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きっとカレーライスは世界を平和にできる

 さて、すげぇ美味い物とは言ったが、口に合わなければ即全滅だ。


「クハハ! シーイー王が余に出す食物とはいかがなものか? ドラゴンの刺身も、ベヒモスの煮付けもそろそろ飽きたところだからなっ!」

「はーん、へー、中々珍しい珍味をアズリたんは食べているんだなぁ。俺は食べた事ないけど、きっとそれより美味しいと思うよー」


 ハハッ、ドラゴン常食している奴の味覚、誰か教えてください。

 俺の横を腕を組んで偉そうに歩くアズリタン。親戚の生意気なガキ連れている気分だが、ガルンとアステマのビビり具合からコイツはやはり魔王。

 

 機嫌一つ崩せばこの街消滅確実とかそれなんてクソゲー?

 

 想像して欲しい。この料理をを作ったのは誰だぁあああ!

的なノリで、二度と料理が作れないように街を滅ぼしてやるくらいを言ってくる料理漫画があったとしよう。どうせいちゅーねん! アズリタンに食べさせる食べ物は三つ。まずはこの世界で俺が作り方を教えたカレー。

 子供はカレーが大好きなのはきっと世界共通だろう。それもやや甘口だ。多分ね。きっとね……大丈夫か……

 そしてお次はバナナだ。バナナが嫌いな子供も少ないだろう。近所に買い物に行くと、おやつにバナナをお母さんからもらっている小さい子を何度か見たことがある。

 そして最後は俺が隠れて食べようと思っていた虎の子のチョコレートである。チョコレートが嫌いな子供は以下略である。


「いやー、しかしだ。魔王アズリたん。君はあれかね? 辛い物、甘い物。何系の食べ物が好きなのかね? それによってはこちらも用意する食材やらなんやら変わってくるんですわ! うん、辛い物なら香辛料とかだし、甘い物なら果物やら集めないといかんしな! うん! で、どうなんだ?」

「余の好きな物か? くはは! 余も王を名乗るものぞ? 先方のもてなしを楽しみにしておる。その方が驚きと楽しみが多いではないか! クハハハハ!」

 

 なんでそういう時だけ上に立つ者っぽいんじゃい! クソがっ!

 

「おぉ、なるほどな。アズリたんはサプライズが好きなのか、日本人には中々ないパーティーピーポーって奴だな。オーケー、アズリたんが必ず喜ぶような最高のもてなしにしてやるからな! うん」

「シーイー王よ! “たん“に何か感じる物があるが楽しみにしているぞ!」

「…………大船に乗ったつもりでいてくれや!」

 ……ヤッベ、高確率でこの街滅んだな


「アズリたん。魔王ってのは実際何をしている魔物なんだ? 俺の知りうるところだと、世界を征服したりを目論んで勇者とガチンコバトルしてる魔物の首魁みたいなイメージなんだけど」


 とりあえず話をしながら時間を稼ぐ。

 そして、リアルに魔王って何をされている魔物なのかを知る絶好のチャンスでもあるな。

 ……ただし失敗すれば即終了な爆弾処理してるくらいの心持ちなんですけどね。このまま上手い事言ってコイツの巣に帰ってはくれないだろうか?

  

「むっ? 余か? 余はこの世界全ての王種を屠り、唯一無二の魔王、大魔王になる事だ! クハハ! 手始めに北の魔王シズネからと思ったが、シーイー王に成り代わった。ならば貴様だ。そして余の宿敵。東の精霊王ツィタニア。そして西の聖女王。それらを制し、中央と呼ばれた勇者王を穿つのだ! クハハハハ!」

   


 えっ? 魔王お前だけじゃん……何この世界? 本気でわからなくなってきた。

 

「……ご、ご主人……。なな、どうするのだ?」


 ガルンがビビりながら俺の袖を引っ張る。

   

「おう、ガルン。どうするもこうするもアズリたんにうんまい物食わすんだよ。見た目はお前と同じくらいなんだから仲良くしてやれよ」

 それはガルン的には……

「む、無理なのだ! あ、相手は南の魔王なのだ! …………ボクは名付きとはいえコポルト・ガールなのだ! 魔王と仲良くするなんて恐れ多いのだ!」

 

 CEOである俺には平気で話しかけてパーティーに入った奴がよくいう。

 

 他二人はどうしてるんだ? アステマは少し距離を取って警戒、エメスは冷静だ。さすがは人工生物……

 

 と感心していた俺だったが、違う。よく見ると耳と口から煙が出ている。コイツアズリたんのあまりのヤバさにフリーズしてやがる。日本からきた俺には幼さしか感じないメスガキが魔王で滅茶苦茶強いとか、それなんてラノベ? 

 

 しかし、俺の横で無邪気にてくてく歩いている。

 ……夢ならさめて、まぢで。

 

 「あ、アズリたん。とりあえずまず最初は子供はみんな大好き。カレーだ! とりあえず甘口、辛口と用意してもらってるぅ! さぁ日本の家庭の味を堪能あれ!」

 

 えぇ、俺がカレーを教えた食堂のシェフに用意してもらったカレー。

 魔王が街に突然攻めてきた。この街にいる冒険者すべての力を埃でも払うように通じないアズリたんを説明。

 

 食堂のシェフは、俺の交渉術とシェフの料理の腕しかこの街を守れないことを知ると「分りました。作りましょう」と言って厨房へ。

 それは背中で語っているようだった。

 カッケェ! 抱いて!

 

「ほぅ、あの人間がシーイー王の専用料理人という事か? ふふん、この小さな小屋がシーイー王の食事処か、厨も狭そうだ。北の魔王が生きていて余と戦っていたらここも吹き飛んでいただろうな? クハハハ! うん、人間の文化を見て学ぶのも時には悪くないものだなっ! そしてこんなケルベロスの犬小屋にもならん小さな小屋で人間の食事ときた! これは楽しみだ!」

「よし、じゃあアズリたん。少し黙ろう。人間の文化は食事前は静かに待ってるものだ」

「そういうものか? 余の城では余の配下達といつも大笑いして食す物だぞ!」

 

 へぇ、魔王一味、やっぱりパリピかよ

  


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 えぇ……えぇ、やりましたよ! やってやりましたよ母さん!

 シェフの作った甘口のカレー、辛口のカレー、いずれもアズリたんはたいそう気に入ってシェフを褒めまくる。

 んんっまい!


「そうだろう。そうだろう。これがアズリたんが露ほども興味を示さなかった人間が作り出した至高の研究結果。カレーライスだ。その美味さは千里を駆け抜け、インドからイギリス、そして俺の国で完成した完全食だ!」

 

「言っていることはわからんがその研鑽気に入ったぁ! なぁ? シーイー王の使い達よ?」


「……う、美味いのだ! 南の魔王様」

「確かに美味しい……ですわね。ガーリが多いと私は体調不良起こすけど、甘口はいけ……ますわ!」

「マスターが美味しいと勧める不可思議な色をした食べ物を食べさせられる女子達。成分を調べると完全食には程遠いものの滋養競争には効果を確認。それをご理解とは感服。ロリガキ……いや闇魔界のアズリタン様」


「あぁ、エメス空気の読めない補足をありがとう。これにサラダやらなんやらつければ各種栄養面はフォローできるだろ? そして今回、シェフの素晴らしい料理の腕でこの街の危機は救われたに等しい。ふぅ……おもてなし作戦は大成功?」


 なんかさ、自分で言っておいてこれはもしかしたらフラグを立ててしまったんじゃないかとアズリたんをチラ見。

 うん、魔王とはいえ、王に料理の腕を褒められたシェフは満更でもなさそうに、俺が追加依頼で頼んでおいた冷凍ベコポンをシャーベットにしてアズリたんに出している。

 素晴らしいフォローだ。

 幼い女の子らしい声をあげて足をジタバタさせてシャーベットを喜ぶ魔王と、俺のパーティーの三馬鹿。仲良くなっとるわ……

 まぁでもそろそろカラスが鳴く頃だしご退場いただこう。


「クハハ! 気に入った人間の街! しばらく余が滞在する事にしよう」

 

 ほらね。魔王様といえど美味い物を食べれてそれを作れる人間まで滅ぼさないのよ。某世紀末漫画でも太ったハート柄の人がそうしてた。

 いやぁ、聞き間違いかなぁ……このメスガキ、今なんて?

 

「南の魔王様、ここにしばらく残るのか? ならばボクの虚の森も案内するのだ! まぁ、今はご主人の所有なのだけれど、ベコポンの実がなっていて美味いのだ! それにご主人もとっても美味しい食べ物を持っているのだ! 是非とも南の魔王様にはそれも食べて言って補しいのだ! ご主人の凄さがより分かるのだぞ! これからはご主人が北の魔王なのだ!」

「ガルンっんんん! 黙れ!」

「良いではないかシーイー王。それにお前達、シーイー王の三柱は気に入った。低レベルの魔物達だが、余の事を至高の名前アズリタンと呼ぶ事を許す!」

 

 これって……

 

“アプリ起動。南の魔王からの名前を呼ぶ許可を得ました。これにより、ギフトが贈られます。ガルン、アステマ、エメス、そして猫々様の魔王耐性付与。プレッシャーから解放されます“

 

 俺は何も変わりがないが、ガルンは毛が逆立たなくなり、怯えていない事がうかがえる。

 

「……これはありがたいが、アズリたん。魔王城に残したお前の家来達が心配してるだろ? 今日は帰って、また今度遊びにこいよ」

 

 あぁ、俺も一応アズリたんの顔色を伺った思考と発言をしていたが、今はそれがなくなった。魔王って役職だけで相手をビビらせれるのか……ヤベェな。

 

「くはは! 余の配下達か? 確かにあやつら、余の事が好きすぎるから恋しくて泣いているかもしれんな? が、余は余の快楽を第一とする!」

 

 あぁ、ダメだ。前向きにコイツは魔王だ。

 部下には心配させておけ、自分は好きなだけ遊ぶんだ。金と権限を手に入れたら人間も魔物もこうなるんですね。

 

「アズリたん。もしだ。もし、お前の城に魔王がいないという事で他の勢力が攻め込んできて全滅、あるいは魔王に成り代わろうとする者がいるかもしれない。王という者は魔王もCEOも責任が伴うんだ。違うか?」

 

「違うな! 全滅したら全滅させた奴を撃滅すればいい。余に取って代わろうとする愚か者がいればこれも撃滅すればいい。くはは! 余は頭もいいだろう?」

 

「無駄に力があるとそういう心配がないのか……勉強になるわぁ」

 

 さて、とりあえずパーティーやら街やらの全滅の危機は回避したが、魔王が居座るという第二の危機。胃薬ってどっかで売ってるのかな?

 

「……さて、先ほどガルンやアステマから聞いた。口の中で溶けてそして脳髄を侵すような超麻薬的な菓子があると聞いたがそれは何処だ?」

「アズリタン様。媚薬にも使われたとかなんとか、同一の材料。カーカオから作られるらしい、黒光し、妖艶な口溶けと理解している。マスターが複数所持」


 チョコレートを変な媚薬アイテムみたいに言うのはよせ!

 

「ほほぅ! 余が余の区域で食べる至高の甘いものはアルラウネの体液くらいだからな。あれは飲み飽きた」


 魔物って魔物を食すんだな。今更だけど……


「まぁ。そこまで大袈裟な物ではないけど、チョコレートは俺の世界でも物凄い人気のお菓子だな。女の子が好きな男にチョコレートをあげるバレンタインっイベントもあったりするし」

「ほぅ……興味深いな……」

 まさかアズリたんがバレンタインに興味を持った。


「アズリたん様。主はあー言ってるけど、本当に美味しいわよ! 流石にあれは食べた事ないんじゃない?」

「そうなのだ! 一粒で口の中が幸せになる奇跡の食べ物なのだ! しばらく感動で動けなくなるのだ!」

 やめろー! アズリたんの期待値を上げるのはよせー!


「ほほう。お前達がそこまで言うのであればさぞかし美味なる物なんだろうな。有象無象と思っていた。虫けらのように湧いて出るものと思っていた人間がよもや想像を絶する食文化を持っていたとは、流石に驚きを隠せぬぞ! シーイー王、その菓子を!」

 

 そう言って手を差し出すので、仕方なしに俺は虎の子のチョコレートをアズリたんに差し出した。丸いボンボンチョコレートである。

 

 それをつまんで眺めるアズリたん。宝石のようだと言うアズリたん。

 ガルンとアステマが封の破り方を教えて、黒茶の丸いチョコレートが姿を表した。

 そしてそれを一口。

 

「……美味だな。これは余の中の世界が改変される程の脅威であった。こんな食べ物は聞いた事も見た事もなかった。当然食した事もなかった。が……それまでだ」

 

 まじか、まさかのバットエンドコースか? 何を失敗した?

 

「シーイー王! 余と夫婦(めおと)になれ! 貴様がおれば全て世は事もなしである!」

「えっと……まずは業務提携からでお願いします」

「ははっ! 憂い奴よ! お友達からと言うやつか! 構わん!」

 

 えぇ、魔王という肩書きのメスガキにプロポーズされたので起点をきかして魔王と業務提携することになりました。

 

 “猫々様のユニオンに同盟・南の魔王引きいる魔王軍が入りました。これによって、ユニオンのレベルが大幅に上昇します“

 

 だってさ……

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