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異世界のいい所は二日酔いが魔法で治る治る事。動き出す、イカれた巨乳聖女

「熟れる前と言ったところだが、変態貴族に高く売れそうだ」

「ぐへへ、売る前に少し楽しんでもいいんじゃないか?」


 聖職者、その女性の最高法衣を着た少女に下衆な男達の集団は囲んでそう言う。

 

「ファナリル聖教会の名を持って命ずる。可哀想な子らよ……死ねよ!」

 

 そう、それは近隣で聞いた話を要約する事になるのだが……どうも流浪の聖女様とやらが、いろんな村々や、町々を救っているというものらしい。

 不治の病と言われた娘をもった両親の元へふらっと現れては、究極の癒しと言われる回復の魔法を持ってその病を取り除いたとか……悪しき魔物の群れがでるという渓谷に一人で向かうと聖女はそこに魔物が近寄らないといわれる神の加護を付与した石碑を立てたという。

 聖女という存在はそもそも役職としては存在しないらしい。司祭であるプリーストの最上級、大司祭や教皇クラスであり、他の追随を許さない女性が人々から言われるとな。


 世の中に聖女と呼ばれる人は何人かいるらしい、異次元から来た魔物を撃退した際に多くの冒険者を救ったアビゲイル・アネモネ。すべての弱者の盾になった伝説的政治家、フレッサ・ブリュンヒルト。そして身分を隠す金色の鎖の聖女。またそれらとは別で西の聖女王アラモードと呼ばれた人もいるらしい。

 今回目撃が多発されているというのがその金色の鎖の聖女様らしい。なんでも自らを戒める為にと聖なる神秘の力を魔法拘束具で縛って旅をしているらしい。そういう修行に関して俺は知る由もないが……いつかお目にかかる事もあるかもしれないので粗相のないように彼女の旅の記録をたどる事にした。


 ケース1 通行税を取る盗賊達。

 盗賊達は自らが捕まえた手負いの猛獣を村に放ち暴れさせ、それを冒険者よろしく退治してみせる。感謝した村の人たちに突然手のひらを返し、村から出る、村に出る際の通行税を所望するようになった。

 それを聞き、みかねた聖女は盗賊達と話をする。どういう交渉をしたのか、盗賊達はすぐに姿を消した。怪我はなかったのか、一体何があったのか、そんな事を聖女に尋ねた村人達だったが、彼女はただ微笑むだけだったらしい。


 ケース2 管理されなくなった墓地のアンデット退治。

 夜な夜な、生者に謂われない恨みを持ったモンスター達をたった一人で説き伏せて、全てを浄化させたという。

 そこには邪気が消え、ガーベラという黄色い清浄なる華が咲き誇ったという。

 

 俺はそんな話を聞きながら、自称勇者様からもらった報酬金で少しばかりプチ贅沢中だった。

 

『聖女』

 女性プリーストの最高位の別称。

 周囲から尊敬され、徳の高い一部がそう呼ばれるようになる。皆の憧れ、そして息を飲むほどの美女だとか?

 そんな聖女様がこの街の近くに来ているらしい。

 一番上でも中級ランクの冒険者しかいないこの街において、英雄クラスの聖女様は見るだけで徳が上がるとか?

 異世界の人たちはミーハーなんだろう。

 俺は教会とか、子供を使って募金回収しにくるイメージしかない。

 要するに……俺は宗教関係者とは関わり合いになりたくない。

 

 俺は半信半疑であった。聖女様という女性は広告塔なんだろう。


 俺はギルドの食堂兼酒場の店主に教えた竜田揚げをつまみながらこの世界でも誇れる美味さのエールを口に運ぶ。

 商店街づくりに色々やる事はあるが、今日はしばしの休息である。


「ふーん、で? その聖女様、比較的安全で平和なこの街付近になんの目的があってくるんでしょうね?」


 俺は聖女の話を持ちかけたスペンス達のパーティーにそう聞いた。

 

「そ、そりゃあマオマオ。こんな何もないところに魔王がやってきた。そしてどうやら人気のスイーツやらがやたらここが発祥である。何が起きているか調査を兼ねているんじゃないか?」


 スペンスがいう事を思い出す。なんつーか全部俺起因じゃなかろうか……


「……スペンスさん。聖女様って奴は、俺のパーティーとか見たら皆殺しにしたりする物でしょうか?」


 スペンスへの質問を代わりにキロカが答えてくれた。


「マオの旦那。安心しなって! 聖女様っすよ! 慈悲深く、世の理を本質から見られる美女でさぁ! 三人がいいモン……じゃなくていい子なんて討伐なんてしねーっすよ!」


 まぁ聖女様ってくらいだもんな。

 これはそう信じておこう。


「まぁ、そうならいいんですけどね。それはそうと、三人にも色々と依頼をしたいので、酒の席で悪いんですけど、ここの支払い持ちますのでいいですか? 調達して欲しい素材がありまして」


 あぁ! まともなビジネスの会話ができる幸せ、人間やってるって思うわ。


「ね、ねぇ。マオ君? あの……パーティーはお知り合い?」

「そうだな……あいつら確か狭い範囲の自称勇者じゃなかったか?」


 スペンスとファイのエロ姉ちゃんがお通夜みたいな一行を指差す。


「あーあの人らね……ここで魔法使えるパーティー募集してたのでアステマがそれに応募して、俺たちもついて行ったんですよ。そこでヴァンパイアに遭遇してあの人ら手も足も出なくて俺たちに貸しがある……みたいな?」

 

 俺がそう言うと、チラ見してすぐに俯く自称勇者様一行。今まで横暴な態度で周りからよく思われていなかった彼ら。そのメッキの称号が剥がれたわけだ。

 

「……チッ」

「クソ……クソォ!」


 なんというか逆恨みされているっぽいんですが、俺は何か悪い事でもしたでしょうか?  


「おいおい勇者様ぁ! お前、メンバー募集したクエストで気絶したんだってなぁ?」


 ギルドという場所は、一見和気藹々したように見えるが、それなりに仲のいい俺やスペンスですら利害関係である。要するにそこまでいい人間がいない。


 さらに今まで周りを見下して自称勇者と風聴していれば、周りの覚えも最悪だろう。

 恐らくは普段から俺やガルン達をよく思っていないギルドのゴロつき。

 されど魔王アズリたんと同盟まで組んでる俺には喧嘩を売るのはリスクだ。

 だから、その矛先は自称勇者様に向いたか……

 

「おいおいなんか言ったらどうだ?」


 ゴロつきは仲間を呼んだ。

 似たようなゴロつきがわらわらと集まってきた。

 ギルドやその食堂内での揉め事は殺し以外は無視される。


「くっ……あれは強力な魔王級の魔物がいたのだ」


 自称勇者様は話を誇張する癖があるらしい。が、強力な魔物がいた事は確かだ。偶然アステマとの相性が死ぬ程悪くて俺達は戦闘にならなかっただけだし。

 だが、そんな話ゴロつき達は信じない。

 ゴロつき達は次々に酒を注文する。

 この酒代は全て自称勇者様に持たせるつもりなんだろう。

 ……実に可哀想な勇者様であるが、俺は助けるつもりはない。

 俺は目があったウェイターのお嬢さんに声をかけた。


「すみません。エールの追加を俺と、スペンスさんパーティーに」

「マオマオさん、お金持ちぃー! エミリも何か飲みたいな? 前に聞いたんですけどぉ、マオマオさん何かお店の集まり作ってるんでしょ? 聞きたいなぁ!」

 

 エミリさん、名前からしてキャバ嬢のようだ。そして彼女はお金の匂いを嗅ぎ分けるのが上手い。キロカはデレているが、俺はこの手の女の子には興味がない。やはり、女性というのは慎まやかで大人しく、大和撫子であるべきだ。

 そして俺は現実に戻ってくるように少し離れた席を見る。

 

「アステマ、これ! これ美味いのだ! 衣がサクサクで中の鶏肉はじゅわって!」

「あらほんとね! こっちの野菜類を水でしめて、油と塩と胡椒で味付けたしたサラダも中々よ」

「我、判断せり! 今まで出していた果実酒よりも、良い物を使われて至り! これ即ち! バナナっ!」


 俺の目の届く範囲で三人は宴会だ。アステマに酒だけは提供するなと食堂の全従業員に伝えている。

 

 エミリさんには最近提供を始めた果実の蒸留酒を炭酸水で割ったカクテルをご馳走してとりあえず従事に戻ってもらう。

 スペンス達との飲みにケーションをギルド連中に見せる為、大ジョッキでわざとらしく乾杯。

 仕事の請負という一方通行だけの関係しか知らないここいらの連中、きっと興味を持つはずだ。実のところ何人か気になるスキルを持つ冒険者がいるので、それらと関わりを持つ事をタスクとしている。



「特製アクアパッツァお待たせ! マオシーイー王」

「あ、ありがとうございます。クルシュナさん」

 

 看板娘その2。獣人のクルシュナさん。

 冒険者兼、副業でギルドの酒場シフトに入っている、

 シーフ系のスキルを持ち、割と引っ張りだこの人気職。

 実のところエミリさんよりもこの人とビジネスパーソンになりたいのだ。


「クルシュナさん、ここ最近見ませんでしたけど、ダンジョン攻略ですか? クルシュナさんの錬金術スキルで作られたアクセサリー一つ買わせてもらいました。して、今度お仕事のお話の時間いただけませんか?」


 酒の席、それなりに回っている。これは交渉環境が悪かったかもしれない。

 エミリさんは頬を膨らませて、ファイのエロ姉ちゃんは面白そうに。

 クルシュナさんは綺麗な白のショートカット。肌は健康的な小麦色で出るとことはでている。完全に俺がナンパしたみたいだ。

 

「マオシーイー王。ハハッ、嬉しいけどさぁ。それは素面の時にもう一度お話ししてね? あはは! マオシーイー王もそんなとこあるのだな!」


 違います! ちーがーいーまーす!

 クルシュナさんはそこそこ自分の見た目に自信があるのだろう。俺はケモミミ族が苦手になってきた。

 

「ハハっ……まぁ、そのなんだ。マオマオ。元気出せよ? クルシュナは確かに見てくれはいいが、ケモ民だからな。懐かれて恋路に落ちたら最初は幸せかもしれないが、体の方がもたねーぞ。特に発情期なんか、つがいがいたら四六時中求められるというしな。それにお前さん、あんなに可愛い従者が三人もいるんだから、それは欲張りすぎってもんじゃねーか? とりあえず飲もうぜ! さっきの仕事の請負の話は俺たちに任せとけって! なんならなんか土産だって買ってくるからさ! そう、女なんて男がいるとの同じ数いるんだから! な? 手堅いところで妥協しろよ」


 スペンス。お前はなんなんだ? 黙って聞いてりゃ好き勝手言いやがって……だが俺は冷静にエールを一口。

 

「マオ君、お姉さんが天国見せてあげよっか? 可哀想だしぃ……なんちゃってぇ。少し期待ちゃった?」


 あー、殺してぇ……スペンスパーティー殺してぇええ!

 

「ふん……無様だな。北のシーイー王。マオマオ」


 ゴロつき達に酒を奢らされて文無しになった自称勇者様。


 北のシーイー王という意味不明で正直ちょっと恥ずかしい通り名をつけられた俺に絡んでくる自称勇者。随分泥酔していらっしゃる。


「今は人の皮をかぶっているようだが、北の魔王の後継と知っていればあのクエストには連れて行くなんてことはなかった。もしやあのヴァンパイア。それにあのクエストも貴様の自作自演か? そうか! そうに違いない! これは勇者である俺を人々の営みから隔離させ、力を奪うさかしい魔物の作戦か……いいだろう。誰に感謝されるわけでもない。平和を願う者。それが勇者だ!」

 

 うわー、なんか変なコント始まった。

 

「お前が北の魔王の再来というのでれば……ここにいる誰をも、そしてあの麗しいアステマ達を騙し人間の中に紛れ込む狡猾な魔物……されど今の俺ではお前には勝てない」

 

 俺が魔物……というのは百歩譲っていいとして、もん娘の三人が魔物だとは何故思わないんだろうなこの人。


「……せめて、せめて一矢でもお前に爪痕を残してやりたい……お前と戦うということはあの南の魔王とも戦う事になるだろう。今回は潔く引く。しかし修行を終えた俺は必ずやお前からアステマを……いや、今はやめておこう」

「あの……自称勇者さ」

「うるさい! いくぞ魔法使い、剣士よ」


 俺が少し落ち着けよ! とか顔洗ってこいよ! 

 とかそういうことをいう前に俺の話を聞かずに自称勇者様は去って行った。できれば二度ときてほしくないな。冒険者としてはスペンス達くらいの能力はあるんだろう。

 

「ふふん、見てごらんなさい! またあの人間の男と主が私を取り合っているわよ! そして今回も主の一人勝ちのようね! 主もそんなに私の事が大事ならもっと大切に扱ってもいいのよ! そこの給仕の、赤くて甘いの頂戴な」

 

 アステマが調子に乗って果実酒を所望する。

 俺はチラりとウェイトレスの看板娘達に“出すなよ“というアイコンタクトをとりみんな頷いてくれる。

 酒ではなく木苺みたいな果物を絞ったジュースを代わりにアステマ、ガルン、エメスに差し出すクルシュナさん。ナイスです!

 

「おぉ! これはボクが好きな飲み物なのだ! 今日はご主人にたくさん食べていいと言われているのだ! なんでも先ほど愚かにもご主人に絡んだクソ人間のパーティーの連中がご主人の力に慄き、跪き、この前のクエストの報酬を全部支払ってくれたのだ! しばらくはご主人の魔王城。商店街とかいう物を作る費用の足しになるのだ! ボクには干し肉。アステマは砂糖。エメスはバナナ。沢山買ってもらったのだ! 給料なのだ!」


 やめて……ガルンさんお願いだからそのお喋りな口を閉じて……

 スペンス達ですらちょっと俺に引いている。そりゃそうだ。俺はパーティーに金ではなく物で働かしている。

 さらに言えば、あの鼻につく自称勇者とはいえ、俺は圧倒的な力の差を見せつけて報酬を脅し取ったみたいに思われてるじゃんか!

 やっぱり給料は賃金制にしよう。


 エメスは片目を瞑りやれやれと言った風に上品に魚の唐揚げだかなんだかを口に運び、そして話し出す。

 

「主とあの男の決定的な違いは主は我を喜ばす方法を熟知しているという事。そう。当然、性的な意味で」

「まぁそうね。確かに主は飴と鞭の使い方が驚くほどに逸品よね! この前なんて私に白い粉を使って、この私を狂わせるんだもの。主は紛れもない魔王の器ね。ふふん」

 

 砂糖でしょうが! セックスとドラッグで調教されてますみたいなニュアンスやめろよ!

 

「……ま、マオ。お盛んなのも悪くないと思うが、ほどほどにな……お前は知らんと思うが女の恨みは魔神の呪いよりも恐ろしいものと聞くぞ、つ、追加のエールだ」

 

 控えめに言って最悪だ。仕事の関係を深めたいと思っている相手が、俺に薬漬けにされると思っていれば……


「いや、クルシュナさん。違いますよ! アステマさんは少し頭がたりてないのとエメスさんは色ボケしすぎて現実と妄想の境目がですね! あーそうですガルンは俺信者すぎるので、こいつらの言うことは信じないで……お願い」


 あぁ、墓穴を掘った気分だ。言い訳をすればする程、クルシュナさんがダメな男を見る目で俺を見ている。

 

「あ、あぁ。私はマオの事を冒険者としても商人としても尊敬はしているぞ。英雄色を好む……と言うらしいしな。以前会った冒険者に聞いた格言だが……マオ今日は飲み過ぎじゃないか? 少し顔色が悪いぞ?」

「ハハッ! マオマオ。お前さん、本命はクルシュナの嬢ちゃんだったか! さっきの忠告を聞いても諦めないってのは本気だな、何か贈り物でも考えとけよ」

「そうねぇ、マオ君。ケモ民はあれよ、とある高原に数年に一度しか実らないとある植物の香りに目がないの。ケモ民のオスはその植物に溺れずにつがいになりたい相手に贈るんだって」

「マオマオの旦那! 自分一緒に探すの手伝いますから! ね! 飲んで飲んで! マオマオの旦那のぉ! ちょっといいとこ見てみたい〜!」


 異世界に行きたいと思っている連中に問う。基本異世界の人間はパリピ属性が高い。大丈夫か? 


 しかし、皆がモン娘の三馬鹿まで手拍子してやがる。


「ご主人のぉ! ちょっといいとこ見てみたぁーい! 一気なのだ! 一気なのだ! そしてボクも赤い甘いのおかわりなのだ! じゃんじゃん持ってくるのだ!」

 

 知っていますか? 飲み会の席での一気飲みコールはその時点でパワハラなんですよ。

 

「あのマオマオが一気飲みするらしいぜ!」

「へぇ、いつもスカした感じで飲み食いしているいけすかない奴だと思っていたけど面白いところあるじゃないか!」

「シーイー王様。なんだかご機嫌みたいよ! 私たちとも遊んでくれるかもよ? 合いの手打ちましょう!」

「…………あいつは大物になるな」

 

 好き勝手言いやがるギルドの連中。でも一つこのノリはビジネスで必要らしい。


「オラ、見てろ! お前達もぐりの酒飲みと違って学生時代、社会人と無茶振りされた飲み方だ!」




◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「あったま痛ぇ……アルコールの毒素を解毒したまえ。アンチポイズン!」


 異世界の凄いところはこれですわ。二日酔いが瞬時に魔法で治る。

 あんまりやりすぎると凄い体に悪そうなので、今度しばらく酒は控えよう。

 ……にしてもだ!

 俺はギルドの酒場の支払い明細を見てため息が出た。

 あの後、あいつらなんのかんので支払いを俺に全部投げやがった。

 自称勇者様から貰った報奨金の半分以上が吹っ飛んだことは閉口するが、俺はタダでは転ばない。

 クルシュナさんとの仕事の取り決め約束もあの時行ったのだ。


「しかし、俺はどうしてクルシュナさんと仕事の取り決めができたんだろうか? 飲みすぎてそのあたりの記憶が曖昧なんだよな。これは商人としては少しマイナスポイントだな。反省だ」

 

「ご、ご主人。あのケモ民に……求愛したのだ」

「は?」

「クルシュナさん! 俺には君が必要だ! なんて主。あんなのが趣味なのね?」

「我、しょんぼり」

 

 ……ははーん。俺はクルシュナさんの金属加工スキルが必要だと言ったのだが……アルコールでどっか吹っ飛んだらしい。

 

 酒の酔いも無くなって、ガルン達がかじっているベコポンを俺も一つ齧ると言った。

 

 支度金が手に入った。虚の森にて作業を再開する。

 今日は俺たちの拠点以外に店舗になるところを建てる。

 ノルマというわけじゃないが、現在確実に入ってくれる四店舗分にさらに四店舗。

 

 …………昨日の大騒ぎで一口乗る商人が出てくるだろう。


「あれ? あの人は……」


 少し挙動不審な女性が俺が酔い潰れた席にやってくる。

 人間に擬態しているが、これはモンスター。


「なんだなんだ? この街の警備がザルだという事は知っているけど、俺に何か用ですか? そのあんたモンスターだろう? その挙動不審さと、完全に擬態しきれていない部分が見え隠れするよ。敵意がないなら……」

「わ、私です! シーイー王。あなたに命を救われたスライム。もといキングスライムです!」


 凄いパワーワードだ。いかにも俺は冒険者適正テストでスライムを救った。


「おぉ、スライム族のリーダー。来ちゃダメじゃないか」


 俺がそんな風に和んで話していると、可憐な少女の姿でやってきたキングスライムは傅く。


「……シーイー王様。お助けください! 金の鎖の聖女が襲来しました」

「えっ? 金の鎖の聖女……あの噂の?」


 虚の森でスライムとゴブリン討伐を開始したらしい。

 魔物とあれば聞く耳を持たずに即断罪。それが金の鎖の聖女だとキングスライムは語る。


 俺の認識とギルドの連中の話とは大分差異があるように感じるのはたまたまではなさそうだ

 キングスライム、いや今はキングスライムちゃんが割と大きなダメージを受けている。


「あの者は人間とは思えない危険な者です。今、我らの一族が盾になり、ゴブリン・マジシャンさん達で凌いでますが、半刻も持たずに我らとゴブリンさん達は全滅するでしょう」


 それはまずい。俺がモンスターもいいものんだな。

 って思えたのが、このスライムとそしてゴブリン達なのだ。あいつら無くして俺の商店街はなし得ない。

 きっと三人も同じ気持ち……

 こいつらスライムちゃんの話を聞かずにベコポンかっくらってやがる。

 鬼か……いや、化け物か……俺は三人を焚き付けてすぐに虚の森に向かおうと……

 

 いや? 三人は立ち上がった。


「お、お前ら? どうした?」


 アステマは少しばかりイラつき。

 ガルンはお腹いっぱいだからか? 元気そうで

 エメスはいつも通り何考えているかわからん。


「ご主人! 行くのだ! ボクらの仲間に酷い事をするその聖女とかいう奴を八つ裂きにしてやるのだっ!」

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