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これから異世界に行こうと思っている人に忠告しよう異世界でも押し売りと宗教勧誘には気をつけろ

初めて感想を先日頂き、大変嬉しく思いました。

指摘点とかなんでも気になることがあればコメントしていただけるとありがたいです。

 俺が関わってはいけないと思う連中がいる。

 

 それは新聞の勧誘、ネズミ講みたいに誰かを不幸にする健康商品の押し売り、そして……宗教勧誘。

 何故なら連中は大体二通りなのである。マジで頭のネジがぶっ飛んで夢物語を共に語ろうとする取り返しのつかない連中。

 あるいは、実際には信仰している本当の神はお金、あるいは弱者への性的搾取などを考えている要するに犯罪者集団だからだ。

 

 もちろんそうじゃない宗教や訪問販売も存在するだろうが、俺は基本ハッピーライフ・ノーリリジョン。

 

「聞いているのか? 我らはファナリル聖教会より使わされた助祭モーリスと申す。お前達が魔王アズリタンと同盟を組み、一難を先延ばしにした事は調べがついているのだ」

「はい、俺ですよ。犬神猫々です。実際、あんたらの言う通り、半ば強引に同盟関係になりましたが、それが何か? ついでに俺も教会とやらに用があるんですわ」


 とりあえず偉そうな奴相手にはそれ相応の態度で向かうのが俺だ。当然、丁寧にくる相手は小さな子供だろうと俺は丁寧に対等に相手をする。教会関係者ともあろう者がそういう道徳を弁えていないのはどうかと思うのだよ。

 


 ……おぉ、怒っとるわ。

 まず、アステマが明らかに不快感を示し、ガルンも睨んで黙りながら弁当かっくらっている。

 エメスは……知らんぷりしてオヤツのバナナを食べ始めてるよ。

 凄いなお前達。

 今回ばかりはその君らの行動と態度に惚れそうだ。

 

「なんと無礼な! ファナリル聖教会を知らないとは言わせんぞ! 全ての魔性を滅ぼし永久の平和を掲げる唯一無二、勇者王や精霊王すら到達できない平和維持を、黒点なき清浄なる世界の為に!」


 これは関わってはならない宗教勧誘者の前者側の方だな。多分話が通用しない系の人たちですわ……こういう人達は否定をしてもダメ、肯定をしてもだめ。


「いやぁ、まぁ崇高な理想ですねはい。俺らは、このあたりに商店街を作ろうと、見ての通り就業中なんですわ。そうっすね。聖教会さんもお布施とか必要でしょう? とりあえずこの一帯の所有権の判押してくれれば、参加してくれるお店から折半でお布施出しますけどどうです?」

「お布施とな? 詳しく聞こうか?」

 

 このモーリスのとっつあん。

 後者の金に汚い方の宗教勧誘者でもあるかもしれない。

 

「ゴニョゴニョゴニョ」


 モーリスはクソ坊主だった。俺の話を聞いて、この土地の所有権認めてくれるならモーリスには別で謝礼を考えていることを伝えると目の色を変えた。普通そこは怒るところでしょうが、聖職者さんよぉ。

 モーリスは気分を随分良くしたらしく、ファナリル聖教会について色々と俺に教えてくれた。

 まぁ、ろくな宗教じゃないとは思っていたが……


「ファナリル聖教会には三名の神の試練を超えた方々がいるのだ。教皇サンデー様。大司祭パフェ様。そして……西の聖女王と呼ばれしファナリル聖教会、最高聖職者プリン・アラモード様」

「あー、西の魔王的な位置付けに聖女がいるのか……狂ってるなこの世界。まぁ俺も一応北の魔王的なCEOだから人の事言えんけど……」

「主、教会連中なんでしょ? 殺しましょ」


 気がつけば弁当も食い終わり、ご飯粒もといパンクズを口につけたアステマが死んだような目でそう言う。


「アステマさん? ちょろっと目が怖いですよ。 どうどう! 少し落ち着こうか?」


 そういえばアステマは教会連中に調伏されかかったとかなんとか言っていたような気もする。

 リトルデーモン時代は追われる立場だったが、今は二階級特進してるので、強気なわけか、ガルンもナイフを磨き始め殺る気満々そうだし……どうしたものか。

 

「よし、どうだろうか? どのみち商店街には礼拝堂が必要だと武器屋のおっさんが言ってたし、ファナリル聖教会の礼拝堂設置も視野に入れようか」


 我々はファナリル聖教会なる宗教に入ろうと言う気持ちは毛頭ない。

 ただし、アズリタン同様に同盟関係に近い環境を作る事ができればまぁ現状維持できるじゃないか?

 知らんけど。


「シーイー王、マオマオと言ったか? 話が分かるじゃないか。本件に関しては一度持ち帰って……できれば私が司祭として、この地域の礼拝堂担当者となれるように推しておこう」

 

 自分の出世に目がない、よくいえば貪欲で、悪くいえば卑しいこのモーリスは今後も上手く扱えるような気がしてならない。

 教会組織がどうなっているのか知らんけど、そんなんで位あがらんだろ。

 そんな事はモーリスは頭の片隅にもないようで、これから助祭から司祭に格上げされた自分の未来の姿を想像し上の空だ。

 この宗教、本当に大丈夫だろうか? 宗教関係も今度調べておこう。


 さて、あと一押し。

 

「モーリス助祭、いやモーリス司祭。この商店街が賑わうかどうか? それはあなたの腕次第と言っても過言ではない。店が増えれば? 客が増えれば? 当然お布施の割も増えるでしょうな?」

「主! どうしてこんな教会関係者の肩を持とうとするの? もしかして主も元々教会に属する人間だったのかしら? 今の私なら、神の加護を持った連中でも即灰に……」


 アステマがキレた。まぁ、モンスターだからそもそも我慢が苦手か、

 俺は冷静にアステマ、そしてモーリスの間に立つ。


「時にマオマオ、いやマオマオ殿。そちらの可憐な従者達は、マオマオ殿の妾か何かなのか? ファナリル聖教会の大聖堂がある王都でも中々お見受けできないような美女、美少女揃いで私も他信徒達も息を飲む気持ちだ。特に、そちらの静かな女性。もしよければ修道女なんて興味はありませんかな? ファナリル聖教会でも顔がきく私の元であれば暮らしに不自由はさせませんぞ? そしてそちらの魔法使いの少女? 何か他の宗派の教会で辛い目に? ファナリル聖教会はそんな事はないぞ!」

 

 ……モーリス、こいつはあれだな。

 ダメな坊主の集大成だ。

 

 モーリスはいく先々でこんな事をしているんだろうな。俺は聖人ではないから目を瞑ってやるが……

 ただし、俺の従業員を引き抜こうとは解せん。


「モーリスさん、彼女らは俺のユニオンパーティーでこの商店街の立ち上げメンバーになるんですよ。まぁ引き抜き的なことは勘弁してくださいよぅ」


 そして、俺のウィンク。この男は物分かりも良かった。ビジネスパートナーになる俺への心象を悪くするわけにはいかないと気づいた。


「ははっ、そうだな。もし、今の生活が辛いと思う時があればいつでも、我がファナリル聖教会は助けを求める民を見話はしない」


 それを教会的には魔性の者と言うモンスターに話している様は少し滑稽だ。


「まぁ、こいつらがモーリスさんのところに行きたいと言うのであれば、俺は止めはしませんがね。その時はどうか、一つ可愛がってやってくださいよ」

「あぁ! それはもちろんだ!」

 

 三馬鹿だと思っていたが、興味なさそうにしていたエメスですら教会の世話になるという事だけは心底嫌だという顔を俺に見せた。

 

「さて、じゃあ早速。権利証明を発行して貰いたいんですけど、この一帯はそもそも虚の森。魔物の住処として知られているので誰も権利主張してないらいしのでここは問題ないでしょう」


 無駄にふっかけられる前に俺はここが無価値な土地である事を知っていると釘を刺す。

 

「マオマオ殿は流石に商売人だな。確かにここの権利主張なんて今まで誰一人としてしてこなかった……。すぐに許可が降りるだろう。そして本来は手数料を頂戴するところだが、今回は手数料。この私が代わりに支払おう。その代わり、先ほどのお話の数々、お忘れなきように……いいですね。神が見ていますよ」


 神ね。


 この人、転落人生歩みそうだなぁ。


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


 俺たちの拠点が仮組みとはいえ形になった三日後。

 

「ご主人! ご主人! こんな物が届いたのだっ!」


 ガルンは一枚の高級そうな封筒を持ってくる。

 魔法で届けられた書面らしい。中を開けると……

 

「おっ、あのモーリスさん、しっかり仕事をしてくれたみたいだな」


 名実ともに虚の森一体の土地が俺の所有物になった。

 もうしばらく、俺は俺たちの事務所作りに勤しむことになる。柱も打ち付けてあらゆる加護も備えた事務所。

 しかし、まだ色塗りやらワックスがけやら掃除やら人が住むと言う領域には至ってはいない。

 都度、街のシェフが試作弁当を運んでくれるので飯には困らない。

 そして、一番驚いた事が一つあった。


 スライムとゴブリンである。

 突然奴らが集団で顔を見せた時、雑魚モンスターによる下克上か何かが起きたのかと思った。


 俺の記憶を辿ればゴブリンとスライムの姿はある。


「俺が四人パーティーのユニオンにしてはめちゃくちゃユニオンスキル使えるなというカラクリはこれだったか」


 冒険者試験。

 あの時に逃したスライム達が俺たちの配下という形でゆっくりと数を増やしていた。

 そして、エメスが封印された祭壇にいたゴブリン達だったが、北の魔王が生み出したエメスを起動させた俺を新たな仕える者としてこれまた配下になっていたのだ。

 結果、五十近い戦力が俺をピラミッドとした脅威的なユニオンとして中級ユニオン達と肩を並べる程度には君臨してしまっていたのだ。

 こいつら見つかったらガルンがモンスターテイマーという固有スキルで従えさせているという事にしよう。

 

 四人だけだと思っていたらゴブリンが十五匹にスライムが三十五匹。

 仕事を手伝ってくれる以上、彼らにも住処を与えなければならない。ゴブリン達、スライム達用の簡単な宿舎

 そしてやっちまった!


“領土の一部、個室を与えられた事で、ゴブリンはホブゴブリンへのクラスチェンジ、スライムはストロングスライムにクラスチェンジへの成功しています。おめでとうございます“


 ほら、ゴブリンにスライムも進化しちゃったよ。


「さてと、いきなり従業員が増えたのはいいけど、これだけ魔物がいれば人間驚いて来なくなるかな……」

「それは大丈夫ですよ。シーイー王様」

「えぇ、右に同じです」


 ホブゴブリン。普通のゴブリンよりやや大きくなったそれと、質量が三倍になったスライム。その中でもリーダー的な奴らが声を合わせた。よく見ると、二匹は知的っぽいぞ。

 俺の勘だが、うちの三馬鹿より賢そうだ。

 ホブゴブリンのリーダーとストロングスライムのリーダーは俺に提案してくれた。ホブゴブリンは顔の見えない被り物、ストロングスライムは運搬などを夜間帯に行う。

 

 俺は気がつけばホブゴブリンとストロングスライムのリーダーと握手をした。

 モンスターって馬鹿じゃないのもいるんだ!

 ホブゴブリンのリーダーこいつはゴブリンリーダーという種らしく、ストロングスライムのリーダーはジャイアントスライムという種。

 

「ご、ご主人! ボク達に命令をする時よりも若干生き生きしているように見えるのだっ! ボクにも! ボクにも命令して欲しいのだっ!」

「お前は……少し散歩でもしてなさい」

 

 そう、ゴブリンとスライムと一緒に仕事をした方が効率がいいなんて……

 異世界、あらゆる意味で俺の知識を凌駕しているぜ。

 

「アステマとエメスもちょっと休憩がてら一緒に散歩行ってこいよ」

「えっ……」

「マスター。放置プレイと理解したり」

 

 雑魚モンスターだから弱いとか、愚かとか、上級モンスターだから強いとか賢いとかじゃないんだなって今日知りました。

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