第04話 情報収集と初めてのダンジョン! その2
そんな、ナンバのど真ん中にあるセンニチダンジョン。
正確には『センニチダンジョンドーム』の外観なのだが。
「俺の知ってるダンジョンとは大きくかけ離れてるんだけど……」
確かに、さっき見た本にも『迷宮管理局の施設が併設』って書いてあったし?
まさかこんな街中で、ダンジョンの入り口がぽっかりと口を開けてるとも思ってなかったけどさ。
その見た目は完全に円形競技場。
大きく開け放たれた、ガラス張りの入り口から見える施設の中には窓口がずらりとならび、デカい役所か総合病院って感じである。
出入りしてる人たちにしても、いわゆる『冒険者』みたいな連中。
鎧兜に剣を佩いているだとか、ローブに三角帽子などという『いかにも』な人間など誰一人見当たらず。
もちろん外見的には恵体(ゴリラ体形)であったり、目つきが鋭かったり(人相が悪かったり)はするんだけどさ。
てか、さっきグラビアで見たような女性探索者……どこ?
「あれ? もしかして、この世界のダンジョンって……本当に、あの本に載ってたみたいにデートスポット扱いなの?
でも、中に魔物がいるのは間違いないんだよね?」
異世界のダンジョンとはかけ離れすぎた光景に、少々頭が混乱中の俺であるが……このまま入り口で立ち止まっていても寒いだけなので、さっさと中へ入ることに。
当たり前だが施設の中は外から見えていた通り。
ずらりと並んだ窓口カウンター。
そしてその前には大量の椅子が並べられている。
「さすがに国が経営してる施設だけあって、俺が見たことのある冒険者ギルドとは規模が違うな……」
まだ午前中だというのに――いや、逆に午前中だから人が多いのか?
結構な数のある窓口の前にはすでに誰かが並んでいて。
「……これ、このまま待ってても呼び出しとかしてくれないよな?
かといって記名しておく場所も番号札も見当たらないし……」
キョロキョロとあたりを見渡すも、これといって目に付くモノは何も……あっ、向こうにインフォメーションブースがあるじゃん!
入り口を入ったすぐの右手。
半円形のカウンターを挟んだ向こうに三名の女性職員。
全員、齢は二十代半ばくらいだろうか?
パッツン姫カットの巨乳美人。
クール系の金髪スレンダー美人。
おっとりほんわか系のぺったん美人。
これ、出版社は『お嫁さんにしたい探索者』ではなく、『結婚したい管理局職員』の特集グラビアを出すべきなのでは?
窓口とは違い、そちらは運良く三人とも手すきの状態。
誰かに先を越されないように、早足で俺が向かった先は――
「美しい人、よろしければお名前だけでも教えていただけませんか?」
「えっ? 私の前に……といいますか、何ですか!?」
俺の性癖にピンポイントに刺さったクーデレ系金髪お姉さんの前。
ていうか、どうしてこのお姉さんはそんなに挙動不審に?
隣の二人も唖然とした顔してるし。
「あれ? ここってインフォメーションですよね?」
「えっ、ええ。それであっておりますが……」
返ってきたのは何故か歯切れの悪い返事。
「……申し訳ありません、ご質問を聞き逃してしまいまして。
もう一度お願いできますでしょうか?」
「あっ、はい。探索者の新規登録はどこでやればいいのか教えていただきたくて」
「……私には先ほどとまったく違うことを仰っているように聞こえたのですが。
新規の登録ですと、五番窓口に」
説明してくれるお姉さんの言葉を遮るように、隣のパッツンさんが意地悪そうな笑顔で言葉を重ねてくる。
「あら、せっかくだし中務さんが担当して差し上げれば?」
「はい? いえ、しかし今日の私は案内業務となって」
「ふふっ。ここに立っていても、あなたに話しかけてくる人なんて滅多に……これまでまったくいなかったんだから問題ないでしょう?」
あれれー? なんだかお姉さんたちがギスギスしはじめたぞー?
これってもしかして、俺が入ってきた瞬間から(性的な意味で)目をつけられてたとかそういう……ないな。
いきなり重くなった空気の中、ため息をつきながらもインフォメーションから出てきた金髪さん改め『中務』さん。
「……わかりました。ではこちらはお二人にお任せしますね。
お待たせいたしました、ここからは私、中務がご案内させていただきます」
こちらに小さく会釈した彼女の案内で五番窓口――ではなく、施設の二階にある『相談室』に向かうことになった俺たち。
「格好の悪いところを見せてしまい申し訳ありません」
「えっ? いえ、確かにちょっとビックリはしましたけど……。
やっぱり美人だとああいうイジメ的なことされるんですね?」
「……もしかしてからかってます?」
「いたって真面目ですが?」
ていうか、今の会話のどこに『からかい要素』があったのかと。
「一つお聞きしたいのですが、あなたはどうして三人の中で何の迷いなく私の前に来られたのですか?」
「もちろん中務さんが一番タイプの女性だったから――この答えだとセクハラになっちゃいますかね?」
「やっぱりからかってますよね?
私、金髪ですよ? 目だって青いですし」
「どうしていきなり自慢話を始めたんです?」
「えっ?」
「えっ?」
「あなた……もしかして金髪が好きなんですか?」
「それだとまるで髪以外に興味が無いみたいですけど……全部ひっくるめて中務さんみたいなお姉さんがタイプですよ?」
「そうですか。ふふっ、物好きなんですね?」
……せやろか?
むしろ姫騎士系美女が嫌いな男を探すほうが難しいと思うんだけど?
相談室の扉をくぐり、向い合せで座る中務さんと俺。
「それでは先程のお話の続きなのですが」
「はい、探索者の新規登録の」
「いえ、そちらではなく。
あなたが本当にこの髪と目の色に忌避感を持っていないかどうかの確認の方です」
「あっ、その話まだ続いてたんだ」
「そうですね、もしもそれが嘘だとわかれば結婚詐欺で告訴しようと考えておりますので」
「なんで!?」




