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灯台下暮らし  作者: 夜寝眩
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6

「なーに、修ちゃん私の恋に興味あるの?」と追い打ちをかけてくる。

なんと返せばいいのか分からず、落とした肉を片付けながらごまかす。

「私は高等部で彼氏とかいたことないよ。そういうのは全部断っていたし」

咲姉はモテる。見た目はもちろんのこと姉と同じく文武両道で完璧超人だ。

「でも恋愛には興味あるよ。そりゃね、私だって普通の女の子だしね」

「そうだったんだね、でも姉さんの理想の男性ってどんなタイプなの?」

僕も気になっていたけれど聞きにくい話を唯が振る。

「う~ん、修ちゃんみたいな子かな~」

可愛い子が好きなんだよね、と咲姉が言う。

「っ!からかわないでよ咲姉」

別にからかっている訳じゃないよ。と咲姉。

昔からの付き合いで気の置けない男の子なんて修ちゃんくらいだったし、それに私の家の事情とか考えると気軽に恋愛とかハードルが高いんだよ。と恋愛に対する悩みを口にする。確かに名家の長女として、そういうことにも気を使わなければならないのは当然といえば当然かもしれない。でもそれは少し窮屈だ、咲姉はまだ大学生だし、恋愛とかもまだ自由に考えてもいいとも思う。

「別にお父さん達から何か言われている訳じゃないよ。自分が勝手に思っているだけ。高等部の頃は勉強とか忙しかったし、恋愛に時間を割く余裕なんてなかったからね」

いろいろ考えて一回実家を離れてみようと思って東京の大学に行くことにしたんだけどね。

と咲姉が当時のことを振り返りながら話してくれる。

自分の家が資産家であることは自覚していたけれど世間というものをまだ良くわかっていなかった。だから一度家を出てみようと思ったそうだ。


咲姉が東京の大学に進学すると聞いたときは渚学園よりも偏差値が高い大学で、そこに学びたい事があったからだということだったと記憶している。

学びたい事ってそういうことだったのかな、と疑問に思っていると

「もちろん今、私が学んでいる分野に興味があったっていうのが一番だけどね。それに加えて一人で生活して、いろんな人と関わって世界が変わったように思うよ」

咲姉が2年間の大学生活を振り返って言う。

確かに吉野家という場所に居続けるとそういう経験はできないかもしれない。

咲姉が大学生活を満喫できているようで僕は嬉しくもあり、寂しくも感じる。

「今は彼氏とかいないの?」

唯が興味津々という感じで聞く。

「まぁ、興味はあるんだけどね、彼氏はいないよ」

歯切れ悪く咲姉が言う。

「姉さんモテるでしょう。高等部でもそうだったじゃない」

この外見と人当たりの良さだ、大学生ともなれば咲姉みたいな女性に好意を持ってアプローチをかけてくる人も多いだろう。

「まぁ、合コンみたいな場に誘われて行ったこともあるし、ゼミとかで声かけてくる人もいるし、デートしたこともあるけどね、恋人になりたいって思えないんだよね」

またも歯切れ悪く、苦笑しながら言う。

咲姉なりに興味をもって行動しているようだったが、どうやら咲姉の好みの男性はまだ表れていないみたいだ。

「そっか、姉さんは大人になって前に進んでいるんだね、彼氏できたら教えてね」

唯がそんなふうに言うが、僕はなんだか複雑な気持ちになる。

その時はちゃんと言うよと咲姉が唯に言って、当然のように僕らにも聞いてくる

「私の話はこのくらいにしといてさ、二人は恋してる?」と少し意地悪な顔をして言うので、興味はあるけどまだ高等部に進んだばかりで余裕がないと唯に話した同じことを僕は答える。

唯は少し固まっていた。

「唯?そういえば僕にはそういうこと聞いてきたけど唯の話は聞いてないな」

今日の公園でのやりとりで唯が僕に聞いてきたけれど、僕は唯が恋愛に興味があるのかを聞いていない。

咲姉とのやりとりを見るかぎりそういうことに興味がありそうな雰囲気だったけれど

咲姉はそんな僕らのやり取りを見て複雑な顔をする。

「まぁ、人それぞれのペースがあるからね、こういうことは。焦る必要も、無理にする必要もないよ」

咲姉が唯をフォローするように言い、唯はうなずいた。

「さて、そろそろお腹もいっぱいになったし片づけてお父さん達のところに行こっか」

話を打ち切るようにそう言って食器などを片付け始める咲姉。

唯はうつむきがちに、そうだね、と言い咲姉を手伝う。

唯の様子が気になったが、僕も二人にならって片づけを手伝った。


食事が終わり、純也さんたちがいるテーブルに五人で座る。

純也さんや翔子さんは姉がいないことを疑問に思っていたようで、僕に聞いてきたので咲姉たちに話したことと同じことを話した。

すると二人とも少し思うところがあったのか、少し心配そうにしている様子だ。

「梨沙がそんなに悩むなんて初めてじゃないか。まぁそういう時期と言ってしまえばそうかもしれないが、力になれることがあれば言って欲しいと伝えておいてくれ」

純也さんが僕に言伝をお願いしてくるので、僕はわかりましたと答える。

「また皆で楽しく食事をしましょう。梨沙にも気軽に来てねと伝えてね」

翔子さんもそう言ってくるので、伝えておきますと答える。


()()()()()なんだ、困ったことがあればいつでも相談してくれていいんだぞ、修も梨沙もな」

そう純也さんがそう言って、立ち上がる。時刻はもうすぐ9時になるころだった。


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