バンデモコレクション開催! 同じアホならなんとやら
バンデモコレクション。
今まで鎖国同然だったデーモン達の園。バンデモニウム、そこが人口減少に伴い村おこしとして考えたファッションショー。
美男美女の多いデーモン種。そしてモンスターは多才であるという事の相乗効果。
恐らくはまだ世界でも希少と思われるアンドーナッツにフルーツサンド。名物もこれから増やす。
人間がデーモンは恐ろしい魔物じゃない。そう分かり合えれば間違いなく千客万来が約束される。
その試験開催である。
パリピ気質なのに今までお祭りという事を行ってこなかったデーモン達は大人も子供もこの日を心より楽しみにしていたらしく、テンションがヤバい。
親子のデーモンは誰が作ったのか、俺の顔が描かれた団扇を持って凄く嬉しそうに客席で座っている。
勘違いしてはならないが、これはアイドルのコンサートではない。
しかし実況……
「偉大なるデーモンの紳士と淑女諸君! 私の記憶が正しければ、バンデモニウムが鎖国してはや三百と数十年。魔王がやってきた事があっただろうか? いや、他のモンスターがやってきた事があっただろうか? いやいや、魔女王が? そんな事よりも、人間がこの地に足を踏み入れた事があっただろうか? 否である! 我々は今、歴史の証明者になろうとしているぅううう!」
まぁ、否定はしないさ。優生思想拗らせてたら開国するにできなくなったんだもんな。
まぁ、それでも他者の力を借りようというその姿勢は誉められたものか。
人間はそういうところ不器用なのにモンスターはすごいわ。
しかし実況テンション高いな……
「本来、干渉するはずのない南の魔王アズリタン様、そして北の真威王マオマオ様がバンデモニウムの為に駆けつけてくださったァアアアアア!」
助けに来たんじゃなくて、匿ってもらいに来たんだけどね。
……まぁ盛り上がっているのであえて水は刺さんけど。
俺もファッションショーに思考を持っていかれがちだが、
アズリたんのザナルガランとガチンコで戦えるくらいの戦力があるバンデモニウムのご機嫌取りでもあるのだ。
少々の事は目を瞑ろうと思う。俺が難しい事を考えているのに……
サキュバスさん達は俺のメイクやらヘアスタイルやらにめっちゃ力を入れている。あの魔法少女衣装を着なければならない事が実に辛いが……
いつ用意したのか、星がついた魔法のステッキまでご丁寧に用意してくれてるよ。
「マオマオ様、こちら、バンデモニウムでも最高の武器職人に用意させた、一千年に一度の暗黒樹の枝で作った杖です!」
「うわー、そんなレアアイテムをこんなコスプレグッツに変えてしまうなんて、君たち怖いな……まぁ、やれと言われればなんでもこなしますわよ」
俺はヤケクソでポニーテールの魔法少女衣装になると星の飾りがついた魔法のステッキを振り回してみた。
「リリカル、マジカル……俺をこんな目に合わしている全員に不幸が訪れるようなーれー!」
少し古めの魔女っ子の感じで振る舞うが、サキュバスさん達はきもいくらい盛り上がる。
「あぁ、マオマオ様、あまりの可愛さに……私たち……ムラムラしてきましたぁ」
淫魔とは言ったものだ。だが、本家淫魔ですらウチのゴーレムの方が頭おかしいと思うと泣けてくるな……
だけど、俺が男なの知ってるよな?
「お前ら、今の俺は見た目何やかんやで大きなお友達向けのろりキュンな魔法少女ではありますが、実際は休みの日は寝て過ごして、晩酌しか楽しみのない二十代の人間の男ですよ? お前ら、女の子が好きなんだろ?」
…………サキュバスさん達はある物を俺に見せる。
エメスが、妄想力を限界まで跳ね上げて描き上げた、俺をモデルにした男の娘本……全部燃やしたハズだが、まだ残ってたのか……
「……エメス様の話を聞き、女の子と男の子、そして男の娘とTSっ子、かつての北の魔王シズネ・クロガネが残したと言われている四種の性別を伺うに連れて、マオマオ様が元々男だったなんてこの際どうでもいいのではないかと結論に至りました。ということで、いただきマンドラゴラ!」
死後みたいな言葉を使いサキュバスさん達が俺に迫る。
「うん、アラモードと同盟組んでて良かったわ。ユニオンスキル神聖加護展開、淫魔でもデーモンでも持って来いやコラァああ!」
モデル控え室。
そこではドレスアップしたデーモンさんとウチのモン娘達が、用意された果物やらお菓子を摘んでいる。
いや、摘んでいるのはウチのもん娘とアズリたんと、凛子ちゃんだけで、デーモンさん達はポーズの練習をしたり、野菜やら入った水飲んだりしてる。
なんというか、モデルなんて仕事は存在しないハズなのにこのストイックさ……俺の世界のモデルさんもそんな感じだよな。
ナルシストも突き詰めていけばこうなるのか……
アステマさんがそれに気づき、突然ストレッチ開始。
無駄な抵抗はやめろ!
「じゃあみなさん、最終リハを行いますので、オバキルさんが考えてくれたプログラムはありますか? なければ配ります……そしてオバキルさん、凄いな、何者だよ……デーモン・レジェンドか」
「クハハハ! それはなんだマオマオ!」
「アズリたんちゃん、これだよこれ」
アズリたんが落書きしたであろうプログラムを凛子ちゃんが手渡す。
「えー、アステマを除くデーモンの皆さんとフリーゼさんは読み込んでくれていると思います。ウチのメンツはいい加減にしろよマジで」
エメスはプログラムの上に同人誌を挟んで読み込んでいる。授業中に教科書に漫画挟む学生か……。
アステマはプログラムを開いてすらいない感じだ。自分流で行おうとか考えているんだろう。ダボめが。
ガルンさーん、プログラムによだれがついていますが、食べようとしたな? 幼稚園児か……。
園児ガルン、小学生アステマ、アズリたん、中坊エメス、JK凛子ちゃん……
「えー、デーモンやサキュバス、インキュバスの皆さんは聞き流していただいて結構です。ウチのモン娘共。それにアズリたん。分かるか? 今回、用意された衣装を着て、ゆっくりと、ステージまで歩いて行く。そして一番端でくるりとターンする。できれば服の全体像がわかるようにするのがベストだ。オバキルさんの指示である何か、ワンポイント仕草を入れるとかはあんまり意識しなくてもいい。それは本当の本番時においおいな!」
「クハハハハ! 余のこの服をデーモン共に見せて歩くのであろう? であれば、そんな場所ではなく直接いけばよかろう!」
「アズリたん……は凛子ちゃんよろしくな!」
……俺の無茶振りに流石の凛子ちゃんも閉口だ。
だってしゃーないだろ! もう試験本番直前ですよ
とりあえずガルン、魔物の耳と尻尾のついたパーカーだ。
テクテクと歩いて、そしてターン! そこからの猛獣みたいなポーズを決めて戻ってきた。まぁ、ありだろう!
そしてなんの指示も出していないのに、フリーゼさん率いるデーモン・ジェネラルグループはもうプロモデルですよ。
「フフフ、マオマオ様。少し地味だったでしょうか? もう少し露出を多くしてみるという物も候補に上がったのですが、サキュバス達の専売特許と言われてしまって、このような形に」
いやぁ、歩き方だけで十分エロいです……いや、プロいです!
俺は三名に親指を立てる。
「いい感じです。サキュバスさん達もおけだし、次はアステマ! お前、デザイナーとしてフリーゼさんと……エメス連れて歩いて」
なんだこのプログラム、オバキルさん、天才か?
「アステマさん、素晴らしい衣装の数々です。胸を張って、そうリラックスするといいわぁ、グレーターデーモンとして真威王の側近だなんて、さらにランクを上げたとき、もしかしたら手の届かない相手になってしまいそうですね」
「……そ、そそそんなことないわ! フリーゼやオバキルはそう、言葉通り同胞じゃない! それに主とアズリたん様とも同盟も組んでいるのだし、私たちは永劫仲間よ! ま、まぁ! いずれ私は魔王種になるべくして生まれてきたデーモンなんだけど、まずはアークデーモンへのクラスチェンジをさっさと終えて、フリーゼと同じジェネラルにまですぐ追いつくんだから!」
二人をエスコートしながらアステマがやってきて、誰もいないところに手を振る。なんか、こいつがやると腹たつな。
「クハハハハ! 余の番はまだかぁ! 余は凛子と回るとしよう! なんならマオマオ、貴様も空いている手を貸してやらなくもない!」
「いやいや、アズリたん、とりあえず一人で歩いて、その後、服変えて凛子ちゃんとな!」
俺は少し不満の顔を見せるアズリたんをなんとかその気にさせて、歩かせる。まぁしかし魔王だけあって様になるな。
パッと見クソガキなんだけど、跪いているデーモンやサキュバスもいる。
禍々しい魔素がはっきりと見えるもんな。
こいつが、本当に愛すべき馬鹿で良かった。
「クハハハハ! 楽しい! 楽しいぞマオマオ! これはあれだ! ザナルガランで街を散歩しておる時のようだ! この“ぷろぐらむ“によると次は貴様だな! マオマオ」
「あー、そだね。じゃあ巻きで歩くわ」
そうMCらしいデーモンのトークと、デーモン達の演奏や、このバンデモニウムの歴史についての劇などが行われ、客席は一杯だ。
そして、気がつけば酒類などを販売しているデーモンもいる。
夏の甲子園のビール販売みたいで、考える事は異世界でも一緒らしい……。
……串焼きや、あんドーナッツの売れ行きも好調みたいだ。試験開催だから、ほとんどタダみたいな価格だけどね。
まぁバンデモニウム内で経済回しても意味ないからな……。
「じゃあ、みんな! このバンデモコレクション、成功させようぜぃ!」
魔法少女の格好をした俺がそう言って、手を出すと、モン娘達は察しよく、俺の手に自らの手をのせ、アズリたんに凛子ちゃんも。
最初こそは何をしているという目で見ていたデーモンさん達も、
フリーゼさんを筆頭に俺たちの手に自らの手を乗せた。
「主、結構ノリノリじゃない! 最初は魔女の姿になって私のデザインした服を着ること嫌がってたのにぃ! ふふん!」
アステマがそう言って俺を煽る。
まぁ……俺文化祭とかまともに参加した事なかったからな…………、
しょうみ楽しんでいる自分がいるのは認めよう。
「じゃあ、みんな! 俺がバンデモ! って言ったら、コレクション! でかけごえよろしく! せーの! バンデモ!」
「「「「「「コレクション!」」」」」」
ちょー恥ずかしい! が、ここはパリピ気質のモンスター達と、どんな時でも友達と盛り上がれてしまうJKの特性を持っている凛子ちゃんも楽しそうだ。
「最初は、デーモンさんとフリーゼさん、スタイル抜群の美女達で一番やりお願いしますよ! リハ通りでOKです!」
「ふふふ……、行きますよみなさん。異世界の魔物襲来時、降魔戦争の時も、私たちは先陣を切りましたねぇ」
そんなことを言いながら、堂々とフリーゼさんと他二人のデーモンさん達がステージに向かう。
「すげぇ、盛り上がりだな! ほい、次。ガルンの番だぞ! で、ガルンが行ったらエメス、スタンバって! アズリたん、あんまりジュースばっかり飲んでると出番前にトイレ行きたくなるよ?」
「マスター、そんな事もあろうかと、オムツを用意……むっ! 思考にノイズ」
普段より女の子らしい服装をしているエメスだが、安定の下ネタを披露しようとしたが、声援の中ガルンが戻ってくるそれを見て、エメスは、男前な顔でステージへと歩いていく。
そう、仕事はきっちりこなすんだよなアイツ。
エメスの同志らしい、気持ち悪いファン達のうるさい声援からしてエメスの人気は凄まじいらしい。
「……マオマオちゃん、なんかこういうの楽しいですね。私、学校ではこんなリア充キャラじゃなかったんで……」
「ははっ、俺も! 凛子ちゃん、見た目同様ばっちり可愛い服見せてきて」
凛子ちゃんが手を振りながらステージに向かう。
アズリたんの髪の癖毛を整えて、俺はゆっくりアズリたんの背中を押した。堂々とステージを歩む様は魔王らしい。
さて……この後は、アステマ。そして凛子ちゃんとアズリたん、ガルンにエメスなど二人でステージに行くのだが……その前に
「……さて、覚悟決めるか」
そう、俺、魔女っ子で魔法少女の姿を着た俺の出番なわけだ。
……鏡に映る俺、ちょー可愛い……死にたい……
「……お次はみなさん、お待ちかね! 魔王アズリタン様の盟友にしてバンデモニウムの酋長オバキルの盟友でもある。北の魔王? いや違う、魔女王? それも違う。みなさん後一緒に! 真威王・マオマオちゃんだぁ!」
ほんとやめて……死んじゃうよ? 本当に……このMCのデーモン何者?
「……あはは、よろしく。こんにちは」
…………。
「……ここで確かターンして、手を頭の上でピースサイン」
キラっ! みたいなポーズを取る俺……いやー
風が吹いて、スカートを押さえて何見てんのよポーズ。
いやーーーーー!
誰か殺して。
…………。
俺のメンタルは死ぬほど消費したが、ファッションショーは大成功に終わった。なんか俺と結婚したいというデーモンが増えた事は気にしない。
「エメス様、エメス様、エメス様ぁ! サインしてください! その不敵な笑みが素敵すぎですぅ! 新刊できましたら絶対買いに行きますので、あぁ! 握手……嬉しぬぅ!」
「サインに握手はちゃんと並ぶと良い! 皆の者! あとモデルは疲れておるからな。打ち上げの後夜祭が始まる時には打ち切る。あらかじめご了承するように! 最後尾はちゃんとわかりやすいように、プレートを持ち上げておくことを忘れるな!」
「あぁ、魔王アズリタン様。お会いできて嬉しいです。こんな事が生きている間にあるとは、邪神様に毎日お祈りしていたかいがありましたぁ」
…………。
ファン交流会、その監視はオバキルさんだが、仕切りも完璧だなこの人。
「貴女がこのバンデモコレクションの全ての服のデザインをされたアステマさんですね? グレーターデーモンでそれだけの才能、やはり私たちデーモン種はモンスターの頂点である事を証明されましたね!」
「ふふん! そうでしょ、そうでしょ! 私はいずれ魔王種になるデーモンなんだからこんくらい当然よ!」
普通は引かれて終わりなのに、デーモンは感性がぶっ飛んでるから、
「……私もアステマさんみたいなお洒落で、センスのいいデーモンになりたいんですけど、どうしたら?」
「「私も、私もぉ!」」
……あぁ、頼むからウチのイキリデーモンをそれ以上調子に乗らせないで。
……ほら、ほら鼻が上向き超嬉しそうじゃんかよ。
……おや? 凛子ちゃんの方にもサキュバスやらデーモンの若い子が。
…………あれだな、JKは国境どころか、異世界すらも超えるなんだろう。
この交流会すごいな……。
「北の真威王、マオマオ殿の列はこちらだ! 待ち時間は最後尾で三十分、人数が多すぎるので握手は割愛させてもらう。マオマオ殿の声を聞いたら速やかに出口の方へ行くといい。後にマオマオ殿が直筆でかいたサイン色紙の販売も行われるので、この並びの整理券をそのまま予約券として使う事ができる。販売所は混雑しているので、指示に従うように!」
オバキルさんはベテランの興行スタッフのように捌いていく。
「マオマオ様、お会いしとうございました! なんという可憐で美しい姿なのでしょうあのステージでのターンとウィンクを見て……私、年甲斐もなくですね……その、恋をしてしまったらしく……ふひひ、ですので!」
スタッフ、スタッフー! これだいぶアウトな系のファンの人来てますよー! アイドル……じゃ無いけどお触り禁止ですよー!
「……いやぁ、ありがとうございます……でも、真威王は恋愛禁止なので」
俺は自分でも何を言っているのか分からないが、今のこの状況も意味不明なのでトントンになるだろう。よく見ると、フリーゼさん達にアステマやエメスは女子のファンが圧倒的に多い。
そして、ガルンにアズリたんはコロコロしてて可愛いので必然的に年配のファンがついたらしい。
凛子ちゃんは同年代のデーモンやサキュバス。
俺はさ……なんというか、チー牛的なデーモンが多いな……。
「いや、チー牛俺も好きだけどさ……アイドルの人、尊敬するわ」
どんなヤバいやつが来ても明るく対応できるあの人ら、本当にすごいです。
こんなにも愛の言葉を受けるのは辛いのか……
「ままままま、マオマオ様、好きだぁ!」
うん、一世一代の大告白なんだろうな? まぁ、一応ありがとう。
なんだろうな……なんか心持ちが仏みたいになってきた。
「……マオマオ様、魔女とデーモンの種族を超えた関係になりませんか!」
「まぁ、ありがとうございます! でもごめんなさい!」
……あぁ疲れたなぁ。後夜祭の巨大な魔族の炎が燃え上がるキャンプファイアーを前に俺は体育座りで俯いた。
少しだけさ、女の子になったら楽だろうなとか思った事あるんです。
ホント、世間の女の子さーせん、調子こいてさーせん。
「主、アズリたん様が凛子とガルンを連れて、炎の近くで踊るとか言っていたけど、主は行かないわけ?」
「逆に聞きますが、俺がそんなのいくと思うわけ? まぁ、俺はちょー疲れたのでここで休んでるよ。アステマさんや。お前も行きたければ行ってきなよ。みんな踊ってるし、パリピ気質のデーモンなら本能的にあそこ行きたいんじゃねーの? みんな楽しそうだしさ」
「そうね……私、今そういう気分じゃ無いかも、バンデモコレクションをして成功して……なんか力が抜けたというか、もう少し思い出してたいの」
「あぁ、まぁお前が結構主導したもんな。自分のプロジェクトを成功させてその余韻に浸ってたいんだろ。いいと思うよ」
そう、あのアステマが、一仕事終えて、その達成感を楽しんでるとはな。
服屋をやりたいと漠然とした夢を語って、実際の店舗も仕入れ先もこいつは自分で切り拓いたんだよな。
そして今回のバンデモコレクション。
デザイナーとしての素質も発揮した。
まぁ、多分悪くない良い経験だったと俺は思う。
服屋だけでなく、デザイナーの進路も開けた。
……いつか、もし俺がいなくなっても何とかなる経験の一つかな。
静かにキャンプファイアーを見つめ炎を瞳に映すアステマは黙ってるので……
結構、困るくらい可愛いな。
アステマはしばらく炎を見つめると俺にこう話を切り出した。
「主……。私は主達と一緒にショウテンガイってのを作りたいわ」
そう言ってアステマは嬉しそうな顔をした。
まぁ、それがアステマの答えなら協力は惜しまない。
「そっか、まぁいいんじゃない? 兎にも角にも今はアズリたんの件だな」
何をするにもまずこの南から脱出する必要があるし、その為にはシレイヌスさん攻略となる。
魔王であるアズリたんよりも強力な魔物であるシレイヌスさん。
「ふふん! そうね。でも主には策はあるのかしら? ……アズリたん様でも撤退するしかなかったのよ」
まぁ、知らんがな……。
「まぁ、一応戦力的にはここのデーモンさん達が加わればなんとかな」
そう、アズリたんだけでなく、オバキルさんもいる。
戦力的には今までのイレギュラーと違い随分揃っているのだ。
「主、いつも思うのだけれど、主って他人任せよね? それってどうかしら?」
「人を使うのが上手い奴もまた魔王だろ?」
俺は冗談としてそう言ったのだが……
“アプリ起動、アステマが裏ルート、死天使へのクラスチェンジが実行されました。
「えっ? 何これ……アステマ?」
「くぅう、あああああん! く、苦し」
アステマが突然クラスチェンジを始めた。




