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エージェントの報告その①

「なりやまぁアアアア!」


 時刻は巻き戻る。マオマオ達がダンジョンからオリハルコンの鎧を持ち帰った後、エージェント、成山秀貴は目撃情報からテロリスト、セリュー・アナスタシの情報を追って西の地域へと入り、セリューの足取りを探り向かっている最中。

 襲われたと見られる村、そして怪我や病気で苦しんでいるその村の人たちを見た。


「おい、しっかりしろ。大丈夫か?」


 何かに襲われたような痕、それも人間じゃない。モンスターだろう。モンスターでもかなりの大型だと思われる。秀貴の前で苦しんでいる子供、彼の胸に触れると症状が楽になる。


「アンタ、聖者様か?」

「いや、悪ぃがそんな徳の高い奴じゃねぇ」


 とは言え、見過ごせない状況。言葉通り手当て、秀貴が人々に触れると症状が良くなり、楽になる。そんな中、一人の若い女性が泣きながら秀貴の袖を引っ張る。


「お願いします! 聖者様! ウチの、ウチの子をお助けください! 聖者様!」


 秀貴は泣き叫ぶ若い女性の家だったであろう場所に行くと、そこで目を瞑り動かない男の子に触れる。


「……悪ぃが、もうこの子は死んでる。死んでる奴は、俺には助けられない。すまない」


 他の病気や怪我の人々は助かり、自分の我が子だけが助からないなんて事に女性は納得がいかない。


「お願いします。お慈悲を……なんでもします。奴隷商に売られても構いません。お願いします。お願いします聖者様っ!」


 死んだ人間は助からない。秀貴はどうしたものかと思っていると、外で歓声が広がる。そこには聖女様! 聖女様! と。そして秀貴は自分の肌が粟立つのを感じた。

 そしてそれは近づいてくる。そこには教会のシスターみたいな格好をした女の子が顔を出した。

 それはとても高貴で高潔な美少女、が、瞬間。


「いたいた。お前っ!」


 最初は亡くなった男の子に祈りでも捧げに来たのかと思ったが、この女の子は亡くなった男の子もその母親すらも眼中になく、成山秀貴を見つめる。


「俺になにか用か?」

「そうだな。お前に用だ」

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 黙っていれば、天使にでも見えそうな程の可憐な少女なのに、彼女は凶悪な顔でこういった。


「殺し合おうぜ、お前、強いだろ?」

「お前、頭大丈夫か?」

「ごちゃごちゃうるせぇな! 私にはわかんだよ。外でろや、オラ!」


 彼女を見て秀貴はコンビニの外とかで駄弁っている若者たちを思い出した。自分の子供やその他知り合いと同い年くらい、そして同等か、それ以上の力を持っている。腕から引きずっている金色の鎖に嫌でも目がいく。


「聖職者がその口のきき方はいいのか、俺もしつけについてごちゃごちゃ言うつもりはねぇけどよ」

「ウルセェ! 表でろよ!」


 二人のやり取りの中で、亡くなった男の子の母親が叫ぶ。


「その金の鎖……まさか、金の鎖の聖女様! どうか、ウチの子をお助けください!」


 秀貴は確かに腕に鎖を巻いている彼女を見てスケ番か何かだと思っていた。女性の言葉には耳すらも傾けない。不憫すぎるので、秀貴が尋ねる。


「そちらの女、お前さんの事呼んでるぞ」

「あぁ? 死んだガキにその母親かなんかだろ。んなもんどうでもいぃ! 殺ろうぜ! なんならここでもいい。平たいところじゃないと戦えねぇか?」


 秀貴の、というか相手の気持ちを全然考えない無粋な、いやここまでくると粋な少女、お嬢さん、そこで僕とお茶しない? くらいの感覚で殺し合いをしようと言うのだ。どうやら、この少女は態度に反して徳は高いらしい。

 なので、秀貴はため息をついてから言った。


「わーったよ。その代わりその男の子に祈りの一つでも捧げてやってくれよ」

「あぁ? んだよぉ面倒くせぇな」


 そう言うと少女は母親をドンと押して子供の前に立ち、見下ろす。


「さっき死んだ感じか?」

「お、お前っ!」

「聖女様、ウチの子に何を!」


 信じられない事に少女は男の子の頭を鷲掴みにして持ち上げた。それには秀貴もこの少女をぶん殴ろうとしたが……


「神よ! おぉ! 我ら卑しき、小さき者をお守りする。灯火なれ、朝日なれ、我が神よ……あぁ、くだらねぇ。我らに塵なる奇跡をお与えください。戻ってこいよクソガキ。こっちの世界の方がクソ楽しいぜ? ファイナル・リザレクション!」


 秀貴と男の子の母親は目の前で奇跡を見た。男の子の周りに可視化された死神を強制的に祓い。そしてその魂を少女は鷲掴みにする。しかし、魂は戻れど身体は死に絶えている。


「おい神、聞いてるか? もう一つ奇跡起こせや! ええっと、耐え難き試練でも耐えましょう。救い難き者を救う為に私の全てを、私たちの全てを我らが父の頂きを上る為の階段を作る試練を喜んで受けましょう。ふふっ、くだらねぇ。オール・エンド・ヒーリング!」


 男の子の身体に血色が戻る、そして目を開くと、少女はぽいと男の子の頭を離す。


「聖女様、ありがとうございます! ありがとうございます! なんとお礼をもうして良いのか!」

「はははは、これでいいか? おい、お前。外でろや」

「お前すごいな。今、あの子生き返ったぞ!」

「んなもん、普通だ。いいから外でろや!」

「……普通なのか? 異世界、想像以上だな」


 アプリは秀貴の疑問に対してこう返答していた。“普通ではありません。奇跡です“

 なんの礼も受け取らないアラモード。人々の怪我や病気、そして死すらも治してみせたアラモード。

 母子の家の外に出ると、秀貴は腕を組みながらこの聖女と呼ばれた少女と殺し合いをする事になった。


「お前、名前は? 私はアラモード」

「美味そうな名前だな。俺は成山秀貴だ」

「フハハハハ! いいぜなりやまっ、やろう! どっちかの心臓がリザレクションをかけても動かなくなるまで」

「まぁ、約束だしな」


 秀貴は懐に入れていた手を出して、構えるわけではないが臨戦体制に入る。するとジャラジャラと金の鎖を引きずっている聖女アラモードは構えた。


「セイクリッド・神殺拳・ジェノサイドシフト」

「すごい名前の拳法だな」


 重い鎖を引きずっている筈なのに、アラモードの動きは俊敏。

 そしてその一撃一撃の殺意の篭り方は本物だった。


「オラオラオラオラオラァあ!」


 見たこともない構えと型から、繰り出される連撃。異世界ならではの魔法とやらで強化されているのかと思ったが、これは強い。

 秀貴が無意識に放った掌底。

 

 バチィイイイイン!

 

 アラモードは自分の胸元を見て吐血する。

 それはそれは嬉しそうに嗤った。そんな自分の体に手を触れてヒール(回復)してから構え直した。

 

「あ? 安心しろよ。お前がダメージを受けたら私が回復してやる。そして神の加護でもどっちかが助からねぇくらいに殺し合おう!」

 

 今までこういった目をしてこう言った考えの連中と出会ったこなかったわけではない。秀貴が経験したこの類の連中の最後は大きな大きな問題を振りまいて後片付けが大変な状態で勝手に満足して死んでいくのだ。

 

 秀貴はアラモードの攻撃を捌きながらも、一撃で沈めるべく力を溜めていた。

 それに気づいたアラモードは攻撃を止める。


「それはいい。ははははは! それはいい! なりやまぁあああ! 神よ! 今際の我に試練をお渡しください! その怒り、その悲しみすら抱く、慈しみの伊吹。はははは、セイクリッド・ギャラルホルン! こいつは強ぇぜ? じゃ、やろうぜ?」

「……はぁ、仕方ねぇか」


 二人の一撃が激突する瞬間、この大惨事を生み出した化け物、腐った体をしたドラゴンが姿を現した。


“ドラゴンゾンビ出現、魔法・物理の攻撃を無効化します。退避準備をお願いします“


「むっ……このスマホたまに勝手にしゃべるな。しかしこの化け物が原因か」

「しゃらくせぇえ!」


 合わせたわけでもない、二人は対象をドラゴンゾンビに変える。秀貴の放った物は電磁界、アラモードをこの地に縛り付けて逃げようと相当な力を溜めていた。その電磁界にアラモードは強烈な死霊消滅系の魔法を重ねた。


 厄災級の魔物ドラゴンゾンビは秀貴の局所電磁界に囚われ、その中で永久に繰り返される死霊消滅魔法。ドラゴンゾンビは跡形もなく消し飛んだ。


「さあぁ、ナリヤマぁ! 殺ろうぜ? 続きだ続き! それにしても今のやるじゃねぇか、あれに捕まったら私でも力ださねぇと壊せねぇぜ!」

「あれ壊せんのかよ、マジかよお前……俺はいいが、また別の客人らしいぜ」

「あん?」


 その瞬間、秀貴達を異世界に送ったエージェント達の責任者は自分の持つスマホに送られてきた情報。


 エージェント成山秀貴、生命反応……ロスト。

 そう、地球最強の生命体の一人であった彼が死んだのである。


『おい! 秀貴のあんさん! マジかい! うせやろ! そんな……アンタが死んだらどないすんねん……おい! スマホ壊しただけやろ? あんさん!』

 

 十秒後。

 

「うるぁあああ! オートでエンシェントリザレクションかからなけりゃそのまま死んでだぞコラぁ!」

 

 アラモードがガンくれる相手、大鎌を持った何らかの怪物。成山秀貴のスマホが発している反応。

 

“緊急退避を! 緊急退避を! 死神が出現しました! 対処法不明“

 

「あぁ? 死神だぁ? なんでそんなクソみたいな奴がいんだよ? おい、なりやまぁ! おい!」


 ぴょんぴょんと飛ぶように秀貴の前に立つそして秀貴に触れ……彼の死を知った。

 秀貴の死に震えた。

 

 秀貴は自分、そしてアラモード、そして死神を少し上空から見つめている。自分が死んだという事実。


「マジか、俺死んだのか……どうすっか……まぁしゃーねぇーな」

 

 秒で自分の死を理解した秀貴の頭上から、天使たちが舞い降りてきた。お出迎えというやつである。

 ゆっくりと天使達は秀貴を掴み浮かび上がる。これで終わり。

 

「うおっ! なんだ?」

「何、勝手に死んでんだよぉ! おい!」

 

 アラモードが秀貴の足を掴んで引っ張っている。アラモードは自分の死体の前で祈った姿のまま、そしてここにもアラモード。さらに引っ張り、アラモードは害虫でも払い落とすように天使達を引き剥がしていく。


「おら生き返れ!」

 

 目を開ける。

 すると、そこには聖女、いや喧嘩を今から始めようかという美少女アラモードの姿。


「起きたか寝坊助? 後で殺してやるから生きとけ、そうすりゃポーション飲ましてやんよ」

「お前が助けてくれたのか、悪ぃな……で、あれは友達か?」


 死神が三体。

 

「さぁな。私が祈ってやってるクソ神は死神とかってやつじゃねぇな! おい、何で三匹もいやがんだよ!」


 最初に出てきたの死神一匹だったハズ。

 

“死ぬハズの子供を勝手に生き返らせ、その代償に二つの命を奪った……さらにその死すらも無効化した罪……万死に値する“

 

「ははははは! おい聞いたか、なりやまぁ! 死者なんざいくらでも私が生き返らせれるのに、ご苦労なこったなぁ? どうすんだ? また殺すのか? 生き返ってやんよ? クソ死神! なりやま、クソ死神ぶっ殺したらぶっ殺してやるよ」

 

 秀貴はこのアラモードの親の顔を見てみたいなと心から思った。

 アラモードは振り下ろされる大鎌に触れるとその瞬間死に、そして復活する。


「大鎌に触れると死ぬ……」

 

 死神に触れても触れられても死ぬ。アラモードをみて秀貴はこの少女の異常性にどんどん冷静になっていく。

 自らを殺して死神の攻略方法を調べていく、何をすればいいのか……そして死神の対処法を確定させた。

 

「ふぅ……なりやま、私は何回死んだ?」

「45回か?」

「真面目に数えてんじゃねぇよ! ははははははは! で、このクソ死神の大群共、消し去る方法をよ! おい、なりやま。さっきのできるか?」

「さっきのってビリビリ足止めか?」


 電磁界による局所結界、アラモードは何らかの魔法だと思っていたその技のネーミングを聞いて……


「クソダサい名前だなおい! お前見てくれは悪くねーのに、名付けのセンスは壊滅的だな。このクソ死神を屠さる方法、エイジス・ゴスペル。最強の強制成仏だ。しかし私が祈りに入るのに少し時間がかかる。つー事で、そのクソダサいので足止めしろや! 私と殺し合いしてーだろ?」

「いや、したくねーよ。が、これは逃げられそうにもないな。一つ聞いていいか?」

「あんだよ。クソ祈りに時間かかるんだよ」

「あいつら、倒してもいいのか?」


 その言葉に、アラモードは顔を歪ませて喜ぶ。

 そして目を瞑って手を握り、祈りの準備に入る。

 

「いいぜ、私の分とっとけよ!」

 

 48匹の死神。この一匹ですらこんな怪物と戦ったことはない。秀貴は目を見開いた。


「やるか」

 

“アプリ起動。覇王降臨。このアプリが起動した場所が世界一安全な場所となります“

 

 覇王という言葉に祈りながらもアラモードの口元が緩む。秀貴の周り、空間が歪む程に電磁波による黄緑の火の玉が現れる。それが魔法ではなく、秀貴本来の力である事を聴力だけでアラモードは知ると、生まれて初めてアラモードは自分の中の女を知った。ただし、恋ではなく殺意という気持ちで、何が何でも秀貴を殺したい気持ちで、愛で包まれた。

 

「触れたら死ぬ、触れられても死ぬ。あれやるか……すげぇ疲れるんだけどな」

 

 秀貴が生み出した電磁波からプラズマが生まれる。魔法という力のある世界でもこれは使うつもりはなかった。が、祈っている姿だけなら聖母そのものである少女や、殺害命令を受けているセリュー・アナスタシア用の切り札。

 

「来いピカ剣!」

 

 クソネーミングだが、秀貴の手より1メートル弱の長さに生成されたプラズマのブレード。それは死神の鎌ごとぶった斬った。異世界における覇王固有スキルにより移動速度、破壊力、それらが異常強化されたその力は……

 死神……神という超常現象的な存在を滅ぼした。見ていなくとも自分を守りながら立ち回る秀貴にアラモードは頬を染めてゾクゾクしていた。

 

 二匹、三匹と死神を葬る。死神はそれに反応し複数できた。それには太極拳のような動きをしてプラズマを一点に集め放つ砲撃。

 

「久しぶりに使うなピカ・ズドン」

 

 プラズマ粒子をかき集めた所謂、荷電粒子砲。それが3000%にまではね上げられたこのエネルギーは地上に放てば惑星に甚大なダメージを与えかねない超攻撃。十数匹の死神を屠り去った。この一撃は、南の暗国ザナルガランで、東の精国ティルナノで、中央ヴェスタリアで、魔王、精霊王、勇者王が一瞬反応する程。

 

 そしてそれを使った秀貴は数分動けなくなる。秀貴が思った以上に倒し切れなかった。


「チッ、ヤベェな」


 体が重く動かない。三匹の死神が大鎌を振りかぶり秀貴を狙う。それでも冷静にその状況を見ていると、秀貴の体がふわりと引っ張られる。


「待たせたななりやまぁああ! いいぜいいぜ! 結構残してくれたな!」

 

 一瞬、アラモードの青い髪が黄色に変わる。そして死神を消滅させる讃美歌を詠った。

 

「死ねよ! クソ死神。エイジス・ゴスペル」

 

 次々と消滅していく死神達、綺麗なお花でも見てうっとりするように、阿鼻叫喚で消えていく死神を眺めるアラモード。そんなアラモードの死角から一匹の死神が現れた。

 

「おっ?」

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 秀貴に抱き寄せられるような形でアラモードは助けられ、秀貴の手から伸びるプラズマのブレードで最後の死神は倒される。

 

“成山秀貴様、そして盟友の聖女王アラモード様に、グリム・リーパーハント。レジェンド称号が付与されました“

 

 死神殺しの称号。

 

 男に抱かれる状況を恥ずかしがりもせずに笑うアラモード、ゆっくりと離れると、ようやく続き……

 

「邪魔者は消えたな。じゃあ続きだ」

「おい、アラモード。またなんかきたぞ」

「あぁ! 次はんだよぉ!」

 

 振り向くとそこには四人の剣士。

 

「我ら、四剣王。世が戦乱に満ち各地域の王種を滅ぼすべく死の谷よりやってきた。我らの剣が全てを救う。お前達には悪いが、王種であるお前達は死んでもらおう」

 

 二人ずつ、秀貴に剣を向ける者。アラモードに剣を向ける二人。秀貴は軽々とそれらを回避し、二人の延髄に一撃。

 アラモードは一人の剣を握り潰し、もう一人の剣を噛み砕く。そして腹部に一撃。四剣王を名乗る四人の旅はそこで終わった。

 

 唾をペッと吐いて、アラモードは頭をかく。そしてようやく秀貴と殺し合いができると思った時……三度あることは何とやら……

 

「アラモード、次はお前の友達みたいだぞ」

「はぁ? 私に友達なんているわけないだろ。殺すぞ!」

 

 そこにはアラモードと同じ神職のローブをきた男。その男は頭を下げる。


「ファナリル聖教会の聖女王アラモードの助力をいただき、礼をいう。私は教皇パフェ。取り込み中悪いが、聖女王は今より儀式があり退散させていただく」

「あぁ、ふざけんなおい!」


 駄々をこねるアラモードを無理やりポータルに押し込むとため息をついて教皇パフェもポータルに入った。

 突風みたいな出来事に少し呆れていると、スマホが着信。

 

 “ぷるるる ぷるるる 異世界エージェント主任より着信“

 

「あぁ、俺だ。なんだ? あぁ、さっき一回死んだな。説明は面倒だからいいか? で? 追加の依頼? 日本の女子高生が手違いで異世界に……あぁ、分かった。同時に遂行する」

 

 秀貴は異世界のシスターをしている女の子は根性があるから気をつけろと何やら取り込み中らしいマオマオに電話をした。

 男の子を救った村で食べ物をいくらかもらうとそれを食べながら歩いていると、一人の着物らしい服を着た少女と見まごう少年と出会った。

 

「おにーさん、日の本の人間?」

「あぁ」

「強いね。引くくらい強いのがわかるよ。ここ雑魚ばっかりだから飽きちゃってさ。ねぇ僕と殺ろうーよ! 僕は羅志亞忍軍、忍頭影武者。黄泉送りの雪之丞」

 

 秀貴は頭が痛くなってきた。異世界に来たら途端に子供の相手が多くなった。ゲンコツを一発くれてやったこの少年は、頭が痛いというので優しで半分できているバファリンを渡すと想像通りすぐに完治。

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 しかし問題はいつか殺すと言ってずっとついてくる。同じような服装をしているのでこの少年は事あるごとに息子や娘のふりをして厄介ごとに首を突っ込む。

 彼の難儀な二人旅はしばらく続くのである。

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