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お分かり頂けただろうか? 後天的女性化、TSはこうして至る

 エメスの鞄、アズリたんへのお土産ドーナッツと魔物達へカレー粉。

 

「お前ら、一応アズリたんは友達かもしれないけど、他の魔物がどう反応するか知らんから、粗相するなよ」


 俺は地球から持ってきていたスーツケースに俺のスーツ、そして三人のドレスを入れている。当然、メアリー・アンさんに仕立てて貰った物だ。

 

「主ぃ、どうしてその素敵なドレスを今着ないのかしら?」

「お前さん、本気で言ってるのか? これは向こうについてから、アズリたんの前に出る直前に着替えるんですよ。礼服ですよ。このヴァッカ!」

 

 俺に馬鹿呼ばわりされて、涙目になるアステマ。言い訳は聞かない。

 なんせ、早急に仕立てて貰った上に、かなり良い素材を使ったので、ちょっと懐具合が赤字になるような高価な服なのだ。普段着に着れるかい!


「ご主人、ご主人! アズリたん様のザナルガラン。どんなところなのだ?」

「知らないよ。なんか鎖国的な感じらしいよ。魔物でも超上級クラスじゃないと生活できないらしい、お前らマジ調子乗るなよ」

 

 俺たちはアズリたんの国からの使者という、上級を超えた魔物。

 

 アズリたんの腹心の一人である魔王種シレイヌスさんとやらの使い魔。


 くそでっかいカラスみたいなガルダンという鳥の魔物の背に揺られている。ガルンが撫でると気持ち良さそうに目を細めるガルダン。

 忘れてたけど、モンスターテイマーの素質がガルンにはあったのだ。

 最初、このガルダンが来た時、スマホアプリの警報に俺たちはドラクルさんが本調子じゃないのも含めて超焦った。

 

 

 ガルダンの飛行は驚く程に速く早朝に乗って、お昼ご飯を食べる頃には、南の領域に入っていた。ベコポンをガルンがガルダンに与え、嬉しそうな鳴き声をあげる。普段はおしゃべりなエメスとアステマはここが相当ヤバいところであることに口数が減る。

 

 話によると人間が一人いるらしいのだが、ほんとか? 魔物達の街が見える。


 そこいらで、駄弁っている魔物達がいるが、ダンジョンとかで出会ったら中級冒険者パーティーなら瞬殺される危険度の魔物達である。

 

 要するに、一般人が脅威級魔物の街。

 そりゃ、魔物でも中々この南での市民権を得られないのがよく分かる。いわゆるここはラストダンジョンだ。

 エメスは真顔でフリーズし、アステマは泣きそうな顔、何故かガルンだけが今回はビビっていない。何でだろう。


 ガルダンが高度を下げると、南の魔物達が手を振る。そして俺たちを見て険しい表情を見せた。これは……大分ヤバい奴かもしれない。

 低レベルな魔物が三人きた事か、あるいは人間である俺がのこのこやってきた事に怒りを覚えているのか、魔物達は何かコソコソと話をして、そして各々の家に戻り、何か袋のような物を持ってガルダンが着陸するところに集まってきた。


 アステマは俺にしがみつき、エメスは口から煙を吐く。これ、実は俺たちを袋叩きにする罠じゃ……

 

「人間だ! あれが北の魔王……アズリタン様の盟友か……南の闇国ザナルガランへようこそ! 北の魔王、そしてその従者様!」

 

 

 

 

 袋の中は何やら香りのいい花びらでそれを滅茶苦茶振りかけてくれる。なんか知らんけど、多分歓迎してくれている。ガルンに至っては大きな花冠を被せて貰って嬉しそうだ。

 ……なんか、俺が元々聞いていた南の感じと大分違う気がするけど、あのアホの子の国だからな


「皆さん、盛大な歓迎ありがとうございます! アズリタン様の大事なお客様ですから通してあげてください! おぉ! なんと目麗しい魔物に、そして聡明なお顔をされている人間なのでしょう。お初にお目にかかります。私は魔王軍参謀ルシフェン、そしてこちらの方がこの度ガルダン様を皆々様に向かわせた魔王軍の大将軍であらせられるシレイヌス様です」

 

 俺はスマホアプリをチラりと見ると、そこには超危険・魔王種。

 ルシフェン、この人はあまりにも普通なレッサーデーモンだ。何ならアステマ以下、そしてこの人……というかこの魔物がガルダンの飼い主、シレイヌスさんか、なんか真っ白な羽にめっちゃ美人。天使みたいだけど、ハーピーとかそっち系の魔物らしい。


「今回はお招きいただきありがとうございます。改めて北のCEO、犬神猫々です。こちらは従者じゃなくて従業員のガルン、アステマ、エメスです」

 

 俺の挨拶にシレイヌスさんはあからさまに不快感を顔に出して、代わりに人懐っこい表情のルシフェンさんは間を持った。

 

「こんなところで立ち話も何ですから、是非、我らが妥当勇者の研究棟。闇魔界の御方の居城である魔王城へ、さぁさ!」

「貴様が北の魔王というのは事実なんだろうな? こんなか弱き魔物を従え、魔物達の王にでもなったつもりか? 人間よ」

 

 いきなり喧嘩腰でそう言うシレイヌスさん。アズリたんがアホの子だから、その家来も大分アホだと思ったけど違ったらしい。

 まぁ、まともな人が組織にはいないと回らないか、アズリたんは圧倒的武力とカリスマ要素で、この辺の腹心的魔物がちゃんと政をしてるのだろう


 来て早々、歓迎ムードから突き放された感じがする。この人多分、アズリたんの事大好きなんだろうな……“アズリタン様“と言う時だけ声が高くなる。


「そんなつもりはありませんよ。彼女らはアホで、殆ど俺の迷惑しかかけませんけど、一緒に商店街を作る仲間ですから」


 流石に大口を叩いてもここではアズリたんの友人としてきているので処罰はされんだろう。

 

「……シーイー王とやら、今回のアズリたん様への会合。条件がある」

 

 ほう、遊びに招待しておいて条件とな……

 まぁ、それでこの人の気が済むならそれもいいだろう。

 

 俺はポーカーフェイスを保ったまま、シレイヌスさんに聞いた。

 

「条件とは?」

「貴様、話によるとアズリタン様の求婚を受けたらしいな、それには他二柱が黙っていない! あくまで他二柱の話だ。私はこのつまらない世界に慈悲を与える為に生まれてきたアズリタン様が決めた相手であればぁ……いや、いい。ここにいる間、私の術で姿を変えてもらう。それを飲めば、貴様らの安全は保証しよう」

 

 俺の姿を変える。魔物にするって事か? 何だかとても嫌な予感しかしないのだが、断れば、俺たちの安全は保証されないという事だよな。

 

「流石に、人間の姿じゃないというは困りますし、人語が喋られない。さらにユニオンスキルや、その他魔法が使えなくなるのも困りますよ? 正直、こちらはアズリたんから招待されたわけなので、こんなの本来受ける必要はないですが、貴女のメンツに関わる事と察したので先ほどの条件は提示させてもらいます。それで良ければシレイヌスさんの術をかけてください」

 

 コミュニケーションが取れない姿にされる事は回避できるだろう。

 

「分かった。約束しよう。ちゃんと、お前がアズリタン様やその従者達と話せ、力もそのままでな。こっちに来いシーイー王、変異魔法を使う」

 

 俺がシレイヌスさんの前に立つと、シレイヌスさんは綺麗な羽を広げた。

 ……ほぅ、すごい大人の身体だ。そしてその羽に俺は優しく包まれる事になる。なんだろう、この人。何かの花の香水みたいな匂いがする。

 そしてシレイヌスさんの羽は開かれた。俺は何も変化がないように……

 

「終わったぞシーイー王。中々お似合いの姿だ。この暗国ザナルガランにおいて人間が存在するなどあり得ないので、二人も人間が自由に闊歩されては国の威厳に関わる」

 

 なんか、そんな話をしているけど、ガルンとアステマの驚き顔、そしてエメスが俺に殺意を込めた表情。ちょっと待って、スマホでインカメラにして俺は自分の姿を見る。

 

「さぁて、シレイヌスさんとやら……確かに俺はお前さん達と問題なく話ができて、確かに魔法やユニオンスキルも普通に使える。いや、むしろ何なら今の状態の方が魔法適性が高そうなくらいだ……だけどさ……お前さん、俺の姿、白髪セミロング美少女になってますけど? 自分で自分を美少女とか言うの抵抗ありますけどね!」

 

 そうなんです……俺の姿ですが、セミロング白髪、でっかいハット。

 そして、ちょっと豪華なローブに身を包んだダークエルフ的な魔女に代わってます。

 

「ご、ご主人! その姿はなんなのだぁ! とても美人なのダァ!」

「マスターを殺して我も死ぬ」

「ちょっと驚いたけど、私よりは可愛くないんじゃないかしら? 主!」

 

 案外、驚かない二人に、ちょっとエメスさんの表情と目が色々ヤバいんですけど!

 


「メス同士でつがいにはなれない事も知らんのか人間! その姿なら、まず嫁ぐ嫁がないの問題にはならぬし、最悪貴様がアズリたん様への情欲にかられ一線越えようと、傷物にはならない。その場合でも貴様を殺すけどな」

 

 この人、支離滅裂だな。要するにアズリたんをお前なんかに渡さないからな! 的な超嫉妬か……俺の姿にルシフェンがお世辞を言う。


「……いやはた、マオマオ様、大変お似合いですよ! とても可愛いです」

 

 うん、可愛いって言われて喜ぶ男は一部のアイドルか、特殊な性癖を持った最強の人くらいですから……

 

「そうですか……あの、帰る時ちゃんと元の姿に戻してくださいね。じゃないと戦争ですからね」

 

 俺はスースーする足元になれずに言う。

 

「はぅ……マスターが雌の恥じらいなど知るハズもないのに、風通しの良い股下に何らかの快感を覚えているとみたり」

 

 何言ってんだこいつ。

 

「おいエメスさん……お前、男じゃ無い俺を見て、まぁまぁ殺意向けてましたよね?」

 

 エメスが好きなのはショタであり、またショタ化できる俺だったわけだが……何やら今の魔女っ子番俺でも、エメスさんは情熱的な視線を送ってくる。こいつかなりヤバい奴だなぁ。

 

 エメスは目を瞑り、ぺろりと舌を出して親指を上げた。

 

「葛原事典にアヘ顔ダブルピースという言葉を思い出したり」

 

 そうかぁ……今度葛原さんの書籍全部燃やそう。

 

「……要するに、女の子でもいけるような、さらなる変態に進化したわけか、おかしいなぁ……クラスチェンジなんてさせてないのに、最新型のゴーレムはほんと高性能だなぁ」

 

 俺が呆れていると。

 アステマが何やら俺の周りをうろちょろするじゃないか……

 あー、多分デザイナーの真似事ね。

 自分の身長と魔女っ子俺との身長を比べる。

 

「……ふふん、私良い事考えちゃったわ。今の主はメアリー・アンが作りたいって言っているフリルが多い服のモデルになれそうね。安心しなさい主。私がバッチリ可愛く着こなせる方法を教えてあげるんだから!」

 

 アステマは俺の着ているローブやらを触れながら何か物思いに耽る。ただただ腹立つなぁ……


「北のCEO改めて、五大国最強を誇る南の暗国ザナルガランへようこそ。アズリタン様に代わり、この魔王軍において大将軍たる私が人間である……いや、今は魔女である貴様と雑魚魔物達を歓迎しよう! ルシフェン、控え室へ」

「かしこまりましたぁ! 皆々様、長旅お疲れでしょう。簡単なウェルカムドリンクと休憩できるお部屋をご用意致しましたので、しばらくお休みください。こちらの準備も整いましたら改めて及びに伺いますので!」

 

 そう言って魔王城の広い部屋に通された。

 実に良いセンスをしているソファーにテーブル、そこに紫色の甘い香りのするジュースかワインのような物。一口飲んでみてると酒ではなさそうで皆にも勧める。


「しっかし……異世界何でもアリだな。子供にされ、女の子にされ、なんか慣れてきた自分が怖いわ」

「主、持ってきたドレス。着なくても良いのかしら? その控え室でしょう?」

 

 めっちゃ、普通の事をアステマに言われる。あまりの事に忘れてたわ。

 

 スーツケースから三人のドレスに俺のスーツを出すのだが、問題発生である。

 

「俺……。明らかに小さくなってるので、オーダーメイドで仕立ててもらったスーツがぶっかぶかだな……しゃーねーか、とりあえずアステマ。ガルンとエメスがドレス着るの手伝ってやって。俺は裾をまくって何とか着るわ。お前らご馳走とか出るだろうけど、くれぐれも汚すなよ。お前達の礼服。仕事の制服とそれしかないんだからな」


「ご主人! 果物! それにパンが置いてあるのだ! これ食べて良いのかっ? 僕はとーってもお腹がすいたのダァ! 美味しそうな匂いがするのだ。食べて良いのかっ?」

 

 俺たち用に設けられた控え室なわけだから良いんだろう。

 俺は頷きながらこの部屋に関して少し考えた。

 

「なんか、これ。披露宴の控え室っぽいんだよな……アズリたん達にそんなおもてなしの文化あるのかな」

 

 俺の予想として、これは地球の誰かの提案ではないだろうか?

 ……この国にいるらしい人間。

 まさか、セリューじゃないだろうな…………

 

「うまいのダァあああ! このパン! うみゃ……うまああああい! パンなのに柔らかくて、甘くて、うまいのだ!」

「おいおい、あんまりうるさくするなって……これ、マフィンだな。それも家庭的な手作りっぽいな。確かに美味い。ほぼほぼ俺の、予想が正しそうだが、やっぱりあのテロリストか?」

 

 俺の不安と同時に、控え室の扉がノックされる。お呼び出しかな?

 ……「どうぞ」と俺は声をかけると、ギィと開かれた扉か現れたのは。

 JKだ! めっちゃ普通の女子高生が現れた。

 

 ……セーラー服が懐かしく感じないのはアズリたん。

 それにウルスラがぽい服を着ているからだろうか……

 

「は、初めまして、私。月沢凛子って言います」

 

 女子高生は課外学習の為、異世界に来てトラブルに巻き込まれた。

 そうか、俺は彼女に死ぬ程同情して、そして彼女を元の世界に戻す事を約束した。

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


「なるほど、学校の授業で異世界に」


 俺は久々に同郷の、それもリアルJKに少しテンションが上がった。

 実際、リアルJ Kって子供だからな、恋愛対象に考える奴はまぁ……ねぇ……でもアステマのような腹立たしさのない女の子は癒しだな。

 彼女はアズリたんに気に入られた事でこの南の暗国ザナルガランにおいて特別に滞在を許されているらしい。

 多分だが、このお呼ばれは凛子ちゃんを保護しろよという事なんだろう。

 

「えっと、マオマオちゃん?」

 

 あー、お約束ですわなぁ……俺の今の見た目は君と遜色ない女の子です。

 俺は、魔法でシレイヌスさんにこの姿にされた事を説明し、なかなか理解してくれない凛子ちゃん。可愛いしマジ天使かな? な感じなんでいいか。なんか、日々頭のおかしな連中とばかり会話をしていたので俺が異常なのかと錯覚してたくらいだ。


 正直、凛子ちゃんの保護目的なら……

 このまま一旦帰らせてもらって、先生にでも連絡をいた方が良くないか?

 

「マオマオちゃん、その今日のパーティーはアズリタンちゃんも凄い楽しみにしてるらしくて、私はここの魔物の人たちにもよくしてもらっているので、是非パーティーを楽しんでもらってからで構いませんのよで……その、ご迷惑をおかけしますがよろしくお願いします。マオマオちゃんの事はアズリタンちゃんから聞いていたので、多分こういう控え室の方が落ち着くかなって、私が提案してみました」

 

 やはりそうか。

 しかし、凛子ちゃんであってセリューじゃなかったのは安心だ。


「ふふん! 確かに私はアズリたん様のパーティーを楽しみにきたわ! それはガルンにエメス、そして主もそうよ。なんせ、私たちはあの魔王アズリたん様の友人なんだから! 凛子、アンタもアズリたん様の友人かもしれないけれど、私の方が早くアズリたん様の友人になったんだからね! それにしてもアンタ、アズリたん様と似たような服を来ているのね……まぁ……私の! 専用の! 仕立て屋のメアリー・アンに言えばそれくらい作れそうだけれど……今後服屋を営む予定の私がじっくり見てあげても良いんだけれど?」




「制服? アステマちゃん予備がもう1着あるので着てみる?」


 猫みたいな目をして固まるアステマ。


 


 馬鹿だからプライドが邪魔しているのだろう。


「仕方ないわね! 着てあげようじゃない」


 ほら意味わかんねー。

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