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揺り籠からなんとかまで、昔からパリピだった

 アズリたんはたぬきちさんを選び、凛子ちゃんはフェレットみたいないたちおさんを選び、必然的に俺の元に狐の妖怪。

 

 きつねのさんがやってきた。


“犬神猫々様のユニオンに妖狐・きつねのが加わりました。蘆屋道満との同盟が仮契約されユニオンが強化されます“

 

 凛子ちゃんは、クロネコといたちおが魔法少女としてのファミリアに加わったらしい。

 そう、魔法少女、これがレア役職らしく。どうやら王種クラスっぽい……もうなんでもありだな、異世界。

 

 アステマはめでたくクラスダウンした。

 不思議なことに魔法少女化した俺たちは戻れない。

 

 呪いのアイテムか……デーモンだけに。


 式神達も仲間になったので、アズリたんの城取り返しに行こうかと思った所。

 クロネコが提案。


「以前の魔王。アズリエルの隠し工房を蘆屋道満がこしらえた、それを見にいくか? 何か役立つ物もあるかもしれない」


 どうやら、アズリたんの父ちゃん?

 アズリエルは割と色んな奴と仲が良かったっぽい……。

 

「クハハハ! 案内せよ!」


 アズリたんが行く気満々なので、俺たちは付き合う事にした。だって、今のままじゃシレイヌスさんに勝てないかもだし。

 アズリエルさんが凄い武器とか持ってるかもだし。

 というか、妖怪押し付けられたけど……俺は色々考える時間が欲しかった。


「蘆屋道満がアズリエルさんの工房を作ったんだよな? 友達だったの?」

 

 それには俺たちのユニオンに入った男の娘、エメスに抱きしめられているきつねのさんが語った。


「北の魔王シズネ・クロガネ。アレに嫉妬した道満様でしたが、道満様と魔王アズリエルが話しているのをずっと遠くから眺めて、顔を赤らめたシズネ・クロガネは道満様に協力してアズリエルの工房作りを手伝うと申し出たのです」


 多分、蘆屋道満もアズリエルさんもイケメンだったんだろうな……。

 

 ……アズリエルの工房、嫌な予感がするなぁ。

 

「あのさ? シズネ・クロガネやアズリエルさん、それに蘆屋道満がいたのって何年くらい前の話なんだ?」

 

 

 これは、俺の好奇心の話である。工房づくりの時点ではクロネコは封印されていたらしくきつねのさんが語る。

 

「異世界の魔物がやってきたのは五百年程前と聞きます、それは平安京にも影響及ぼし道満様は平安の世を守るためにこの世界へときはって。あれいすた・くろうりぃという男を筆頭に皆で彼奴を退治し、元の世界へと送り返したのは三百年程前と聞いてますえ。猫々様」


 なるほど、少なくとも、シズネ・クロガネが普通の人間であるならもう生きているという事は限りなく少ないんだろう。

 しかし、三百年前に同人誌とか……。

 

 ……謎は深まるばかりである。


「マスター、この我の性的興奮を満たす為だけに生まれし哀れなきつねのもまた北の魔王。シズネ・クロガネによる造形と我は理解せり、この手触り、この衣装ともに奴の影を見る」


 嘘だろ……巫女装束男の娘……ってさすがに、平成あるいは令和だろ。

 

 エメスがドエスな顔で笑うと、きつねのさんの耳に触れる。

 

「我、至福なり」


 うん、きつねのさんはウチに奉公に来ている妖怪。

 残念ながらエメスの性処理玩具ではない。という事で助けるか……。

 

「きつねのさん、こっちおいで」

「猫々様ぁ……ウチ……」

 

 よほどエメスが怖かったのだろう。というか、完全にトラウマを植え付けられているからな……。

 

 俺の胸の中で安心したように顔を埋めるきつねのさん、ガルンみたいだな。

 

「…………んっ、きつねのさん……ちょっと」

 

 きつねのさんは俺に甘える……。

 

 キンモクセイのような良い香りがするきつねのさんはそりゃあもう俺にくっついて甘えるわけなのだが、今の俺は女になっている。


 そう、色々と敏感になっているわけなんですわ。という事で、ちょっときつねのさんの激しいスキンシップが……ねぇ!

 ガルンは指を咥えて自分も遊びたいオーラが出ているがやめれよ!


 ガルンときつねのさんをペアにして、エメスには俺が横につく、目を離すとすぐにきつねのさんにセクハラしそうだし、どっと疲れる。

 

「前魔王の工房ってのはまだなのか? お前達の屋敷から大分離れたけど」


 そう、俺たちは妖怪、いや蘆屋道満の術で高速転送されている。

 南のザナルガラン、その端にあるバンデモニウム、そこから秘境のような場所にある道満の実験場。さらに奥に進むと、

 

 それは中央との国境付近に近づいているという事になる。

 

「確か、中央。ヴェスタリアは鎖国していたんじゃなかったっけ? なんか勇者がいるとか聞いたけど、勇者はきつねのさん達は知らないの?」


 ……アズリたんにパクリと耳を甘噛みされているたぬきちさん。

 小さくなったクロネコといたちおさんを肩に乗せている凛子ちゃん。

 そしてガルンとアステマと手を繋いでいるきつねのさんは語った。

 

「……昔の勇者であればウチ達も知っているきに、でも前の勇者は異世界の魔物を追い返したら元の世界に戻りはった。今は、勇者を名乗るど外道ですえ」

 

 ……確か、勇者王だったか? ど外道とはあまり穏やかじゃない。

 

「僕はきつねのやいたちおとたまに中央近くまで木の実を拾いにきたりしてたんです。そこで僕らは偶然勇者王を見ました」


 たぬきちさんを涎まみれにしていたアズリたんが勇者という単語に開眼した。

 

「クハハハ! 勇者、勇者か! 余はその者を屠って欲しいと、余の腹心達に言われて育ってきたっ! 精霊王と同等以上だと聞くその力、余も興味があった。今から中央の勇者王と殺し合いにいこうぞ! たぬきちよ! 貴様に殿を任せてやろう! 余は寛大だからなっ! 本来であればディダロスあたりの仕事よ。働いてみせよ!」


 きっと、アズリたんの国では泣いて喜ぶ程の名誉なんだろう。

 

 たぬきちさん。

 殿とか、絶対死ぬじゃんと涙目になっている。

 五大国の中心において大陸最大の国ヴェスタリア。

 

「魔王アズリたんしゃまぁ! 勘弁してください! 僕、見たんです! めちゃくちゃ強そうな術の込められた武器を持った兵隊達おおよそ百人を相手にあの勇者王は数分で全員消してしまったんです」

 

 それを見た瞬間、三人は一目散に尻尾を丸めて逃げたという。

 どんな人物だったのか、不可視系のスキルがかけられてあったのか、三人も良くは見得なかったと言う。

 

 だが、一つ分かる事があったと言う、声や背丈から、

 間違いなく勇者王は華奢な子供であるという事。そしてそれを聞いたエメス、たぬきちさんに顔を近づけて……

 

「男の子か、あるいは女の子かと問う。それにより備えが変わる故」

 

 

 ショタか、ロリかの違いでどう備える必要があるんだろう。

 多分、お前も俺も瞬殺されるような化け物ですよ。

 性別までは分からないと言うたぬきちさん。

 それにエメスはゴミでも見るような目をして、地面にペッ! と唾を吐くふりをした。実にクソだなコイツ。


 そうこうしている内にクロネコさんが少年の姿になる。

 エメスさんが謎のガッツポーズ、そしてクロネコは凛子ちゃんの手を引いて指差した先、そこにシックな、それでいて風格のある建物が現れた。


 ここがそうなのだろう。

 アズリたんの親的な、先代魔王のアズリエルの工房らしい。なんというか、ザ・魔王城だったアズリたんの城に比べてかなり。

 いや、随分慎ましい感じだけれど……、


 俺達は先代魔王の工房へと足を踏み入れた。

 そこは……誰もが憧れる秘密基地だった。

 小さな工房の中は、写真で一杯だった。アズリたんにそっくりなイケメンと、どこか精霊王サマを感じさせるこれまたイケメンに、当時の聖女、そして勇者らしい少年。顔の部分が破かれているのがシズネ・クロガネだろう。

 アレイスタークロウリー、そして蘆屋道満。

 

 全員でここで語り合ったり、食事をしたりしていた事が窺える。


「クハハ! ここが先代魔王の工房か! 狭いなっ! 余の城の方がもっと、もーっと大きいぞ! クハハ!」


 いや、そのお城も多分、元はこの先代アズリエルさんの城だろ?

 アズリたんは勝ち誇ったようにバカ笑いし、たぬきちさんを連れ回す。たぬきちさんはもうどうとでもなれという顔をしている。


 写真を一枚ずつ見ていくと。

 この異世界の魔物を討伐した連中、みんな仲が良かったらしい。

 シズネ・クロガネの顔が全て分からないのはシズネが後で破きにきたっぽい。

 

 アズリエルさんと当時の精霊王さんに挟まれてダブルピースしているシズネ・クロガネは多分、イケメンに囲まれてアヘ顔に違いない。


「ねぇ! みんなこの写真見て! アズリエルさんが、この顔の破れている女の子や仲間達と一緒に何かを作っている写真なんだけど、この完成したのがこの横で……これって」

 

 凛子ちゃんが俺たちを呼んでそう言うので、俺たちも眺める。

 そして、俺、妖怪達、モン娘達は、全員アズリたんを同時に見つめた。

 

「我がこの異様に正確に描かれた画像と今アズリたん様が身に纏っている衣のはほぼ完全一致しているとみたり! これはアズリたん様の衣作りなり」


 ……エメスが驚く程に役に立った。

 と、言う事なんだろう。

 

 ここは魔王アズリエルが仲間達とアズリたんの服を作っていた場所だ。

 

「アズリたん。お前って、先代のアズリエルさんに会った事はないのか? ここアズリエルさんの友達と遊ぶ隠れ家でお前の為に服とか、多分その辺に転がっているのは玩具とか作られていた場所っぽいな。写真からスッゲェいいお父さんじゃんかよ。アズリエルさんってさ。稀に見るイクメンだ」


 イケメンでイクメンなアズリエルさん、俺のその言葉を聞いてアズリたんは笑う。


「クハハ! 余は会った事がない! アズリエルは余の誕生の前に闇に還った」

「それって、もう会えない感じ?」


 アズリたんは悲しそうにするわけでもなく頷いた。

 

 俺はアズリたんが一体どういう魔物なのかよく考えたら知らない。見た目は完全に人間のそれでありながら、魔物達の王。

 アプリにも魔王としか表示されない。


「えっと、アズリたんってさ。何系の種族の魔王なんだ? 亞人系なのかなって思うけど、どうもデーモンとかそっち系でもなさそうだしさ」

 アズリたんはこれに百点の解答を俺にしてくれた。


「余は魔王である! クハハ! それ以上はないっ! 今更何を言ってる!」


 まぁ、そうですわな。多分、考えた方が馬鹿らしい事の一つなんだろう。皆全員がアズリたんを魔王として認識している。

 

「そうだな……お前は魔王だな。よし、気分を変えてここには他に武器とかないか調べてみようぜ! シズネ・クロガネはアホだけど凄い技術者だからなんかあるだろ」




 俺は早速、小さな手帳を見つけた。読めるかなと思って開くと。


 ・ヤバい! アズリエル様いい匂いする。精霊王様も、たまらん! てゆーか異世界の人美男美女すぎない?

 ・もうまじムリ、アズリエル様の上着を袋に入れてその匂いを嗅いでるのを見られちゃった。

 ・アズリエル様が作りたいという服、どう考えても女物なので、まぢどうでもよくなって、喧嘩別れしたウルスラの色違いにしてやったんですけど! ぷぷっ!

 

 典型的な……アレな日記だった。多分、いや確実にシズネ・クロガネの物だろう。

 

 とりあえずこれは回収して今度葛原さんにで渡すとするか、もしかすると何か手がかりがありそうだし、数百年前の物でもない。

 この後にプレアデスやらエメスをこいつは生み出すのか……。


 異世界の人たちというか、魔王とか精霊王とかってさ。

 結構パリピ気質があるのは昔からなんだな。そんで本来ならボッチ確定だろうシズネも仲間にしっかり入れてくれる。

 キョドりながらもここにいたシズネが目に浮かぶよ。全然知らない人だけど、異世界の皆さん、シズネ・クロガネと仲良くしてくれてありがとう。同じ地球人として感謝します?

 

「マオマオちゃん、アズリタンちゃーん! 手紙みたいな物が見つかったよ! こっち来てくれる?」


 またシズネ・クロガネの手紙じゃないだろうな……

 

 それは……違った。

 

「これ…………この世界の文字かな? 私じゃ全然分からないよ。クロネコくんやいたちおちゃんは読める? なんだか、凄いしっかりした封筒に入れられてるし、丁寧に書かれているから、何か大事な事が書かれているんじゃないかな? マオマオちゃんは読める?」


 俺は渡された物を見たが分からない。ガルンも当然、アステマ、そしてちょっと期待していたエメスも分からないと首を横に振る。


「古代文字の類だと思う。僕には分からない。すまない凛子……」


 そう言って凛子ちゃんの頬に自分の鼻先をちょんとつけて言うクロネコを凛子ちゃん優しく撫でた。


「クハハ! 余に見せてみると良い!」

 

 笑っていたアズリたんが手紙を見つめる。

 どうやらアズリたんにはこの手紙が読めるらしい。

 笑い顔は変わらないが、多分。ちょっと真剣に内容を読んでいる……。


「クハハ、実につまらん内容だ! アズリエルから余への手紙だな」

 

 マジか、なんて書いてあるんだよ。

 アズリたんは推定父親的な存在であるアズリエルさんが残した手紙を読み終えると手から炎の魔法を使い灰にした。

 アズリたんの様子が明らかにおかしいので俺が代表して聞いた。


「アズリたん、さっきの手紙。なんて書いてあったんだ?」


 アズリたんは思い出すと腰を手に大笑いした。


「クハハ! 実にくだらぬ内容であった。余が余の配下を葬る時が来た時のつまらぬ魔法の用途についてだ! 余は余の配下を葬る事はなしだぁ! クハハハ!」

 

 うん……どうやらアズリエルさんはクーデターの可能性を考えていた。

 ……そしてその対処法なのか、あるいは秘密兵器をアズリたんに共有した。


「そ、そうか……。アズリたん……その魔法でならザナルガランのお前の城取り戻せそうなのか? あのシレイヌスさん相手に」

「マオマオ。余はハナからシレイヌスの奴に遅れはとっておらぬわ! 馬鹿者!」


 そう叫ぶアズリたん笑い顔で怒るから、怒っているのかいまいち分からない。

 

 ……そういえば、どうしてアズリたんはずっと笑っているのか。

 パリピの王だからだと思ってたけど、

 アズリたんは見た目以外もとことんお子様なのである。

 なのに、この感じは……


「アズリたん? お前さ、なんでずっと笑っているんだ?」


 地雷かもしれないが、今しか聞けそうにない。

 俺のその質問にアズリたんはビシッと腰に両手を当てて王者のポーズをとる。

 

 ……そして当然だろうとこういった。


「笑っている奴が一番強いとシレイヌスが言っておったからなっ!」

「確かに、バンデモニウムでもウチのアホのアステマでもすぐに笑うからな。ちょっと常人には分からない魔物達の一般がそこにあるのか? ただ、確かに魔王ってよく笑うイメージあるけどさ……」


 要するにアズリたんはシレイヌスさんの言う通りにしていたのか。

 アズリたん個人でも強さの誇示は大事なファクターらしいが。

 まぁ、俺には関係ない事だが……。

 ……………………。

 

「……あのさ、アズリたん。嬉しい時は笑えよ。悲しい時は泣いて腹たつ時は怒ればいいじゃん」


 俺のその言葉に、妖怪達も凛子ちゃんも頷く。

 そして空気を読めないのがもん娘達、ご主人何を言っているのだ? とかいいそうなガルンの顔。

 そして何故かやれやれしているアステマ、腹たつな。エメスは小鳥的な物を追いかけている。


「クハハハ! マオマオよ! 時々面白いことを言うなっ! 余は怒らぬし、悲しまぬ! 魔王だからなっ!」

 

 アズリたん大好きモンスターのシレイヌスさんがそんな事を言ったんだろう。魔王だろうがなんだろうが、感情はあるだろうさ。

 

 アズリたんのそんな姿に俺にはそれ以上は追求しない。

 ただ……


「アズリたん、困った時はお前が魔王でも俺たちが味方だ! なんでも頼れよ!」

「クハハ! そうかそうか! 余は皆から愛されるからなっ!」


 アズリたんは満足したように、俺の話を多分殆ど理解せずに、そして一人でさっさと出口に向かっていく。


 ここを出ていくと、次はいよいよザナルガランに戻る事になる。

 あのシレイヌスさんと恐らくは再戦という形だ……。

 

「アズリたん、この後はバンデモニウムに立ち寄ったあとザナルガランにもう一度行く事になるけど、その前に凛子ちゃんを近くにいる俺の知り合いに保護してもらう事になるから、何かまだ話す事とかあれば言っておけよ。あと凛子ちゃんもね!」

 

 元々、この世界のアズリたんと地球の凛子ちゃん。

 おそらく今後出会う事はもうないだろう。



「クハハ! 何を言うか! 凛子は余と暮らすのだ!」

 

 やっぱり家来の一人になったと思っていたか。


 ……。

 凛子ちゃんも家来って言われているのに、なんで少ししんみりしているんだろう。

 まぁ多分、可愛い妹くらいに思っていたか。

 

 ……俺のスマホが鳴る。


“ぶるるるる! ぶるるるる! 着信です“

 

 電話の相手は先生、凛子ちゃんを保護してくれるらしい。

 

 ……とりあえず安心だ。

 

 しかし、それに二人のいや妖怪がいる事を忘れていた。

 

「僕も凛子と一緒にいく」

「当然、このいたちおも」

 

 妖怪に好かれた、いやこの場合は取り憑かれたのか?

 凛子ちゃんの前で少年、少女になった獣二人。

 

 妖怪って地球に連れ帰っていいんだろうか? 元々、地球というか日本にいたわけだし。

 ……いやダメかな?

 

 俺たちのなんのかんのな、魔女というか俺、女子高生、妖怪、モン娘、魔王という一行の旅は終わりが近づいてた。

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


「おい、マオマオ。お前っ……それは流石にやベェだろ。似合ってるのかもしれねーけど」

「違います! ち・が・い・ま・すぅ! アズリたんところの頭おかしい家来にこの姿にされたんですぅ! これが俺の趣味なわけないでしょうが! そんな事より先生、凛子ちゃんお願いしますね」


 恐らく、世界一安全な保護者に凛子ちゃんを任せられる。

 

 先生を見て、アズリたんがバチバチと魔法力を高めて「クハハ! 秀貴! 余と戦え!」と何度か口説かれてたけど、「いやだよ面倒くせぇ」と先生が辛辣に断る。

 

 俺たちはこれからアズリたんの城へと向かう。

 

 かなりヤバい事になっているので、できれば先生も来て欲しい。

 それを素直に言ってみたが、先生は凛子ちゃんを元の世界に戻れる職員に預け、それからセリューを追わなければならないので無理。

 しかし、そんな先生の断りに対して、先生のお連れの二人の若い女の子に見える男の子達がブーイング。

 

「ちちうぇ! 行きましょうヨォ! なんか面白そうですよ」

「そうだそうだ! 雪が言うんだから面白いよきっと!」


 誰だろう? 着物を着ている美少年と洋服を着ている美少年。

 エメスが涙を流しながら頷いているので奴の頭の中は想像したくない。

 そんな少年達を先生は無言で思いっきりゲンコツした。痛そうだなぁ。

 

「じゃあ、俺は行くからお前らも気をつけてな! 帰ったら手洗いうがいしろよ? じゃあな」

 

 先生はそう言って少年二人と凛子ちゃんを連れて去っていく。

 ガルンとアステマは「「オロナインせんせー!」」

 エメスは「我の美少年が去ってゆく……」

 

 と、実にくだらない事を言って見送った。

 そして、クロネコさんにいたちおさんは凛子ちゃんいついていった。


「じゃ、俺たちも戻るとしますか? この魔女っ子の姿から元の俺に戻りたいし、アズリたんの城も気になるしな」

「クハハ! 凛子はどこへ行った? いつ戻ってくるのだ! 余はまだお前達と宴を楽しんではおらんぞ!」


 アズリたんには凛子ちゃんはもう戻ってこない事を伝えるのは酷かもしれないと思って、バンデモニウムでおやつでも食べようと話す。

 すぐに機嫌を戻し、ぬいぐるみのようにたぬきちさんを引っ張る。

 俺と目が合ったたぬきちさんはなんかちょっと嬉しそうだ。


「俺たちが何か出来る事があるのかは分からないけど、こっちから結構ガチなやつだから、お前ら覚悟しろよ」

「ね、ねぇ主」


 俺が三人に檄を入れようとしたら、アステマがやや口を尖らせて、俯きながら俺の横を歩く。こいつはウザい女子の総集編かな?

 何を言うかと思ったら。

 

「その……あの……あれよあれ! まぁ、私は死天使でもよかったんだけど……元に戻してくれて……ありがと。それだけなんだから!」

 

 こいつお礼は言うんだよな。それよりいい加減謝る事覚えろよ。

 ちょっとヒロインぶった感じがほんと腹たつな。クソ美少女なのもなんか腹たつ……俺たちのところくらいだからな……お前を受け入れるのなんて!

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