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宣誓!先生(魔女)が先生(人間)に先制して戦勢は先生の方がいいらしい! ややこしい!

 男女同じ部屋でベットが等間隔で並んでいる。流石に着替えは男女別々だが、寝室は少しばかし雑だな。今は夜中の何時頃だろう? ある時間になるとみんなベットに潜り込んで眠る。たまに啜り泣いている女の子もいてまぁ、胸糞悪いわ。

 

 クレパス程の魔女でも流石に魔王であるアズリたんはやばいと思っているらしい。

 とりあえず寝るか……

 そして翌朝。 


「良い子の皆さんおはようございます」

「「「おはよーございます! クレパス先生!」」」

「はい! 元気があっていいですね! では朝食にしましょう」

 

 クレパスはそう言って朝食の準備を始める。芋類のパンケーキ。

 ……味は普通。それを食べながらクレパスは今日の授業について語った。この前作った魔法の杖を使っての実地訓練。

 

 俺も俺が作った魔法の杖を掴みながら、クレパスの敷地であろう広い魔法練習用の庭に飛び出そうとして呼び止められた。

 

「マオマオ君。少しお話があるんですけど、いいかしら? 先生聞き忘れてた事があったんだけどね?」

 

 クレパスは根掘り葉掘り俺が何処から来たのかを尋ねた。

 まず、一緒にモンスターと共にいたという事。

 あのモンスター達は知り合いなのか? 知り合いならばどういう関係か?

 そしてこれを多分一番聞きたかったのだろう。

 俺の故郷は何処なのかという事。昨日、なんらかの魔法で聞いていた確認だろう。

 当然、俺は南の暗国と呼ばれたザナルガランであると答えた。

 

 南の地域におけるアホの子、もとい南の魔王アズリたんが統べる魔物達の国の名称を述べると、クレパスは明らかに動揺を隠さない。

 

「ちょっと待って! マオマオ君は人間よね? なのにどうしてあんな無法者達だらけの……息を吸うように、そこらに強力な魔法をぶっ放して周辺地域を更地にしたり、海の幻の怪物シーサーペントや山に住まう千年生きたレッドドラゴンなんかを軽々と捕まえて食べるような蛮族みたいな連中の国にいたのかしら? だからその魔法の素質? いいえ、そうだとしてもあんなところにいたら戯れあそびで簡単に命を落としてしまうわ……! もし、そうならどうやって今まで生きてこれたのかしら?」


 ヤベェ、ヤベェと思っていたけど、アズリたん達マジでヤベェのな。

 それにどう答えようか考えて、俺はアズリたんから貰った魔王権限を伝える。


「僕はひょんなことから魔王様への覚えが良かったので、名呼びの権限をいただいたので!」

「ひぃ! 闇魔界のアズリタンからの魔王権限……」

「はい! これがあれば他の魔物には襲われなくて」

 

 さて、半分くらい嘘だが、半分くらいは本当だ。ウィッチロードのクレパスは深呼吸をする。

 

「そ、そうなのね。あの魔王と……マオマオ君。あなたは元の国に帰りたいかしら? マオマオ君が帰りたいというのなら、もう教えることはないので、早めに卒業させてあげても構わないのだけれど?」

 

 めっちゃ怖気付いてますわ。よし、じゃあここは演技を続けてクレパスの目的をしっかりと確認してからあとはどうにかしよう。


「僕としては、クレパス先生の授業はとっても楽しいのでもうしばらくここにいたいですけど、クレパス先生はどうして人間に魔法を教えているんですか? 人間への復讐か何かですか?」

「それは……あぁ、でも魔物の国の子なら話してもいいわね。実はね。先生の種族。ウイッチという種はもうこの辺りの地域には殆ど存在していないの。元々人間が悪魔と契約することで、ウイッチへの特殊クラスチェンジが行われていたけれど、有能なウイッチは王宮お抱えになり、人間との交わりその姿を減らしていたから……種の存続……と最初は思っていたけれど、先生、良い子達に魔法を教えるのが楽しくなっちゃって」


 誘拐したけど情が移ったパターンか、確かにこいつのやっていることは拉致監禁。許されることではないが……

 やり直すことはできるかもしれない。そこは元人間だからか?


「……それに先生、人間の大人って嫌いなのよね! 先生美人でしょ? 声をかけてくる癖にウィッチと知ったら恐れて逃げ出すなんて失礼でしょ! だから、人間の大人はこの際消しちゃおうかなって!」

「……やっぱ先生モンスターだね。凄い知り合い達を今の言動で思い出したよ」

 

 さらっと俺の自の声が出てしまった。元々人間だったとしてもやはりモンスターか。

 さらに言えば、人間の悪いところとモンスターの悪いところがうまく出ていて最悪だ。

 クレパス、教育者としては評価できるだけに残念だ。


「ふふふ。マオマオくんは先生がウィッチでも全然驚かない事はモンスターと生活をしていたからなのね! マオマオくんのような優秀な生徒は大歓迎だけれど、魔王アズリたんの国への卒業試験はやめておいた方がいいわねぇ」

「ということは僕は卒業試験を受ける事ができないということなんですか? 卒業試験を受けずに卒業なんて僕嫌ですよ」

「あら……頑張り屋さんなのね……マオマオくん」

 

 さて、もう少し困らせてやろう。これで本当にアズリたんの国にテロ行為は起こさないだろうが……

 クレパスは何か他の方法を考えているのだろう。まぁそうは問屋が降ろさない。

 クレパス先生は妙に胸元やら腰やらを強調させながら考える仕草をとる。アステマ然り、自分に自信のある魔物はなんか腹立つな。


「そうねぇ、マオマオくんの国は魔法を放つと報復が凄まじいのよ。並の人間の街や国程度なら先生がいくらでも助けてあげられるんだけどザナルガランは魔王以外も私より凄い魔法を使う魔物が沢山いるわ」


 正直にクレパスはそう語った。ここはウチのアステマとは違う部分だな。

 もう遠回しに無理だというのが教育者らしいなぁ……


「僕はそんな魔物にだって負けたくないです! きっと先生が教えてくれれば僕は凄い魔法使いに……いいえ、ウィッチになれるんじゃないでしょうか? だから、先生僕を見捨てないでください! どんな結果になったとしても僕は悔いはありません!」

 

 さぁ、どう出る? 一見すると先生に憧れている優等生だ。

 

 …………落ちた。

 

「……わかりました。そこまで言われてしまっては、先生も覚悟を決めましょうね? ザナルガランの魔物達は実力主義。魔王である闇魔界のアズリタンを筆頭に錚々たる重鎮たちがいるわ。その中でもアズリタンの懐刀、経済長ネビロス、あれだけ関わらないようにしないといけないわね。ザナルガランにおいて、魔王種達の指導係だから」


 クレパスは中々の情報網を持っているらしい。俺の中ではアズリたん率いる魔王軍はパリピだとばかり思っていた。

 要するに、アズリタンは魔王としての力の象徴であって、実際に国を運営しているのがそのネビロスってやつか?

 クレパスは聞いてもないのにザナルガランの政治形態を俺に語ってくれた。今回誘拐された事で一番の収穫かもしれない。

 4部門に分かれた腹心。政治、軍事、食糧、そして娯楽。最後の一つはアズリたんの趣味だろう。

 これらの四天王に相当する連中は流石のクレパスでも敵わないとのことだ。だから、ザナルガランに火をつけるなら、不意打ちのテロと逃亡を同時二とのこと。

 まぁ、そんな事しないけどな。というかやる気出しちゃったよクレパス。

 

「先生も昔はザナルガランに住んでいたのよ。これでも名門のウィッチロードの血筋だったから。でもあの国は実力至上主義でしょ? 同期だったカイザーデビルのネビロスはどんどんと力をつけ、魔王種教育係になるやいなや、魔王であるアズリタンに取り入り、亞人系の排斥運動を始めたのよ!」

 

 ほう、その魔王種教育係のネビロスとは並々ならない因縁がおありか、しかし単純に向こうが上だと。

 俺はそれらを全てまとめた上で微笑んでみた。


「でも、そのおかげで僕は先生に会えました」

 

 ブワッ! とクレパスが涙を流した。こいつは情にも弱いな。誘拐犯だが、情状酌量の余地はあるか?


「ありがとうマオマオくん! 先生、100万の人間の命を贄に、魔王種にきっとなって見せるわ!」


 いきなり俺の感動を裏切る二回目だなぁ……100万の命を奪えば魔王種になれるのか……恐ろしい話だ。これ、俺の世界の人間だとわざわざ100万人用意して虐殺とかしかねない話だよな……

 

「先生……僕、先生が人を殺したりするの嫌だなぁ」


 ほら、可愛い俺がこう言ってるんだから、それはやめとけよ。な?


 優しく、憂いを帯びた表情でクレパスは語る。


「だめよ。人間の大人は汚いから、滅ぼさないとマオマオくん達の為にならないわ」


 遠くで子供達の声が聞こえる。何か騒ぎがあったらしい。というかなんだか喜んでいるような?

 

「……何かしら? 新入者反応?」


 おっ、ようやくあいつらか、スペンスさん達が助けに来たか。

 

 子供達のいる場所に向かうと見知らぬ人……

 和装をきた完全に日本人。

 というか、俺はこの人を知っている……知っているのだが、それは子供の頃で、その時と見た目が変わらない。


「誘拐した子供たちに聞いた。授業中悪いが、子供たちは俺が連れて帰る。そしてお前にはギルドという場所から討伐依頼が入っている。指名手配モンスターとかいうらしいな? ウィッチロード。クレパス。抵抗しなければこちらも無茶なことはしない。どうだ? 見るからにそこまで悪い奴じゃないんだろ? 理由はギルドって所で話せばいいんじゃねぇか?」

 

 俺の横にはクレパス、一応先生だ。

 そして目の前には子供の頃憧れのフリースクールの先生だ。


「な、何よ……人間がたった一人? 血迷ったのかしら? 見たところ二十代の半ばってところかしら? 残念ね。私の生徒になれるのは十九歳までよ!」

「ふむ」

 

 クレパスは超怒っている。一応こいつはウイッチロード。ガルンたちより何階級も上位の魔物だ。

 流石にパーフェクト超人的な先生でもやばい。

 

「いいわ……良い子のみんな! 先生が卒業課題の魔法……それよりも上位の魔法。古代レベルの魔法を特別に見せてあげるわね! まとわりつけば相手を苦め魂すらも燃やし尽くす。呪いの炎。戒めの炎よ。かのものを骨まで温め、冥府の王の贄とせん! 自らの骨をくべてもくべても終わりなき苦行を冥府にて行使せよ! デスペラード・フレアっ!」

 

 あっ、こりゃやばい。アプリで測定すれば相当な危険域のアラームを鳴らすそれに……先生は手をかざす。

 先生の手元、よく見ると、パチパチと火花? いや、電気なんだろう? 力を帯びてる。


「……なっ!」


 炎がパッと手品みたいに消えました。

 先生は驚き、当然俺たちも子供達も目が飛び出しましたよ。

 

「ほぉ、これが政府のお偉いさんが話していた魔法というものか……確かに危ないかもしれないな。しかし、この程度なら俺一人でも十分というのも頷ける。そこの、不可思議な格好をしたお嬢ちゃん。これで終わりか? それともまだやるなら面倒くさいので俺も手を下させてもらうがいいか? 昔、俺も夏に子供たちにキャンプやらのやり方を教えた事があってな? 例えば、人間が速く動くコツだ」

「うおっ!」

「な、消えたの? あの人間只者じゃないわ! 良い子のみんな……あっ……」


 クレパスは何かを言う前に突如として現れた先生に首元を掴まれる。喋れず、ただただ先生に言われるがまま無効化され、子供たち共々連れて行かれた。


「お前……もしかして犬神か? お前は来ないのか?」

「……やっぱ先生なんですね。連れが助けに来るはずなので、待ってます」

「そうか」

 

 それから一週間、全然あいつらはやってこなかった。

 先生に保護されればよかったよ。クソが!

 仕方がないので、俺は一人でえっちらおっちら、虚の森まで戻った時。

 

「ご主人を助けに行くのに、僕らの力では足りないのだ! もっと強くなってクラスを二つほど上げてから、あの女の亞人のモンスターを全員で強襲するのだ! そしてやっつけてご主人を助けた暁にはご主人からいっぱい褒めてもらえて、いっぱい惜しい物が食べられるのだ!」

「悪くはないわねその考え!」

「我、放置プレイに興奮を隠せず」

「……マオマオ様を早く助けに行った方が」

「わたくしもホブさんと同意見なのですが……」


 そう、スラちゃんとホブさんだけが俺の心配をしてくれる。世界一不毛な会議中で俺を助けにはこなかったようです。



◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 結局、誘拐された子供たちは突然現れた先生によって救われ、親元へと帰っていったそうだ。

 

 クレパスはというと、魔法力を拘束する魔法アイテムを使われ、北の王都に送還されたらしい。


 そんな俺にも協力費用として10万ガルドが支払われた。流石に子供を誘拐された親御さんからもらうわけにはと伝えたが、どうしても受け取ってほしいと言われた。

 このお金はダンジョン攻略の費用とさせてもらおうと思う。

 そう、俺はいまだに子供の姿のままで、ことある事にエメスに世話を焼かれそうになる。

 性的な意味で……最悪か!


「お前らさ、俺が子供のままだとこの商店街運営に支障が出るのわかってる?」


 いまだに俺はこいつらが助けにこなかった事を根に持っていたりする。オロロするのはスラちゃんとホブさんだけ……

 二人はいいんだよ。二人は商店街づくりをお願いしてたしね。


「マスター、マスターが子供になった事、精霊王とやら本当に解せぬと理解したり、ありがとうございます精霊王」


 うん、正直なことはいいことだ。だがしかし、声を大にして言いたい。

 ふざんけんな!

 

「主、もう子供になってしまった事。うじうじ言っても仕方がないじゃない? 違うかしら? 私たちはどんな主だって主として扱うし、大した問題じゃないわよ。ほら、口元にパンくずついているわよ。お姉ちゃんがとってあげる」


 一瞬だけ、アステマも成長したんだなぁとか感動していたのに、こいつも年上になった気分ですか……死ね。

 

「僕も! 僕もご主人のお世話をしたいのだっ! 僕がスープを食べさせてあげるのだ! ほら、パンも小さくちぎってあげるのだ! ご主人、僕の事。ガルンお姉ちゃんと呼んでもいいのだ!」


 何? 何が起きているの? ウチのユニオンにお姉ちゃんブームが到来した。

 というか、こいつらがその気なら俺もお姉ちゃんに甘えてやろうかと思う。しかし、こいつらを喜ばせはせん。

 この中で一番、理想のお姉さんキャラ。


「スラちゃんお姉ちゃん! こいつら、気持ち悪いよぅ! もうお姉ちゃんといえばスラちゃんお姉ちゃんだけでいいよぅ……というか、この茶番さっさと終わらせてダンジョン攻略しよーよー」


 ガルン、アステマは唖然と……そしてエメスに至っては世界が終わったような顔を見せ、空いた口が塞がらない。


「そ……そうですね。マオマオさ……くん。お姉ちゃんが必ず守ってあげますからね! ダンジョン攻略頑張りましょう」

 

 まさかのスラちゃんも満更でもない感じで俺の頭とかをなで、そしてわがままボディに挟まれる俺。ちょっとアレな状態ではあるが、よしとしよう。スラちゃんも俄然やる気満々だし……


 ホブさんがその様子を見ながら報告にきた。


「マオマオ様、その……お客様です。我々のゴブリン達やスライム達が見つかってしまいましたが、動じず。マオマオ様の先生と名乗っております」

「え?」

 

 そう言ってホブさんが連れてきたのは紛れもない、ウィッチロードという強力なモンスターであるクレパスを瞬殺してムショ送りというか王都送りにした先生だった。


「よぉ、犬神」

「よ……よぉ先生」

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