの国、いまだに鎖国でもしてるのか?

 いや、それにしては英語、外来語も普通に通じてるし……。


「何度も言いますけど、俺の中で中務さんは、これまで見たこともないほどの美人さんなんですよ?

 それこそ、普段なら話しかけるのもためらうくらい遠い存在です。

 そんな女性の声を一度聞いてみたいと思うのはおかしいことでも、罪になるようなことでもないでしょう?」


「本当ですか? それは言い逃れしたいがための方便ではなく、心からの言葉なんですか? 実は私の家に転がり込んでお金の無心。昼はギャンブル、夜は本命の女の家で寝泊まり。その日の機嫌で私を殴ろうとしているのではありませんか?」


「なんなんですかその具体的な被害妄想は……。

 といいますか俺みたいな何の取り柄もない男が。

 中務さんみたいな(見た目だけは)出来そうな女性に交際を申し込んでも『ごめんなさい』されておしまいでしょうに」


「あ、あなたこそ何ですか! いきなり『できる女』なんて!

 さすがにそんな簡単にはやらせませんからね!?」


「そういう意味じゃねぇよ……」


「あと、私はこれまで一度も男女交際というものをしたことがありませんので。

 まずは婚約からでお願いします」


「なにそれ重い……というかですね。

 俺、現状あまり裕福じゃないというか、明日をも知れない程度には金欠でして」


「……つまり殴られたくなければ小遣いをよこせと?」


「どうして『お金がない』から『中務さんを殴る』なで飛躍するんですか……。

 ていうか、俺がここに来た理由をちゃんと説明しましたよね?」


「私に一目惚れしたからですよね?」


 もしかしてこのひと、ビックリするほどポンコツなんじゃ……?


「まぁ一目惚れは間違ってないかもしれませんけど、全然違いますからね?

 探索者になるために、新規登録に来たって受付で説明しましたよね?」


「えっ? 私の何が不満でそんな危険なことをしようとするんですか!?」


 いや、あんたはその危険な仕事を斡旋する組織の職員だろうが……。


「大丈夫です、あなた一人くらい私が養います。

 ほら、昼は博打で夜は飲み屋。

 気が向いたときだけ家に帰ってきて私のことを……だ、抱けばいいじゃないですか!」


 何だその昭和の芸人みたいな爛れた生活は。


「中務さんは俺のことをどんなクズ人間だと思ってるんですかね……。

 未成年者は博打もお酒も出来ませんからね?

 と言いますか、最初は結婚詐欺を疑われてたのに、どこをまかり間違ってあなたのヒモになる話になってるんですか……。

 そもそも俺が中務さんと二人で暮らしたりしたら、間違いなく家から一歩も出なくなると思いますよ?

 あなたのことを仕事にも行かせないで、日がな一日イチャイチャしますから」


「な、なんなんですかその夢にも出てこないようなパラダイスは!?

 わかりました、帰りましょう。いますぐ二人でおうちに帰りましょう。ゴーインゴーインホームです!

 大丈夫です、お金の心配はいりません。いざという時は私の従姉妹に無心しますから。私、これでも貴族なので」


「そういう俺の『身内ダニ』みたいなのはちょっと……。

 繰り返しますけど、ダンジョンに入りたいのは俺であってですね。

 えっと、今日はこれ以上中務さんにかまっている時間もありませんので、五番窓口に行ってもいいですかね?」


「あなたはどうしてそんな酷いことを言うんですか!?

 別にいいですけど、もしここで私に背中を向けたりしたら……後ろから刺すこともやぶさかではないですよ?」


「ちょっと誰か! 警備の人呼んで!!」


 もちろん冗談だと思うけど……この人、目がすわってるんだよなぁ。

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