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第101話 アテナの日記。 その3

 迷宮科を選んだ理由を誇らしげに説明していた仁王院くん。

 ……いや、君って豪俵さんっていう婚約者さんがいるよね?

 それ、彼女に聞かれたら血の雨が降るんじゃないかな?


 そんな彼の話の着地点は、なんとまさかの御本人登場!

 かーらーのー『追いかけていたアイドルの婚約宣言』になるなんて、いったい誰が予想できただろう?

 あまりの衝撃に、いろいろな液体を盛大に撒き散らしながら走り去っていった仁王院くん。


「ということで続きまして、二番の久堂さん。どうぞ」


「えっ? まさかの何も無かったていで話を進めるんだ!?」


 そこから始まるワチャワチャした小芝居。

 年齢も性別も違う四人なのに妙に仲が良さそうで、中学時代からまともな友達も居なかった僕は少しだけ嫉妬してしまう。

 でも柏木くんに『カズラさんより色気がある』なんて言われ、思わず心臓が跳ねる。


 ……うん、我ながらなんてチョロインなんだろう。


 でも仕方ないよね?

 この体になってから、『カッコいい』とか『イケメン』って言われることはあっても、可愛いとか美人とか、ましてや色気があるなんて一度も言われたことがなかったんだから。


 しかも比べられた相手が、あの鷹司葛さんだからね?

 女なら、それで舞い上がらない方がきっとおかしいと思うんだよ。


 そんな、久しぶり――もしかしたら初めてかもしれないドキドキとした気持ちに、戸惑っている僕のことなど知りもせず、気安い距離感で話しかけてくる柏木くん。

 何なのこの『特定の女子』にだけ、やたら深く刺さるタイプの女たらし。


 病気のこともあり、全てを拒絶するようになった明石さん。

 若くして最恐と呼ばれる探索者、さらに侯爵家のご令嬢という肩書を持つ鷹司さん。

 管理局のお姉さんなんて金髪に碧眼だよ?


 そんな彼女たちと一緒にいても気後れもせず。

 むしろ鷹司さんなんて、あんなに邪険に扱ったら『物理的に』首が飛んじゃうかもしれないのに。


 きっとあの、『憐れまない、敬わない、物怖じしない』自然ニュートラルな態度で来られて、戸惑っているうちに心を許しちゃったんだろうなぁ……。


 だから。これまで意識したことすらなかった、自分の『女の部分』を無理やり引っ張り出されちゃったのも仕方ないことだと思うんだ。

 僕のことを男だと思っている彼に、こんな感情を向けるのは八つ当たりだって分かってる。


 分かってはいるんだけど……ものすごい腹立つっっ!!

 こんな気持ちにさせるくらいなら!

 どうして一番最初に僕のことを見つけてくれなかったのさ!


 目の前で他の女とイチャイチャしている彼の姿に、どうしようもなくモヤモヤしちゃって。


 衝動的に、僕がまだ女の子だった頃の写真。

 小学生だった頃の自分の写真を彼の前に差し出してしまう。

 ……って、いきなりそんなもの見せられても意味がわからない――


「……ふむ。スポブラの似合いそうな短髪ボーイッシュ。

 歳は……11、12ってところかな?」


 えっと、彼はどうして脈絡もなく差し出された写真に、何の疑問も持たずに感想を述べてるのかな?


「小悪魔系というかメスガキ系。

 生意気そうな、それでいてこっちのツボを押さえたその瞳……俺は嫌いじゃないぞ。

 顔つきとか雰囲気が似てるし、もしかしてお前の妹さんの写真か?」


 『スポブラが似合いそう』ってどういうことなのかな?

 どうして『小悪魔系』からメスガキって言い直したの?

 『生意気そうな小学生が嫌いじゃない』って、そこそこの問題発言……ま、まぁ悪い気はしないけどさ!


「えっとね、実はこれ……僕なんだ」


 さすがに、写真の女の子が自分だと明かすときは少し怖かった。

 そんな僕の気持ちも知らず、サラッと冗談で流した挙げ句、その原因まで言い当ててしまった彼。


 いや、どうしてそんなことまで分かるのさ!?

 ……どうやら当てずっぽうだったみたいだ。


 そこから僕がこの体になった理由の説明。

 おそらく『ダンジョンで見つかった宝石』が原因で、従弟と性別が入れ替わったという馬鹿げな内容を伝える。


 もちろん、それだけで何かが解るとは思っていもいない――えっ?

 魔道具? 起動のための語句? 呪いのアイテム?

 ちょっと何を言ってるのかわからないんだけど、もしかして彼はこういったトラブルの専門家……もしかしたらその考えは正しいのかも?


 だって明石さん。

 僕みたいな、直接会ったことのない人間ですらしってるくらい有名な、治療法が見つからなかった彼女の『体が腐る病気』。

 それなのに今の彼女は嫉妬するのもバカバカしいほどの美しさだもん。


 ……これってたぶん、その治療に柏木くんも関わってるよね?

 そんなことを考えている間にも話は進んでいて――


「んー、何にしても調べてみないとわからないことだらけだし。

 久堂? 原西? に問題が無いなら『鑑定』せてもらってもいいかな?」


「今は久堂でいいよ。

 べ、別に? 見せるのは構わないんだけど……その、場所的にほら……」


 いやいやいや! 構わないどころか問題しか無いんだけど!?

 僕、君のことちょっとだけ気になりだしたって言ったよね!?(言ってない)

 それなのに、胸の真ん中に貼り付いてる宝石を見せろとかどういう了見なのさ!?


 もちろんこの体をもとに戻す方法が見つかるかも知れないなら、見せる以外の選択肢は無いんだけど。

 でもそれにしたって言い方があるよね!? 確かに今の僕の体は男だけれど!!

 ……まぁ脱いだんだけどさ。


 最後の抵抗に『突起物』だけは見せまいと、絆創膏を貼って彼の前に出たらわけのわからない口論が勃発!!

 延々と僕の胸に張られた絆創膏を『剥がせ!』『剥がさない!』のやり取りを繰り返す。


「はい、お兄ちゃんとナニガシくんがわけのわからないおっぱい談義を止めるまでに半時間かかりました」


 ……鷹司さんの呆れ顔に、目をそらすしかない僕と柏木くんだった。

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