あえて言おう、幼い王の擁立はカスであると
「じゃあ、作戦を話ます」
俺の作戦はとても簡単である。戦闘を避けて隠密、大臣イスパさんを捕まえる。
モグモグと干し肉を齧りながら俺の話を聞く、モン娘と小狐さん。
嫌な予感しかしないことと、俺の作戦をまともに聞いてくれる事もないだろうと半ば諦めている俺がいることは内緒だ。
スケール国は小国だと聞いていたが、俺の思う小国とは違った。
割と大きな街、そして一番奥に王族が住まう城だろう。
分厚い正門は硬く閉ざされ、どうやって入ればいいのか、これは首を突っ込むのをいきなり後悔してしまった。
「で? 隠密もいいが、マオマオどうやって侵入するのだ? あれを登ろうとすれば己でも骨が折れるぞ」
普通の人は二十メートル以上ある門を登れません! 戦国時代の忍者の感覚で物を言わないでください!
なんて言ったらまたゲンコツをもらいそうなので、ここは魔法の出番です。
ララさんは魔法の先生なので、浮遊系の魔法が使えるのだ。それをアステマに覚えさせている。本人は翼で空を飛べるので不本意だったようだが……
門を超えた先がどうなっているのか分からないが、まずは門越えの魔法をアステマとララさんが詠唱。
「アステマさん、では教えた通り、お願いします」
「フン、命令しないで! 彼の地へと行くための空蝉の翼よ! 一時の風と友になれ! ファントムウィング! でしょ!」
俺たちの身体が軽くなる。頭で思った通りに宙を動ける。
こりゃ、楽しいな!
「壁の中に入ったらやる事は二つ。ライル様の弟の救出班と大臣イスパさん討伐班です! ラハルト君救出班になりたい人!」
俺がそう聞くと手を挙げるのは三人。
わかっていた事だが、ライル様とその従者。ということで、イスパさん討伐班はウチのメンツという事。
「……オーケー、とりあえずは一緒に行動しましょう。大体同じところにいそうですしね。あと、無駄な殺生はできるだけ避けてくれよ。いいな!」
俺の発言に小狐さんは頷くが、ガルンとアステマはあんまり聞いてない。
そのかわり殺る気満々で各々の装備を握りしめる。
「イスパ大臣って奴は兄であるライルの命を狙ったり三男を擁立して謀反を企てたのだろう? こいつに関しては斬ってしまって問題ないな? それ以外で言えば剣聖レキとか言う奴だな。本当にお前達が言う通り、剣を極めし者ならこいつとは命の奪い合いになる。当然己がやるが、始まったら他の手助けは多分できんぞ」
俺はこれに関しては小狐さん頼みなので頷いた。
「はい、剣聖が出てきたらお願いします。それ以外の連中は俺たちとライルくん一行で何とかします。大臣や弟さんはあの城ですかね?」
「そうだな……普通に考えれば城でイスパの奴は好き放題しているに違いない。そしてラハルトを次期王にと口にはしているだろうが、ほとんど軟禁状態だろう。あの男だけは絶対に許さん。今の自分にはそれをどうにかできる力がない。すまぬ。無力な自分に力をしてくれて感謝しかない」
ライル様はそう辛そうに言う。
そんなライル様の頭に手を乗せたのはなんとアステマだった。優しいところあるんだなと思ったが……
明らかに矮小な人間を小馬鹿にする態度だ。
「ふふん、人間って本当に愚かなんだから、私の至高の魔法で蹂躙してあげるわ!」
「……アステマ。かたじけない。本来であればお前のような可憐な少女に力を借りるなど男の尚れだ。だが、頼んだぞ! もし、この件が片付いた後は好きな褒美を取らせてやる。あるいは自分の妻にならんか?」
……ライル様、結構色を好むな。
「意外と自分は本気だぞ?」
「……えぇ? まぁあ! 私は確かに美しいわね。アンタが私を魅力的に思って求婚? したい気持ちは痛い程分かるわ! そうよね? そうよねぇ! こんな美しい私が目の前にいるんだもの! でも残念ね! 私はこんな小さな国に収まらないの。何故なら、私には夢……いいえ、野望があるのだから! アンタも私に振り向いて欲しかったら、こんな小さい国じゃなくてもっと大国を手にしてみなさいよ! 今回は大人しく弟を助けて、大臣とかいう奴を八つ裂きにする事で我慢なさい! 私が道にさく花程度に気にするようになったらもう一度先ほどの言葉言う事ね! 盛大にふってあげるわ!」
結局ふるんかい! あと、ライル様をまぁまぁディスったのでララさんが結構キレてますけど?
一応アステマさんは一介の魔法使いということになっているので超、無礼を働いたわけですわ。
いやまぁ、俺も結構さっきのアステマの世界一イラつく無意味な講釈にはイライラしたけれどもな。もうなんかスイッチ入ってるアステマは、一応バレないように魔法をかけているというのに、成金みたいなバカ笑いをあげている。
一応的本拠地ですよここ。
よくスライム並みの脳みそとか表現する奴がいるが、スライムに謝って欲しい。
アステマの脳みそは何も入っていない。
よくて砂糖がこんもり入っていることだろう。
…………まぁ多分、そろそろフラグを踏むだろう
「何か大声が聞こえたぞ! しかもバカ笑いだ! 侵入者かもしれん!」
しかしアステマは自分のせいである事を全く自覚しちゃあいない。
「ふふん、中々よく調教された兵士がいるのね。まどろっこしいのは私の性に合わないわ! 主は殺さずを希望? しているみたいだけど、こうなったらもう仕方がないわよね? 私の至高の魔法でここにいる人間どもの吹き溜まりを撃滅してあげるわ! 私の得意な氷結系の魔法で生きたまま氷漬けもいいわね! はたまた炎上系魔法で生きながら火炙りの刑というのも悪くないわ! 蛆虫の如く湧いてくる人間どもをなんなら大気系の魔法で生きたまま……」
「アステマさんよ、殺すんだから生きたまま魔法攻撃するよね? あんまり口を開くな。ただでさえ馬鹿なのに、より馬鹿に見えるぞ。今お前がやることは氷結魔法でも炎上魔法でも大気系魔法でもなく、猫のフリしてこの場をやり過ごす事だ。猫の真似。やれ!」
「……………いやよ」
「やれよ。お前のせいでいきなり作戦失敗しそうじゃねぇか、はよやれ!」
アステマは観念し少しばかり俯いて、「にゃああ」と猫の真似をした。
本当に馬鹿だな。こんな事で兵士が騙されるわけねーだろ!
「……何だ猫か? どこぞの馬鹿貴族が騒いでいるのかと思ったぜ」
「オイオイ! 最初から俺は猫だと思ってたぜ! 大臣様、どこから連れてきたのか魔物まで配備してるらしいからな」
騙されたやんの……マジかよ。馬鹿しかいないんだろうか?
しかし……
「人間と魔物は確執があるはずなのに……どういうことだ?」
「マオマオ君、大臣イスパは、少し前から妙な女性と密会していたと聞きます。愛人の一人だろうと言われていましたが……今思えば共謀者だったのかもしれません」
ビーグさん、説明ありがとう。
うん、まぁ大体全容は見えてきたなぁ。もしかすると大臣よりその女性が黒幕とかいうオチじゃね?
「もしかして、ラハルトの新しい教育係のルシフェンという女の事か? この時期に新しい教育係とは不思議に思っていたんだ」
おっ、新しいキャラが出てきました。十中八九そいつだろうな。
俺が考えをまとめている最中だというのに、ガルンが目をキラッキラと輝かせながら言った。
「ボクのこの剣の錆にしてやるのだっ! 小狐みたいに、スパスパって斬ってやるのだっ!」
「まぁ、待てガルン! 待ちなさい!」
どうどうと俺はガルンを落ち着かせる。
小狐さんの剣術を見て、うずうずしていたガルン。
ルシフェンさん。女性、きっと弱そうというイメージだけでこう言ったんだろうが、聖女サマや小狐さんという前例を学習しないのな。
「今のお前を抑えるの、割と大変なんだからな? な? とりあえず落ち着け、あとで飴買ってやるから」
そう言った俺にガルンは抱きついてきた。普段なら抱えてやれるのだが、今はガルンのが俺より少し大きい。
「ご主人! 今のご主人ではボクを受け止められないのだ! ほらほら! ボクの方が大きいのだ! ふふふ、いつもボクをよしよししてくれるけど、今はボクの方がご主人をよしよしできるんだぞっ! 今のご主人のお役に立てたらボクはきっと沢山褒めてもらえると思うのだ! いくのだっ!」
「待て待てガルン。少し離れて落ち着け!」
「この勢いのまま行くのが正解なのだぁ! ご主人はいつもそうなのだっ!」
弱馬道を急ぐという言葉を考えた人、俺は天才だと思う。ちなみに俺は勢いに任せて行動した事はない。
もうこいつらヤダ……、そう思っても何も変わらないので秒で立ち直る俺を誰か褒めて欲しい。
俺たちのこのまさに馬鹿騒ぎはもはや猫の鳴き真似程度では騙しきれない。
というか最初の騙せた奴仕事してないだろ!
わらわらと集まってくる兵士達。二、三十人。小狐さんが余裕の表情なのでここは推しと折れるだろう。
「ガルン。己に続けるか? 己の剣術しっかりと見せてやるぜ! 敵を斬りながらだから見て覚えろよ!」
兵士長的な人が俺たちを認知して、何か無駄な抵抗はやめろ的な事を言おうとしたんだと思う。口を開くと同時に、小狐さんに蹴られ、ガルンに踏まれる。
「ぐあっ、これはたまらん!」
なんで少し嬉しそうなんだろ……
あっけに取られていた兵士達だが、誰かが抜刀と号令。全員が剣を抜く。
されど、その抜刀は遅すぎたとしか言えない。連中が剣に手をやった時には小狐さんはドラポン丸を鞘に戻した。
同時にバタバタと倒れる兵士たち。
それを見て、驚くライル様一行とアステマ。ガルンは目をより輝かせる。
うわぁ……すげぇ、かっこいい通り越して引くわ。
小狐さんは「次行くぜ」とか言うし、
…………まさにつまらぬ物を切ったんだろう。
「よ、よし! 俺たちも小狐さんの後ろを走ろう! 作戦は滅茶苦茶だけど城には行けそうだ!」
それはフラグだった……
城には丸まると太った質のいい服をきた男。「イスパだ!」
ライル様がそう言うのでそうなんだろう。そのイスパさんは俺たちを見て、それはそれは嬉しそうに言った。
「おやぁ? 次期王であるラハルト様の命を狙った。元・ライル殿下ではありませんか? またラハルト様のお命を?」
そんな安い挑発にライルは顔を真っ赤にして叫んだ。
「貴様ぁ! 抜け抜けと! 可愛いラハルトの命を私が狙うわけがないだろう! お前達、騙されるな! これはイスパが仕組んだ目論見だ! 正しき騎士であるならばその剣どちらに向けるか考えよ!」
ライル様のその演説は兵士たちの心を打たないかなと俺は思ったが、イスパ大臣が笑っているので望み薄か……
イスパ大臣は何か大きな宝石のような物を取り出してそれを掲げる。
すると、兵士だった者達。そしてさらに集まってくる物達は本当の姿。
「アンデットだ!」
ビーグさんがそう叫び、襲いかかるそれら、イスパ大臣は魔物を使役しているという事は間違い無いらしい……そしてこの数……
「わーっはっは! どうだ最強不死の魔物の軍勢、総数6000! これらがあればこんな小国だけではない、他国ですら制圧ができる。手始めに、死んでくださいまし、殿下。いや、ライル!」
腹立たしいがやばい!
そう思った時である。ドラクルさんが俺たちの前にたった。
鼻を摘んですこぶる機嫌が悪い。
「臭いは下郎めっ!」
彼女は口から火を吐いた。まぁ、ドラゴンですもんな? その火はこのスケール国を包むほどの炎で、6000いたらしいアンデット達を瞬殺で灰にした。
そんな様子を見たイスパ大臣がこちらです。
「はぁ!!!」
鼻水を垂らして大きく口を開けて目は飛び出した。
この人漫画か? おもしれぇな! 俺たちは真っ直ぐに見張りもいなくなったのでゆっくりと城に侵入を開始した。
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城は、警備がびっくりするくらい手薄だった。
大臣は外の魔物たちにほぼ全てのパワーソースを振っていたのだろう。
非戦闘員に、いたとしてもそれらの護衛。
弱小とは言え冒険者でもある俺たちパーティーと、ライル様を守ってここまできたララさんにビーグさん。
そして一瞬にして大臣の切り札を灰にしたドラクルさん、さらには剣聖である小狐さんに敵うはずがない。
俺の作戦はいつも通りなんの意味も成さなかったがララさん達に案内され、あとはライル様の弟の救出と大臣をやっつけるだけ。
小狐さんに至っては刀を抜くつもりもないらしい。格闘術だけで城の少ない兵達を蹴散らしていく。
そしてウチのモン娘達も相手が弱ければ弱い程強い。要するにアステマの魔法、ガルンも大活躍だ。
言っていて悲しくなるが、モンスター故の性なんだろう。
救いがあるとすれば、ライル様一行が魔法をぶっ放しまくっているアステマと兵士をタコ殴りにしているガルンを勇敢な冒険者を見る目で見ている事だろう。
実際は相手が弱い奴だから嬉々として戦闘に参加しているだけというね……あとドラクルさんと小狐さんという虎の威を借りてるんです。
「……まぁいいや。みんな全体強化かけるぞ!」
俺はこの姿だし、そもそもが戦闘向きのスキルは殆ど持ってないので、ユニオンスキルで全体補助、全体強化のスキルを使用する。
当然、現在パーティーとなっているライル様一行にも付与されるわけで、俺に対しても一行は尊敬に近い瞳で俺を見る。
やめて……俺ができる事これくらいだから……
「す、凄いな! あの刺客共を小狐が倒した時も思ったが、ドラクルという女の規格外さといい。ガルンにアステマもこの城の兵士では全く歯が立たない。お前達は一体なんなのだ……もしやとは思うのだが……お前達はあの噂で聞く、勇者一行なのではないか? そうだろう? ならば合点がいく!」
……違いますけど? 否定してもこのパターンは、言えない理由があるのだろう? とか言われるので強い否定はやめておこう。
どちらかといえば魔王一行なんだよな。
「アステマ! お前のその不可思議な奇術、この通路に使え! 己とガルンで突っ込む!」
アステマは気持ちよく魔法を放っている中、小狐にそう命令され気分をやや害するが、小狐は強者の為、黙って従う。
オロナインもとい先生の時と同じで基本アステマは強い相手には服従するらしい、俺には?
ドラクルさんは自分の育てた選手でも見るように腕を組んでうんうんとうなづいている。
このまま城を制圧していけば大臣を見つけて仕留めるのも時間の問題だろう。
「どうだ! 参ったかぁ! ご主人! 見て見て! 愚かな人間を五人もやっつけたのだ!」
「あぁ、愚かな謀反者な!」
今はイケイケな状態なので、ライル様一行もガルンがテンションを上げてこう言っていると思っているだろう。
……ちょいちょいアステマの羽とかガルンの耳とか見えてるけど気にしない。
…………最悪、モンスターと亜人の違い何よ理論を使って、あいつらは亜人という事にしてしまおう。
「ほんと、雑魚ね! 雑魚! ドラクルが少しは骨がありそうなアンデットを全滅させたから仕方なく雑魚相手だけど!」
アステマはデーモンであり、そこそこ強い魔法は使えるが多分、アンデットに有効な魔法はない。ドラクルさんは桁違い故に焼却したが、炎の魔法でも倒せないとギルドの図鑑に書いてあった。
小狐さんとドラクルさんがいるものだから、好き放題言うアステマをこれ以上調子に乗らせると後々面倒なので俺は言う。
「そか、じゃあ今度アンデットが出たら、俺らはアステマのぉ! 至高の魔法とやらで退治するところを高みの見物させてもらいますわ」
アステマは俺の声を聞いて、賢くないくせに、賢しさだけは振り切っているアステマはこういった。
「まぁ、私にとっては余裕だけど! 非効率だから主、やめて」
非効率といった。確かに非効率だろう、アステマではお手上げなので、俺たちが手伝わなければならない。
しかし効率が悪いと仰るなら非効率をとれば倒せるということと俺は認識するわけですわ。
じっとアステマを見つめる。自分の言葉に責任をそろそろ持たせよう。
「非効率でいいよ。しっかりお前さんがアンデット退治するところ見たいから、そうだ! アズリたんとか、スペンスさんとかみんな集まって祭りみたいにしようぜ」
さぁ、どうする?
お前はクソみたいなプライドで生きているクソデーモンだもんな? 恥とかかきたくないもんな?
……ほら! 顔を真っ赤にして耳まで染めて困り果ててやがる。
ざまぁみろ! このざまぁ!
ほら、言えよ! 見え張ってごめんなさいってな!
俺の今年の目標はアステマにちゃんと謝罪させることだ。
“アプリ起動。グレーターデーモンのアステマへの誠意ある謝罪を重要クエストに指定しました!“
普段はたまにイラッとするアプリだけど、いいね! 忘れないように毎日見よう。
涙目で、もうすでにブルっているアステマ。
俺が笑いそうになったその時、小狐さんが全員に動くなと手で指示する。
「お前らさがれ、凄いのがきた」
小狐さんがそう言う相手、凄いの! 今まで徒手だった小狐さんが刀に触れる。
曲がり角からやってきたその人物を見て、今まで殺る気満々だったガルンとアステマが即座にびびる。
「み、皆さん……覚悟してください……城の警備があまりにも手薄……イスパめ、ここに配置していたんですね」
ララさんの声が震える。
ライル様一行は今までとは意外明らかに絶望的な表情をしている。そこでライル様は話した。
「……マオマオ。お前でもわかるだろう? たった一人で、大型ユニオン以上のスキルや力を使う者」
それは腰に、ドラポン丸のような剣を一本。そしてもう一本明らかに伝説級のカトラスがささっていた。
皆まで言われずともそれがどういう存在なのか俺にも理解できた。
されどあえてライル様は語った。
「東西南北と中央に各種最強の王、それらとタメを張る聖女、聖人、超魔導士、そして……」
それは俺達、と言うより小狐さんとドラクルさんを見て、腰のカトラスに触れる。
奇しくも小狐さんとその人物は同じようにお互いの制空権を考えながらジリジリとタイミングを図っていた。
あの小狐さんが、冷や汗を流し、そして口を大きく開けて嬉しそうにしている。アニメや漫画で育った俺にはよくわかる。小狐さんはようやく本気で剣を交え戦える相手を前にしたのだろう。
「あれこそが、剣の頂点と言われ、いや剣そのものと言われた。剣を極めし者」
一体何でできているのか、超最高レベルのレア鉱物でできているであろう動きやすそうなプレートアーマー。
黒と紫がかった肩までの髪に、これまた異世界遺伝子なのか、びっくりするくらい可愛い女の子である。歳のころは小狐さんやアステマくらいか?
ドラクルさんですらムスッと警戒している。
「あれこそが、剣聖レキ……」
ライル様のその言葉を合図にしたかのように小狐さんと剣聖レキはお互いの剣を抜いた。
「おい、名乗れ! 己は元足利義輝様の懐刀、侍。羅志亞忍軍副忍頭! 天の剣に近づく者! 小狐だぁ!」
「悪人に名乗る名は無し」
さて、ウチのモン娘は……頭を隠して怯えてますわ。俺たちが関わってはいけないアルティメットバトルが目の前で開始された。




