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究極呪印生物クロネコと魔王とときどき魔法少女

 クロネコとアズリたん。

 イタチごっこの戦い。

 クロネコが追いつけばアズリたんが先に立つ。

 

「クハハハハ! まだ先があるか? まだ余を楽しませる事ができるのか? 見せてみよ!」

 

 魔王アズリたんの挑発。     


「これが魔王。……前回のアズリエルの力を遥かに凌駕している。全ての呪印を解放する。我、蘆屋道満の生み出した最強の式妖にて東西南北、そして中央の王種達の抑止力として権限せし究極呪印生物。この力を解放せし時、全ての生命が死に絶える。人間がいく人がいよう? この地より離れよ。始まれば灼熱の瘴気が吹き荒れ式妖もデーモンなる者でも消し飛ぼう……魔王アズリタン。何故クロネコの前に現れた? クロネコは目覚めたくなかった」

「クハハハハ! 余が愉快だからに決まっておろう!」

 

 

 アズリたんの返答。それを聞いてクロネコは黙り呪印が光だした。

 

「殺界……魔王殲滅術式、オウ・マリイ・シエリ・ソウカ・ウンケン・アンビラ・バサラ。オウン……アーク! 虚わぬ闇クロネコ、現臨」

 

 クロネコはみるみる巨大な姿に膨れ上がった。

 

“アプリ起動。該当データ無し、推定危険度を一旦、データベース上にある最上の魔王アズリタン相当と仮定します。アズリタンから離れないでください“


「言われなくても、アズリたんの後ろから離れるわけねーだろーがよ! 一応全員にバフかけるからじっとしてろよ!」

 

 ウチのモン娘達は本気を出したクロネコに心底ビビる。

 

 どうやら蘆屋道満は成功したらしい。

 単独でこの世界における王を冠する連中とやりあえる力を。

 それは、俺のよく知る人物も成功させていた。そう、シズネ・クロガネの生み出した機械王ウルスラである。

 

「マオマオちゃん! アズリたんちゃん大丈夫かな? なんかクロネコ。凄い大きくなってるし、止めなくていいの?」

 

 凛子ちゃん、止めれるものなら止めてますわよ。

 

 完全覚醒したクロネコは巨体を浮かばせてアズリたんと空中戦を始めるつもりだ。なんなら先ほどまでのアズリたんから学んだらしい。

 全方位に攻撃する為の呪印がそこら中に飛び交っている。アズリたんは魔王らしくノーガードでそれらをワクワクしながら待っている。

 そして、アズリたんと違い完全にアズリたん消滅の為の攻撃が始まった。



 クロネコの結界砲撃術はアズリたんのありえないレベルのタフネスを無視して貫通する。

 一発受けると、アズリたんは連射されるそれに次々と貫かれていく。

 そして何重にも編み込まれた術式がアズリたんを調伏せんが為に発動。

 

 アズリたんは身動きが取れなくても口を開けて、そこからなんらかの魔法を放つ。まさに怪獣の戦いである。クロネコが優勢に見える状態が続く。

 しかしアズリたん、亜空間より翼が生えていたが、次はそこから暴風。

 クロネコの術式を吹き飛ばして、風はアズリたんを包む。


 クロネコはそんなアズリたんを見てさらに肥大化すると、さらに倍以上の呪印をそこら中に放った。術式より何かを生み出そうとしている。

 式神、いや蘆屋道満的に言えば式妖のクロネコが何かを召喚しようとする異様な状況。


 その術式を見て、きつねのが震えながら言った。


「クロネコは……阿修羅明王剣を呼び出そうとしています……あんな物ここで振ったら、周辺地域ごと常世行きですえ……あの魔王でも流石に……」

 

 名前だけでも物騒な武器を呼び出そうとしている。ネームバリューだけで言えば魔王を倒せそうだ。


「なんとかならないんですか? 正直、アズリたんを止める方法を俺たちは持ち合わせてはいません。もし、クロネコを止める方法が何かあれば教えてください! じゃないと全員お陀仏ですよ」

「……クロネコは……待っているんです。芦屋道満様ではなく、自分の本当に仕えるべく本当の主を……しかしそんな者は夢幻、クロネコは破壊のかぎりをつくすまで止まりません……終わりですえ」

「……マジか、起こしてしまった俺たちにも責任はあるわけだ。よって、なんとかするしかねーよな。あんまり期待はしていないけど、バンデモニウムでもらった秘密兵器使ってみるか!」

 

 俺と、ガルンとアズリたん用だとか言ってたそれ。


「マオマオちゃん、私も何かできないかな? あのままだとアズリたんちゃんもクロネコもかわいそう」

「いやぁ、クロネコは可哀想かもしれないですけど、アズリたんは好きでやってますからねぇ」

 

 凛子ちゃんはきっと心が綺麗に育ってきたんだろうな? でも大人的に危ないことはさせられない。

 

 俺は自分用だという、道具を手に取り、ガルンにも投げた。

 

 ガルンは何だろうと丸い宝石みたいな物を齧る。

 なんでも口に入れてはいけません


「……ガルン、こいつはあのデーモンジェネラルの大きいお友達から貰ったもしもの時の為に作ってくれた何故か俺とお前とアズリたん専用アイテムだ。使って助太刀するぞ!」

 

 絶体絶命の状況、この道具に縋るのは仕方がない。

 アステマがずるいという!

 お前は、呪印生物とかいうのに寄生されて未だかつてないパワーアップしてるだろ。まぁバンデモニウムでは普通くらいだったけどな。

 てかこいつなんで戦闘に参加しないんだろう? 勝てないのは分かるけど、現在一番力あるだろうに……。

 

 アステマはかなりの美少女だとは思うが…………。

 

 大きいお友達は自意識が高い奴苦手なんだろうな。

 

 自意識が高くてもアズリたんみたいな幼さがあるから許せる系は好きなんだろうな。

 


「……じゃあ使ってみるか! えっと、なになに? リリカル・デモンズ……暗黒世界を守るキュートな守護小悪魔……何これ? 普段はちょっとおっちょこちょいな魔女だけど、デモンズストーンにお願いすれば……アルゴルのお導きで小悪魔女マオマオ、爆☆誕……呪っちゃうぞ……ここでウィンク……うわっ! 服装変わった……」

 

 俺は、ローブ姿だったのに、露出の激しいローブ? 衣装に変わった。

 

「……僕は、普段は日向ぼっことオヤツが大好きなコポルトガール、でも世界からもふもふを奪う悪い奴が光の彼方からやってきた時、デーモン女王フリーゼに力をもらって僕は、世界中のお兄ちゃん達を守る小悪魔獣ガール・ガルンに変身なのだ! お兄ちゃんは僕が守るのだ! コポルトガールでありながらデーモンの力をもった僕は、ベヒモス・ガールに大変身!」

 

 この口上考えたやつ、頭大丈夫なんだろうか? ガルンもちょっと露出が増え、少し成長したように思える。

 そして俺とガルンは超絶パワーアップした事は間違いない。

 正直な話、というか現実に戻ろう。俺はパッと見十代のそこそこ可愛い女の子だが、二十代は半ばの成人男性なわけである。

 心が殺されたような気持ちである事をご理解いただきたい。

 

 完全に魔法少女的な力を手に入れた俺たちに不思議な事が起きた。

 

 

 


“犬神猫々様、ガルンがユニオンから離脱しました。序列によりエメスを一時期的にユニオンマスターに変更します“


 アステマと同じ事が起きました。

 

「……俺たち、すげーパワーアップしたけど、ユニオンの加護が全部なくなったので……」





 要するにプラマイゼロ的な事になった。もしかすると各種加護を考えるとマイナスじゃねぇか……


 切り札どころか、窮地に追い込まれている。あのクソデーモン共。全部終わったらタダじゃおかねぇ。

 

「ガルン、アステマ。とりあえず。こうなっちまったら仕方がない。なんか使えそうな魔法とかぶっ放してアズリたんの加勢をするぞ! 俺が合図したら同時に行くぞ!」

 

 俺の話を聞いてアステマが少し嬉しそうだ。これはアレだ。

 自分だけが不幸じゃなくなった事による歓喜だろう。最低だなデーモン。

 依然アズリたんとクロネコは大怪獣バトルを繰り広げている。アズリたんには先が見えないが。

 クロネコはどんどん大きくなっている。一見強そうに見えるが、多分これには限界があるだろう。

 これを延々と続けていればいずれクロネコはオーバーヒート。

 アズリたんに当然軍配が上がるのだろうが、これはマズイ。

 アステマの呪印どうにかできなくなる。それ故に俺たちは、この制御の効かないクロネコを守りながら制御の効かないアズリたんを抑えなければならない。

 

 ……無理ゲーすぎるだろうがよ。

 

「アズリたん落ち着け! クロネコが死んでしまう! お前も連れて帰ってもふもふしたいんだろ!」

 

 ……さぁ、アズリたん良い子だから言う事を聞きさない。


「クハハハハ! マオマオ、ならん! こやつ、面白いぞ! 余の力についてきておるわ! 持ち帰る事も良しと思ったが、ここで余がいかほど力を出せるのかを見るのも一興ではないか! クハハ!」


 なんかテンション高いアズリたんはクロネコをすり潰すつもりだ。

 ……なんで今日に限ってバトルマニアみたいになっているんだよオイ。


「……アステマ、お前もなんか言え。……戻れなくなるぞ!」


 俺の言葉を聞いたアステマ。

 

 涙目だ。

 

「……あの、アズリたん様。私はこの姿から元に戻りたいんだけど……」

「クハハ、戻れば良かろう! いちいち余に確認を取る必要はない! 許す、余はクロネコを葬る事に忙しいのだ! あまり邪魔をするな!」



 マジ魔王の威嚇の前に、アステマは震え、ちびりそうになって俺をみる。

 

「あ、あぁ……まぁアステマ良く頑張った。今のお前も俺もアズリたんの魔王耐性ない状態だもんな。とはいえ、これはマジでまずいな。クロネコの奴、かなり膨れ上がってて、そろそろ破裂しそうなところまで来てやがる」

 

 体組織の構成速度が著しく追いつてなく、ところどころ、筋肉がむき出しだ。

 アズリたんの攻撃にケロイド状になった皮膚。

 

 ……多分、回復とかも追いついていないらしい。

 少し本気を出したアズリたんまでがクロネコの限界レベルなんだろう。なんせ呪印の攻撃がもはやアズリたんに効いてない。

 結界術で縛っているハズなのに、アズリたんの動きは全く変わらない。

 なんならアズリたんの力はさらに増しているまである感じだ。

 もう考えている暇はない。アズリたんがクロネコをぶっ倒してしまったらアステマがずーっとメソメソするだろう。

 

 ただでさえウザいのに、日がな一日、その事をごねられたら俺の精神が持つ保証がない。

 というか普通にぶん殴りそうだ。

 

 いや、自暴自棄になったアステマが何をしだすかわかったもんじゃない。


「……もうやぶれかぶれだ! アズリたんを止めるぞお前ら!」

 

 俺はなんの策も無しに飛び出そうとした。

 

 そして、奇跡は起きた。凛子ちゃんが何か手伝おうとして、デーモン達の最後の道具を使用した。

 

「……深淵より、暗きところから現れ出でる我らが主。数多の魔王種を従え座るその暗澹なりし黒き髪。……従え、全ての魔性よ! 讃えよ全ての暴虐よ! 世界の光を駆逐する為に、闇魔界より出し、漆黒の太陽。圧倒的な魔力と、圧倒的な嘲笑を持って願い届け! 神すらも滅ぼし尽くすその笑顔、小悪魔王少女・凛子。闇魔界よりトリックオアトリート! ってなんか勝手に喋ったんですけど!」

 

 凛子ちゃんは多分、アズリたん用のチー牛デーモン達が作ったあの変身アイテムを使ったらしい、おいたわしや……

 

「……凛子ちゃん、気を確かに……」

「ちょっと、意味分からないんだけど、マオマオちゃん、私だけ、なんか頭に髪飾りとか変な大きな杖とかあるんですけど……これどうしたらいいのかな? ちょっと……ううん、かなり恥ずかしいけど、魔法少女?」

「うん、気持ちは分かるよ。こういう時は、恥ずかしがったら負けだ!」


 俺のフォローにならないフォローに赤面する凛子ちゃんだったが、クロネコは凛子ちゃんを見てこういった。 





「マホウ・ショウジョ」

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