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ショタはいらんかね? 背景、親族の皆さん俺、精霊達の国で極刑に処されます

「に、人間の子供なのだ! くんくん……ん? んんっ? この人間の子供。ご主人と同じ匂いがするのだ……というかこの人間の子供ご主人なのだ! ど、どういうことなのだぁ? アステマぁ! エメスぅ!」

 

 えぇ、うんはい。精霊王の元へスペンスさん達に連れられて俺は行きました。

 まぁなんだろう。ガルンの言う通りなのである。

 と言うかガルンが大きく見えるので俺はどれだけ子供になったのだろう?

 

 元々の俺の服がそのまま小さくなっているのは魔法による物。

 今俺は余裕の表情を向けているが内心ではとてつもなく動揺している。

 ずいぶん前にやめた筈のタバコを無性に吸いたいと思うのはなんとか落ち着きを取り戻したいからなんだろう。

 

 と言うかさ……子供にされるって何よ? そんなんチートすぎるだろ。

 いやぁ、相手はまさに魔王とためを張るチートだ。

 そう、精霊達が治める国、ティルナノへはなんとかたどり着くことができた。だが、俺は向こうの精霊達によってこの姿。

 子供、推定十二歳くらいの姿にされた。

 

 確かに子供は無力だろう。

 

 俺よりもやや大きいガルン。こうして見ると、こいつも成長したんだな。


 ドタドタとやってくるアステマ、そして嬉しそうなエメス。

 うん、控えめに言って最悪だな。

 とりあえず命はある。そして戻ってもこれた……が、俺は元の姿に戻らなくてはならない。



◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


「東の精国ティルナノって場所は精霊しか住んでいない土地。というわけじゃないんですね……普通に人間や亜人が住んでますね」

 ギルドの地図や、独学でこの世界における国々については勉強済みだった。

 かなり巨大な大陸に五つの文化圏の国々があるらしい。中央の皇都ヴェスタリアを中心に東西南北。その東に位置するのが精霊が納めているここ、ティルナノ。

「商業の本場といえばティルナノと言われているくらい精霊の加護がウリだから、ここと話をつけるのは商人としては避けては通れない道だろうな」

 スペンスさんはだからお気楽な北で冒険者をしていると言った。

 

 教会が政治実権を握っている西、自堕落な魔物達の巣窟、南。政治と魔道科学により厳しい中央。それらが合わずに中立に位置する北へやってくる人や亜人。魔物もいるらしい。

 どこの世界も宗教が強かったり、輸出産業を武器にしてたり変わらないな。

「でもぉ、ティルナノは精霊たちが人間を豊かにする代わりに、人間は政治には関われないのょぉ。じゃあ行きましょうか? 精霊達の楽園へ」

 


「……マジか……、精霊って人間や亜人に似てるんですね。ってモンスターをみた時も同じことを言ったような……」

 見るからに羽やらオーラやらを発している豪華な服を着てる人。ネトゲで言えば課金廃人みたいな姿と言えばわかりやすいだろうか?


 めっちゃ俺たちを見下した目で見てますわ。

 一応俺たちは入国処理も終えて、外国から来たということで危害は加えられないハズらしいが、なんとも言えないアウェイ感だ。

 スペンスさんとキロカさんそしてファイのエロ姉ちゃんはさすが外国でも仕事をするだけあって堂々としていらっしゃる。いやぁ、この人らと知り合いになれて良かったわ。

 しかし、この国に入って水を買ったのだが……

「この水チョーうまいですね。これが精霊の加護付きか」


 そう、水がチョーうまいのである。どのくらいうまいかというと。

 日本の名水とか言うような水を飲むより圧倒的に美味い。


「おや、北の方から来た田舎者がただの水飲んで感動しているなプシューケ」

「こらこら、田舎者を馬鹿にするもんじゃないよユニコーン」

 うわー、懐かしい。

 修学旅行に来たらよその地域の奴がとりあえず田舎者呼ばわりしてくるアレだ。

モン娘の三人連れてこなくてよかったな。乱闘になってたわ。

 

「あー、成る程な。この国は身分制度というより、貴族としての精霊。平民としての人間や亜人がいるという事か……よく分かった」

 俺の理解にほっとするスペンスさんパーティー。

「まぁ、気にしなさんな。他国ってのは大概こんなだ」

 今なら少しばかりスペンスさんが横暴な態度を取ったのもわかるな。

 外に仕事をしに行くのは我慢が必要なんだな。

 とりあえず精霊王様とやらに謁見だ。今のところ精霊という連中はいけすかない上級国民様のようだ。その親玉もそうだろうか?

 

「話は聴いている。北の自由国……確か北の魔王が死んだのだったな。なんなら精霊王の領土にしてやろうか?」

 いちいち喧嘩を売りたいのだろうか? 精霊という連中は……なんというかウチのモン娘を思い出してしまうのは何故だろう。

 というか、俺北の魔王の後継者だったっけ? これ、要するに国をよこせとか言われてます?

 

「精霊王さまも忙しいでしょ? とりあえず加護についてお話を通させてもらえればそれで結構ですので、すぐに田舎に帰りますから」

 

 …………精霊達は鼻で笑うと俺たちを豪華な城へと案内する。

 

「そうそう、こんな食べ物と飲み物が美味すぎる国にいたら田舎に帰りたくなくなっちまうからな。早いところ精霊王ツィタニア様にお通しを」

「そうねぇ、精霊王ツィタニア様に謁見しにきたわけであって、都会の精霊さんの小言を聞きにきたわけじゃないからねぇ」

 スペンスさんとファイのエロ姉ちゃん、買い言葉に売り言葉というものを知らないんだろうか?

 ほら、精霊さん達もイライラし出してるし、一触即発じゃないか……いやわかるけどさ……そこは大人にね!

「スペンスのリーダーもファイの姉御も、都会にきてハメ外しすぎっすよ!」

「そ、そうですよ二人とも。いやぁ、精霊さん、すみませんねぇ。ほんと加護のお話が終わったら光の速さで帰りますんで!」

 というか一番年少のキロカさんが二人を止めるとか……どうよ。

 キロカさん来るまでよく暴力問題起こさなかったな……

「ふ、ふん。まぁ精霊王ツィタニア様の奇跡に媚びへつらい加護を受けるのだな」

 


 どうにかこうにか、俺たちは精霊王の住う神殿のような場所。

 精霊宝玉城。中に入ると体が異様に軽くなる。ここはあらゆる命を温める場所らしい。

 そして案内された先、大きな宝石でできた扉が開かれる。

 そこには息を飲むと表現するのが正しいであろう真っ白なウェディングドレスのような衣を纏った美しい女性。茨の王冠? いや、アロエだろうか? そんな物をかぶっている。

 そして半目で俺たちを見つめ、そしてうっすらと微笑む。


 俺は彼女から目が離せないでいた。

 彼女が東の精霊王ツィタニア様か俺でも分かる。これは異世界にいる精霊の王様はこんな感じだろうというイメージにぴったりだ。

 俺たちは傅いたまま彼女が声をかけてくれる事をしばらく待つ。

「……ん?」

 いや、ちょっとどれだけ待たされるのだろう? もう十五分は待たされたよ。


「さて、あなた達は誰ですか?」


 なんだか全力で嫌な予感がした。いや、あえて知っていて俺たちを試しているのかもしれない。

 スペンスさん達をチラリと見るが、どうも困惑しているようである。そもそも精霊王に会うのは彼らも初めてらしい。

 なんというか、他の精霊連中に比べて礼儀は持ち合わせているようなのだが、逆に何を考えているのか分からない、


「せ、精霊王。この前お話を通していた謁見したいという北の領域からやってきた商人とその護衛の冒険者達です! 精霊の加護をご希望と」

 なんか仕事ができそうな精霊の人がそう精霊王様に説明すると、精霊王様は手をポンと叩く。

 まぁ間違いなくこの精霊王さまはなんだか地雷の臭いがする。

「はい! では加護を授けましょう!」

「えっ、まじで!」

 俺は今までの流れとはなんだったのかと驚いて声をあげる。

 それに精霊王様のお付きと思われる精霊は全力で俺に不快感を現す。これは俺の失態だ。

 だが精霊王様はそんな事は気にする様子もなくふふふと笑っている。女神か?

「北からの来訪者は元気ですね」

「あぁ、いえ、失礼を申し訳ございません」

 

 俺の謝罪にも精霊王様は優しく微笑んで、疲れが取れる薬湯を出してくれた。

 一口飲むだけで体力に魔法力が回復する。

 “アプリ起動。犬神猫々様の各種基礎値が向上しました“

 こりゃすげぇわ。精霊の加護に満ちているこの国。

 他の国も中々攻められないのだろう。

 籠城さえしていれば普段のスペック以上の力で戦えるのだ。精霊恐るべしだな。

 

 精霊の加護、その大元であるドラクルシルという巨大なアロエみたいな植物が精霊達の力の根源らしい。

 ここに直接語りかけ、その力を使うことができるのが全ての精霊達の王であるこの精霊王サマだということだ。

 精霊王様は先程から綺麗な舞を待ってドラクルシルから力を借りる準備を始めている。

 とても神秘的で美しいというのが恥ずかしくなく言える。

 加護を与えてくれる長い舞の儀式の中、少しばかり精霊王サマも疲れを感じる。

 そしてゆっくりとドラクルシルを祀っている場所から戻ってくる。

 一体どんなすごい奇跡を見せられるのかと俺はドキドキしていた。

 

「では、北から来た商人、イヌガミマオマオさん。精霊王である私のユニオンへ参加の許可を」

 ん? おかしいな。いや……そういう事か精霊の力の圧倒的な根源はこれか。

 超規格外のユニオンなんだ。その恩恵として様々な加護が割り振られるという事らしい。

 

 まぁ俺としては商人になるのだから、その元締めみたいなところに加入してもいいか。

 俺は跪いて精霊王サマの手を受けるように精霊王ユニオンへの加入を行おうとした。が……一向に加入が終わらない……

 本来は目を瞑って、精霊王様の赦しを得て、立ち上がるのが筋なんだがそーっと目を開ける。

 スペンスさん達も何かがおかしいとそう感じ始めていた。本来ユニオン加入にこんなに時間はかからない。

「あら? おかしいですね。こちらはユニオン精霊界への加入許可をしているんですが……」

「……えっと、俺も物凄い受け入れ態勢で構えているんですけど……なんででしょうか? おかしいな」

 俺も、精霊王サマもお互いにおかしいなと首を捻る。一体何が起きているのか分からないでいるとさっきの仕事のできそうな精霊さんが走ってきた。

 それも凄い剣幕である。さらに俺に一瞥をくれる。

 

 仕事のできそうな精霊さんは精霊王様の前に立つ。

 そして俺たちに向かって警戒するように構え……

 次々と精霊の兵隊達が集まってくる。

 

 そして、仕事のできそうな精霊さんの発言を聴いて冷や汗が出た。

 「南の魔王! 闇魔界のアズリタンの手の者だ!」

 

 要するに俺が精霊王様のユニオン傘下に入れなかった理由。

「魔王軍と同盟にあるユニオン! こいつ、北の魔王だ!」

 いやぁ! いやぁああああ!

 ゆっくりと思い出した。南の魔王と東の精霊王は犬猿の仲であると。

 そして当然そんな南の魔王と同盟関係にある俺たちのユニオンは敵そのものなんだろう。

「あの……少し、お話を聴いてはくれませんかね? これには深い、深ーい理由がありまして……」

 俺が両手を上げながらそう言うが、精霊達は俺の言葉を聞く耳は持ちそうにない。

 頼みの綱は精霊王様だけだ。彼らは悪しき者じゃありませんとか言ってくれないだろうか?

 

 俺と目が合うと、優しく微笑んでくれる精霊王様。大丈夫そうかな?

 しかし、未だ何も言わない。

 そんな間にも大勢の精霊の兵隊が集まってきては俺たちを取り囲む。スペンスさん達も流石に不味そうな顔だ。


「咎人たちを捕らえろォオ!」

 争う方が無意味と知った俺たちは精霊達に逮捕される。

「や、やめてくださいっす! 俺たちは本当に」

 説明しようとするキロカ。

 まぁ残念ながら全く持って聞き耳を持たない。ユニオンスキルを発動しても流石に精霊王とこの国からは逃げられないだろう。

「精霊王様。これには理由があるんです。お話を聞いてはくれませんか?」

 俺はもしかするとこの女神のような精霊王が助けてくれるんじゃないかと思った。

 というか、この世界にいる亜人や魔物の類にまだ期待していた俺がいた。

 俺を見て、精霊王は周囲の精霊の話を聴いて微笑んだ。

「あなたはアズリタンの関係者なんですね」

 そうだ。だが、他の精霊連中に比べて驚くわけでも焦るわけもない。

 周りの精霊達の動揺具合に頷いた。

「とりあえず極刑ですね!」

 超地雷じゃねぇか! あんたがそれ言ったら完全にもう極刑確定じゃんか!

 

 こいつ、とりあえず周りに合わせてるんじゃないだろうか? よく見ると……

 

 なんも考えてないから笑ってんじゃね?

 

 精霊王ツィタニアとかいうご大層な名前とこの見た目だ。確かに神々しく見る。

 だけど……こいつ……あれだ……


 スイーツ(笑)系の女子だ。

 まともに発言しないのは……そういう空気を纏っているんじゃなくて。

 本当になんも考えてないからだ。


 ちょっと待って……

 これ、周りがみんな極刑って言ってるからウチも極刑に賛成!

 みたいな感じで俺たち処刑されちゃうん? それなんて魔女裁判?

 今回はどう考えても逃げる方法がない。

 処刑って火炙りとか、ギロチンとか……?

「護衛の冒険者達は国外追放!」

 おぉ、とりあえずみんなに迷惑が掛からなくてよかった。

 さて、俺はどんな刑に処されるんでしょうか? クソが!

「この者の血で我が国の領土が汚れるのは良くありません。精霊王! 子供の刑を所望します!」

 なんだそれ? 子供の刑? なんか凄いやんわりとした空気の刑だな

「そうですね! では子供の刑にしましょう!」

 じゃあ私も同じケーキで! くらいの勢いで俺の極刑が執行された。



◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 そう。俺はあれからドラクルシルの力で子供の姿に変えられた。

「……お前らきけ! うん、俺を撫でたり引っ張ったりするのはよせ! エメス。俺はおねショタ属性はないからな?」

 そう、ちんちくりんになった俺が珍しいのか、ガルンは匂いを嗅いだり、アステマは面白そうに俺を見つめる。

 問題のエメスさんは、何を思ったか料理を始めた。なるほどね。食べさせてあげるプレイ的な?

 こいつ、執事型だから何気に家事能力高いな。

「マスター、いえ……坊っちゃま。我、あなた様のメイドもといゴーレムで執事、魔導機人のエメス参上! はぁはぁ。性的にグッド!」

 うん、こいつはダメだ。

 俺は子供の姿に変えられ、大人のように汚くない時に戻したとか言われ、国外追放。

 途中でスペンスさん達に拾われ、とりあえず戻ってこれたのだが……

 

「まぁ聞けよ。東の精霊王ツィタニア。そしてティルナノはとんでもねぇ魔力が蠢く場所だ。そこで俺は子供に変えられた。元に戻るには再び精霊王ツィタニアにドラクルシルの力を使って元に戻してもらうしか方法がないらしい。だから、ちょっとお前達にも力を貸してもらいたい」


 こいつらに貸を作るというのがなんとも嫌だが仕方ない。

 子供の姿のままで仕事とか……ある意味注目されるかもしれないけど、このままというわけにもいかんだろ。

 なんというか、子供の姿なら若干転生感あるけども……現実には子供の姿は商売には強くない。

 甘く見られるだろうし、ここぞの押しが弱いだろう。

 ただでさえポンコツのモン娘三人が従業員だ。

 できる限りさっさと元に戻らねーと。

 

 そう焦っている俺に対してモン娘達は物珍しそうに俺を見る。

 俺……もとに戻れるんかね。


「やっぱりご主人なのだ! どうして子供に? クラスダウンしたのか? 精霊王というやつはそんなにも強いのか……」

 そりゃそうだろ。あの魔王アズリタンのライバルだぞ。

 頭は空っぽのスイーツかもしれないけど、ガチンコで戦えば俺たちに勝ち目はない。

「お子様主。私達になにができるのかしら?」

 ふふんと余裕いっぱいに勝てないでしょ?

 と遠回しに言えるアステマさん、君大物になるわ。

 

「我、個人的にはショタマスター、もとい坊っちゃまであることに至福を感じていたり! 無理に戻す必要なし!」

 エメス、お前さんは少し黙っていろ! というか坊っちゃま用のお菓子でも作ってろ!

 

「まぁ、あれだ。俺たちがアズリたんと同盟組んでることがそもそもの問題だったわけだ。この誤解を解いて、俺たちの商店街にも精霊の加護を取り付けてもらわんと商売にならない。それだけはティルナノに行ってわかった」

 

 あの加護があるかないかは大きい。

 というか、完全に独占じゃねぇか。

 命までは取られなかったことを良しとして作戦を練りたい。

 

「ご主人、アズリタン様にお願いして東と戦争なのか?」

 まぁ、少しだけそんなことを考えた俺がいたけど、それはあまり最適解ではない。


「ふふん。あの調子に乗っている精霊共を血まつりにあげるのね? アズリタン様とその魔王軍がいれば、上位精霊だろうが、主をお子様の姿に変えた精霊王だろうが恐るるに足らずね! このグレーターデーモンである私の至高の魔法を炸裂させてあげるわ!」

 アステマは魔王軍という後ろ盾がいるので調子に乗る。

 が、俺たちは兵隊ではない。商人だ。

「お前達、血気盛んなのは悪くないな! 若人はそのくらいじゃないとダメだと思う。が、落ち着け。何か交渉できないかを考えている。」 

 一見すれば満ち足りているのかもしれないティルナノ。

 それでも何か望みはあるはずだ……

「しっかし、俺も商人としての考えが板についてきたな。とはいえ、精霊達が欲しがる物や望む事ってなんだろうな……それを優先的に卸すとか、向こうが利益を感じる事なんだけどな」

 まぁ、こいつらに期待はしていない。

 今のところこいつらが役に立ったのはオーガ退治くらいだろう。

「我の記憶が正しければ精霊はオリハルコン鉱石を身につける伝統があり」

 おっと……エメスさんが何気にいい事を言った。

 俺は無言でエメスさんに完熟バナナを差し出すと話を続けさせる。


「ふふっ、ショタマスター。もといお坊ちゃまは精霊のお話に興味があり? ベットの中でおやすみの子守唄と共に我聞かせたいと切に願いきり! そこで我に興奮したショタマスターは我の身体に興味を示し……」

「分かった。ちゃんと話をすればお前の願いを一つ叶えてやろう!」

 

 俺の一言にエメスは虚な瞳になると機械的に話し出した。要するに精霊達は自らの存在を強く世界に結びつける魔石を好むらしい。

 そんな中でも最高純度の魔石がオリハルコン、賢者の石に次ぐレア物らしい。

 要するに園魔石を手に入れさえすれば妖精側も交換条件的に俺のこの姿を元に戻すんじゃないか?

「……さて、そのオリハルコンってのが何処にあるのか、そこからとその相場感を調べないとな。まぁ、最悪ヘカトンケイルと交換という……裏技が俺にはね。あるしゅ転生ボーナスのヘカトンケイル様様だな」

「ふふん。また人間共を騙すのね!」

 いやぁ、ほんとそうだから言い訳のしようもない。本当にくれてやってもいいんだけどさ。

 戻って来るんだもんさ。ヘカトンケイル。

 そして俺は店の道具屋や宝石屋で相場感を聞いて笑われた。

 伝説の鉱物ですわ。そんなの取り扱った事がないし、あったとしても、お金でやりとりできるような代物ではないと……

「マオマさん、伝説だよ? そんなのがその辺にあるわけないでしょ?」

 

 俺は一生このまま、というかこれからまた大人になろうかなと、諦めそうになった。

 

「話は聞かせていただきました! マオマオさん。こういう時はダンジョン探索です!」

 俺に声をかけてくれたのは、儚げなプリースト。

 ……そう、ミントさんです。

 彼女がいる事でスライムとゴブリンは山に材料採集。

 万が一、モン娘の三人が魔物だとバレたらここが地獄に変わりそうだがミントさんはミリも三人が魔物だとは気づかない。

 知らぬが仏か……

「ミントさん、教会の件のご返答ですか? 見ての通り今俺はこんななので……」


 ミントさんは俺を見て、俺の視線に合わせるようにしゃがむとそれはそれは安心させてくれるように微笑む。

 だが、彼女は回復や呪い解除の魔法なんて使えない。

 身体能力強化、格下に対する即死魔法などの習得。本来は回復職と言われているのにそれらができない。

 要するにパーティーとして連れて行ってなんのメリットもないのとモンスターを見ると性格が変わるので誰も連れて行きたがらない。

「いやぁ……ダンジョンはちょっと。商店街のプレオープン作業が色々と残っているから……」

 俺がやんわりとお断りしようとしたが、ミントさんはこう言ったのだ。

 それはミントさんの花びらのような唇から祝詞でも紡ぐように……

 俺がダンジョン行きを許可する一言。

「私、希少鉱物検知スキルを持ってるんです」

「さぁ、みんな! 明日は早いぜ。今日のウチに買い出しに行って、作戦を練る。そして早く寝るぞ!」

 ダンジョンに行ったからってそんなオリハルコンが手に入るとは俺も思いはしない。

 だけど、ゼロでは無くなった。

 

 ミントさん、あんたマジ俺の心の中では聖女だわ。


……………そう、異世界にきて子供に戻るという望んでもない若返りからの帰還が今後の俺のクエストになりました。

 

“犬神猫々様のクエストを更新します。元の大人に戻るを設定しました“

 

 うるせぇ!

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