サクラサク 第12話 翔けるスライムスレイヤー! と異世界商店開店!
おそらくは珍しいものが見れるだろうと勝手に付いてきた大人たち。
そのご希望にお答えして『適性持ちで初めての★一つ』と言うある意味珍しいものを見せてやった俺。
そもそも全員が全員報告してるわけじゃないだろうし? きっと他にも居ると思うんだけどな?
てかさ、そもそも魔力適性の話だけどさ。
別に俺が特別な人間だから魔力酔いしなかったわけじゃなくて異世界で魔力に慣れてたから順応してるだけじゃね?
いや、異世界帰り以上に特別な人間なんてそうそう居ないと思うけれども!
それにしても★一つか……。
もっとも、それに関してはどうでも良いと思ってる俺だったりする。
だってほら、どうしてだか分からないけどギフト。
異世界からそのまま持って返ってきてるじゃん?
どうなってんのこれ? 全部消えたんじゃないの?
そんな、既に違うことに思考を切り替えている俺に対して回りの連中。間違いなく、
『あちゃー……あれだけ騒いだのにコモンだったよこいつ……
でも、このまま放っておいて帰るのも感じ悪いだろうし……どうしよう?』
とか思ってるんだろうなぁ……。
正直このまま付きまとわれるのもうざったいので、
「ええっと……担任、俺って魔力酔いの克服とダンジョンカードの入手はクリアしましたよね?
じゃあ今日はというか次の課題が出るまでしばらくスライム駆除をしてればいい感じですかね?」
「そ、そうね。本来なら新入生、それもコモン……初心者一人での行動はオススメできないんだけど……
うん、真紅璃くんなら何の心配もなくスライム退治を任せられそうだもんね!
じゃあ! 先生たちは先に戻るけど無理しちゃ駄目だよ?
ああ、あと学生のダンジョン活動制限は十七時までだけど帰りのバスの時間とかあるから十六時には外に出るように!」
とっととお帰り頂いた。
そこから一人でスライムを狩り続けること……数十分。
うん、思ったより時間が経ってないんだ。
先程は★一つだったことに関してはどうでもいいと言ったが……あれはただの強がりだ。
……だってだよ!? わざわざ召喚された異世界では何の活躍も出来なかった俺だよ!?
あんなさ、期待を持たされるようなこと言われたら……今回こそはと思っちゃうに決まってるじゃん!
それがこのざまとかもうね、神様に嫌われてるとしか思えないじゃん!
もうね、このやり場のないフラストレーション……スライムにぶつけるしか無いじゃん!?
狩ってる時間よりもスライムを探して走り回ってる時間の方が長かったけれども!
おかげさまでいい汗かけたよ!
……まぁそんなことはどうでもいいとして。
いやね、マジでちょっと八つ当たり気味に、無心で走り回ってたんだけどいきなり、
『異世界商店です。
あなたの背負い袋(50)が満杯になりましたのでオート回収が停止されます』
って書いた画面がいきなり目の前に浮かんでさ。
……えっ? なにそれ? 背負い袋? オート回収? 満杯?
確かに、スライムを突き刺したあと地面に何かが転がり落ちたけど……あれ、どこいった……ああ、あった!
俺が発見したのは直径二センチくらいのサイコロみたいな赤い色をしたガラス玉?
いや、そんなことよりも……『異世界商店です』って何だよ!?
そんな連絡みたいなの異世界では出たこと無かったんだけど!?
特に購入したい物もなかった――というよりも、もし異世界で使ってたままだったら日本の品物がお得感皆無の値段で買えるだけだったから帰宅してからチェックすればいいかと放置してたけど……地球仕様になって何か変更とかアプデとかされたのかな?
確認のため、向こうで使っていた時と同じように『開店』とワードを唱えると目の前に開いたのは見慣れたネットショップの画面……ではなく、どこかの街の地図というか城? 砦? を中心にした俯瞰写真。
中央上部に『城塞都市・ペンティア』って……ここ、俺が店を持った街じゃん!
えっ? 何これ? 使い方が変わったとかそんなレベルの話じゃないんだけど!?
そんな画像の右下にはデフォルメされた男の絵。いや、絵の下に名前って書いてるし、もしかしなくてもこれって俺だよな?
てか吹き出し!
『ふう……今日も疲れた……早く自分の店が持ちたい……』じゃねぇよ!
繰り返しになるけど自分の店は持ったんだよ!
そもそもこれって……どう操作すればいいんだ?
もしかしてこの空撮写真みたいな地図をタップして買いたい物を探せとか言わないよな?
建物として分かるのは城と外壁くらいなんだけど?
チュートリアル的なモノはないの?
とりあえず城をタップ……『伝も無いのに城に出入りなんて出来ねぇよ!』
外壁の門らしき場所をタップ……『おいおい、小さい背負い袋一つで行商に出るつもりか?』
街の色んな場所をタップ……『今はその場所に用は無い』
「何この出来の悪いアドベンチャーゲーム……」
最後に自分をタップすると
『俺の商人ランクは【露店商(下)】。
今出来ることは【倉庫の拡張】と【取引先の開拓】だけだな』
というメッセージと共に右下に『小さく(50)と書かれたカバン』と『誰かと話してる』アイコンが追加された。
……完全手探りとか不親切すぎじゃないですかね?
「たぶん倉庫って言うのはこのカバンのことだよな?」
気を取り直して新しく追加されたカバンアイコンをタップ。
画面に表示されたのは十列×五列の小さな何かで埋まったマス目と、下に書かれた『魔石(十位) ×37』と『スライムローションの小瓶 ×13』の文字。
たぶん魔石の数はスライムを倒した数と同じ……つまり確定ドロップなのかな?
スライムローションのほうは30%くらいか?
「スライムのローション……むっちゃヌルヌルしてそう……
でも体に塗ったらちょっとずつ溶かされそう」
いや、今はヌルヌルとかどうでもいいんだよ!
このカバン……俺は持って無かったけど、他の勇者連中は高確率で持ってたインベントリと同じものだよな?
それもドロップアイテム自動回収が付いてるとか圧倒的な上位互換という。
何にしても取り出せないと意味がないんだけど……魔石の入ったマス目をダブルクリックしたら取り出せた!
「出せたんだから入れることも……
おお! 画面に近づけただけで吸い込まれた!」
素晴らしく使い勝手が良い! ……んだけど、やはり使い方の説明くらいは欲しいと思っちゃう俺だった。