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とんでもねぇケモーナーが営む追放先輩ブリーダーの異世界牧場物語その ③

「お話を聞きましょう。それほどヤバいモンスターなんですか?」

 

 キラードックからハウンドドック、そしてコポルトガールにクラスチェンジしたガルンがいる。

 単純なクラスで言えばきっとガルンの方が上だろうという俺の認識があった。

 ガルンは馬鹿ではあるが、戦闘においてはまぁそこそこ使える。

 そして俺のユニオンスキルだ。俺自身は障子紙くらいのタフネスかもしれないが、アズリたんの、魔王の加護があるのだ!


 クルルギさんに案内され、モース舎へと、魔法のトラップが数々設置されているそこ、すでに数匹のマーシャルタイガー。

 山猫よりも大きく、俺の想像する虎よりも小さい。

 あれならガルンと俺でもなんとかなりそうだ。


「ご主人、マーシャルタイガーをやっつけるのか? ボクの短剣の錆にしてやるのだっ! ボクの下位互換の別クラス同族なんて敵じゃないのだっ! やっつければいいのか? ご主人!」

 

 ガルンはやる気満々で短剣を振るう。こいつの自信はいつもの事だが、格下と思うとまぁ、それは特にすごい。

 

「よし、いい子だガルン! とりあえずお前ならあいつらやっつけられるんだな? 俺の支援魔法もあるわけだ。バシッと行ってこい!」


 俺はガルンの能力向上系のスキルをユニオンスキルの中から選ぶ。俺とガルン同時に身体能力、魔法力が上がる。


「犬神さん……ユニオンスキルが使えるんですか? 私も多くのモースを飼っているので、牧場主としてユニオン結成はしていますが……それにしても参加人数はどのくらいなんでしょうか? 戦闘系スキルは私は取得していませんが、今し方犬神さんが使ったスキルはかなりの大型のユニオンが習得できる物ではないでしょうか? もしや犬神さんはかなりの人数を誇る商人組合としてのユニオンをお持ちなんですか? もしそうなのであれば……もしかしてあの方と同盟関係にあるのではないでしょうか?」


 おや、クルルギさん。いいところに気づきましたね。

 参加者が人ではなくてモンスターばっかりなんですけどね。それもスライムとゴブリン。

 まぁそんな事より南の魔王アズリたんと同盟である事をバレましたか……

 

「東の精霊王ツィタニア様……」

 

 うーん……知らん人出てきた……

 

「そう……ですねぇ……なんか街にきて色々とやらかしてくれた人で、ちょっとド忘れしたんですけど……南だとか東だとかのなんとか王様にカレーライスとか出しましてねぇ……気に入られてはいるかと」

 

 そこでガルンがいらん補足をする。ばか!


「ご主人! この前きたのは……アズ……わわっ。ご主人なんなのだ? 突然ボクを抱きしめたくなったのか? それは光栄なのだ……でも、ご主人はボクに教えてくれたのだ! その時々にあった行動をちゃんと考えて行いなさい! ご主人……こういうのは……夜とかなのだ」

「ガルンお嬢様、そして犬神さん……異世界とはいえ、そういうのはよくないと思います。ですが……やはりツィタニア様とお知り合いとは少しばかりあなたを見誤っていた事をお許しください……では、討伐依頼お願いできますか?」


 交渉成立という事でオーケーのようだ。

 マーシャルタイガーという魔物と、その上位種キリングタイガーの討伐。戦闘は不本意だが、ミルクの取引は多分重要になる!

 しかし、絶望を告げるアプリが起動した。

 

“キリングタイガーを確認。犬神猫々様。お気をつけください。通常のキリングタイガーより二回り大きく、周囲の村々を襲い大きな被害をもたらせた。指名手配モンスター……キリングタイガーのリロ。名前付きの危険種です“

 

「さてと……マジか」


 やる気満々だったガルンもその姿を見てブルってやがる。

 なんせ、マーシャルタイガーは山猫より大きいくらい。本来のキリングタイガーはライオンくらいのサイズ。

 それらでも中々ヤバいレベルの猛獣という認識がある俺だが……

 全長6メートル程、体重は推定1トン程だろうか? そんな怪物がクルルギさんの牧場に十数匹のマーシャルタイガーを引き連れて現れた。


 こりゃいかん……これマジモンの怪物じゃん。


 一度でもここでモースを捕まえて食べた経験が簡単にモースを襲えると学習したのだろう。

 侵入経路もモース舎の匂いを嗅いでテンションを上げる猛獣達。俺とガルンに期待の眼差しを向けるクルルギさん。

 ブルっているガルンの頭に手を置く。逃げるが勝ちだ。勝ちではあるが、一応ある程度やった感くらいは出しておきたい。

 手持ちのスキルは全体効果のユニオンスキル、多分これが今回のほぼメインになるだろうが、一応俺個人のスキルも十回は使用可能だ。


 出来る事は限界点までガルンを強化して突撃させる。

 キリングタイガーが出てきたら全力退避だ。


「ご、ご主人! こ、怖いのだっ! あのキリングタイガー大きさがとんでもないし、多分強いのだっ!」


 おぉ! 野生の感すげーな。正解です。ありゃ俺たちにどうにかできる魔物じゃないですわ。

 ですが、俺も考えがないわけじゃない。猛獣といえど満腹になれば帰るだろう。


「ガルン。あのキリングタイガーとは戦わなくていい。それ以外だ。それ以外をやっつけろ!」


 俺の支援スキルを受けてガルンは大きく弧を描きマーシャルタイガーの一匹を短剣で攻撃した。

 ぎゃああ! という叫び声と共にどつかれたマーシャルタイガーは逃げ出す。


「ガルンいいぞー! できる限り離れて一匹でいるやつから片付けろ! ……俺も攻撃魔法で手伝うから怪我すんなよ!」


 俺の使える攻撃魔法は当然初級魔法で止まっている……がユニオンスキルで強化され初級魔法・改と威力があがっている。

 実際中級魔法という実戦で効果的な威力がある魔法より僅かに劣る程度まで上がっている事は確認済みだ。 


 ガルンに複数で襲い掛かろうとするマーシャルタイガーを俺は攻撃魔法でその陣形を散らす。

 一匹になったマーシャルタイガーをガルンが殴って気絶、或いは追い返す。

 確実に数を減らしていく仕組みが完成したと言えるだろう。


「さて、マーシャルタイガーはまぁなんとかなるみたいだが……こちらをじっと見ているあの巨大なキリングタイガーが気になるが、あれが何回もこの牧場を襲っているんですか? というかよく今まで無事でしたね?」

 

 どうもキリングタイガーはあいつらのボスというわけではなさそうだ。

 何故なら他のマーシャルタイガーが鳴き声をあげているのに、あのキリングタイガーだけでは嫌に静かだ。

 クルルギさんは泣きそうな顔で言う。

 

「あんな指名手配モンスターがきたのは初めてですよ! 指名手配モンスターは通常よりも危険度が1ランク上がります」


 …………マジか。


 キリングタイガーは俺たちを見定めるようにして動き出した。


「……ニンゲン……ジャマヲスル……ハイジョ」


 本来キリングタイガーは人語を介さないモンスターである。それが喋るのは人間を食らったからか……明らかにデータベース以上のスペックだ。

 

「俺の強化版炎の初級魔法を恐れない……だいぶ詰みじゃねぇか……」

 

 キリングタイガーは咆哮することもなく、ただ静かにゆっくりとキャットウォーク。

 俺たちをまだ観察している。

 このキリングタイガーが指名手配モンスターとなる理由が俺にはわかる。こいつは人間でいうところの、サイコパスだ。

 

「ご、ご主人。あらかたマーシャルタイガーはやっつけたのだぞ! こ、こいつは戦わなくていいのだよな? 怖くないんかないんだっ! で、でもこのキリングタイガーは……」

「犬神さん! もっと強力な魔法でババーンとやっつけてくれませんかね? ガルンちゃんがあんなのに勝てるとは思えませんし頼みの綱は……」

 

 いやぁ、クルルギさん……やっぱり学生上がりだわ!

 俺が強化した初級魔法で力を温存しながらマーシャルタイガーと戦っていると思っていらっしゃる。

 俺の最強攻撃は初級の炎魔法のみ。


「……クラウゾ」

 

「くらうぞ……あれはまさか俺たちを喰らうぞって事の認識でおk?」

「あばばばば……ご、ご主人……キリングタイガーが僕たちを餌として認識しているのだっ! ボクの体は硬くて不味いのだっ!」


 いや、俺は知っている。抱きついてくるガルンは子供特有の柔らかさでいっぱいだ。


「いやぁ! 私も、私の大事なモースちゃん達も食べないでください! キリングタイガーにあげられる餌なんてないんですぅ!」


 言葉が通じるから、やぶれかぶれでクルルギさんはそう言ったのだろう。ケモナーでも流石に猛獣は無理だったという証明。


「でも……私が死んだら他のモースちゃんたちもそのまま……ど、どうでしょう? もう乳の出が悪くなったモースちゃん一匹なら……」

 

 俺は獣相手に本気で交渉をしようとしているシュールな光景を目の前で見せられる。異世界ならではなんだろうか?


「クルルギさん……多分、あのキリングタイガー、今完全に標的俺らですわ」


 今まではモースのいるモース舎を目で追っていたのに、今は俺たちと目が合う。

 

「や、やるのか? 生きたまま食べられるのは嫌なのだっ! ご、ご主人。ボクはどうしたらいいのだ? アステマもエメスもいないのだ……二人がいれば……ボクも!」


 いてもどの程度役に立つのかわからなん。デーモンとゴーレームだが、

 今日は二人を置いてきた事を酷く後悔した。

 もしかするとオーガの時みたいな奇跡が……ね。


「そこまでの効果は期待できませんが……私のユニオンとも同盟を組めばもう少し強いスキルが使えるかもしれません」

 

 なるほど、牧場にいる沢山のモースとクルルギさんのユニオンは中規模のユニオンくらいだろう。

 要するに協力すれば、クルルギさんも俺も今よりも上位のスキルが使えるという事だ。


 時間はない。俺頷くとクルルギさんとユニオン同盟の仮結成契約を済ませた。


“クルルギ畜産研究所との同盟を確認。ユニークスキル・群れのボスを仮習得“


 そうアプリが答え。クルルギさんのアプリは……


“ユニオン名保留の犬神猫々様との同盟を確認。ユニークスキル・ネゴシエートを仮習得“

 

 そして俺たちのユニオンスキル使用回数が一回増えた。

 

「ち、力が漲るのだ! ご主人!」


 ガルンは少しばかり身震いすると獣らしい瞳を向けてキリングタイガーにがるるると威嚇する。今までびびっていたガルンが少しばかりやる気を出している。

 クルルギさんの牧場主スキルによってガルンがやる気を出しているのだろうか?

 いずれにしても俺もユニークスキル群れのボスなる謎スキルがオート発動している。


「犬神さん見てください! 今まで私たちを襲おうとしていたキリングタイガーが、犬神さんの群れのボススキルで自分と犬神さん、どちらが強いか測っています! それに……犬神さんから習得させていただいたネゴシエートスキルで私も先ほどからキリングタイガーに巣に帰るように何度も命令しています」


 そして、いい感じでキリングタイガーが去ろうとした時……

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