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小さな田舎のマジな感じの最終戦争・前編

 さて、無視を決め込もうと思っていたのだけれど、ノビスの街から使者がきた。


「マオマオ殿! 火急の事態故失礼をお許しいただきたい! 実は未知の敵性勢力より、この北の地域への侵略宣言があったのです。王都は判断を決めかね、ノビスの街は冒険者を集めてそれに備えています」

 

 アズリたん襲来の時を忘れたのだろうか? どうしょうもなかったじゃん。


 使者の話を聞きつけて、ウチの従業員達が集まってきた。

 そこには蜂蜜採取から戻ってきたゴーレム姉妹もいる。プレアデスが口を開いた。

 

「何だか、そちらの御仁、いやに慌てているけど何かあったのかい? そんな事よりマスターくん。頼まれていた蜂蜜だが、喜びたまえ! クイーンロイヤルという希少な蜂蜜が採れたんだよ!」


 いつも見ている蜂蜜ではない、少し赤みがかったレア蜂蜜だが、今はそれどころじゃない。


「……なんかさ、機械王。ウルスラ・ジ・エンドなる人物が襲来しそうなんだけど、お前達のお知り合いだったりする?」


 俺のその言葉を聞いて、エメスとプレアデスが固まる。

 

「マスター。我の記憶が正しければ、全てのゴーレム達の姐と謳われている唯一無二にして魔王種。シズネ・クロガネの最高傑作」

 

 は? 魔王種……マジで?

 機械王とか言っているけど、そんな大層な存在だとは思わなかったよ……でもこいつらの知り合いという事は……

 

 多分というか、絶対変な性癖があって性能以上に残念な感じで何とかなるやつじゃないだろうか?

 というか、プレアデスもエメスもそうだったし、そうに違いない。


「マスターくん、残念だけど、この地域から離れた方がいいと忠告しよう。ルールと秩序の彼女。ウルスラはシズネ・クロガネの異常性癖を許さず、一年にも及ぶ戦いの末、どうにかシズネが海底に封印できた規格外のゴーレムさ。彼女が侵略すると言ったなら、小手先は通用しない」

「我も知り、シズネ・クロガネが同じ女性に対して大きなトラウマを植え付けられたという話を一度聞いた事があり……まだ純朴だった頃のシズネ・クロガネが全ての力を使って生み出した強制世界平和用ゴーレム、能力は未知数と宣言す」


 こいつら、自分達がネタゴーレムってわかってたのか……

 というか純朴な頃の北の魔王って何?

 そして、まぁまぁ絶対絶命じゃん。


「これって、アズリたんや精霊王サマと同盟組んでる俺たちのユニオンスキルで何とかなったりはしないか? 一応飛躍的にスキルの数も能力も向上してるけど?」

 

 それにエメスは少し考え、プレアデスは俺に指を向けた。

 

「マスターくん。残念ながらその程度のスキルでどうにかなる相手じゃないよ。その南と東の王種が二人いれば話は違うけど」


 北の魔王が作ったゴーレムじゃねぇのかよ!


「いやぁ……アズリたんは助けを呼べば来てくれるかもしれないけど、テンション上がりすぎて結局どえらい事になりそうな気もするんだよな。でも、そんな悠長な事は言ってられないし、アズリたんにや精霊王サマにダメもとで助けを要請してみるわ! ユニオンスキル・遠距離念話……あれ? 広域系スキルが発動しない……何これ? マジかよ……ちょっと待って全体強化スキルも使えないぞ」

「マスターくん、すでにウルスラのジャミング攻撃が始まっているんだよ。広域魔法戦において絶望的な戦闘能力を彼女は誇るからね」

「我のスキルもいくつか利用不可と知る」


 えっ? そんなことってある? 奴さん、相当強いんだろ? なのにそんな詰将棋みたいな……


「ウルスラは一ミリでもイレギュラーを許さないから確実に勝利する環境を作ってくるよ。それがこれ」


 こりゃヤベェ……こいつらど変態姉妹とちがってマジもんだ……

 

「マスター、すでに国境付近まで魔法ジャミングが効いていると思われり」

 

 うそーん……大ピンチじゃねぇか……


 ウルスラ・ジ・エンド。まさかまさかの電子戦を仕掛けてくるゴーレムとは恐れ入った。

 しかし、せっかくここまで商店街が形になってきたのにそれを捨てて逃亡するというのも面白くない。

 だから俺はそのウルスラとやらがどんな存在なのか、この目で見てそして判断をつけようと決意した。


 俺だって、一応魔王、聖女王、精霊王と迷惑をかけられまくったのだ。機械王とやらも何とかできるかもしれない。

 

 エメスとプレアデスより聞いた情報からウルスラ対策を考える。とりあえずギルドへと向かった。

 

「おぉ! マオマオの! 来てくれたか、その分じゃ魔王アズリタンは呼べなかったみたいだな」

 

 全員、アズリタン待ちだった事は言うまでもない。よその地域の魔王種に賭けるとか、この地域ヤベェな……


 されど、不思議なことに皆絶望に打ちひしがれているわけでもない。何とかウルスラと戦う方法を話し合っていた。

 絶望的な状況下で彼らを突き動かすものは一体なんだろうか? まぁ一応、アズリたんが来た時もこの人らやり合おうとしたもんな。

 

 武器屋が最上級の装備の無償貸し出し、魔石屋も出せる限りの魔法石の提供。

 しかし、それらは焼け石に水だろう。

 何せ、相手はアズリタン級の魔王種だという。女子供、老人は既に王都に避難させているとか……


「みんな、流石に今回は戦わずして逃げる事も考えた方が良くありませんか? 何か皆さん、策でもあるんですか?」

 

「ふふっ、……マオマオくぅん。同じ王を冠する西の聖女王がこのお話を聞いて、ファナリル聖教会の大軍勢を連れて北に助力をすると申し出があったのよぉ。同等の王種である聖女王なら機械王でも……でしょ?」

「そういう事だ! 怪しげな教団だと思っていたが、今回ばかりは見直したぜ!」

 

 スペンスさん達中級者パーティーなどは普段身につけないような装備。

 覚悟を決めた本気モードなんだろう。

 そして一際オーラを放っているのがエルフの子供を連れた男性。

 

「おいマオマオ、あいつ知っているか? 少し前にノビスの街にやってきたんだが、白い装束の連中を探しているとか? それって多分」

 

 うん、俺もそう思う。頭のおかしなカルト教団。ファナリル聖教会じゃないだろうか?

 

 ……………目があった。睨まれた。怖ぇえ! 咥えタバコってヤンキーか!



「多分、ここに向かっている大軍勢、ファナリル聖教会じゃないかって教えたら、そいつらを見に行くってさ。止めたんだけどな」

「マオマオの旦那。多分、あの人、相当やりますよ」

 

 キロカさんが言う通り、見るからに只者ではない。そしてこの異世界の人でもないんじゃないだろうか?

 

 じっくりと話を聞いてみたいと思ったが、その男性は子供を連れて、スタスタとギルドを出て行く。


 呼び止める時間はなく、今から会議が始まる。

 作戦を聞くために俺たちはギルドマスターの話をまった。

 かなりの大質量の物が転送されてくるらしい。

 転送直後に魔法を使える者でユニオンスキルの一撃を使用。

 その後、敵性勢力の部隊が現れたら魔法使いを守りながらの地上戦。

 ファナリル聖教会の軍勢が来るまで守り切る。

 

 ……ギルドマスターである逞しい体に引けを取らないひげを蓄えた彼が話し出す


「前代未聞、魔王種がこんな頻度でこの近くにやって来るとは、はっきり言って悪夢としか思えない。逃げようにも広域系スキルが使えなくなっていると聞く、王都からの協力要請はいまだに返事なし、戦える相手ではない事は百も承知で頼みたい。我々の第二の故郷、ノビスの街を守ってほしい! いや、聖女王が加勢に来るその時までで構わない。報酬は上級クエストの十倍、ギルドから支払おう」

 

 本来であれば喉から手が飛び出るくらい破格の金額だが、それだけ危険である事に声をあげる冒険者はいない。

 ただし、今回は耐え忍ぶ事である。戦い勝利する必要がない。これは日本の企業戦士が得意とする戦い方だ。

 要するにゴールの見えているデスマ。

 これならば俺たちも手伝える事もあるだろう。

 頼みの綱はエメスとプレアデスといったところか……

 

「じゃあ、タンク。魔法使い、地上部隊、補助部隊にメンバーを振り分けたい。各パーティーのリーダーは集まってほしい!」


 俺たちもギルマスに言われ末席に座る。ガルンとアステマは静かにするようにお菓子を与えている。

 総勢で、300人程。ユニオンスキルによって十倍程の戦力。

 要するに3000人分の力があるわけでちょっとした戦争レベルだ。


 これはアズリたんが襲来してくれたおかげで緊急事態の対策ができていた証拠。

 ほんとアズリたんがアホの子で良かったな…………


 おや? この緊急事態にミントさんもやってきたらしい。

 補助役ではなく、地上部隊のところにちゃっかり並んでいる。


 おや、自称勇者パーティーも来てらっしゃる。

 シェフに頼んで作ってもらったサータアンダギーもどきを齧っているアステマにウィンクをしているが残念ながら伝わってはいない。

 しかし、ほんとアステマモテるな……そこがなんか腹立つわ。


「北の魔王。錬金術を極めたと言われている彼女が生み出したゴーレムの中にウルスラ・ジ・エンドなる者がいます。これについて現状分かる事を説明します」

 

 どうやら、まだ性癖が全開でなかった頃の北の魔王、シズネ・クロガネ。

 彼女が世界平和の為に生み出した彼女史上最強のゴーレムである事。


「かつて異世界の魔物が襲来した時には既に北の魔王の管理下にはなかったと言われています。ですが、記録として残っているウルスラ・ジ・エンドの力は海を割り、大地を溶かし、天空を焦がしたと言われています。その力により、異世界の魔物が来る前。今よりも凶暴だった南の魔王も東の精霊王も北を攻める事ができなかったといい伝わっています」


 この話に疑問点がいくつかある。異世界の魔物がやってきた時、神話の時代。その時代からシズネ・クロガネはいた事になるのか? 直近死んだとか言うのに、人間じゃないのか? 俺の疑問を遮るようにギルドの受付のお姉さんは話を続ける。


「ウルスラ・ジ・エンドは動く巨大要塞を持っていると言い伝わっています。魔物の軍勢を一瞬にして灰にしたその力、今や失われたロストマギが使われています。シズネ・クロガネは人工的にオリハルコンを生み出す事に成功し、魔法封じのオリハルコンでウルスラ、またその要塞は構成されていると思われます。上級以下の魔法は役に立たないでしょう」


 この街に上級以上の魔法を使える奴がどの程度いるのだろうか?

 ウチのアステマでも多分一つくらいしか使えない。ファイのエロ姉ちゃんとかを含めて数える程度だろう。それもその上級魔法とやらでは多分ダメージを与えることも厳しいだろう。


「魔法による攻撃はユニオンスキルを使った物で牽制していきます。ウルスラ・ジ・エンドに対して地上部隊とタンクによる持久戦となりますが、ウルスラの魔法攻撃力は未知数です。剣や槍、斧、弓に投石器等。どの程度の効き目があるかは至って不明であり、おそらく望ましい結果は生まれないでしょう。我々が行うのは三十二時間です。三十二時間の間、西の聖女王を筆頭に助力いただけるファナリル聖教会の増援が来るまで持ち堪える事が勝利条件となります。あとは協力し、聖女王によってウルスラの討伐です」

 

 ……そんなにうまく行くのだろうか?

 その時、静かに話を聞いていたプレアデスが手を挙げた。


「そちらの……」

「プレアデスだよ子羊ちゃん。少しばかりゴーレムについて明るくてね発言の許可を」


 なんか古いなコイツ。


「賢者様ですか? 発言をどうぞ」

 

「はっきり言おう。ウルスラの力を持ってすれば、この街なんて一瞬で灰になる。そしてここにいる全員の力を使おうが、それは変えられない事実だよ。あれは冗談抜きで最強無敵のゴーレムだ。唯はその聖女王とやらの事は知らないが、ウルスラの事はよく知っている。奴が、声明を出した時点で生存する為には奴に従った方がいいと断言しよう。ここにいる冒険者がどんな魔物と普段戦ってきたのか知らないけれど、神話級の魔法でもあれにはダメージを与えられるか分からないような存在だよ」


 ……プレアデスの説明は、タダでさえ勝てない戦いをするギルドの人たちへの精神にクリティカルヒットした。

 

「……それは百も承知でこの会議を始めたんだ。プレアデスと言ったかな? 素晴らしい助言ありがとう。逃げるなら今のうちだ」

 

 プレアデスは俺の方を見て両手を上げる。

 

 やめて! 俺を巻き込むのは……

 

 一人の大きな杖を持った魔法師が話し出した。

 

「一つ教えて欲しい。君は……プレアデスさん。貴女はなぜウルスラの事がそんなにも詳しいんですか? 冗談にしては趣味が悪いですし、かといってリアルでもある……」

「唯も……うわっぷ! マスターくん一体何なんだい? 突然抱きついて!」

「いやぁ、このプレアデス。古代研究熱心で、ちょっと知ったかしちゃう大二病なんです……詳しすぎますけど、オタクなだけなんで

「……違う! 唯は同じくシズネ・クロガネに生み出されたゴーレムさ!」

 

 その場が静まり返った……ヤッベ……

 そして、そのばがどっと笑い声が広がる。


「ガハハハハハ! 俺たちをなごまそうってか?」

「プレアデスさん、その。気持ちを切り替えさせてくれた事には感謝しますが、これは机でのお勉強やお遊びはありませんので、発言は控えてください。今回は下手すれば全滅する可能性のある緊急事態です。そう言った気の緩みは全体に広がる物です。保護責任者はイヌガミ・マオマオさんですね? 申し訳ありませんが、ちゃんと教育と監督をしっかりとお願いいたします。これより、細かい作戦について語りますので」

「はい、すみません」

 

 頬を膨らませて、服を掴んで悔しそうなプレアデス。

 怒り方もなんか古いな。


「……唯は本当に、シズネ・クロガネに作られたもん」

 

 ギルドの端で体育座りをしていじけるゴーレム。続いて話し出したのはエメス。


「三十二時間の根拠について疑問を覚えり、続いての疑問。アズリたん様級の脅威と知りながら、どのようにしてその初撃を受け止めるつもりかと問いただしたい? この人数でもアズリたん様の一撃を受け止めるのは不可能と知れ」

「このギルドのユニオンスキルだけでは不可能ですので、各地域のギルドにも要請し、伝説級不可侵領域スキルを発動いたします。推定、前回襲来した魔王アズリタンの一撃に耐えうる防御力があると断言できます。もし、それ以上の脅威だった場合……」

 

 受付のお姉さんは答える。

 

「この街も、ここにいるみなさんも全滅です」

 

 ギルドに集まった冒険者たちは覚悟が揺らぐ。

 神話の時代に生み出された魔法兵器と言っても過言ではないものを相手にして生き残れる保証がない事をようやく理解し始めていた。

 まぁ、普通に考えればこんな分の悪い戦いは回避するべきなのだ。あたりのない宝くじの一等を当てるくらい無謀であり、徒労に終わるかもしれない作戦だ。


 さて、神話級の攻撃力にタフネス、そして魔法無効化にして、魔王種。

 他の頭の緩い王種と違って冗談は通じない。



 エメスとプレアデスが攻略不可能である事を説明している事は頷ける。

 そんな無理ゲーな状況でたった一人、希望の色を変えないミントさん俺たちに質問した。

 

「マオマオさん達は、今回どのように愚かな機械王と対峙するのですか?」

 

 そう言われても策なんてない。

 

 他のみんなも俺たちに期待の表情を向ける。


 とりあえず今の状況を一番理解しているど変態のゴーレム二人を見るが首を横に振る。どうしてこういう時だけまともな反応なんだろう。腹立つなぁ。


 ……打つ手はない。


 …………先生とか小狐さんとかに連絡が取れればと思ったが、スマホも圏外、通信魔法も遮断。


 蒸し鶏や甘いスコーンを齧っているアステマにガルンを見て、一つだけ俺が王を冠する連中と喧嘩ができる方法を思い出す。

 

「……コホン。皆さん。この前、俺の拠点である虚の森跡、現在商店街の工事中のその場所で、金の鎖の聖女なる異常者に襲われました。その異常者をとりあえずぶちのめして、撤退させる事に成功したんですが……」


 

 これは賭けだ。できれば見せたくはない。というかこのタイミングでモン娘達の正体をバラしたくない。

 ようやく出来上がった信頼。

 ガルンたちが魔物だと知った時、迫害された場合……。


「ご主人、またあれをするのか? あれはものすごくヘロヘロになって僕は嫌なのだぁ……食べても食べてもお腹が空くのだぁ」

 

 ガルンは魔王権限のユニオンスキル。グラトニーの使用後を思い出して閉口する。アステマもその話に口を挟んだ。

 

「そ、そうよ主。あれはあの神聖魔法使いが来たから黙認しただけなんだから」

「いや、さっきまでの話聞いてた? 明らかに同等かそれ以上の奴がくんだよ?」


 俺たちの話を聞いてたギルドマスターが重い腰を上げた。

 

「噂に名高い聖女様を追い返した? 何があったか知らないが、凄いなマオマオさん」


 そりゃ凄いだろう。魔王や精霊王と肩を並べる奴だろ? ただ力はセーブされてたみたいだけど……

 

「えっと、向こうも急用を思い出して帰っていっただけなんで……」


 さて、変に期待をさせるのは俺の性分じゃない。

 しかし、この異世界って場所は少年少女の心を持った大人だらけだ。クルシュナさんが食堂から軽食とお茶を運んできて俺に言う。

 

「毎回毎回、突然出てきて本当にお前は面白い奴だなマオマオ。口に出さなくてもここにいる全員。お前の作戦だと言えば手伝うのだ。失敗しても誰も恨まないだろう。機械王とやらを追い返した暁には私はその嫁いでも構わんぞ」

 

 なんか最後の方は全然関係ない話になっていたが……

 冒険者の一人が発破をかける。

 

「チッ、しゃーねーな。今回もマオマオのところに一口乗るか」


 遠回しに俺に責任を押し付けてるんじゃないだろうな?

 

「マオマオ達はなんだかんで実力以上のクエストこなしてるしな」

「よし、マオマオに乗っかって賞金もらうか」


「この状況です。藁をも掴む思いで作戦を考えていました。もうここにいる皆さんの命はマオマオさんに預ける所存ですので、マオマオさんのその作戦という物を教えてくれませんか?」

 

 いつも俺と少し距離をとっている受付のお姉さんが今日はぐいぐい来る。

 

 そりゃ命かかってればそうもなろう。

 俺はここにいる百名以上の命を預かる程の責任を持つつもりはないし、流石に重すぎる。

 

 やってみよう! 勇気があればとか、やる気だけで成功するのは主人公級の勇者とかそういう人達で俺は凡人レベルはやや高めの38。


「ふぅ、俺の持つユニオンスキルの中で魔王アズリたんのユニオンメンバーの能力を吸い取るスキルがある」

 

 俺は話だした。どこでガルン達が魔物かを切り出すかを考え……

 

 スペンスさん達だけしかガルン達が魔物である事を知りはしないが、このタイミングが正しいとは思えない。

 とりあえず、そのグラトニースキルについて俺は簡潔に説明した。一時的に吸い取った力を魔法力やらに変換し王種と同等領域にまでステータスを上昇させる。


 皆の俺を見る目が変わった。今までは期待の瞳から完全に希望をのせた物に変わる。

 

 確実にそれで機械王を退けられるならガルン達の話をしてもいいだろう。

 しかし、失敗した時。その矛先はガルン達に向きかねない。

 

 最悪ガルン達が魔物だとバレるのは機械王とやりあう直前でなけれなならない。

 何か良い手はないだろうか?


「こういう時は魔物の手でも借りたいところだな……流石にこの地域の魔物も迷惑被るんだから、手伝えってんだよなぁみんな?」

 

 スペンスさんはそう言って、俺にウィンク。虚の森にいるスライムとゴブリンか……、それらを野良モンスターとして増援に向かわせ、どさくさに紛れてガルン達をクラスチェンジしろと言う事だろう。

 この人主役級だな。

 

 冒険者達はそうだそうだと頷いている。今なら魔物の助力も問題なさそうだ。

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