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賞賛タイム!勝利のファンファーレ!

「ドレイザンコウを倒したぁあああああああああ!?」


 町の冒険者ギルドで俺らを待っていたのは、受付嬢さんの絶叫だった。


「え、あ、はい、一応」

「いやいやそんなまたまたぁ、ダメですよそんな大人をからかってぇ」


 お姉さんは眼鏡の位置を直しながら、おばさん臭い仕草であらやだもうとばかりに手を動かした。


「いや、本当ですよ。ほら」


 俺の合図でハロウィーとノエルがギルド会館のドアを開けると、外に停めていた荷車——町に入る直前に生成した――の上に乗るドレイザンコウの頭部を一望できた。


 街に入る前、俺がストレージから頭部だけを取り出しておいたものだ。


「な、なぁ、なぁっ……」


 お姉さんは、しばし絶句してから再び絶叫した。


「ギルドマスタァアアアアアアアアアアアア!」


 お姉さんが階段を駆け上がり、奥の部屋に飛び込むと、二階がバタバタと騒がしくなり、ひげ面のおっさんが慌てて出てきた。


 二階通路の手すりをつかむと、ギルマスらしきおっさんは目を剥いた。


 ドレイザンコウの頭をえっほえっほと運び込むイチゴーたちに、おっさんはあんぐりと口を開けて固まった。


「こりゃたまげた。お前らどんな手品を使ったんだ?」


 二階通路から飛び降り、おっさんは床に音もなく着地した。

 それだけで、相当な手練れだと分かる。


「オレはここでギルドマスターを務めている者だが、初クエストでドレイザンコウを討ち取る奴なんて初めて見たっつうか、あり得ないだろお前ら。どこぞの英雄様のご子息か弟子か?」


「いや、俺らはそんな偉いものじゃないですよ。クラウスが王立学園高等部平民科一年首席ってぐらいか?」


「それを言うならラビはゴーレム使いの名門シュタイン家のご子息だろ?」


 クラウスに実家を褒められた俺は、視線をノエルに投げた。


「それを言うなら、ノエルだってエスパーダ家と言えば代々戦働きで王室を支えてきた名門の軍人貴族じゃないか?」

「そしてハロウィーは私の誇るべき領民だ」

「いや、無理遣りわたしに繋げなくていいよ。この中でわたしだけ地味なのは自覚しているから」


 苦笑いを浮かべるハロウィーに、イチゴーとニゴー、それにサンゴーが寄り添った。


「みんな大好き」


 その場にしゃがみこみ、ハロウィーはイチゴーたちを抱きしめ顔をうずめた。

 その間にも、ギルマスはドレイザンコウの頭部をためつすがめつ、ようく観察していた。


「こりゃあ、自然死したものじゃないな……一体どうやって……」


 ギルマスが目を見張ると、イチゴーたちがテーブルの上に飛び上がり、誇らしげに胸を張った。


『みんなでがんばったのー』

「な、あ……」


 イチゴーたちの胸に光るオーブに、ギルマスは絶句した。


「ハイゴーレムじゃないか! まさかお前……そうかだから、でもその歳で……」

「いや、ハイゴーレムに進化したのはドレイザンコウを倒したからで、戦っているときはただのゴーレムでした」

「逆にすごいな! よっしゃ、お前ら最高だ。オレの権限で本日付けでDランク冒険者に昇格だ!」


 ハロウィーの表情が華やいだ。


「え!? 本当ですか!?」


「ああ。実力的にはCランクにしてやりたいところだけどな。実績がないと難しい。言い換えれば、他のDランククエストをいくつか問題なくこなしたら、すぐにCランクまでは昇格させてやるよ。王都の冒険者ギルドにもそう報告しといてやる」


「いいんですか?」


「おう。もしもこいつが町に来ていたら大変なことになっていただろうからな。一〇年前もそれで町の一区画が半壊する大惨事になったんだ。お前らは町の英雄だ。胸を張って堂々とDランクになってくれ」


 そう言って背中を叩かれると、なんだか俺は誇らしい気持ちになった。

 依頼を達成して、FランクからDランクへの昇格。


 考えてみれば、こんなに明確な成功は、前世も含めて人生初かもしれない。

 かつてない達成感に、俺は胸が熱くなるのを感じた。


「おいお前らこいつを見てみろ、本物だぜ!」


 ギルマスの呼びかけで、周囲の冒険者や騎士たちが次々集まって来た。


「すげぇ、本物のドレイザンコウの頭だ!?」

「はぁっ!? 一〇年前に来たあれかよ!?」

「あの時はBランク冒険者が来てくれなかったらオレら絶対に死んでいたぞ」

「もしかしてオレら、またヤバかったのか? 酒飲んでる場合じゃなかった……」

「それをあの歳で、つかあのオーブ、ハイゴーレム使いとか天才かよ」

「あれがハイゴーレムか、おれ、初めて見たぜ」


 町中で働く労働ゴーレムのこともあり、オーブを持つのはハイゴーレム、というのは一般人にも認知されている。


 みんな、イチゴーたちに大注目だった。


「オレなんかこの歳でまだモリハイエナに苦戦してんだぞ」

「これが貴族の力ってやつか……」

「よくやったなボウズ共、お前らのおかげで助かったぜ!」

「今日は奢らせてくれ!」

「本当に、大したガキ共だ!」


 誰もが口々に俺らを賞賛してくれた。


 慣れない賛辞の嵐に、俺は妙に照れ臭くなって、誤魔化すように愛想笑いを浮かべた。


 そこへ、社交辞令ではなかったらしく、本当にブドウ酒がジョッキで運ばれてきた。


 この世界では冒険者ギルドに登録できる十五歳からお酒を飲めるため、特に問題はない。

 なんなら、中等部の卒業式でお酒が振る舞われるぐらいだ。


 まだ飲み慣れていないけれど、俺はみんなの気持ちに応えたくて、木製ジョッキを受け取った。


「じゃあ遠慮なく」


 ハロウィーたちもブドウ酒を受け取ったのを確認すると、俺はジョッキを握る手を掲げた。


「俺らの初クエスト成功を祝して! かんぱーい!」

「「「かんぱーい!」」」


 俺らはジョッキを打ち付け合ってから、一息にブドウ酒を飲み干した。


 それから俺らは、次々周囲の大人たちに囲まれて、飲食スペースに連れられて、質問攻めにあった。


 ドレイザンコウとどう戦ったか、怖かったか、将来はどうしたいか。

 他人から感謝され歓迎される。

 その喜びに浸りながら、俺らは夕方まで騒ぎ通した。

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