表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

81/95

魔王に命乞いと、御三家と黒歴史の終わりと

「貴様、凛子か? 先ほどまでとは違い中々の魔力を感じるぞ! 余と、このクロネコに何か用か? 邪魔をするのであれば、凛子とて容赦はせんぞ?」

 

 アズリたんはあの肩の上にある亜空間みたいなところから翼をはやしてから異常に交戦的なのが気になる。

 

「アズリたんちゃん! もうダメ! 良くクロネコを見て! ボロボロでしょ? クロネコはここに住んでいて、私たちが土足で踏み荒らしたんだよ! 自分の家を守ろうとしているからこんなに必死なんだよ! アズリたんちゃんも自分の家に知らない人がきて大暴れしたら嫌でしょ?」

「構わぬわっ! 余の城で暴れるのであれば余が撃滅してくれる! それに、余がでずとも、ディダロス、ウラボラス、そしてシレイヌスが……」

「アズリたんちゃん、今。そのシレイヌスさんにお城取られちゃってるんだよ? 忘れてないよね?」

 

 凛子ちゃんの言葉にアズリたんは笑顔ながら滅茶苦茶ブチキレている。これヤバいぞ!


「アズリたん。凛子ちゃんの言う通りだ! もうそのくらいで我慢しろ!」

 

 俺の言葉に目線だけ送るアズリたん。そして俺は分かった。

 ……アズリたんは今までこんなに否定された事がないのだ。

 アズリたんは行動や発言が全て許された世界の中にいたのだ。

 

「……我慢せぬ! 余は余が満足するまで戦うのだ! クハハ! それが正しいに決まっておろう! クロネコよ! 終わりではあるまい! 余はまだ満足せぬぞ! このようになっ! クハハハハハ!」

 

 ……ダメだ。

 

 アズリたんの魔法力には際限がない。そりゃ、暴走エルミラシル退治に精霊王サマが助けを呼ぼうとしたわけだ。


 アズリたんは俺たちもろともクロネコと戦おうとすらしている。

 こいつ、今更だけどマジもんの魔王なんだな。魔王なんて相手はそもそも俺たちが相手にできる存在じゃない……今はユニオンスキルも使えないし。

 とはいえ、やるしかないんだろうな……

 

「アステマ! 俺と魔法攻撃! あのトリエラさんとの魔法、俺とやんぞ!」

 

 俺とアステマは超上級種の魔物となっている。

 アステマの超上級氷属性魔法と、俺を誘拐した魔女に教わった炎の魔法、その上位互換における爆裂系魔法を練り込む。

 多分、精霊王サマにぶち込んだ物より威力は上だろう。


「あ、あある……じゃなくてマオマオ。アズリたん様よ……大丈夫なの?」

 

 ごめん、大丈夫じゃないと思うけどやるしかねぇんだ。

 俺は涼しい顔をして見せるので、アステマは俺に何か考えがあると思ってるのだろう……ごめんな? 俺もめっちゃビビってますわ。

 

「行くぞアステマ! 魔女系統上級火炎魔法! バースト・デルレ・フレア!」

「知らないんだから! 私が強くなりすぎたのがいけないのよ! アブソリュート・デス!」


 俺の火炎の魔法、そしてアステマの氷の魔法、それらをぶつけた対消滅攻撃。俺が見つけた隠し魔法。

 アズリたんは化け物だった。俺の魔法を右手で、アステマの魔法を左手で受け止めると何事もなかったかのように嗤った。


 …………オワタ


 アズリたんは、俺たちに向けて報復の反撃魔法を放とうとしている。アステマを見るに、多分俺たちでは防ぎきれないのだろう。

 まさか、アズリたんに殺られるとは思わなかった。

 アズリたんの攻撃魔法が放たれる瞬間、アズリたんは俺たちじゃなく、クロネコに向けてその魔法を放った。

 クロネコは巨大な口からアズリたんに迎撃の呪印砲撃を放つ。


 アズリたんとクロネコ、大怪獣バトルが再開されたのかと思ったのだが、

 

 様子が少しおかしい。

 

 クロネコは肥大化していたのがゆっくりとサイズダウン。

 傍に凛子ちゃん。

 クロネコは凛子ちゃんの横で静かにしている。

 凛子ちゃんはクロネコに微笑みかけ、クロネコは大人しく、そしてゆっくりと少年の姿にまで戻っていく。

 しかし、全ての呪印が光り輝いている。そんな二人を見て嗤うアズリたん。

 あれ? なんか、アズリたんという悪者を凛子ちゃんとクロネコでやっつける構図に変わってね? 


 アズリたんは笑っているが、多分自分は一人で、俺たちや、凛子ちゃんがペアでいる事にかなり頭にきているようだ。アズリたんは怒っていても笑っているのでアズリたんが纏っている魔素の乱れ方で分かる。


 アズリたんは特大の魔法を放つ気でいるのも分かる。ここで唯一アズリタンに対抗できるのはクロネコだが、クロネコももう一杯一杯だ。

 考えろ! どうすればこの窮地を脱する事ができる?

 

 相手はこの世界の魔王、アズリたんだ……!


 その瞬間、俺のアプリが反応する。


“三人のデーモンの力を持った少女が揃った時、大魔法デビルズディバイドが使用できます。それは強力な・魔法力吸収結界“


「デーモンの力を持った少女とは、要するに魔女の力を持つ俺と、ガルンと凛子ちゃんの事か、これ使うか!」

「ご主人! 僕にも使い方がわかるのだ! 僕も魔法が使えるのだ!」

「マオマオちゃん……。私も……その使い方が分かるよ……。それでクロネコもアズリタンちゃんも守れるなら、やろう! マオマオちゃん! ガルンちゃん!」

 

 いやぁ学生のテンション……。

 青いねぇ。

 でも、それしか全員生き残れる方法はなさそうだ。

 

 俺たちは頭の中にその魔法の使い方が浮かぶ。デーモンジェネラルでも単独では使用不可能な大魔法。

 確かにこれならアズリたんを少しは縛る事もできるかもしれない。

 やるしかねぇか……いやぁ、でもなぁ。


「クハハ、余だけ一人ではないか! それはつまらん!」

 

 アズリたんも割と本気の魔法を放つ準備を始めるので、俺たちはそのデビルズディバイドを詠唱する。


「影を隠しちゃう! 純潔の暗黒においでニャンなのだ!」

「えーえっと、魔女っ子裁判はぜーんぶ無罪なのだわ……なんだこのクソスペル」

「太陽をぱくぱく! 光を駆逐せよ! せーの!」


「「「暗黒と愛と友情の! デビルズ・ディバイドぉ!」」」

 

 やだもう死にたい……俺、何か悪い事したかな?

 

 俺たちは三方向からアズリたんの魔法力を吸い取っていく。

 

 正直、無限に等しいアズリたんの魔法力を枯渇させる事は不可能だ。

 

 だから、俺は亜空間に向けて指をさす。

 

 あの魔法力の供給を奪えれば、クロネコと互角くらいのアズリたんだ。ここが勝機。

 クソ恥ずかしい呪文を唱えたんだ!

 というかガルンと凛子ちゃんは恥ずかしくないのかな?

 

 アズリたんは自らの肩の上の亜空間がなくなっている事に気づいてはいない。翼を失っても魔法力で浮遊しているぞコイツ……


 

 ……俺は凛子ちゃんに耳打ちした。

 クロネコにアズリたんを攻撃する依頼。

 どうやらクロネコは凛子ちゃんの言う事は聞くらしい。

 なんというか、あれか? 魔法少女の近くにいる小さいファンシーなキャラ的な?

 

 にしては、クロネコさんよ。フードを被ったちょっとスカした可愛い男の子になっているのがなんかムカつくな。


「魔法少女凛子、魔王アズリタンを木っ端微塵に葬り去る陰陽術式を使う! 僕の後ろに隠れるんだ。今の魔王アズリタンなら、蘆屋道満の決戦呪殺術て! とくとくらえ! 僕は全ての悪を禁ずる!」

 

 ナイト気取りのクロネコは凛子ちゃんを守ようにそう言う。

 

 それに物騒な事を言ったクロネコを諭す凛子ちゃん。


「クロネコくん。アズリタンちゃんは私たちの友達だから、やりすぎちゃダメだよ! クロネコくんが怒るのも分かるけど、アズリタンちゃん。自分のお城が友達に取られちゃってちょっと情緒不安定になっているだけだから。ね? クロネコくんなら分かるでしょ? だからお願い」


 クロネコは凛子ちゃんにそう言われて静かに頷く。

 

 妖怪もモンスターと同じく容姿が整っているのが多い。モンスターと妖怪は似て非ざる存在なんかな?

 

「凛子! 魔法少女のお前が言うなら。魔王アズリタン、奴の消滅から、奴の救済に変更する。魔王という存在と友達……友好関係にあるという事か、凛子は凄い。蘆屋道満にはできなかったことだ」


 クロネコはなんか遠い目をしてとんでもない事を語り出した。

 蘆屋道満は実は安倍秦親に術比べで勝利していたのだ。そして妻と子がいる安倍秦親に変わり、異世界にやってきた。


「生き別れの娘を探す為でもあった蘆屋道満、だが。この世界で北の魔王という女のごうれむという式を見て、生まれて初めて嫉妬した」

 

 またアイツか……要するに、エメスやプレアデスみたいなアレじゃなくて、ウルスラの力を見せつけられ、魔法と陰陽術のハイブリット……

 魔法呪印という物に魅入られてしまったという事。


 家族のような式神であった四匹の従者を実験に使い、唯一の成功例、クロネコ、力を使えば自我を失うこれも失敗作。


 

 そして蘆屋道満は姿を眩まし、彼らはここを守り続けた。

 

「そのアシヤなんとかって奴、最低な人間じゃない!」


 アステマがいつも通りの事をいう。

 まぁ、おおむね俺もおんなじ気持ちにはなったものだ、それを見て。

 

 アズリたんは魔法力を縛られ、さらにクロネコの最強結界術で身動きが取れなくなる。あとはやるなら今だ!

 

「アズリたん聞け! もうこの通り俺たちは降参する! 魔王であるお前には勝てない! そしてこいつら、道満の式神は可哀想な奴らだ! 賢いお前ならどうしたらいいか分かるよな?」

 

 状況は優勢である筈の俺たち。

 しかし、命乞いとアズリたんへの敗北宣言をするのだ。

 普通の悪い奴なら、そんな命乞いも敗北宣言も意味を成さないのだが、これに関してはまさに現・支配者である。

 

「クハハ! それは誠か? クロネコはまだ余と戦うつもりではないのか? この面白い力で終わりか?」

 

 パンと! 蘆屋道満最強術式を軽々とアズリタンは軽々と破り捨てた。


「クロネコの負けだ。もう戦えない」

 

 クロネコは普通に、アズリたんより大人だった。

 ……負けを認める事がこの戦いを終わらせる唯一の方法。


「クハハハハ! 良い良い! 余は寛大な心を持っていると言われている! お前達、皆余の家来にしてやろう! クハハハハ! 愉快愉快! 先ほどまでは少しつまらなかったぞ!」


 アズリたんの機嫌もえらく良くなったので万々歳だろう。


「……。ええっと、クロネコ……ウチのアステマの呪印を取り去ってくれるとか聞いたんだけど、それっておけ?」


 ここに来た目的をクロネコに話すと……

 

 クロネコは下唇を噛むと凛子ちゃんを見つめる。

 俺の言う事を聞く気はなさそうな感じである。というか逆に言えば凛子ちゃんの言う事であればこれは聞いてくれるやつなのでは?

 

 ……俺は凛子ちゃんにウィンクをした。このクロネコに言ってやってくださいよ!

 そう、アステマのアホを元に戻してよと!


 クロネコは多分、凛子ちゃんに懐いている……いや、もうこれは恋しているレベルかもしれない。

 

 凛子ちゃんは俺をみて理解したらしく頷く。


「クロネコくん、お願い! アステマちゃんがタトゥーみたいなのが出てからあんな姿になっちゃったの! 助けてあげて!」


 クロネコは凛子ちゃんにお願いをされると笑顔になるわけではないが表情がやさしくなる。俺とのこの雲泥の差よ! さすがリアルJKだぜ。

 

「分かった。呪印を吸い取る」

「な、何よ! 獣の……妖怪とか言う魔物のクロネコ。ちょっとアズリたん様と戦えたからって……その、ねぇ」


 ビビりながら、へっぴり腰で構えるアステマにクロネコはアステマの肩を掴んだ。

 そして、ガブりとアステマに噛み付いた!

 

「……きゃ、きゃああ! このクロネコ、わ、私を食べようとしてるのだけど! あ、主。アズリたん様、凛子、たす……けてもらってもいいのよ!」


 アステマは、乱暴でも受けた少女のようにペタンとその場に座り込む。そして俺のユニオンに戻ったらしい。

 なんという事でしょう。


“アステマがユニオンに戻り、序列により、アステマが仮のユニオンマスターになります“

 

「主……いいえ、マオマオ。私が今やあの強大なユニオンのマスターになったのだけど! ふふん! 凄い力を感じるわ! これなら私も魔王へのクラスチェンジができるんだけど! 今の私は過去最高よ!」

 

 調子に乗るアステマ。

 しかし、その話を誰も聞いちゃあいねぇ。

 

 呪印が増えた事でクロネコが少し辛そうな顔をする。

 そして、その呪印がようやく身体に馴染んだらしく、凛子ちゃんに頭を撫でてもらい何度も頷く。

 

 ……そしてクロネコは俺たちにこう提案の話をした。

 

「僕は凛子の式妖になる。お前達には、この三匹の内一匹を従者として連れていけ! きつねの、いたちお、たぬきち!」

「「「承知」」」

 

 三匹はまあるい勾玉に変わり俺たちの前にポツンと並んだ。

 そう、某ゲームのように三匹の内、一匹をパートナーに選べと……

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ