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超レア素材を手に入れた

 瓦礫の中からドレイザンコウが這い出し、邪魔な岩石を長いシッポで払いのける中、俺はみんなにまくしたて、作戦を説明した。


「■■■■■■■■■■!」


 殺意漲る独眼が俺らを捉えると同時に、なんとか作戦を説明しきると、俺はストレージスキルを使い、ボウガンを構えた。


 天井の穴から降り注ぐ太陽光に照らされるドレイザンコウとは対照的に、ノエルたちは穴の奥、暗闇に姿を隠した。


 ドレイザンコウからすれば、存在を確認できる唯一の捕食対象が、カンカンと頭に何かを放ってくる。


 注意が俺一人に向くのは必然だろう。


「■■■■■■!」


 地下空洞全体が震え、崩落するような咆哮を上げながら、ドレイザンコウは突進してきた。


 また、3Dプリンタで壁を作る。

 それは簡単に砕き破かれるも問題ない。

 一秒でも突進を遅らせられれば、それでいいのだから。


「バーニング――」


 闇の底から、ノエルの凛とした肉声が聞こえた。

 洞窟の奥、いや違う。

 ドレイザンコウの下からだ。


「カリバァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアッッ!!」


 紅蓮の大業火が、巨大な渦となって地面から打ち上がった。


 指向性地雷が爆発したような、いや、まるでアニメだけれど、放たれた破壊光線を浴びるようにして、ドレイザンコウの巨体が浮き、業火に呑み込まれた。


「■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■——」


 獣王の咆哮は爆音にかき消され、一瞬、世界からドレイザンコウの存在が塗り潰された。


 俺も、凄まじい熱波に肌を炙られ髪が背後に暴れて、両手で顔をかばいながらその光景を目の当たりにしていた。


 バーニングカリバーが天井の縁を穿ち、穴がさらに拡大する中、ようやく熱波の暴虐が収まり、俺は周囲の黒煙をストレージに収めた。


「どうだ!?」


 これで駄目なら、もう打つ手はない。

 俺は祈るような想いで、ドレイザンコウに目を配った。


 見上げるような巨体は、地下空洞の地面に伏したまま、わずかに震えていた。

 仕留めきれていない。


 一瞬の絶望の後に、そのまま起きないでくれと、倒れてくれと願うと、柱のように太い四肢が地面に突き立てられた。


 咆哮は無い、うめき声さえ上げない。


 けれど、獣王は確かに己の四肢で自身を支え、立ち上がっていた。


 終わった。


 そんな深い失望感と敗北感に、俺の手から力が抜けてボウガンを落とした。

 けれど、先に地面についたのは獣王の巨躯だった。


 ずずぅん。


 という地響きを鳴らしながら、かつてはドラゴンと同一視されていた獣王は地面に這いつくばり、平伏するように頭を垂れていた。


 俺の前にリザルト画面が開いて、レベルアップの祝辞が表示された。


「勝った……」


 安堵で膝からくずおれると、ノエルたちの声が聞こえた。


「やったなラビ!」


 ドレイザンコウよりやや手前の地面、そこにぽっかりと空いた穴から、みんなが姿を現した。

 ノエルの両肩には、イチゴーとニゴーがそれぞれ抱き着いている。


「うまくいったみたいだな」

「ああ、ラビの作戦通りだ!」


 ノエルは深い感謝の念を込めて、俺に素敵な笑みを見せてくれた。

 これが、俺の作戦だ。


 まず、ストレージスキルを使って、地面を斜めにくりぬく形でストレージに入れる。


 そうして作った穴にノエルたちを避難させつつ、イチゴーたちをノエルの装備品にする。


 あとはノエルのカリバーで、イチゴーたちの魔力バッテリーの中の魔力を一度に全て使い切ればいい。


「二人もお疲れさまだったな」


 俺がイチゴーとニゴーの頭をなでると、ノエルも二人にお礼を言った。


「うむ、二人の協力が無ければ勝てはしなかった。感謝しているぞ」

『えへんー』

『きょうえつしごく』


 ノエルの肩で、二人はちょっと得意げに見えた。

 一方で、サンゴーはのほほんとお尻を地面に落ちつけていた。


 ゴゴーはドレイザンコウの横っ腹を拳でつんつん突き、ヨンゴーは背中の上で自分が討ち取ったかのように勝利のポーズをキメていた。


 ——マイペースだな。


「でも本当によく思いついたよねラビ」

「まったくだね。まさか、本当に勝てるなんて、今でも信じられないよ」


 ハロウィーとクラウスは、ドレイザンコウの亡骸を前に、興奮が冷めない様子だった。


「うわ、わたしすごいレベル上がっている!?」

「僕も一度に三レベル上がったね」

「それだけドレイザンコウが格上だったんだろうな」


 かく言う俺も、十三レベルから一気に五レベルも上がり、十八レベルに達していた。

 メッセージウィンドウが更新された。



『レベルが15になったことで新しいスキルが解放されました』

『小型飛行ゴーレム生成スキル:最大積載量50キロ、六枚のプロペラを駆使して時速100キロで360度全方向に飛べる非自律型ゴーレムを生成します』



 ——それってつまりドローンじゃないか!?


 神託スキルはAIチャット、再構築スキルは実質3Dプリンタだし、ますます俺のスキルが現代技術すぎる。


 ――これって、やっぱり俺が異世界転生者だからか?


 二〇〇〇年前の女神も同じことができたのかと考えていると、ドレイザンコウの巨体が姿を消した。


 どうやら、ヨンゴーがストレージに収納したらしい。

 ストレージ画面が開いて、ドレイザンコウの素材が大量に入ってきた。


「おっ、いい素材がたくさんに入ってきたな」

説明文を見る限り、どれも結構なレア素材で、スペックの強化率はかなり高かった。


「それはいいね、さっそくイチゴーたちに配合してみてくれないかい?」

「そういえば配合するところを見たことないな」

「どんな感じになるの?」


 クラウスたちの期待の眼差しに、俺はちょっと気後れした。


「いいのか? ノエルが倒したのに」

「構わんさ。貴君の作戦あってのものだろう? それよりもイチゴーたちをもっと強くしてあげてくれ」

「そっか、じゃあお言葉に甘えて」


 みんなに背中を押される形で、俺はドレイザンコウの素材を、イチゴーたちに配合してみる。


 ドレイザンコウの牙を配合すると筋力が大幅に上がった。

 ドレイザンコウの爪を配合すると瞬発力が大幅に上がった。

 ドレイザンコウのウロコを配合すると耐久度が大幅に上がった。

 ドレイザンコウの毛皮を配合すると魔法耐性が大幅に上がった。

 ドレイザンコウの骨を配合すると跳躍力が大幅に上がった。


 素材の数的にも五人に平等に分配できない分は、ある程度偏らせる。

 前世のテレビゲームの経験則だけど、まんべんなく育てるよりも何かに特化させたピンポイント要員を揃えた方が、戦力としては強くなる。


 ――ニゴーはスピード特化、サンゴーは防御力特化、あとは……。


 そうしてイチゴーたちにドレイザンコウの素材を配合していくと、メッセージウィンドウが更新された。


『条件を満たしました。イチゴー、ニゴー、サンゴー、ヨンゴー、ゴゴーがハイゴーレムに進化できます』


「ッッ!?」


 ――マジか……。


 あまりの出来事に、俺は絶句した。


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