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若い男女が寝所を共にしたら在るべき事象

アズリたんと風呂から上がった後、ガルンとアステマとエメスが続いて風呂に入った。

 きつねのさんとたぬきちさんは布団の準備を終えて、勾玉に戻ったらしい。蘆屋道満の屋敷というか、マヨヒガに誰もいないように見えるのは妖怪が姿を勾玉に変えているからだったのか……。

 

 

 

 アズリたんは布団にダイブする。


「クハハ! 柔らかくて良い匂いがするぞ! 実に良い!」

「アズリたん、こらこら! せっかく綺麗に敷いてくれた布団がぐしゃぐしゃになってるだろ!」

「クハハ! 硬い事をいうなマオマオよっ! この枕、ジャラジャラと音がなっておるぞ! 実に愉快だ! 愉快である!」

 

 そばがらの入った枕が気に入ったのか、しばらくアズリたんはそれをジャラジャラと音を鳴らしてはクハハと笑っている。

 

 こうしてたら普通のアホの子だな。


 そうこうしていると、ガルン達が風呂から上がって戻ってきた。用意された浴衣を着て、というか俺とアズリたんもそうだった。布団は縦に綺麗に並んでいて、誰がどこに寝るのかという事を楽しそうに話し合っている。女子友の旅行みたいになっているが、俺は男である。

 

 今後、シレイヌスさんと大喧嘩する事になりそうなのに。

 なんだかなぁ……。

 

「ふふん! 私たちが、まさか魔王アズリたん様とこんなお近づきになれるなんて思いもしなかったわ! やっぱり私たちが特別って事よね!」

 

 アステマは俺にそう言ってくるので、俺は苦笑する。

 真ん中はアズリたんが良いという事でその右横に俺、アステマ。

 逆側にガルン、そしてエメスという5本線で寝る事になった。

 

 アステマ、なんかテンション上がって滅茶苦茶話しかけてくるのである。もういいから寝かせてくれよ。


 アステマはそんな俺の気持ちを無視して八重歯を見せて笑う。





「ねぇねぇ! あーるーじぃー! こうして女子ばかりで集まった時の夜は夜更かしをして、恋バナっていうのをするらしいのよ! まぁ私は? 知っていると思うけれど、あらゆる人間の雄から求婚を受けているのだけれど、でも! 私を振り向かそうなんて愚かにも程があるわね!」


 そう、この自信に満ち溢れ、確かに見てくれだけは良いデーモン。


 ……この自慢話はどれだけ続くのだろうか?

 アズリたんは大の字でグースカ寝ている。

 そしてその端にいるガルンも同様に枕に抱きついて眠っている。

 エメスまでは見えないが、多分恋バナのくだりに聞き耳を立てているんじゃないだろうか?

 

 そして、アステマは目を輝かせて聞いてくる。


「ねぇねぇ主。主はどうなの? 私たちに会う前に少しは浮いた話とかなかったわけ? まぁ、ないでしょうけどね。私みたいな超美少女デーモンと知り合えた事、泣いて喜びなさいよ!」


 結局、自分の自慢かい……今の俺も結構美少女よ?

 

 俺は少し考えた。そうねぇ……。

 かつて、確かに付き合っていた人はいた事にはいた。俺は静かに過去を語った。


「確かあれは、高校生。今のアステマくらいの年齢の時かな? バイトって言って小遣いを稼ぐのにコンビニっていう場所で仕事してたんだよ。そこで出会ったのがさやかさんだった……」

 

 俺の恋愛に興味を持って結構近くまで顔を近づけてくるアステマ。

 綺麗な紅い瞳だ。


「なになに! そのさやかってのは男? それとも女なの? 今その人間はどこにいるのよ! 続きを教えなさいよ!」

「男なのか! 我、あまりのつまらなさに世界に怒りすら覚えていたところ、マスターの性癖の広さに少々、驚きつつもショタではない子供マスターにも幾分かの興味を持ち続きを所望す」


 やっぱり起きてたか。まぁ、そのさやかさんは短大生だった。そして、奥さんのいる旦那を好きになってしまうようなどうしょうもない人だった。

 俺にとって姉さんのようで、そして女性だった。

 

「まぁ、シフトって言って仕事時間が一緒だったから、付き合っている人の話を笑顔で言うかと思ったら、別れた愚痴を延々と聞かされる日もあって、あの人全然仕事しないのな」

 

 当時の俺は、彼女の支えになっていると思っていたらしい。

 が、彼女は程の良い依存相手に何にも知らない高校生だった俺を選んだに過ぎなかったのだろう。彼女に甘えられると俺は心から嬉しかった。




 しかし、そんな歪な関係は長く続く事はないのが相場なのである。


「ある時、何回目かの不倫相手と破局したさやかさんは死にたいと言ってきたんだ。俺に殺してくれとか言うようになって、当時の俺は焦ったな」

「殺してあげればいいじゃない!」

「右に同じと言えり!」

「いや、死なないでとか言って欲しかったんだよ」

「さやかは面倒臭い女ね!」

「お前には言われたくねーよ! 続きがクライマックスだ。まぁ聞けよ」

 

 

 

 俺の反応を楽しんでいただけかもしれない。

 だが、さやかさんは俺を受け入れた。

 俺はさやかさんに夢中になり、二人で暮らしてもいいと言った。

 彼女は、自分は本気で相手に遊ばれている環境を心のどこかで楽しんでいたのかもしれない。逆に本気の気持ちを向けられる事に慣れていなかったのだろう。


 ある時、二人でどこか遠い街に行こうという話になった。アルバイトを無断欠勤して俺はさやかさんを待った。駅で、日付が変わる頃。

 俺はまたさやかさんに遊ばれただけだったのかと家に戻り翌日バイト先に謝りに行った。


 その時、さやかさんはバイト先を辞めた事を聞かされた。

 俺はその足でさやかさんの家に行った。何度かお邪魔した事があった綺麗に片付いた家。

 そこは綺麗になり過ぎていた。

 さやかさんは忽然と俺の前から去ったのである。


 ……しばらくの間、俺はちょっとした彼氏面で凹んでいたが、時が忘れさせてくれる程度の恋愛だった。

 それから、なのか元々なのか、誰かと関わるのが苦手になっていく。

 何度かその後女性とお付き合いもあったが長続きはしなかった。

 

 大人になった俺はある日、ある街でさやかさんとすれ違った事があった。小学生くらいの子供を連れて幸せそうだった。

 それが、俺の恋バナ?

 

 

「ちょ、ちょっとちょっと主! それ本当に恋バナ? なんか重いのだけれど! なんかそういうのじゃなくて……ねぇ? もう少し思い出したら恥ずかしくなるような。嬉しいような感情が溢れてくるってクズハラの本には書いてあったわよ!」

「恋愛なんて初めてだった俺の、思い出しただけで騙されていたんだなと思える恥ずかしい話し出し、なんとも言えない感情が湧き上がってくるから大体書いてる通りなんじゃね?」



 アステマはなんだか釈然としない顔をしながら俺の話を聞いてやっぱり納得してなさそうだった。

 

 ……アステマが機嫌悪そうにこっちを見つめている。

 

 こいつほんと、美形だよな。これでもう少し性格とオツムがまともだったら良かったろうに……、


「ねぇ、主。他の人間のオスなんてみんな私に夢中なのに、どうして主はそうじゃないの? 今主が魔女というのはナシなんだからね! 答えて!」

 

 ……うん、なんだコイツ?


「お前さんは、もしかして人間全員がお前に夢中だとでも言いたいのかね? お前は確かにその辺の女の子と比べて少しばかり花があるように見えなくもないけど、あんまり調子のんな!」

 

 俺がそう言ってアステマに軽くデコピン。

 

「やん! 主……そういうのって好きな子にする行動でしょ? やっぱり主、私の事好きなんでしょ!」

「いや」


 即否定。

 

 アステマは俺のこの反応に怪訝そうな顔をする。そしてこう言った。

 

「ちょっと主ぃ! そういう時は、テンパって、そんなんじゃないんだからね! って言うのが一般的で、そういう反応をするのは相手の事を好きだからってクズハラの本に書いてたの! 即否定しないで!」

 

 えぇ……。

 

 コイツ本当なんなの?

 アステマの中では俺はアステマが好きな事になってんの?

 コイツ、普段の行いをして本当に俺がお前に惚れると思ってるのかな?

 

 本当に身の程を知ってほしいな。

 

「マスター! 先ほどの話を演算した結果、我は大いなる結果に到達せり! さやかという女との出会いが、まだ子供だった頃のマスターの性癖をぶっ壊したり! そしてそれが今というマスターの酒池肉林の世界を生み出す事に繋がれり! 故に、そのさやかという女はマスターにとって、大人の聖母という事でファイナルアンサー? そして大人になりしマスターは再びさやかという女に出逢おうとも性的に反応する事はなかった。それはすなわりマスターはより高次の領域に進んだ事を意味せり! ならば我は人間のさやかという女に礼を言わねばならないと知る!」

「大丈夫かエメス?」


 先ほどの俺の恋愛遍歴について今の今まで考えていたらしいが、少々合っている部分があるのが恐ろしい。


 ……というか、エメス。

 俺の上から覆いかぶさるようにくるな!

 ただでさえ怪力のエメス、力は非力な魔女姿の俺だ。何かされると抵抗できん。

 ……まぁ女には興味ないはずだが


 こういう、夜ふかしをしようと言う時、大体言い出しっぺが最初に寝落ちする現象、なんて言うんでしょうな?

 

「おい、アステマ。ちゃんと布団に入って寝ないと風邪ひくぞ? お前、風邪ひいても回復魔法とかかけてやらないからな? ほら、ちゃんと入って」

 

 なんだ俺、おかんか?








「マスター、アステマの無防備な姿に欲情を隠しきれない事、よく分かれり、アステマにぶつけたいその情欲の限りを我で発散すると良し! 我は今のマスターの姿に関しては憐れみすら覚えているが……逆に考えれり、今はマスターに女子としての喜びを存分に……ここにきてノイズ!」


 エメスは俺に今なおおいかぶさるようた体制で、少しばかり呼吸も荒い。さてこの魔物をどうしようか?


「そうだなぁ……。あぁ! そうだそうだ! エメス。……俺さ、一度お前に行いたいプレイがあったんだよ。当然、お前もそこまで言うのであれば最後まで付き合ってくれるんだろうな? え? エメスさんよぉ! 中々強烈なプレイなんだがな!」

「フハハハ、ようやくマスター! その気に! これは僥倖と言って他ならない! さぁなんなりと我とイデアの先へ!」


 よし、エメスはその気になったらしいな。

 

 俺はエメスを頭の先から、グラマラスな身体、そして足元まで見ていった。


「とりあえず自分の布団に入って待機! 俺のタイミングで次の指事をする」

 

 そう、放置プレイと見せかけて、寝ろ! 作戦。

 

 エメスはうんうんと頷くと、自分の布団に戻っていく。

 本当にこいつも色ボケでよかったと心から思うな。

 

 多分、エメスは布団で今か今かと考えているのだろう。

 という事でみんな静かになったので俺も寝る事としよう。


 なんというか、この和室で寝るのも落ち着くな。


 空の星と月を眺める事ができる作り。

 日本でも田舎じゃ見れないような景色だ。

 アズリたんはスピー、スピーと実に気持ちよさそうに眠っている。こいつ悩みとか本当にないんだろうな……。





 ……さて、どうしたものか、事件です。

 アステマは寝相が悪いらしい、そして俺に抱きついてきた。


 くそっ! 一瞬アステマにドキっとした自分が悔しい。




 ……そしてアステマは俺の首元に甘噛みした。

 

「ちょ、ちょっとアステマさん?」


 アステマは何の夢を見ているのか、頬をすり寄せる。

 あかん! あかん! アステマぁ!

 だいしゅきホールドされた俺……



 なんという事だ! 流石にここまでされると俺も……いや、今女だからか、そんな意識しないな。

 しかしこいつ、こんな寝相悪いのか、起きてても寝てても最悪とかこいつほんとなんなん?

 まぁ、何だろう? 父性? 今は母性なんかな?


 アステマの頭を撫でてやるとゴロゴロ喉を鳴らす。

 猫か! 本当、こいつ綺麗な顔してるな。

 そんな姿に生まれてきた事を心から申し訳ないと思って生きてほしい。


 どうにかしてアステマを離して眠ろうと思った俺。

 

 ……何と言う事でしょう。










 物凄い表情で、今の状況を見つめているエメスさんの姿がありました。

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