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2巻が出たらよろしくお願いします

 けれど彼女は必死になって、さっき以上に絞り出すような声で告白してくれた。


「好き……なんだ……」

「え?」


 キュン、とトキメいてしまう俺の前で、ノエルは慌てて視線を逸らした。

 そして、ニゴーを抱き上げる。


「ゴーレムが!」

「そ、そうか」


 だよな。と納得した。

 ハロウィーといい、ノエルといい、ゴーレムたちはモテモテである。

 それからノエルは妙に赤い顔をニゴーで隠しながら、チラチラと俺の顔色をうかがってきた。


「それとだなラビ。貴君が貴族科に戻る気が無いならいい。だけど、これからも仲良くしてくれるか?」

あまりの愚問に、俺は快く頷いた。

「当たり前だろ」


 ノエルの美貌に、満開の笑みが咲いた。


   ◆


 その日の夕方。


 俺の暮らす、平民科の男子学生寮のドアが三回ノックされた。


 平民科のドアに覗き窓は無いので、相手はわからない。


 俺が居留守を使っていると、聞き覚えのある声がして、ドアを開けた。


 すると、そこには平民科のスター、クラウスが立っていた。


「どうしたんだクラウス?」

「いや、ちょっとね。聞いたよ。僕のいない間に色々あったらしいね」


 なるほど、その件かと納得した。

 訓練場で起こした決闘は大騒ぎになっていて、学園のホットニュースだ。


 俺が学生寮に引きこもっているのも、外にいれば何を聞かれるかわからないからだ。


「まぁな、とにかく入れよ」


 ずっと居留守で誤魔化していたのだ。

 クラウスを部屋の中に招き入れると、俺はお茶の準備をした。


 ストレージ内から、ヤカン、カップに水、薬草の茶葉、そして炎石で作ったコンロを取り出す。


「あれが、全体デバフ魔法を使った子かな?」

「あぁ。起こさないであげてくれよ」


 クラウスが視線を向けたのは、ベッドの上で目を横線にして眠るイチゴーだった。


 寮に帰るなり、イチゴーはずっとシステムアップデート中に入ってしまった。


 そんなところもスマホっぽい。

いや、強制アップデートと考えるとパソコンか。


 メッセージウィンドウの顔アイコンも、サンタさんみたいな三角帽子をかぶっていてとても可愛い。


「いまお茶淹れるから、てきとうに座ってくれ」

「ありがとう。このテーブルと椅子、変わっているね? 貴族時代のかい?」

「ま、まぁな」


 俺が再構築スキルで作った、上質なテーブルと椅子に座ると、クラウスはあらためて尋ねてきた。


「ところで平民と貴族の決闘で、貴族側のサポートをしたって聞いたよ。君は貴族に戻りたいのかい?」

「ああ。戻りたいぞ」

「………………」

「そのほうが安全だしな」

「どういうことかな?」


 水が沸騰するのを待ちながら、俺は振り返った。


「別に、偉ぶりたいとか特権が欲しいわけじゃない。この世界は身分制度の布かれた封建社会だ。あらゆるものが貴族のほうが有利にできているだろ?」


 テーブルに腰をもたれさせて、俺はけだるげに語った。


「けどさ、今回のことで平民がどれだけ大変か、貴族をどう思っているか肌で感じて思ったんだ。貴族に戻れば俺は平穏に過ごせるけど、それでいいのかなって想いもある」


 ハロウィーと一緒に平民コンビとして活躍して、平民の地位を向上させる。

 世界を変える、平民を救う。


 なまじチートスキルを持っているせいだろう。

 そんな、物語の主人公みたいなことを考えてしまう自分がいた。


 俺がしみじみと語ると、遮ることなく最後まで話を聞いてくれたクラウスが穏やかな顔で席を立った。


「みんなが言っているよ。一撃で周囲全ての人を意識不明にさせる全体デバフ魔法はまるで魔王みたいだと」


 その言葉に、俺はメッセージウィンドウで女神のエンブレムの隣に並ぶもう一つのエンブレムを意識した。


「でもね、僕は思うんだ。悪漢から少女を守るために行使された救いの光。それはまるで女神じゃないかって」


 クラウスの足はゆっくりとベッドに向かった。

 そして、ぐっすりと眠るイチゴーを見下ろした。


「君はまるで小さな巨神兵だね」


 聖人のような笑みで彼はそう言った。

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