第05話 鷹司邸 その1
予定通り、翌日のお昼すぎに訪れたのは鷹司邸。
というか鷹司邸を含めた、ここに到着するまでに目に入ったいろんなお屋敷。
江戸城を囲むように、ぐるりと配置されたそれらの前を通り過ぎてきたんだけど、一軒一軒の外周だけでも考えられないような距離で。
ほら、広さの単位が全部ドーム球場何個分みたいな?
意味のわからない広さなんだけど?
……ここって東京なんだよね?
もちろん、大阪にだってお貴族様のお屋敷はあったんだよ?
でも、それと比べても圧倒される広さと言うかさ。
「お屋敷と言うか御城の集合住宅地?」
「確かに、二の丸・三の丸の代わりが別館だと考えればそんな感じですね」
「さすがに天守は無いんだけどね?」
『カズラさんって本当にお姫様だったんだなぁ』と、初めて実感。
「ちなみに、ショウコさんのお家もこんな感じなんです?」
「まさかまさか。
うちは山の手にあるこじんまりした館ですよ?」
それでも『家』じゃなくて『館』なんだ……。
よく手入れされた広大な庭を通り抜け、到着したのはこれまた立派な門の前。
「「「お帰りなさいませお嬢様」」」
ある意味メイド喫茶のような挨拶でお出迎えしてくれたメイドさん……というより奥女中さん?
その集団の中から数名が進み出てきて、二条城のような内装のお屋敷を案内される。
「……天井とか襖とか、色んなところのお絵かき――虎とか龍とか妖怪の視線がこっちに向けられてるみたいで凄く落ち着かないんですけど?」
「夕霧くん、さすがに葛さんでも家の中に妖怪の絵は飾らないと思うわよ?」
これ、そこそこ人の気配がする昼間は良いけど……夜になったらトイレに行ける自信がないんだけど?
「ふふっ、大丈夫よ? トイレもお風呂も二人一緒だもの」
さすがにトイレは一緒に入らねぇよ……。
途中で男女で二手に別れ、連れてこられたのはもちろんカズラさんの私室ではなく――
「いや、ここどこです?」
「男性用のお着替え部屋です」
どうやらこの後に開かれるレセプションのために衣装替えをさせられるらしい。
* * *
「おお! さすがカズラさん! 馬子にも衣装ですね!」
「お兄ちゃん、それは褒め言葉じゃないからね?」
『貸衣裳(?)』のはずなのに、何故か俺の体にジャストフィットする明治・大正感漂うクラシックなスーツに着替えた俺たちが連れてこられたのは敷地内に建っている、鹿鳴館のような別館。
待合室で待つことしばし、やってきたのはこちらも時代がかった、ヴィクトリアンなドレスを身にまとった女子陣。
西洋人というか外国人はいないのに、文明としてはそれなりに受け入れてるのはいかにも日本人って感じだな。
ドレスを着こなすカズラさん、そしてどんな衣装でも似合う黒髪美少女のシズカさん、どちらかと言えばドレスより男装のほうが似合いそうなアテナ。
そんな三人の美女、美少女を嘲笑い……はしないけれども。
一人、圧倒的な輝きを放つのは
「あまりこういう場に出ることは無いのですが……どうでしょうか?」
もちろんショウコさん。
いや、もうね。
「……お姫様とか妖精さんとかそういうの通り越して、こんなのもう女神様じゃん!!」
こと、ドレスという括りの中では無敵だろこの人!?
思わず彼女の手を引き、そのまま抱きしめてしまう俺。
「カズラさん、ちょっとお部屋と言うかベッドを貸してもらっても」
「お兄ちゃんはカズの部屋でいったい何をするつもりなのかな!? かな!?」




