違う作品になっちゃったよ! 以上、俺の感想でした
一方、カグヤさんと教皇パフェの話をしよう。
これは後々俺がアーカイブで閲覧した内容になる。
「月帝……実在するとは思わなかった」
教皇パフェ、いや聖人パフェはそう言う。
巨大なパフェスプーン型の魔神機ユミルを向けた。
カグヤさんが嗤った。二人は一度目の激突。
正直、ここの居なくて良かったというのが感想。
二人がぶつかり合う度にできるクレーター、そして百人単位で信者が倒れる。
カグヤさんは自分が直接手を挙げたわけではない。衝撃に巻き込まれたわけでもない。されど、倒れていく信者達に怪訝な表情を浮かべる。
が、考える暇を与えてくれない。
目の前の聖人パフェは人間として……いや生物としての規格が常識の外にある。
「ここにはおおよそ80万の信徒達がいる。聖女には一万をつけ、残りの十九万は神殿より神域結界を貼らせている。私達が勝利するための最大の策。これは各地域の魔王種を滅する為のファナリルの秘技……が、問題は貴様だ月帝」
月帝。
呼ばれた事のない名前にカグヤさんはあからさまに不快感を示す。
周りの信徒達は加勢するどころから、少しずつ距離をとり離れていく。
聖人パフェの邪魔をしないようにという配慮なのだろうが、その中で女、子供、老人とバタバタと倒れていく。
カグヤさんはこの状況に関して一つ分かった事があった。
聖人パフェが攻撃を繰り出す時、逆に自分の攻撃を聖人パフェが受け止めた時、誰かが倒れる……
もうこの愚かな仕組みにカグヤさんは気づいた。
異様すぎる聖人パフェの力はここにいる信者達から使っているのだ。
「おい、仮にも聖職者だろ? これだとお前は……いやいい。胸糞悪ぃ」
聖者の行進とは名ばかりのデスマーチ。
彼ら彼女らは戦う為に必要な魔法も体術も必要はないのだ。必要なのは信じる心と、その生命エネルギーのようなものだとカグヤさんは気づいた。
聖人パフェは、なんの躊躇もなくその力を振るう。
一発一発に、ここにいる人間の命が込められたそれ、不死身にも近いハズのカグヤさんの身体が軋む。痛いのだ……いや、痛いという声が響く。
これが人のやる事なのだろうか?
痛みの中でカグヤさんは結論づけた。
この聖人パフェは人間である事をやめようとしている。
聖人パフェの表情には悪意はない。それ故に尚許し難い。
「昔、お前とは違った意味でサイテーな奴とやり合ったことがある」
力を削り取る魔神機ユミルに削られると再生が遅れる。
それでも、カグヤさんは握りしめた拳を聖人パフェの顔面に叩き込んだ。
「そうか、ならば私は正義の為に修羅にでもなろう!」
「テメェ……」
顔面を殴られた状態で、聖人パフェはカグヤさんの腹部にユミルを突き刺して裂いた。
なんだろうこれは?
俺たちがもしカグヤさんと会わなければこんな狂った化物を相手にしなければならなかったのだろうか……というかカグヤさんヤベェ。
カグヤさんはユミルによって再生遅延を受けている状態ですかさず距離をとった。
その間にカグヤさんの体はゆっくりとだが修復される。
宇宙人ってすげぇな……。
そして、聖人パフェもまた最上級回復魔法を使って自分の顔を治療。これを繰り返せば有限の力である聖人パフェに勝てんじゃね?
「私には枷がある……」
枷? 聖人パフェは魔神機。
一昔前の喫茶店でよく見たパフェスプーンの化け物を槍みたいに構えて話し出す。
魔神機だけあって、カグヤさんの打ち込みを受けてもびくともしない。この魔神機とは一体なんなんだろう。
さまざまな形をした物があるがいずれも巨大。
名前に俺もよく知る巨人の名前が入ったものが多いのは偶然だろうか?
いや、必然だろうな……
「……枷だと? これだけ人間の盾を使ったお前がよく言う?」
「……かつて、あの空高く孤高に輝く月より、一人の麗しい少女がきた。名前をナヨタケ」
おぉ、まかさ世界一古いと言われてる日本のSF作品、かぐや姫が異世界でも事実として残っていたのか……いや、逆かな?
異世界のお話がどうにかして俺たちの世界に流れてきたとか?
聖人パフェは語った。そのナヨタケは黄金に輝く樹木の中より産声を上げた。というそのナヨタケを育てた者。
それがファナリル聖教会の初代、聖女と呼ばれた人物だったらしい。
ナヨタケはあまりの美しさに求婚が後を立たず。
……どうにかしようとした聖女様。
存在しない宝を四人の貴族達に持ってくるようにと語った。それをいち早く持ってきた者にナヨタケを嫁がせると。
うん、完全に古典に載っている竹取物語のお話だ。
それを聖人パフェは、驚いたか? 信じられんだろうがな……と遠い目で話す。多分、日本人で知らない人はいないだろう。
「そのナヨタケの話と俺になんの関係があるんだよ。あぁ? もしかしてお前達。そのナヨタケを奪い返しにきた月からの使者と戦ったとでも言うんじゃねーだろーな? そして、お前達じゃ手も足も出ずにボコボコにやられたってかぁ? おい!」
普通に考えればそうじゃね?
聖人パフェの話は俺の知っている竹取物語とは少しばかり違っていた。
この世界の月の兵隊達はナヨタケを取り戻しにきたらしい。
ナヨタケとは人間という存在に触れ、急激に学習、そして成長する何らかの存在、崇拝対象になりやるナヨタケをみすみす手放そうと聖女はしなかったらしい。
というか、一千人からなら月からの兵隊を全滅させたのだとか……
やっぱこの宗教絶対ヤベェやつだわ。
……だが、当時の聖女様が迎えにきた兵隊を殲滅したことで月は本気の刺客を差し向けた。
それが……月帝と聖人パフェ達が呼ぶ存在。
一撃で当時の聖女様の心臓を貫いて、それを見ていた人々はこの月帝を祀る宗教を作ったとか……
要するに、最初期からこのファナリル聖教会はおかしかったと……
一番の驚きは心臓をぶち抜かれても当時の聖女様は死亡しなかった
しかし、当時の聖女様の力では月帝には逆立ちしても叶わず、ナヨタケは連れて行かれた。それから当時の聖女様はある一つのテーマで研究を進める。
「力なき聖女は聖女にあらず……聖女ならざる力は、皆悪なり」
まじで頭おかしい考え方だな……聖人パフェはそれを言うと地を蹴った。
片手で魔神機ユミルを振り回しながら、カグヤさんと真っ向から殴り合う。力も速さも若干聖人パフェが上だろう。
手を目の前でぐるぐると回すようにカグヤさんは構える。
「……ちっ、それでその月帝と戦う為に生み出されたのがお前か?」
カグヤさんの言葉を聞いて聖人パフェの口元が少し緩んだ。そして再び激突。
巨大な魔神機がある分、手数はカグヤさんの方が多い。
されど、地面に赤い華を散らしているのはカグヤさんだった。
聖人パフェは魔神機ユミルを地面に突き立てた。そう、勝負を決めにきたのだろう。
腐っても聖人とか言われているわけで、この男。体術だけじゃなくて魔法の方も極めているようだ。
アズリたんのような暴力的な魔法でもなく、精霊王サマのような確率系魔法でもない。
神聖魔法。強制的に魂を浄化する神とかいう存在の力を借りた魔法だ。
印を組む聖人パフェ。体全体から魔法力が滲みでいてる。聖職者達の使うブースト系魔法。マントラってやつだろう。
カグヤさんはポケットの中に手を突っ込んでリトルシガーを咥えた。
そして、ライターの石が潰れている事に少しイラつくとライターを捨てた。
指をパチンと鳴らし、どうやったのかリトルシガーに火をつけた。
挑発的に睨みつけるカグヤさん。構えは上段、腕を前に距離を取るように変わらない。
聖人パフェは余程の力を使っているのか、冷や汗を流す。
そして細い目を開眼させると切り札の神聖魔法を放った。
「月帝、貴様の前に二度と月は昇らぬ! 神域第四魔法。セイクリッド・ルナ・エクリプスっ!」
「なんだこりゃ……身体が……テメェ、絶対月の住人殺すマンか……」
物理破壊ではカグヤさんを突破できない事を知った聖人パフェ。
カグヤさんが言った冗談めいた皮肉の通り。
聖人パフェはゆっくりと、カグヤさんの体を強制的にこの世界から消し去ろうとしていた。
これ、どうすんだ? 精霊魔法の確率消失と違って、自己再生も含めて消滅させてやがる。どういう理屈のどういう魔法なんだ?
とか考えるのが無駄だ。この世界は理不尽が罷り通りすぎる。
物理性能であれば、カグヤさんはこの世界最強クラスだろう。
…………だが、カグヤさんの理解の及ばない領域からの攻略…………
多分、手も足も出ない。
消滅しかけているカグヤさんはリトルシガーの煙を口の端からゆっくりと吹きながらペッとリトルシガーを捨てて尋ねた。
「……俺はお前の言う月帝じゃねぇけど……気が済んだか? いや、月の住人に復讐できてお前の存在意義もあったんじゃねぇか? オメデトウ。だが、ちぃと遅かったなぁ?」
「ふん……減らず口を、これだけの魔法でも倒せぬものなのか……そういう事か月帝、いや魔王種という連中は……空に月か……」
そう、二人の戦いは熾烈を極めていていた時間すらも忘れるくらいに、ゆっくりと日が傾き、月がその真の光を浴びて……
顔を出したのである。
夜の帷が降りた。
カグヤさんの言葉を借りるなら、今から……闇に潜む者の狩の時間が始まるわけだ。
とはいえ、カグヤさんの身体はボロボロだった。ゴソゴソともう一本リトルシガーを咥える。
ポゥ……。
リトルシガーに灯った火がカグヤさんの顔を照らす。
月の調べが聞こえる。
目の前の夜食を喰らえと……
切り札を抜いた聖人パフェは防戦に入ろうと、近くに突き立てた魔神機のユミルを掴もうとした。目の前にあるハズの魔神機ユミルを掴み、引き抜くことができない……。
……聖人パフェは大いに嗤った。
自分の腕が肘から先がないのである。この瞬間にカグヤさんに腕を吹き飛ばされたという事を瞬時に理解する。
魔神機ユミルの回収を諦め、聖人パフェは腕に最上級回復魔法を使用し、失った腕を再生させた。
…………人間じゃねぇ。こえぇ……
それからカグヤさんに備えて聖人パフェは構えた。
体を消滅させかけられたカグヤさん。
気がつけば、生命エネルギーである信徒達は皆倒れ、弾切れの聖人パフェ。
「……なぁ? 今どんな気持ちだ? 後生大事にその月帝対策をした結果、あんま意味なかった事に関して? 教えてくれよ」
カグヤさんはそう言って聖人パフェがどんな反応をするのか楽しむように聞いた。
それはカグヤさんの想像通りの反応ではなかったらしい。
何故なら聖人パフェは大きく口を開けて笑った。自暴自棄になったわけでもなく。カグヤさんの言葉に素直にウケているように……。
「私は、最高の魔法力を、最高の肉体を、そして神の加護を得られるように生み出され育てられた。信仰も誰よりも強い自負がある……が、完成した者は私ではない。私は失敗作よ」
いやいや、アンタも十分この世界において狂ってるくらいのチートだよ。
俺ならそう答えただろう。
カグヤさんは指にリトルシガーを挟むと紫煙を吐いた。
そして一言、“知るかよ“
…………この人、ほんと美味そうにタバコ吸うな。
「聖女王アラモード……あれこそが、完成した存在だ。性格と信仰心に大きな欠点がある……だが、あの娘が……ファナリルの信念を形にした力の象徴だ。あれなら魔王だろうと聖霊王にだろうと届く、いやそれ以上だろう。結果としてあの空に不気味に輝く月の魂すら打ち砕くだろう」
聖人パフェは法衣を脱ぎ捨てた。鍛え抜かれた鋼のような肉体。次の衝突がこの戦いの幕になるだろう。
聖人パフェは役目を終えたのだ。ファナリル聖教会最強戦力をここにとどめる事もなく、俺たちの拠点に向けて向かわせたのだ。そしてカグヤさんをここまで疲弊させた。
戦略的には完全に聖人パフェの勝ちと言って過言ではない。
カグヤさんはこの瞬間、この時に彼の切り札を抜いたらしい。
手が燃えている。いや、炎に包まれている。それは月が自らだけでは輝く事ができないように……
月を輝かせている本来の力の源を間借りしているように、それは強く、熱く、強烈な命。
……月輪は日輪の光を持って本来の姿を現したのだ。
彼の少年のような命の輝きのように。
聖人パフェは手を合わせると、持てる神域の加護を自らにかける。
真っ赤に燃えるカグヤさんの炎を前に、ゆっくりと手を広げる。
ボォと、聖人パフェの掌より腕にかけて青い焔。不浄なる者を滅する神域の炎が灯った。
二人は目の前の敵を倒す為に前進を始めた。
一体どれくらいのダメージを受けたのかお互いは分からない。
聖人と呼ばれた男は、月帝とこの世界で呼ばれた男は……相手に自分の姿を重ねた。
これは自身への罪なのだろうと……人になろうとした自分への。
今までの自分自身に向き合う為の壁が今そこに立ち塞がっている。
暗闇の中、青と赤の炎が揺らめく。たった二人で月以外のこの決着を見届ける者はいない。お互い防御は考えない。ただ一撃でも多く、速く相手に叩き込む事、二人は真っ赤な華を咲かせる。されど、力はより強く、動きはより速く。
人になろうとした者達は、反して人からかけ離れていく。
生物として、そもそもの領域が違いすぎるのだ。
二つの炎は一瞬、動きを止める。そして再び動き出す。それは永遠に続くイカれたダンスのように……
こうなると、お互いの攻撃は段々と汚くなる。聖人パフェはカグヤさんの足を掴むと、力任せに持ち上げ地面に叩きつけた。
骨が砕け変な方向に曲がる足を気にすることもなくカグヤさんは返し技を放った。
俺は知ってしまった、魔法が存在する世界であれ、物理的な攻防という物の、原始的な闘争の強さ……
カグヤさんも聖人パフェも血と何かを吐きながら尚立ち上がる。
俺は何を見せられているんだろう?
剣と魔法の世界で男達が血と汗を流しながら目の前の相手を倒す事のみに命を削っている。
流石の俺でも心が震えるそんな光景、そして……聖人パフェ曰く。
自分よりも遥かに強いらしい聖女王サマの相手はやっぱりカグヤさんに任せた方が良かったなと改めて思った。
片腕がダメになったのか? 聖人パフェは片腕を地に向ける。
いよいよこの二人の戦いに決着がつきそうだ。
カグヤさんのダメージも大概どえらい事になっていた。多分、今すぐ病院やらに行かないといけないレベルの吐血。
「……あと一撃だ。私はお前を連れていく。100万の命をこの戦に込めた。ならば私の命、最後の一撃にこめて然るべき……今の貴様に耐えられるか? 私の全身全霊。神域第四魔法。セイクリッド・ルナ・エクリプスっ!」
聖人パフェは最後の最後に魔法を残していた。
それもあの規格外の魔法。今のカグヤさんに耐えられるのか?
当然、カグヤさんを縛る消滅の魔法。万全の状態のカグヤさんを今の状態にまで落とし込んだこれを今受ければ……
「……あぁああああああ! テメェ……まだそんな隠し球持ってやがったのか……なろぉ……」
流石にこれはチートがすぎる。あと一歩、あと一歩で聖人パフェを倒せたろう
「……月帝よ。ここで潔く、気高く消えていけ。お前は確かに強かった。だが、私の信仰心が、お前より少しばかり高位にいたという事だ」
聖人パフェはそう言って、カグヤさんに祈りを捧げていた。
目の前で完全消滅するカグヤさん。
「見事であった。月帝」
聖人パフェはそう言うと、たった一人で聖女王が向かった先に続こうとした。
ふと、空の月を眺めた。月は満ち、怪しげに輝いている。
ふと、聖人パフェは振り返った。
自らが倒した月帝、いるハズのない者を確認するために……
「おい、どこに行くんだよ? カグヤ様を放っておいてよぉ? 随分血を使ったが、俺の勝ちだ」
聖人パフェは予感していた通りの人物がそこにいる事に驚かなかった。
いや、むしろ恋い焦がれた相手でも見るように見つめる。どうやって生き残ったのか? そんな事を確認するのは無粋だと笑う。
もう聖人パフェには回復魔法を使うような力は残されていはいない。
それでもカグヤさんの相手をする為に恐らくは死にかけている体を動かしてゆっくりと歩みを進める。
それには流石のカグヤさんも驚きを隠せなかったらしい。
「おい、まだやるつもりか? もう勝負はついた。このカグヤ様が勝って、お前が負けた」
「…………もう勝った負けたの話ではない……言うなれば意地だな、少女を国の頂点に据え、それでも守らねばならぬと、男として最後のケジメだな」
聖人パフェはふらふらとカグヤさんの前に立つと重そうに自らの腕を上げた。
「……そうかい。じゃあもう俺もなぁんも言わねぇ……喰い納めだ」
カグヤさんはそう言って、聖人パフェに最後の一撃をくれてやった。
聖人パフェもまた拳を伸ばす。
彼の一撃はカグヤさんに届いたが……
もう力も入っておらず。
子供ですら痛みも感じないようなそれ。
これが聖人パフェの意地だったのだろうか?
「おい……最後に言っておくが、俺はお前達の言う月帝なんて奴じゃねぇ。俺の名前はカグヤだ。月を見るたびに思いだせ!」
そう、どこかで聞いたようなセリフをカグヤさんは聖人パフェに言い放った。
聖人パフェはゆっくりとそれを聞いて膝を崩した。
「……お前が、大司祭サンデーを殺めたのであろう? 彼女は、私たちを導いてくれる聖母になってくれたかもしれないのだ……」
まぁ、カグヤさんが殺したと言えば殺した。
が、俺はこの後の言葉に耳を疑った。
「あの嫌な目をする人間の女か……あいつは多分死んじゃあいねぇ……理由はいくつかあるが……一番はあーいう奴はあんな綺麗な死に方はしない」
嘘だろ……
そして何故今まで黙っていたし?
聖人パフェはそれを聞いて、
「そうか……サンデーは生きているのか……。あの者が心に邪悪を潜めている事はとうに気づいていた……が、私たちといればいつかは……」
多分無理だろう。あの人はまともな感覚で生きていない。
…………それに関してはカグヤさんも同意見だったらしい。
「無理だな。お前達の理想がどこにあるのか知らねぇけど、あの月まであいつを吹き飛ばしてもあの女と考えが一致する事はないぜ。あいつを救ってやれる唯一の方法があるとしたら……殺してやる事くらいだ」
そう、カグヤさんもこの時ばかりは少し寂しそうな顔をした。
「私たちの聖女王は大人になろうとしない子供だ……が、月帝、いやカグヤ。お前は大人になるのが早すぎた子供のようだな……が、羨ましいぞ、その命の輝き」
空の月と重ねるように聖人パフェはカグヤさんを見ながらそう言った。
カグヤさんはそれに舌打ちをしてポケットに手を入れる。が、もうリトルシガーはない。それに再度“チッ“と舌打ち。
すると聖人パフェは動く腕で何かをポーンとカグヤさんに投げた。
「……おい、これ巻きタバコじゃねぇか……」
「吸うといい。私の物だ」
「聖職者がこんな物に頼るようじゃ世も末だな」
火打ち石でタバコに火をつけたカグヤさん。
「…………お前はこれからどうするつもりだ? 聖女王アラモードを止めに行くのか? あの死威王の味方として」
「…………お前のせいでもう一歩も動けねぇよ」
カグヤさんは一本タバコに火をつけるとそれを聖人パフェに咥えさせた。
「……ふぅ、美味いな。こればかりはやめられなかった…………カグヤ、私はこれからどうすればいいだろうか?」
倒れている聖人パフェの隣にカグヤさんは座ると、ゆっくりと、タバコの煙を肺に入れ……
そして紫煙を吐いた。
「そんな事知らねぇよ……」
ふっと笑う、聖人パフェにカグヤさんは空の月を眺めてからこう付け足した。
生まれ変わる事は俺もお前もできやしねぇ……
でも、やり直せるだろうがいくらでも……と
何これ? なんなのこいつら……
以上、俺の感想でした。




