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サクラサク 第11話 『初回限定自分ガチャ』

 そろそろ誰も覚えていないかも知れない『TV版E○Aのエンディング』みたいな状況に困惑顔の俺。


「……ええと担任、詳しい状況説明をお願いしてもいいですかね?」


「確かに私はあなたの担任だけれど! 普通の生徒さんは担任教師のことを先生って呼ぶんだよ?

 あっ、もしかしてだけど新任美人女教師に惚れちゃって特別感をだしたいとか」


「寝言は寝てから言え」


「辛辣!?

 ……そうね、ちょっと長い説明になっちゃう」


「三行でよろしく」


「無理だからね!?

 ええと、まず最初に今回の探索者実習の目的は知ってる……どうしてそんな不思議そうな顔をしてるのかな?

 あなた、自分の希望でうちの学校を受験したのよね? そこは大丈夫よね?」


「はい、間違いなく受験しました! ……商業科を」


「待って、ちょっと待って。えっ、あなた……受ける科を間違えたの!?

 うちの学校だと迷宮科って普通科よりも狭き門なのによくそれで合格したわね!?」


 いや、間違えたんじゃなくてたぶんパラレルな世界……俺の暮らしてた世界では間違いなく商業科を受験してたんだよ。


「どうりで所々会話が食い違ったり基本的な事をあまり知らないはずね……」


 ということで担任の初歩の初歩からの説明が始まる。


「普通ならこんな話は受験前に中学の先生とする話なんだけど……

 まず真紅璃くんが何かの間違いで通っている迷宮科。

 これはダンジョンからの資源採集者として将来日本の未来を支える! ……かもしれない探索者を育てる学科である。

 ここは大丈夫よね?」


「そうですね。担任と俺のモチベーションに大きな落差はありますけどOKです」


「ああ、もしかして中級探索者から許される一夫多妻狙い……じゃなくて、そもそも勘違い入学だもんね。

 あなた、落ちた生徒さんが聞いたら助走つけて殴られるわよ?

 そんな迷宮科の選ばれた精鋭たち。

 でも、普通の人間はダンジョンに入ると『魔力酔い』と呼ばれる状態異常でまともに活動が出来ない。

 だから迷宮科の生徒の最初の目標の一つ目は『体を魔力に慣らす』こと。

 しかし! 極々稀にではあるけど最初から魔力に順応した人間が発見されるの。

 それを『ダンジョン適合者』と呼ぶんだけど……ここまでは大丈夫?」


「はい、話の内容は理解出来ます。担任、説明が上手ですね?

 でも、その最初のワンステップ(魔力酔いの克服)が飛ばせたからと言って他人に祝福されるほどのことだとは思えないんですけど?」


「迷宮科の教師が迷宮についての説明が下手だったらお仕事にならないからね!?

 なるほど、真紅璃くんが怪訝な顔をしてたのはそこだったのね。

 ええと、それはこの魔力酔いを克服してからの二つ目の目標が関連してくるんだけど」


「確か『スライムを退治する』でしたよね?」


 それで入手できる『ダンジョンカード』ってのがイマイチよくわからないんだけど。


「よく覚えてたわね? ……もちろん褒めるような事ではないんだけどね?

 ダンジョン素人でも倒せる魔物がスライムってだけで最初に倒す魔物はなんだって構わないんだけど、それで入手出来るダンジョンカード。

 一部の人達からは『初回限定自分ガチャ』とか呼ばれてるそのカードを見れば『成長度』……レベルや能力値が確認できるのね?」


 なるほど。異世界で言う所の『ステイタスオープン』だな。


「……いや、それだけの機能なら『ガチャ』なんて呼ばれるのはおかしくないですか?」


「おお! 思ったよりも鋭いわね!

 そうなのよ。それ以外にも表示される項目があってね?

 それが『天賦』と呼ばれるモノで『★の数』で表されてるんだけど……所謂レア度ってやつね」


 なるほど。引き直しの出来ないカードで自分のレアリティが決定しちゃうとか……確かにガチャだわ。


「一番多いのはもちろん★一つ。正式にはシングルスターなんだけど……一般では『コモン』と呼ばれてるわ。

 これが全体の六割。次の★二つがダブルスターで『アンコモン』。割合は三割五分ってところかしら?」


「つまりほとんどの探索者はそのどちらかってことなんですね」


「そうなのよ。そこから先は滅多に居ないんだけど……

 ★三つがトリプルスターの『レア』、★四つが『ハイレア』、★五つが『スーパーレア』で、今のところ世界で確認されている最高は★五つね。

 日本にも三人いるんだけど、さすがの真紅璃くんでも知って……あれだけメディア露出もしてるのにもしかして知らないの!? 鷹司たかつかさかずらさんとか下手なアイドルよりも色んな媒体で見ると思うんだけど!?」


 もちろん知らないです。


「……っと、話がそれちゃったわね。

 まぁそんな天賦なんだけど、コモンならレベル二十まで、アンコモンで三十、レアなら四十と★の数により到達できる最大レベルが変わるのよ。

 そして、ここで最初の真紅璃くんがダンジョン適合者だった事をおめでとうとお祝いした話に戻るんだけどね?

 これまでに報告された『ハイレア以上』の探索者全員がダンジョン適応者だからなの」


「なるほど……まぁ小銭稼ぎが出来れば問題ない自分にとっては関係のない話ですね」


「まさかの向上心皆無!?

 レアの探索者でも年収数千万、ハイレアなら軽く億り人、スーパーレアに至っては国にもよるけど国民的英雄なんだよ!? ……まぁレア以上の探索者はバトルジャンキーになりがちで死亡率も高いんだけどね?

 でもほら、そのへんは内助の功的な? 先生、影に日向に支えられる女だから!」


 うん、何にしても俺には関係のない話だな!

 ……と、ここで終われば夢のある話だったんだけどさ……。


「さて! それじゃあ……ここまできたんだし?

 ついでにスライムを退治してダンジョンカードを入手しておきましょうか?」


 というワクワク顔の担任の一言で全てが始まった。

 この人、まさか本当に生徒を狙ってるとか……ないよね?


 真っ直ぐに伸びる工事中のトンネルのようなメイン通路。

 そこから細い枝道に入っり、数十メートル先に直系三十センチほどの半透明のわらび餅のような球体――数匹で屯するスライムを発見。


「……というか、今更だけど真紅璃くんのその装備は何なのかしら?

 あれ? 盾は? どうやって飛びかかってくるスライムを受け止めるつもりなのかな?」


「彼女相手じゃあるまいし、飛びかかってくる魔物を受け止めるなんてしませんよ?」


 ……もちろんジャンプして抱きついてくるようなアクティブな彼女なんていたこと無いんだけどな!

 てことでスライムの攻撃方法。

 これまでも何度も出てきたように『近付いてきた相手にジャンプしての体当たり攻撃』。

 もっと詳しく言うならば『半径二メートルくらいの距離まで近づくといきなり顔に向かって飛びついてくる』と言うもの。

 つまり、簡単な倒し方は『刺突剣エストックを構えてスライムに近づき、飛びかかってきた所で半歩下がりスライムが落下している所を突き刺す』である。


「ああ! そんな無造作に近付いたら顔にぶち当たられて下手したら脳震盪!

 そのまま乗っかかられて窒息死することも……って何なのその動き!?」


 近くに居た四体をまとめて順番に処理する俺。十秒と掛からない簡単な駆除作業である。


「おお! 何か浮いてる! そしてくるくる回ってる! もしかして……これが『新しい俺の仮面ペルソナ』?」


「なんだろう……真紅璃くんの動きに何となく既視感があるんだけど……

 ていうか何なのよペルソナって……

 それがダンジョンカードだよ? 手にとって! そして先生にも見せて?」


 浮かんでいるカードを『パシッ!』とカッコよく手に取り、さっそく書かれている内容を確認。

 うわ、本当に俺の名前が書いてある……何なの? ダンジョンちゃんはストーカーなの?

 レベルは……1か。異世界からこっちに戻る時に初期化されるとか言ってたもんな。

 てかさ、スキルが(そもそも俺は持ってなかったから)無いのは聞いてた通りなんだけど……


『ギフト・異世界商人(露天商)』


 って書いてあるんだけどそれは一体……。


「早く! 早く! 真紅璃くん!」


「うっさいです。

 というか……レアリティって名前の上にある★マークなんですよね?」


「そうだよ! どう? どう? ハイレア? スーパーレア? もしかしてそれ以上だったとか!?」


 いや、普通に★一つしか無いんだけど……。

 覗き込むようにカードを見る担任。そしてみるみる落ちてゆくテンション。


「……」「……」


 いや、何か言えや!

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★一つのレアリティは別にして「異世界商人」に誰も突っ込まないだと!? よくあるギフトなのだろうか。
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