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所謂、一つのセーブポイント的お話

 人間と妖怪の禁断の恋愛。

 


 そんなところを考えているのかもしれないが、違う。

 このままでは北の魔王が喜ぶ、もといど変態ゴーレムエメスが喜ぶ展開にしかなりえない。

 と言うか、きつねのさん、いたちおさんやたぬきちさんは恋愛対象になリえなかったんだな。


 俺が妖怪の世界の事なんて知るよしもないんだけどね。

 これは俺の為でもあるし、きつねのさんの為でもあるんだよ。



 きつねのさんは少し吹っ切れた表情を見せた。

 賢い子だから、分かってくれたのかな。

 ごめんな?


「…………う、ウチ。諦めませんから、マオマオ様の事……」


 おっと、なんかきつねのさん、違う方向に成長しちゃった感じじゃねぇか、違う。そうじゃない!


「きつねの。我の前でマスターに色目を使うという事、それ即ち、我に宣戦布告をしていると理解したり、まさかとは思い! 受けも責めもできると宣言せり? 我とキャラ被りなりけり」


 いや、全然違うよ?

 お前とはきつねのさん一緒にするなよ。

 まあ、きつねのさんの場合、蘆屋道満の式神になってから、異性との出会い的な物がなかったんだろう。そして女の子の式神は恋愛対象じゃなかったと。


 他にも女の子が沢山いる中で俺を選んだ理由は多分、大人だからかな?

 きつねのさんは甘えん坊だ。


「……う、ウチ! こればっかりはエメス姐様には負けませんから! いくらエメス姐様がマオマオ様と先に知り合った仲だったとしても、そんな事は関係ないですから! ウチ、こんな気持ちになったのは六百年間で初めてなんです。だから、ウチは負けませんから!」


 ピキっとエメスの額から音が聞こえた。そして、きつねのさんは睨みつけるエメス。

 不良みたいな睨みつけるエメスのその姿はもはやレディース。


「きつねの、我、少し聴覚機能に不調があると発言せり、今きつねのが我とどちらがマスターの性玩具になるか競うと来けり? いかに?」

 

 いや、お前の聴覚機能完全に壊れてるよ!


 そう、ここできつねのさんとエメスにプチ確執が生まれた。

 その後きつねのさんは俺の後ろに隠れるとエメスに舌を出した。



「……くっ、男の娘、ぶりっ子キャラを通すのであれば……」


 ……どうした? そこ負ける要素なのか?


「我は、今のマスターに我が責めで、女の子同士の……くっ、またしても思考にノイズ……」

「あれあれ? エメス姐さん、顔色悪いですよぉ?」


 きつねのさんに煽られて憤慨するエメス。

 

 でもこれ冷静に考えると、魔物ランク的には完全にきつねのさんの方が上なんだけどな。

 

 底辺争いをしてくれているのってさ。

 ほんと平和だなぁ。


「……ご主人、さっきからきつねのばっかり撫でているのだぁ! 僕も! 僕の事も撫でていいのだぁ!」


 犬は嫉妬深いという。ガルンは俺の横にきて頭を差し出してくるのでやむなし撫でる。

 

「……気持ちいいのだぁ、ご主人は撫でる天才なのだぁ!」

「うわー、嬉しい才能だなぁ。もうきつねのさんもエメスも、遊んでないでさっさとバンデモニウムに行くよ? ガルンまで混ざってきて大分カオスな事になってきたじゃねーか、ほら先行するアズリたんにおいてかれるぞ!」

 

 たぬきちさんの手を引いて先を進むアズリたん。

 ……そして、こいつは何をしているんだろう?


「……アステマさん、お前は何してるん?」


 アステマが何故か俺の前まできて少し屈んで頭を向けているのだ。

 これは、もしかして私も撫でなさいよ! 主ぃ! とかいうかなりウザいやつなんだろうか?

 

 ……とりあえず、撫でてみるか。


「ふ、フン! 本来なら、私の頭を撫でるなんて主でも許さないんだからね! ガルンがそこまで言うから撫でさせて上げたの! 中々いいじゃない」


 どんだけ仲間はずれ嫌いなんだよコイツ。

 

 そうなると……。

 

「マスターぁああ! 我は? 我の頭とは言わず、胸でも尻でも好きなところをマスターのその卑猥な小さな女子の手で撫でくりまわす事、我は厭わず! マスターがメスガキになった時、マスターを殺して我も消滅しようかと何度となく考えり、されどあのシレイヌスなるクソビッチを滅してからと……が、今となればマスターを責める我もまた一つの真実なり!」


 何を言っているんだこいつは、とりあえず頭撫でるか。

 

 …………そう、エメスは驚き、顔を真っ赤に染める。

 

 だから、こいつの恥じらいはどこにあるん?


 俺たちが遊んでいる間に、アズリたん達は遠くから叫ぶ。


「クハハハ! マオマオよ! バンデモニウムが見えてきたぞぉ!」

「…………おぉ! って俺には見えないなぁ、ズームでもできるのかアズリたん」

 

 アズリたんの視力に普通にドン引きしながら俺たちは進む。


「アズリタン様、千里眼の持ち主なのですか? 私やきつねのでもまだ集落のような物は見つける事ができないのですが……やはり、魔王であらせられるアズリタン様はすごいですぅ! 感動です!」

 

 褒めるたぬきちさん。

 それはそれは喜ぶアズリたん。

 そしてアズリたんはたぬきちさんに抱きつく。

 

「クハハ! たぬきちめ! 憂やつよ!」

「こんなに愛されたのはアズリタン様が初めてです。もう、私、道満様の家来じゃなくてもいいかも」

 

 

 外から見ると姉に甘える妹の図なんだが。




「……………………仲良い事はいい事だな。おっ、流石に山を越えると俺でもバンデモニウが見えてきたぜ! みんなあと少しだ。とりあえずオバキルさんとフリーゼさんかな? 炎の魔法で照らしてくれてる」

「もう、あの二人は優しいんだから! デーモンらしすぎるのよ。私も、ちょっとは見習わないとね。ふふん」


 デーモンって心優しい種族なん? もう意味わかんねーな。


 エメスに肩車されたガルンはモグモグとおにぎりを食べている。

 俺の横にはきつねのさんが並んで歩き、目が合うと嬉しそうに俺を見つめてくる。可愛いんだけどなぁ、この子なんか色々重そうな子だよなぁ。

 

 遠くの炎の魔法をみたきつねのさんは、


「あれはかなりの強力な炎の術に見受けます。あの者達はかなりの使い手、大丈夫なのですか?」


 きつねのさんでも分かるのだろう。

 あの二人はアズリたんクラスの力を持ったデーモンだからな。

 

 客観的にあんな魔物が仲間とか安心そのものだな。


「……あの人達ね。多分魔王種だと思われるデーモンなんだけど仲間だよ」

「あの者達が、クロネコに匹敵する……ううん。う、ウチだってマオマオ様の為ならもっと凄いんですから!」


 ちょっとクロネコとオバキルさん達とどっちが強いのだろう?

 そんなことを考えていた、俺をみてきつねのさんが嫉妬した。


「マオマオ様ぁ! クロネコの事考えていたでしょう! ウチのことを考えてください! ウチの方がクロネコより有用なんですからぁ!」


 独占欲の強い彼女のようだ。

 まぁ、きつねのさんは男の子で、今は俺が女の子なんだが、


「……いやいや、デーモンさんは凄いなって思ってさ」


 それを言うと、アステマが横に寄ってきて、もっと褒めて褒めてオーラを出してくる。


「ふふん!」

「アステマ、お前以外のデーモンの事だからな、勘違いするなよ。痛っ!」


 俺の辛辣な態度にアステマは涙目で腕をつねってきた。


 そんな風に戯れ合いながら下山した先。

 大きな看板みたいな物で、デーモン達の言語で“おかえりなさい! アズリタン様、マオマオ様“と書かれている。そして集まるデーモンさん達、暇だったんだろうな。 


 アプリのアップデートで大体の言語に対応したのは素直に凄いな。

 

「怪我はなさそうだな。魔王アズリタン、真威王マオマオ」

「おかえりなさいませ! お疲れでしょう宴の準備をしてますよ」


 フリーゼさんはアズリタンに俺、そしてモン娘に妖怪も抱きしめて歓迎。

 

「ただいま帰りました皆さん」


「「「おかえりなさい! おかえりなさい! アズリタン様、マオマオ様!」」」


 デーモンさん達、めちゃくちゃ歓迎してくれるのである。

 


「宴も凄いありがたいのですが、その、少し休憩させてもらったらザナルガランに向かう事にします」


 そう、俺の言葉にデーモンさんたちが一瞬固まり、そして真顔になる。

 

「フハハハ! 我らデーモンの力、存分に振おうぞ? 盟友アズリタンの為ぞ、皆構わぬな!」


 パリピの仲間意識の強さは半端ではない。今まで歓迎ムードから次はジェノサイドムードに変わって雄叫びを上げる。

 これこれ、これが俺の知るデーモンの姿だわ。

 

「クハハハハ! その気概、元気、共によい! しかし、これは余の国の問題である。これ以上は構わぬで良い」

 

 アズリたんは腰に手を当ててバカ笑いをしながらそう言った。

 俺は、デーモンの戦力と妖怪の戦力をザナルガラン攻略に入れて考えていた為に一瞬頭が真っ白になった。

 今、なんつった?


 ダメよダメダメ! アズリたん、シレイヌスさんに手も足も出なかったの忘れたのか?

 

「アズリたん、あのシレイヌスさんと話をつけるのに、デーモンさんの力と妖怪の二人の力は必要不可欠だって! 何言ってんだよ。もう迷惑かけてんだから、力貸してもらおうぜ。な? アズリたん、考え直せって!」


 俺が焦ってアズリたんを説得しようとする。するとアズリたんは俺に笑った。

 

 そして、腰に当てて王者のポーズから腕を組むと、アズリたんは今までにない満面の笑みを浮かべる。


「この度の旅行、実に楽しかったぞ!」


 嘘だろ……アズリたん、バンデモニウムも道満の館も観光気分できてたのか

 

「それでは、余の城に帰るとする! 後より、バンデモニウムの皆の者は余の城に招待する! 心おどらせ待つが良い!」

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