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ことの顛末は、神様が特定の人物に寵愛を廃課金した事だけだった

 聖女王サマ。

 もとい、アラモードは金色の鎖を見せる。

 よく見れば見るほどに完全に腕時計である。それを引っ張って引きちぎろうとするがそれができない。

 

「このクソ忌々しい金色の鎖はな? 魔神器クロノスっーんだよ。壊しても壊しても何度でも元に戻りやがる。それも壊せば壊すほどに頑丈になりやがる。この前ようやく時間をかけてぶち壊してやったのに、これをつけたのもテメェか? ふざけた事しやがる……それでその手加減か……」

 

 そうか、これ魔神機の一つなのか、どうりでアラモードのふざけた力を封じ込める事ができるわけだ……

 というか使い方実際違うんじゃないか?

 いや知らんけどさ……アラモードはこの状態で戦うつもりらしい。


 どうしようかと悩んでいると、アラモードと俺の間に異様にアラモードに対抗意識を持っているエメスさんが空気を読まずに登場した。


 エメスはアラモード的には招かざる客なわけで、滅茶苦茶不機嫌な顔をする。

 

「……おい? なんだ泥人形? 処分されにやってきたか? あぁ?」


 いきなりアラモードに噛みつかれるエメス。

 しかし、エメスは余裕の表情で指を見せるとそれをチッチッチと振ってみせた。

 なんだろう……凄い小物感が一層強くなる。


 そして、エメスはアラモードに対して徒手格闘の構えをとった。

 なんかそういえば、プレアデスの協力を得て、秘密兵器的な何かを用意して来たんだったか?

 だから今回はリターンマッチに燃えていたと思えばわかりみは深い。


「性女王、貴様がそう名乗っていられるのは今日までと知れ! 我は形式上姉型機であるプレアデスとユニゾンする事で、一時的とはいえ、機械王 (仮)となれりけり、その状態の我であれば今の貴様などショタの竿を弄ぶくらい容易いとこたえり!」

 

 最悪な例えだな……しかし、機械王といえばウルスラ。

 

 (仮)がすごく気になるけど行けるのか?


「は? いいぜ? 使ってみろよ! 機械王と死威王。二匹同時にぶち殺してやるぜ! こいよ! 神よ、我に撃滅の力をお与えください!」

「神聖魔法とその邪悪な魂、なんとも不安定と指摘す!」

「使えりゃなんでも良いんだよ! こんなのはよぉ! 全ての神なんてクソ共は私に力を送る為だけに存在してんだよ」

 

 そう、アラモードは体裁だけは詠唱するが、神を蔑ろにしている。

 それでも神様はアラモードに力を貸すらしい。

 神は信じる者に平等ではないという事を俺は目の当たりにした。

 

 ……………そして、エメスもまたその秘密兵器を使うらしい。


 現在エメスはクラスチェンジを行なっているが上級程度のゴーレム。

 

「BL回路、フルオーバー! 裏コード・ヤオイ! 天空のプレアデスとユニゾンを開始。ユニゾン成功。我、機械王 (仮)エメス・プレアデスなり!」


 だいぶクソみたいな詠唱だけど、なんか強そうだ。

 

「ほぉ、口だけじゃねぇみてーだな。クソゴーレム。簡単に処刑されてくれるなよ? 神よ神! 我が偉大なる汝の名において、悪を滅する裁きの光をここに! アーク・タキオン・ブレイザー!」

 

 アラモードの魔法を見て、フッと笑ってエメスはアラモードの魔法を受ける。

 

「……神聖魔法、恐るるに足らず。我の我すらもわからぬ……この際限のない力……今より反撃の狼煙を上げる時と知れ……!」

 

 そう言っているエメス、反撃の狼煙どころから頭から煙が立っている。

 確かにアラモードの魔法を受け止めたが、もう一杯一杯くさいぞ……大丈夫か?


「……やるじゃねぇか……手加減したが、次は本気でぶっ放してやるよ! 腐っても死威王のしもべって事か……悪くねぇ!」

 

 あっ、エメスさん。完全に固まった。どう足掻いても勝てないと判断したんだろう。今回はプレアデスの演算付きである。

 

 さらにアラモードは続ける。

 

「おい、クソ泥人形。お前もまだ上があんだろ? あぁ? 使えよ! 私を倒せると思うなら使ってみろよオィ!」

「まさか性女王の基礎能力がここまでとはプレアデスの演算を大幅に上回り……マスターと戦うに相応しいと我心得たり」

「は?」

 

 エメスのやつ、全部俺に投げやがった。腕を組んで道を開ける。まだ自分もアラモード対等のような振る舞いだ。


「だそうだ。死威王。もう良いだろ? もう私の中ではお前の事しか考えられねぇんだよ。寝ても覚めてもよぅ、疼くんだよ! 体中がお前を求めてやがる。四六時中お前の事を考えてんだぜ?」

 

 アラモードの告白のような……いや、ある意味俺を絶対殺しますよ告白なわけだが、そりゃ恋する乙女の表情で俺を見つめる。

 

 チラリと見るエメスは俺を見てウィンクし何かを悟ったように頷く。

 なんだこれ……この地獄を生み出してくれたエメスはもはや戦意喪失。


 小さな岩に隠れて震えているアステマとガルンは頭は隠しているが尻が完全に出ている。まさに諺だな。


 

「オーケー、アラモード。観念してお前さんと戦おうと思う。何がどうあってもお前が納得するのはそれしかないんだろ? だけど、これは北と西の殺し合いじゃない。単純なお前と俺の喧嘩だ。喧嘩だから殺した方が負けだ。いいな? これならお前の考える対等なルールだろう? そして勝った方は負けた方の言う事をなんでも一つきく、この二つのルールを守れなければ俺は帰る」

 

 このアラモードはサイコパスではない。完全に戦うことしか頭にないバトルマニアだ。あるいは、条件提示しても乗ってくるんじゃないか?

 

 さぁ……どうだ。


「……マスターの魂胆が見えたり、性女王に勝ち、あらゆる辱めを楽しむと見た!」


 おっと、一番喋らせてはならないアホを喋らせてしまった。そして、その言葉をどうも真に受けているアラモード。

 ギラギラと嬉しそうな顔をする。

 そして自分の指で手のひらが出血するくらいに握りしめる。どういう握力だ……。

 

「正直、テメェを殺せれば勝ち負けなんざどうでも良かったが、そういう事か、神に愛された私はあらゆる部分が最高の出来らしいからな……良いぜ? 私に勝てれば神が愛した私を好きにすればいい……その後殺す」

 

 ちょっと聞き捨てならないな。あらゆる部分が最高の出来という割に、性格の方は完全に破綻しているよ?

 

 ……まさか、それが神様の好み?

 

 完全に神様、ドMなのか、あるいは異常性癖を持っている。あー、そういえばゴーレムの創造主もそうだわ。


 まぁ実際地球の神話の神様も変態だらけだからな……。


 いずれにしてもとりあえず俺の生存ルートが確定した。

 

「じゃあ行くぜ! ユニオンスキル・グラトニー!」

 

 ここにいるエメス、ガルン、アステマのクラスが元に戻る。

 そして俺にその力が取り込まれる。

 前回エルミラシル戦はかなりの力を取り込んで、なんらかの奇跡が起きた俺は人王なる存在になったが、今回は単純に魔法力、身体能力が爆発的に上昇しただけである。

 要するに目の前のアラモードには逆立ちしても勝てそうにない。

 

 ただし俺は、攻撃力ではなく、あらゆる能力全てを防御に回している。まさに今の俺は自分を守護るッ! という状態に特化させているわけである。


 聖女王アラモードのやばいところはその攻撃力が俺の防御を軽々と突破して、俺より遥かに硬いということ。

 そこで、俺を殺してはいけないというルールの採用である。

 聖女王アラモードと俺が喧嘩するなんて、普通に考えれば自殺と一緒である。

 俺が死にかけても最悪アラモードによって蘇生を期待。


 そして、まさに今、一発ぶん殴られ、


「おいおい死威王……そりゃねぇだろよ? あぁ? わざと耐久を下げて、死ぬつもりかよ……もう面倒だからぶち殺しても良いんだけどよぉ! あの時みてーに本気で来いよ!」

 

 そうです。アラモードの一発を受けて俺は瞬時に死に至りました。

 慌ててアラモードはリザレクション。

 それに、勝手にそういう事かとアラモードは納得していた。


「アラモード、お前の破壊力は十分わかった。だからこの辺りで手打ちにしないか? なんならもうお前の勝ちでもいい」

 

 交渉は繰り返す。じゃないとマジで死にそうだ。

 アラモードは魔法力を調整し、見事なフットワークで俺を翻弄する。

 正直、全く見えていないのでどこから殴られても俺には当たるのだが……。

 

「セイクリッド・タキオン・ブローッ!」


 気がつくと俺の顎が砕けて俺の意識が瞬時に飛んだ。

 

 そして、同時に蘇生魔法をアラモードはかけたのだろう。

 

 一種にして命を奪われ、そしてすぐに蘇生されるという。

 きっと異世界に行ってこんな意味不明な事をされるとは誰も思わないだろう。心から地球に戻りたくなった。


「はぁ……はぁ……ちょっとつかめてきたぜ……」


 俺には理解が遠く及ばないのだが、アラモードは何かしらのコツをつかんだようだった……

 多分、俺をなぶり殺しにする力の調整だろう。

 

 そして少しだけ面白い事にも気がついた。

 滅茶苦茶疲弊しているアラモードに対して……超元気な俺。

 ……そう、超元気なのである。

 

「……なんだろう。最近の作業部屋の椅子がゲーミングチェアじゃない事から悩まされていた腰痛が治ってる」

「私のアルティメットリザレクションで瞬時に蘇生してんだ。体の隅々まで完全に再生されてるからに決まってんだろーがよー!」

「……あ、りがとうゴザイマス……」

 

 きっとほとんど使える術者はいない魔法なんだろう。

 

 そして、比例して使用魔法力も凄いのだろう。


 明らかにガス欠状態のアラモードだが、光の粉みたいな魔素を集めてる。

 これが神に寵愛されたアラモードの魔法力の高め方なんだろう……

 

「おい、アラモード! それ以上するとお前死んじまうぞ!」

 

 俺は自分で言って、この喧嘩のルールを思い出した。殺したら負け、最悪アラモードは死んででも勝利を掴むつもりらしい。


 それでも瞳の闘志は揺るがない。

 

「アラモード、お前さ、正直そこまでぶっ飛んでるとカッコいいわ。でもお前が死んだら俺も色々と困るわけだわ……お前も俺も元気に自分の家に帰る」

 

 それが実際の俺のオーダーである。


「はん! 死威王、テメェ! 何言ってんだ? この戦いはお前と私の雌雄を決する為だろうがよ! 私が死ぬか、お前を殺さずに倒すか、どっちかだ!」

 

 おぉ! アラモードの勝利以外に終わりはないと……


「全く、そこまでバトルマニアを通してくれると清々しいな……」

「お前だけだ! 私が、二度も負けたのはな……勝ち逃げでもいい、お前を倒すってんだよぉ!」

 

 俺はいつ二回もアラモードに勝ったんだろう……ハハッ、俺の知らない世界線の俺かな?

 まだ魔法力を高められるのか……神様、本当にアラモードの事が好きならその廃課金やめてくれませんかね?

 

 アラモードの身体には歪みが始まっている……いくら聖女といえど……

 彼女は人間であり、いつかは終わりが来る生命。

 

「チッ、生身だとあのクソドラゴン女にも勝てなかったな……クソが、もっかいレヴァティン(ドラゴン化)をする力はねぇか」


 お洒落やら、甘いスイーツやら、なんなら恋愛を楽しんだっていい年頃だろう。

 ウチのモン娘なんてそれぞれ、振り切ってるくらい欲望に忠実だ。

 

 アラモードには戦闘以外に楽しみがないのだろう。

 こいつをこんな風に育てた奴をなんだかぶっ飛ばしたくなってきた。

 

「分かった。アラモード、決着をつけよう。そして俺の事は死威王って呼ぶな。CEO、犬神猫々だ! 覚えとけ!」

「死威王……マオマオ……はん! 北の魔王らしい名前してんじゃねぇかよ! その体骨を粉にするくらいぶん殴ってやる」

 

 やべっ……決着つけよう……とかカッコつけなければよかった。


「行くぜ! 私の身体なんてバラバラになってもいい! おい! 神、さっさとよこせよ! ……愛してんぜ、神。来い来い来い来いこい来い来い! おっ! キタキタキタキタキタきたぁ! 神は馬鹿で助かるぜ! もっとよこしな!」

 

 神、貢ぐ君になるの、ほんとやめてぇ!

 本当に色んな意味でキメに来ている。

 

「ヤッベ、精霊王サマの全能力向上を防御に全振り、グラトニースキルをユニオン全体に回す。魔王権限により通常より多めに吸収を開始。さらにそれを倍化する精霊王サマの加護を発動……死にたくねぇ……」

 

 俺はもしかすると、この世のあらゆる攻撃を凌げるかも知れない準備に入る。

 一発耐えればそれでいい、あとは無様に倒れても生きてさえいれば、アラモードの勝ちで満足してくれるだろう。

 

「すげぇ! すげぇな! マオマオぉ! お前だけだ! 私がぶっ潰せなかったのは、お前だけ……それも人間だ! 信じられねぇ! 最高じゃねぇかよ! 私の生きる意味は、お前だけだ……」


 顔を真っ赤にして、アラモードは俺に告白した。


「お前をぶっ壊すことだけが、私の生きがいだ」



 何も最高じゃないし、楽しいのはアラモードだけだろう。

 人を壊すことを生きがいにしないでください。ほんと、俺は何か悪い事をしたんでしょうか?

 

「セイクリッド・神殺拳ッ! 神よ神、命をお与えになる神よ! 我に瞬きの慈悲と必殺の光なる一撃をお与えください! 灰は灰に、土は土に、塵は塵に」

「ちょ……それ大丈夫なやつか?」

「安心しろ、レヴァティンが敗れた時の、最後の切り札。最強の一撃、私の命を弾にして弾く瞬きの乙女(フラッシュメイデン)ってやつだ」

「ちなみにそれはどんな効果が?」

「殴った奴を必ず即殺する!」

「えっと、俺が死んだらアラモードの負けじゃ……」

「あぁ? そんなのどうでもいいや……生き残った方が勝者だろ! 今のお前だ、今のお前を殺してなんぼだろ!」


 自分の欲望に忠実なアラモード、瞳の中にハートが見える。

 本来、滅茶苦茶好きな相手に対して猪突猛進になるキャラの反応だろうに……

 

 おめでとう、アラモードは絶対俺を殺すマンへと進化した。

 

「お前だけだぜ? 祈撃のグランドクルス、そして浄滅のアーク・ザ・タキオンでも対して通じなかった。ハハッ、ようやくコイツを使える相手だ」


 さぁ、アラモードの想像の中の俺はどんどん凄い事になっている。


「本来は、役に立たなくなった神を殺す為の技なんだけどな。神殺のフラッシュメイデン、お前はアレだ。値する者って奴だ!」


 セイクリッド・神殺拳……本当に神を殺す為の技だったのか……頭おかしいなこの宗教。

 こんなにもチビりそうになった事は初めてだ。見るからにヤバい技。

 バチバチと目に見える神聖魔法の魔素。

 ぶっちゃけ、何とかのと名前のついた技じゃなくても普通にアラモードに殴られただけで俺は何度も死んでいる。

 今回は俺の蘇生をするつもりはなさそうだし、アラモード的にも切り札中の切り札を使うんだろう。


「アラモード、俺を殺した後は俺の拠点の奴らには手を出すなよ」

「は? 魔物は皆殺しだバァカ!」


 うん、やっぱりブレないな……。

 ……どう足掻いても後十数分後には俺は死ぬわけだが、せめて格好くらいはつけるとするか……

 俺も昔見た総合格闘技か何かを思い出しながらアラモードに向けて構えた。

 ちなみに俺は子供の頃から喧嘩なんてしたこともない。

 格闘技の経験も皆無だ。強いていえば中学の頃に体育で柔道があったが、俺は選択で創作ダンスを取ったのでこれにも当てはまらない。


 アラモードが嗤った。


 全身全霊の力を右腕にこめているからか、振り回されている。

 そんな腕を押さえながらゆっくりと俺の元へと、そして段々早く走り、確実に俺を成仏させる一撃を放とうとした。

 俺は、無茶苦茶な構えからとりあえずアラモードに向けて無意味なパンチを繰り出した。

 それはアラモードの大振りの一撃の内側から……

 クロスカウンターのような絶妙な位置をとった。

 

「死ねぇえええええ! マオマオぉ! 神殺のフラッシュメイデ……ん、うぁ」

 

 アラモードは頭の血管でも切れたのか?

 頭からピューと大量出血……そして、俺の弱々しいパンチがアラモードのアゴに触れた。


「……クソ……なんだよこれっ……神……テメ……死威……私は負けな……マオマオ……クッソぉ……あぁああ」

 

 所謂ラッキパンチだったのか、大量出血した状態で俺の一撃がうまい事脳震盪を起こしたらしい。

 

「……ん? なんでかわからんが生きてる……そんで、アラモード」

 

 完全にダウンしている。

 俺の魔法でも止血くらいはできる。


「……おい、アラモード。しっかりしろ。大丈夫か?」

 

 出血したからか言葉通り頭に上った血が吹き出して冷静になったようなアラモード。

 

「……おい、マオマオ。私はなんで負けた?」

 

 いや、知らねーよ! お前が勝手に自滅したんだろうが……

 多分あれじゃね? 神はこうなる事を知っていたので、力を出し渋った。

 なのに、それでも無理矢理アラモードは力を行使して今に至る。

 

 俺はとりあえずアラモードが動けるようになるまで回復した。

 

「……アラモード。俺たちの勝ちだ。もうさっさと西に帰れ」


 アラモードは顔をプイと横に向ける。


「……テメェは忌々しいが勝者だ。なんでも言う事を聞いてやるよ。その後殺してやる」


 なんだろうこの人、マジで怖いんですけど……

 

 そんなんお願い聞いてもらえない奴じゃんか……

 アラモードは上着を脱ごうとするので俺は慌てて止める。


「お前っ! 何してんだ。脱ぐな! 着ろ!」 

「あぁ、テメェが私を犯したいんだろうが? ほらなんでも言えよ。私の身体を辱めたいならやらしてやるよ」

「いや、俺はさお前さんみたいなヤバい肉は食わないんだよ」


 俺のその言葉を聞いてアラモードは真顔になる。

 

「は? 殺されたいのかマオマオ!」

「何言ってもデットエンドルートやめいや」

 

 身体を起こしたアラモードはとりあえず戦う意思はなさそうだ。

 

 しかし、納得がいかない顔をしている。

 ……なんて言えば帰ってくれるんだろう。

 俺がそう考えていると、ファナリル聖教会の信者達が集まってきた。

 

 自分たちが信仰し、その対象であった聖女王が敗れたのだ。

 

 彼ら、彼女らは短剣を抜いてアラモードが死ぬのであれば共に殉教するつもりなんだろ……なんでこんなところだけちゃんと宗教なんだ。

 

「おい、聖女王アラモード、正直今はお前へのお願いなんてなんもない」


 俺がそう言うと噛み付いてきそうなアラモード。

 そんな彼女に俺はこう言った。


「でも、多分。聖女王の力を借りないといけない時があると思う」

 

 俺の言葉にアラモードは拳を下げて、信者達も俺の話に耳を傾けていた。まぁ、できれば力なんて借りたくないですけど。

 

「だから、その時に力を貸してもらう。という事で、もう信者の皆様を連れて自分の家にさっさとお帰りください。本当、もう帰って」


 一応勝者であるハズの俺は土下座をしてそう懇願した。

 

「…………ケッ。私の力を別の国侵略に使いたいとかそういうのか……! ハハッ! 悪くないな。だが、その貸し大きく、高くつくぜ? なんせ約束を終えたらお前を殺す。だから腕だせマオマオよぉ」

「えっ? 腕? 何? もう西のジェノスザインに帰ってくれるなら腕の一本や二本は出しますとも……」

 

 勝手に納得してくれたアラモードは俺の腕に自分の腕をつけた。

 するとアプリが起動した。

 

“ファナリル聖教会 ユニオン方舟と犬神猫々様のユニオン同盟が締結されました“


 し、し、し、し……しまったぁああああ! まさか二度と関わりたくなかったのに同盟関係になっちゃったよ。


「……同盟とか、大丈夫なの? お前ら魔物殺すマンじゃん」


 俺の質問にアラモードはこう答えた。

 

「それもそうだな……まぁお前もろとも滅ぼすし」

「うん、俺はアラモードに連絡を取る事はないと思う。」


 アラモードは腕をあげ、金色の鎖をシャランと鳴らした。

 

 アラモードはゆっくりと信者達の中に戻っていく、信徒達は泣きながらアラモードの名前を呼び、拝み、アラーモードはポーションを受け取りそれを飲む。

 

 …………どうやら帰ってくれそうだ。


 巨大な象みたいなあの生物を連れてくると、アラモードは象みたいな生物の背中に取り付けられた豪華な椅子に向かって飛んだ。


「いくぞお前ら! 負けだ。今回は私らの負けだ。パフェのクソ野郎を回収して、サンデーのクソ女を探し出して殺す!」

 

 アラモード、割とセリューにブチギレてたんだな。

 しばらくはセリュー探しの旅にでも出てくれるとしばらくは安心なんだが。

 

「お、おい。マオマオ」

 

 頭を掻きながら、少し恥ずかしそうに、アラモードは目を泳がせる。そして顔を赤らめて、耳の先まで真っ赤に染まっていく。


 この反応はもしや!


 金色の鎖に触れながら手遊びをしてモジモジと、なんだかちょっと可愛らしい。

 

 ……そして、めっちゃ可愛い顔でこういった。


「次は必ず私が殺してやるからな! さっさと、私に命令をして貸を消費しろ! 次は最初からクライマックスで行くからな! 覚悟しろ!」

 

 アイドルばりのウィンクを決めてそう言った。

 普通、俺に惚れたとか、そういう展開になっても良くないですか? 


 俺は未だ命を狙われている事に少しちびったかもしれない。

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